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葬儀のあと

孤独死が起きたとき、遺品整理はいつから始めるべき?正しい順序と実際の対応方法

孤独死が起きたとき、遺品整理はいつから始めるべき?正しい順序と実際の対応方法

大切なご家族が、孤独死というかたちで突然亡くなる。
そんな現実を前に、気が動転し、何をすればいいのか分からなくなるのは当然のことです。
日本では、孤独死の訃報を受けたあとすぐに、警察の対応や行政手続き、葬儀の準備など、やるべきことが次々に押し寄せてきます。
気づけば時間だけが過ぎていき、心の整理が追いつかないまま、次に訪れるのが「部屋の片付け」や「遺品整理」の段階です。
けれど、実際には「いつから手をつけていいのか分からない」と迷う方が多く、順序を間違えたことでトラブルに発展してしまうケースも少なくありません。
本記事では、孤独死の現場に直面したときに、遺品整理はどのタイミングで、どのように進めるべきなのかについて、できるだけ分かりやすく整理しながら、お伝えしていきます。

孤独死が起きた部屋で、すぐに遺品整理をしてはいけない理由

孤独死、遺品整理のイメージ

ご遺族としては、故人の部屋や荷物を早く片付けてしまいたいと感じることもあります。
見慣れた場所がそのままになっていることに、気持ちが追いつかず、少しでも早く整理したほうが良いと思ってしまうのは、むしろ自然な反応です。
ですが、孤独死が起きた部屋では、片付けを始めるタイミングを誤ることで、思わぬトラブルが起きることがあります。
警察による検視や引き渡しの手続きが終わっていなかったり、相続放棄の検討が済んでいなかったりすると、善意で動いたつもりでも、法的に不利な状況に陥る可能性もあります。
ここでは、遺品整理を始める前に確認しておきたい3つの重要なポイントを見ていきましょう。

「警察による検視・引き渡しの完了」が第一ステップ

孤独死が発覚した場合、最初に介入するのは警察です。
ご遺体の状況によっては事件性が疑われることもあるため、部屋は一時的に「事件現場」として扱われ、ご遺族であっても自由に立ち入ることはできません。
その後、警察による検視と必要な手続きが行われ、遺体が正式に引き渡されることで、ようやく現場に立ち入ることが可能になります。
この時点では、まだ部屋の中に重要な証拠や遺品が残されている可能性があり、警察からの許可がないうちは、荷物に手をつけない方が賢明です。
まずは、警察からの説明を受け、立ち入りの可否や注意点、何ができて何ができないのかをきちんと確認することが大切です。

相続放棄の検討期間と“勝手な処分”のリスク

ご家族が亡くなったあと、家財の整理や処分に気持ちが向くのは自然なことです。
しかし、相続を放棄する可能性がある場合には、むやみに動かないことが重要です。
民法では、相続放棄の申述は「相続の開始を知ったときから3ヵ月以内」と定められています。
この期間中に遺品や財産に手を加えると、たとえ一部であっても、「相続の意思がある」と見なされてしまう可能性があります。
たとえば、「片付けを始めた」「価値がありそうなものを売った」などの行為が後になって問題視され、相続放棄が認められなくなるリスクもゼロではありません。
相続するかどうかの判断を保留にしている間は、たとえ善意であっても、家財を動かす前に必ず専門家に相談することが大切です。

参考:知っておきたい相続の基本。大切な財産をスムーズに引き継ぐには?【基礎編】|政府広報オンライン

感情の整理が追いつかない状態では判断を誤ることも

突然の訃報に接したとき、人は冷静でいられるとは限りません。
特に孤独死の場合、発見時の衝撃や後悔の念が重なり、心の整理が追いつかないまま対応に迫られることもあります。
そのような状態で家の中の整理を始めてしまうと、「何を残すべきか」「誰に相談すべきか」といった判断を感情のままに進めてしまいがちです。
結果として、相続に必要な書類を誤って処分したり、大切な物品を紛失してしまうリスクもあります。
また、家財の一つひとつに思い出が詰まっているため、何を手放すべきか決められず、作業が進まなくなるケースも少なくありません。
無理に一人で抱え込まず、冷静に判断できる状態になるまで待つこと、あるいは第三者のサポートを受けながら少しずつ進めていくことが大切です。
ご家族を亡くされた後の対応には、「すぐにやらなければならないこと」と、「急がなくてよいこと」があります。
中でも遺品整理は、必ずしも急ぐ必要はありません。
むしろ、心が整わないうちに進めてしまうと、後悔の残る選択をしてしまうこともあります。
人によっては、時間をかけて家財と向き合うこと自体が、喪失と向き合う大切なプロセスになることもあるでしょう。
一方で、特殊清掃については、衛生面や建物の保全の観点から、できるだけ早い対応が望まれます。
それぞれの目的とタイミングを正しく理解することが、スムーズな対応につながります。

