真言宗の仏壇の正しい置き方とは?仏具の飾り方やお供えの仕方などを解説
同じ仏教でも、宗派によって仏壇の置き方や決まりが異なります。本記事では真言宗に焦点を当て、仏壇の正しい置き方について解説していきます。仏具の飾り方やお供えのマナーなども詳しくまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
真言宗とは
真言宗とは、13ある仏教宗派の一つであり、空海が中国から日本で伝えたものです。平安時代初期、空海は中国へ留学して密教を学んだ後、日本に帰国しました。このときに伝えた密教が真言宗の始まりとされています。その後、空海は全国行脚を行うことで日本全国に真言宗を広めていきました。
真言宗はさらに細かく宗派が分かれており、18の宗派があると言われています。これらの宗派は大きく真言律宗、新義真言宗、古義真言宗の3つに分けられ、18の宗派のうち13の宗派が古義真言宗に当てはまります。
真言宗の教えの最大の特徴は、清い心を持って仏様と同じように行動すれば誰でもすぐ仏になれるという「即身成仏」です。また、ご本尊は全ての徳を備えているとされる大日如来です。
真言宗の仏壇の置き方
仏壇の置き方は、仏教の宗派によって異なります。ここからは、真言宗の仏壇の置き方について詳しく解説していきます。仏壇を置く向きや場所がわからない方は、こちらを参考にしてみてください。
総本山の方向へ仏壇を安置する
真言宗の仏壇は、総本山の方向へ安置するのが一般的とされています。真言宗では、仏壇に礼拝する際に総本山の方角を向く「本山中心説」が推奨されています。仏壇の前に座ったとき、礼拝する延長線上に総本山が来るような向きで仏壇を安置しましょう。お住まいの地域によって、仏壇の向きは東向きにも西向きにもなるため、確認しておく必要があります。
ただし、「必ず総本山の方を向けなくてはいけない」という厳密な決まりはありません。自宅の中で総本山の向きに仏壇を設置できるスペースがない場合は気にしなくても構わないでしょう。
十分な広さがあるスペースに置く
真言宗の仏壇の置き方として、十分な広さがあるスペースに置くことが挙げられます。狭い場所だと仏壇をぶつけて破損させてしまう恐れがある上、仏壇の扉が開かないということになりかねません。仏壇の左右にある程度のスペースが確保できるよう、安置場所を考えましょう。
床の間の向かいには置かない
真言宗の仏壇は、床の間の向かいには置かないよう注意してください。床の間は、自宅の中で最も上座と定義されています。この床の間の向かいは、最下座にあたります。仏壇を下座にあたる場所に置くのはご先祖やご本尊、故人に対して失礼になるため注意してください。
また、神棚を飾っている家では仏壇との位置関係に気をつける必要があります。神棚の真下に仏壇を置いたり、神棚と仏壇を向かいあわせにしたりといった置き方は、仏様にも神様にも失礼に当たります。真言宗の仏壇は、神棚から離れた位置に置くことをおすすめします。
真言宗の仏壇にお供えする仏具の飾り方
真言宗の仏壇には、ご本尊や脇侍、航路、おりんなどさまざまな仏具を飾ります。ここからは、真言宗の仏壇にお供えする仏具の飾り方について紹介します。
ご本尊
真言宗のご本尊である大日如来は、仏壇上部中央の一番高い位置に飾りましょう。ご本尊は最も大切な仏具とされており、ご本尊を飾ることで「故人があの世で守ってもらえる」「生きている人もお守りいただける」とされています。ご本尊には掛け軸タイプと仏像タイプがありますが、どちらを選んでも構いません。
脇侍
脇侍(わきじ)とは、宗派を開いた人物や宗派の教えなどを表す仏具です。真言宗における脇侍は、空海と不動明王となっています。ご本尊の左側に不動明王を、右側に空海を飾りましょう。ただし、新義真言宗では左側に不動明王ではなく興教大師の覚鑁(かくばん)が飾られます。
位牌
真言宗の仏壇に置く仏具として、位牌が挙げられます。仏教の中には位牌を作らない宗派もありますが、真言宗では位牌を設けるのが一般的です。位牌を作成する際は、ご本尊よりも大きくならないようサイズに注意しましょう。
完成した位牌は、ご本尊よりも低い位置に並べます。基本的に右側上段に一本目の位牌を、左側上段に二本目、右側下段に三本目、左側下部に四本目の順番で配置します。
ご飯
真言宗では、仏壇中段の右側にご飯をお供えします。ご飯をお供えするのには、「毎日食べるものに困らず暮らせていることを感謝する」という意味が込められています。基本的には、毎朝炊き立てのご飯をお供えしてお下がりをいただきます。
毎日炊き立てのご飯をお供えするのは大変という場合は、お彼岸やお盆、命日など重要な節目できちんとお供えするようにしましょう。
ロウソク
ロウソクは、仏壇下段の左側にある灯立てに入れて飾ります。ロウソクの光には「仏様の知恵」という意味があり、火を灯すことで「あの世からこの世の架け橋になる」とされています。長いロウソクだと長時間燃え続けてしまい、火事のリスクが高まるためなるべく短いロウソクを使用しましょう。
香炉
