火葬炉の温度はどれくらい?骨だけ残る理由や火葬炉の仕組みを解説!
火葬炉は、ご遺体を焼却するための設備です。現代の日本においては、亡くなった後にほとんどの人が火葬されています。しかし、「火葬炉の温度は何度ぐらいあるのか」「どうして骨だけ残るのか」などご存知ない方も多いのではないでしょうか?本記事では、火葬炉の温度や仕組み、骨だけ残る理由について解説します。
火葬炉とは?
火葬炉とはご遺体を焼却する設備です。一般的に火葬場や総合斎場に設置されており、葬儀・告別式後に火葬が行われます。
火葬は火葬炉でご遺体を焼却し、遺骨や遺灰に変えて葬る葬法の一つです。かつては、特権階級の人のみが火葬を行い、庶民は土葬が一般的でした。
しかし、明治時代に入り伝染病が蔓延して亡くなる人が増えたことにより、明治30年に「伝染病予防法」が施行されました。衛生面に配慮して人口密集地域では土葬が禁止されたことにより、火葬が庶民にも広がっていきました。現代の日本では、亡くなった後に9割以上の人が火葬されると言われています。
火葬炉の大きさは3種類
火葬炉の大きさは主に3種類あり、棺のサイズに応じて使い分けされます。どのサイズの火葬炉が設置されているかは火葬場によって異なります。ここからは、火葬炉の大きさの種類と棺の標準的なサイズを紹介します。
標準炉
標準炉に用いられる棺のサイズは、長さが195cm~220cm程度で、幅は55~65cm程度、高さは50cm~60cm程度です。一般的な成人の大きさを想定して作られており、多くの火葬場が標準炉を設置しています。
大型炉
大型炉に用いられる棺のサイズは標準炉よりも大きく、長さは220cm以上、幅は60cm以上、高さは60cm~70cm程度です。一般的な成人よりも、高身長や大柄な人を火葬する場合に使用されます。
ただし、すべての火葬場に設置されているわけでないため、大型炉の有無については事前に確認が必要です。
小型炉
小型炉に用いられる棺のサイズは、長さが195cm未満、50cm~60cm程度、高さは40cm~50cm程度です。子供や胎児、体の一部を火葬する際に使用されます。
小型炉はサイズが小さいだけでなく、低温で焼却を行うように設定されているのが特徴です。そのため、子供の軟らかい骨も焼き切らずに残るように作られています。
火葬炉の種類や仕組み
火葬炉は大きく分けて「台車式」と「ロストル式」の2種類があり、それぞれ仕組みが異なります。ここからは、2種類ある火葬炉の特徴を詳しく解説します。
日本で主流は「台車式」
近年、日本で使用されている火葬炉は台車式が一般的です。火葬用の耐火台車の上に棺を乗せ、そのまま主燃料室と呼ばれる炉内に移動させて火葬を行います。
主燃料室の上には、火葬の際に出る臭いや有害ガスを無害化するための再燃焼室が設置されているのが特徴です。
台車式は、火葬後に耐火台車の上に遺骨が人体の形状に沿って残ります。耐火台車を引き出し、台車の上からご遺族などによって収骨されます。
日本では火葬後に骨上げをする文化があり、喉仏がきれいに残ることがよいとされています。台車式では耐火台車の上に遺骨が体の形状に沿って残るため、部位ごとに拾いやすいというメリットがあります。
都市部の大型斎場では「ロストル式」
ロストル式の火葬炉は、オランダ語の「rooster」が語源とされています。ロストルは火格子や網という意味があり、炉内の格子状の金属棒の上に棺を置いて火葬を行う燃焼方法です。
炉内に棺を入れ、金属棒上で棺を燃焼させますが、棺の下には空間があるため酸素を送りやすく、台車式よりも燃焼効率が良くなります。棺の燃焼後はご遺体にも直接炎があたるため燃焼効率が高く、東京都心や大阪のような人口が多い都市にある大型の斎場で使われています。
遺骨はロストル下の骨受け皿に落ちる仕組みになっているため、火葬炉から引き出して骨受け皿の上またはトレイに移し替えられてから遺族が収骨します。
ロストル式は燃焼効率が高く、火葬が終わるまでの時間が短いのがメリットです。一般的に火葬時間は約60分程度で、早いものであれば40分程度で火葬が終わる場合もあります。火葬時間が短いとご遺族の待機時間も短縮でき、ストレスの軽減にもつながるでしょう。