実は優先すべきなのは「特殊清掃」

特殊清掃のイメージ

遺品整理は、ただ家の中を片付けるだけの作業ではありません。
特に賃貸物件の場合は、退去に向けた手続きや原状回復なども視野に入れる必要があります。
そして、孤独死が起きた住まいでは、室内の状況によっては環境が悪化していることもあり、作業に入る前の慎重な判断が欠かせません。
たとえば、強い臭いや害虫が発生していたり、床や家具に体液などの汚染が広がっている場合には、まず「特殊清掃」で衛生状態を整える必要があります。
この工程を飛ばしてしまうと、整理中に体調を崩したり、大切なご遺品を汚してしまうといったリスクにつながります。
ここでは、遺品整理に取りかかる前に確認すべき「住まいの状態」と「特殊清掃の必要性」について、順を追って見ていきましょう。

室内環境を整えないまま遺品整理を始めると起きること

室内に強い臭いや害虫の発生がなく、環境が比較的整っている場合には、すぐに遺品整理を始めても大きな問題はないでしょう。
しかし、体液の流出があったり、室内が著しく汚れているケースでは、作業中に体調を崩すリスクがあり、慎重な対応が求められます。
特に臭気が強い場合、集合住宅では近隣住民への影響が出る恐れもあるため、適切な対処をせずに作業を進めるのは避けるべきです。
遺品そのものが汚れてしまったり、二次被害につながることもあり得ます。
まずは室内の状態を丁寧に確認し、「そのまま作業を始めて問題ないか」「清掃を優先すべきか」を冷静に判断することが大切です。
必要であれば、特殊清掃の専門業者に相談することも視野に入れておくと安心です。

特殊清掃で行われる作業とその重要性

室内の状況が深刻で、目を覆いたくなるような状態であれば、まずは「特殊清掃」が必要になります。
特殊清掃とは、一般的なハウスクリーニングとは異なり、体液や汚物の除去、消臭、消毒といった専門的な処理を行う清掃業務です。特に孤独死があった場合には、衛生環境が著しく悪化していることもあり、個人での対応は困難を極めます。
このような状況では、まず専門業者に依頼し、室内の衛生状態を回復させることが第一です。
また、多くの特殊清掃業者では、そのまま遺品整理まで一括で対応してくれるケースもあるため、段取りの手間を省きたい方にとっては大きなメリットになります。
ただし、当然ながらその分の費用は発生します。内容にもよりますが、特殊清掃は一般的な清掃よりも高額になることが多いため、事前の見積もりと説明をきちんと受けることが重要です。

整理作業は清掃後、“安全が確認されてから”が基本

どれだけ早く片付けたいという気持ちがあっても、衛生状態が整わないまま遺品整理を始めるのは避けた方が賢明です。
体調を崩すリスクや、物品への二次汚染のほか、ご近所への臭気被害など、予想以上に大きな問題へ発展することもあります。
そのため、まずは「安全に整理できる環境かどうか」を確認することが重要です。
特殊清掃などで衛生状態が回復し、第三者が立ち入っても問題のない状態になってから、はじめて整理を進めるのが基本となります。
室内の安全が確認された状態であれば、落ち着いて一つひとつの品に向き合うことができ、判断の誤りも減らせます。
また、必要に応じて遺品整理を専門とする業者に依頼することで、身体的・精神的な負担も大きく軽減されます。

大切なのは、無理に急がないこと。
“清掃”と“整理”を切り分け、それぞれの役割と順序を意識することが、後悔しない片付けにつながります。

遺品整理を始める適切なタイミングとは?