香炉は、仏壇下段の中央に飾ります。香炉で焚く線香の香りは、故人の食べ物となると考えられています。なるべく毎日線香を焚き、手を合わせることをおすすめします。
また、真言宗の線香の置き方には決まりがあります。線香が香炉の中で逆三角形になるよう、香炉に線香を3本お供えしましょう。線香は折らず、2本を仏壇側に、1本を手前にして香炉にお供えします。
花
真言宗の仏壇には、花が飾られます。仏壇中段の左側に置かれている花立てに、花をお供えしましょう。花を飾って仏壇を華やかに彩ることで、仏様や故人を喜ばせるという意味があります。また、花の香りにはその場の邪気を祓って空間を清める役割もあります。基本的には生花を活けますが、ドライフラワーや造花をお供えしても問題ありません。
水
仏壇中段の左側には、お水をお供えします。水をお供えするのには、飲食に困らず生活できていることへの感謝を表すという意味があります。また、故人はあの世で常に喉が渇いているとされているため、水をお供えすることで喉を潤してもらうという役割もあります。水ではなく、お茶やジュースなど故人が好んで飲んでいた飲み物をお供えしてもよいでしょう。
おりん
おりんは、仏壇下段の右側に飾られる仏具です。おりんは、仏様や故人を仏壇に呼び出すための役割があります。また、おりんの音には邪気を祓ってその場を清めるともいわれています。
真言宗の仏壇の選び方
仏壇にはさまざまな種類があるため、どれを選べばよいのか迷う方も多いでしょう。そこでここからは、真言宗の仏壇の選び方について解説していきます。選んではいけない仏壇の種類もあるため、参考にしてみてください。
デザインで選ぶ
真言宗の仏壇を選ぶ際は、デザインに注目してみてください。仏壇は、デザインや色味、材質などはさまざまです。「このようなデザインを選ぶべき」という決まりはないため、自宅の雰囲気や好みで選んで問題ないでしょう。
サイズやタイプで選ぶ
真言宗の仏壇を選ぶ際は、サイズにも注目してみてください。仏壇には、さまざまなサイズやタイプがあります。仏壇と聞くと床に直接置くタイプが想像されがちですが、机の上に飾ってお祀りする略式タイプの仏壇も販売されています。
仏壇を置くスペースが十分にあるのなら、床に置いて設置する大きな仏壇を選ぶとよいでしょう。十分なスペースが確保できない場合は、略式タイプの小さい仏壇を選ぶのがおすすめです。
金色の仏壇は使用しない
真言宗では基本的にどのような仏壇を使ってもよいとされていますが、金色の仏壇だけは使用しないようにしてください。金色の仏壇は、浄土真宗で使用される仏壇です。宗派が異なる仏壇を使うのは仏様にも故人にも失礼にあたるため、十分注意してください。
真言宗の仏壇にお供えするときのマナー
真言宗の仏壇に品物をお供えする際は、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。こちらで紹介するお供えのマナーを踏まえたうえで、故人やご先祖に失礼のないようにしましょう。
真言宗の仏壇へのお供えの仕方
果物やお菓子といったお供え物は、「盛器」や「高坏」という器に入れて仏壇にお供えするのがマナーです。包装されているお菓子は、直接仏壇に置いても問題ありません。ただし、水分の多い果物や野菜といった品物をお供えする場合は、半紙を三角に折った上に置くことをおすすめします。
また、お供え物は基本的に仏壇の下段に置きます。もし仏壇にお供え物を置くスペースがない場合は、供物台に一対で置きましょう。
お供え物に向いている品物
お供え物に向いている品物として、日持ちする食べ物が挙げられます。仏壇にお供えされた品物は、しばらくの間そのまま仏様に捧げられます。お供え後に食べられるよう、賞味期限が長いものを選びましょう。また、仏壇に置いている間に腐らないよう、常温で保管できるものを選ぶのもマナーです。
お供え物に不向きな品物
真言宗の仏壇へのお供え物に不向きなものとして、殺生を連想させるものが挙げられます。仏教では、「あらゆる生き物を殺してはならない」という教えがあります。この不殺生の考え方に基づいて、肉や魚、乳製品、卵などが使われている品物はお供えするべきでないとされています。
また、アルコールを含む飲み物もお供えしないのが無難です。仏教の教えには「不飲酒」という教えがあり、「お酒を飲んで堕落した暮らしを送ってはならない」とされています。そのため、日本酒やビール、ワインといったお酒のお供えは避けましょう。
正しい置き方やお供えの仕方を押さえて、真言宗の仏壇を飾りましょう
この記事のまとめ
- 真言宗の仏壇は、総本山の方向へ安置する
- 床の間の向かいには置かないようにする
- 仏具によって飾り方が決まっている
- 真言宗の仏壇は、デザインやサイズで選ぶとよい
- 金色の仏壇は浄土真宗で使用されるものであるため、真言宗では使わない
真言宗の仏壇の置き方には、さまざまな決まりがあります。仏壇そのものの置き方だけでなく、仏具の飾り方にも決まりがあるためしっかりと目を通しておきましょう。お供え物に関するマナーも踏まえて、真言宗の教えに従って仏壇を祀りましょう。