火葬炉の温度や燃料について
火葬炉の種類やサイズなどを解説してきましたが、旧式と最新式によって内部の温度や燃料なども異なります。ここからは、それぞれの特徴を解説します。
旧式の火葬炉の温度は800度~950度
火葬の際の最低温度は、800度以上と各自治体で規定が設けられています。これは、ダイオキシン類などの有害物質を発生させないためです。そのため、旧式の火葬炉の内部の温度は、800度~950度程度に設定されています。
最新式と比較して温度が低く、火葬が終わるまで2~3時間程度かかるのが特徴です。火葬中は火葬技師が内部を観察し、温度を調整する必要があります。
最新式は900度~1,200度
有害ガスを排出しにくい最適な温度は800度~1,200度とされているため、最新式の火葬炉の内部の温度は900度~1,200度程度に設定されています。火力が高いため火葬時間が1時間程度となり、大幅に短縮が可能です。
ただし、温度は高ければよいというわけではなく、ご遺体ごとの適切な温度調節が重要になります。最新式はコンピューターによる温度調節が可能なため、火葬技師の技術に頼らずに火葬が行えるようになりました。
燃料は都市ガスや液化石油ガス
旧式の火葬炉では、石炭や薪、重油などが燃料として使用されており、煙突の設置が必須でした。煙突からあがる黒い煙や有害物質の排出など、環境へ与える影響が懸念されていたのです。
そのことから、燃料は灯油やガスに移り変わり、電気集じん器やダイオキシン類抑制のためのバグフィルタなどの設置が増えました。
最新式の火葬炉の燃料は、都市ガスや液化石油ガスなどが使用されています。再燃焼室が設けられるなど、火葬に伴う排煙の無害化や無臭化の工夫が施されている設備も多いです。そのため、煙突が短くなったり、煙突がなく排気口だけの火葬場も増え、環境に優しい火葬が可能になっています。
火葬で骨だけ残る理由
ここまでは火葬炉の種類や温度、燃料について解説してきましたが、火葬後にはなぜ骨だけが残るのでしょうか?その理由について解説します。
火葬技師が温度や時間を調整している
火葬場には火葬炉の温度や時間を調節するスタッフがおり、火葬技師または火夫(かふ)と呼ばれています。火葬を適切に行うための訓練を受けた専門家で、火葬中の様子を確認できるのは火葬技師のみです。
故人の体格や年齢などによって燃焼具合が異なり、遺骨の残り方に違いがあります。故人が高齢や骨粗鬆症によって骨密度が低かったり、闘病生活が長く投薬治療を受けていたりすると、遺骨の多くが骨のまま残らずに灰になってしまう恐れがあります。
副葬品などの可燃物が多い場合やご遺体の脂肪分が多い場合は、燃焼速度が上がりすぎてしまうため常に抑え気味に調整することが必要です。
そのため、火葬炉にはのぞき窓が設置されており、火葬技師が炎や燃焼具合を確認しながら内部の温度や時間を調整しているのです。
近年はコンピューターで温度管理する火葬場も増えている
従来の火葬技師による火葬は、温度や時間など、故人に合わせて調整するための熟練した技術が必要でした。しかし、近年ではコンピューターで温度管理をし、一定のレベル以上の火葬が誰にでもできるようになっています。
火葬炉の温度や仕組みを事前に確認しておきましょう
この記事のまとめ
- 火葬炉は標準炉、大型炉、小型炉の3種類ある
- 火葬の種類は、台車式とロストル式がある
- 旧式の火葬炉の温度は800度~950度程度、最新式は900度~1,200度程度
- 燃料は都市ガスや液化石油ガスが使われている
- 火葬技師が温度や時間を調整しているため、骨がきれいに残る
- 近年ではコンピューターの温度管理も増えている
火葬炉には種類があり、大きさや仕組み、温度などそれぞれ異なります。火葬炉の温度が低い旧式の場合は、火葬が終わるまでの時間も長くなるため注意が必要です。
事前に火葬炉について確認しておき、故人やご遺族に合った適切な火葬を行ってください。