遺品整理のイメージ

遺品整理と特殊清掃は、どちらも大切な工程ですが、進める順番を間違えると思わぬトラブルを招くこともあります。
特に孤独死などが関係する場合、衛生環境や精神的な負担、さらには法的な手続きの順序にも配慮が必要です。
ここでは、実際に「どのタイミングで何をすべきか」を簡潔に整理し、それぞれの役割と注意点をまとめます。
無理なく、そして後悔のない形で進めていくための指針としてご活用ください。

清掃完了後+相続の方向性が見えてからがベスト

遺品整理を本格的に始めるタイミングとして重要なのは、「特殊清掃によって衛生状態が整っていること」と、もう一つが「相続に関する基本的な方向性が決まっていること」です。
たとえば、遺言書の有無が確認されている、または法定相続人の調査が完了しており、相続人全員の同意のもとで遺産分割協議が進んでいるといった状況が理想です。
これらの手続きが不十分なまま家財を処分してしまうと、後に「遺産の勝手な処分」と見なされ、相続トラブルに発展する可能性があります。
特に相続放棄を検討している場合は、資産・負債の内容を把握するために最低限の確認は必要ですが、処分や売却といった「財産の処分行為」に当たる行動は慎重に行う必要があります。
このように、遺品整理は「部屋に入れる状態かどうか」だけでなく、「法律的に動いても問題のない状態かどうか」を確認したうえで進めることが、トラブルを避ける最大のポイントです。
より安全に進めるためには、相続を依頼している弁護士や司法書士などの専門家に確認をとってから整理を始めるのが望ましいでしょう。

よくある“早すぎる整理”とそのトラブル事例

「早く片付けないと」と焦る気持ちは、誰にでもあるものです。
しかし、気持ちのままに動いてしまうと、思わぬ落とし穴にはまることがあります。
たとえば、ある方はご家族が亡くなった直後、急いで家の中を整理し、不要だと思った家具や日用品を次々と処分してしまいました。
ところが後日、故人に多額の借金があったことが判明。急いで相続放棄を申し立てましたが、「すでに財産を処分している」として、裁判所に放棄が認められませんでした。
実は、たとえ“片付け”のつもりであっても、遺品の処分は「相続財産に手を付けた」と見なされることがあります。
一度でもそう判断されてしまうと、もう相続放棄はできません。
このようなケースは珍しくなく、知識がなければ誰にでも起こりうることです。
遺品整理を始める前には、「相続を放棄する可能性がないか」「何か重要な書類や財産が残っていないか」を一度立ち止まって確認することが大切です。

家財の扱いを決める前に、家族間の合意形成を

遺品整理を進める上で、もう一つ大きな落とし穴となるのが「家族間の意見の食い違い」です。
「これは捨ててもいいと思った」
「大事な思い出だから残しておきたかった」
「売却するなら自分にも相談してほしかった」
こうした行き違いは、特に兄弟姉妹や親族が複数いる場合に頻発します。
誰か一人が判断して片づけを始めた結果、後から「勝手に処分された」としてトラブルになるケースも少なくありません。
相続財産としての価値があるものはもちろんのこと、感情的な意味での「思い入れ」のある品々も、扱いには慎重さが求められます。
特に遺品の整理は、遺族にとって“心の区切り”となる作業でもあるため、一人で先に進めてしまうことで、他の家族の気持ちに傷を残してしまうこともあるのです。
こうしたトラブルを避けるためにも、家財の整理に着手する前に、家族間でしっかり話し合いの場を持ち、「何をどう扱うのか」の方針を共有しておくことが何よりも大切です。
そしてその方針が固まった段階で、次に考えるべきは「自分たちで進めるか」「専門業者に依頼するか」という判断です。
ここからは、現場の状況や家族の体制を踏まえて、専門業者を活用すべきケースとその連携方法について解説していきます。

専門業者に頼むべき判断ポイントと現場での連携方法

遺品整理や生前整理を専門業者に頼むイメージ

遺品整理は、想像以上に時間も体力も必要とする作業です。さらに、故人の住まいが遠方だったり、部屋の状態が悪化している場合、自力で進めるには限界があります。
「どこまでを自分たちで対応し、どこから専門家に頼るべきか」
これは多くのご遺族が直面する悩みです。
無理をして進めた結果、体調を崩してしまったり、後から「もっと早く依頼しておけばよかった」と後悔する声も少なくありません。
ここでは、専門業者に依頼すべき具体的な判断ポイントと、実際に依頼する際の流れや注意点について整理します。
遺品整理を失敗しないためにも、押さえておきたいポイントを確認していきましょう。

自分たちでやるべき範囲/業者に任せる範囲

遺品整理は、すべてを業者に任せる必要はありません。
大切なのは「どこまでを自分たちで行い、どこからを専門業者に任せるべきか」を冷静に見極めることです。
たとえば以下のようなケースでは、ご遺族が自ら対応しやすい部分です。

  • 思い出の品やアルバム、手紙など、感情的に大切な物の仕分け
  • 通帳/保険証書/遺言書など、重要書類の確認
  • 一部の生活用品や衣類など、明らかに処分すべき不用品の分別

一方で、以下のようなケースでは専門業者の力が必要になることが多くなります。

  • 家全体がゴミ屋敷化しており、分別・搬出が困難
  • 体液や汚染物が残っている場所の清掃
  • 大型家具/家電の搬出やリサイクルの手配
  • 日数や人手が足りない場合

感情の整理がつかない中で作業を続けると、疲弊するだけでなく、思わぬトラブルを招くこともあります。
「これは自分たちでやる」「ここからはプロに任せる」と明確に線引きすることが、円滑な整理への第一歩です。

信頼できる業者の見極め方と、見積もり時の確認事項

遺品整理や特殊清掃を業者に依頼する場合、「誰に頼むか」が結果を大きく左右します。
見積もり時の対応や料金の安さだけで判断すると、作業の質やアフターケアに問題があるケースも少なくありません。

信頼できる業者かどうかを見極めるポイントは、次のような点にあります。

専門的な知識と実績があるか

孤独死や事故現場など、特殊な状況に対応した経験があるかを確認しましょう。見積もりの段階で、現地をしっかり確認し、衛生・安全面についてのアドバイスがあるかどうかも大切です。

対応の姿勢が誠実か

質問に対して丁寧に答えてくれるか、不安や疑問にしっかり耳を傾けてくれるかも、信頼の判断基準になります。「早く片付けた方がいいですよ」と急がせるような業者は避けた方が無難です。

見積書が明瞭であるか

「何にいくらかかるか」がはっきり書かれているか、追加料金の有無、キャンセルポリシーなども要確認です。優良な業者であれば、見積書の内訳を丁寧に説明してくれるはずです。

作業後の報告やフォロー体制が整っているか

完了報告の写真提供や、臭気・汚染の再発防止に関する説明など、単なる作業だけでなく「安心」を提供する姿勢があるかもチェックしましょう。

心の整理が追いつかない状況では、業者の対応力がより重要になります。
「安心して任せられる」と思えるパートナーに出会えるかどうかが、その後のすべての流れに影響します。

特殊清掃業者と遺品整理業者は“別物”である理由

一見すると似たような業務に見える「特殊清掃」と「遺品整理」ですが、その性質や必要とされる技術・対応力はまったく異なります。
遺品整理は、思い出の品や家財道具を一つひとつ丁寧に仕分けし、必要なものを残しながら不要物を処分する作業。
一方の特殊清掃は、体液や臭気、害虫、病原体などが関係する“高度な衛生管理”が求められる専門領域です。

たとえば以下の点は、専門的な技術・知識・装備がなければ対応できない工程です。

  • 体液や汚染物質の除去
  • オゾンや中和薬剤を使った脱臭
  • カビや感染症対策としての殺菌処理
  • 室内の構造材(床板や壁材)の交換に伴う調査と処置

もちろん、すべての遺品整理業者がこれらの対応を行えるわけではありません。
中には「清掃もやります」と言いつつ、実際には拭き掃除レベルで終わってしまうケースもあります。
そうした場合、臭いが残ったまま遺品整理が進み、賃貸物件の退去トラブルや二次的な健康被害につながるリスクも否定できません。
本来、特殊清掃は「現場を安全・衛生的に戻す」ための作業であり、遺品整理とは役割もタイミングも異なるものです。
だからこそ、両者を混同せず、必要に応じて連携をとれる体制が整っているかどうかが、業者選びの重要なポイントとなります。

大切なのは「急ぐこと」ではなく「順序を守ること」

遺品整理や生前整理で大切なことのイメージ

大切な人が亡くなった直後というのは、気持ちが追いつかないまま、やらなければならないことが次々と押し寄せてきます。特に孤独死の場合は、想像以上に複雑で、判断に迷う場面も多いものです。
遺品整理は、確かに重要なプロセスです。
しかし、それを「いつやるか」ではなく、「どう進めるか」が何より大切です。
警察の対応、相続の確認、室内の衛生状態の復旧など、こうしたひとつひとつのステップを飛ばしてしまうと、後になって思わぬトラブルや後悔を招くこともあります。
感情の整理がつかないうちは無理をせず、清掃や法的手続きを含めた順序を踏みながら進めていくことで、結果的にはスムーズで納得のいく整理につながります。
「急いで片付けること」よりも、「安心して向き合える環境を整えること」。
それが、ご遺族としてできる最初の“優しさ”かもしれません。

監修者 SUPERVISOR
特殊清掃 藤田 隆次

ブルークリーン株式会社 代表取締役
1992年 東京生まれ。奄美諸島出身の父とメキシコ人の母の間に生まれる。都立雪谷高校を卒業後、IT企業(東証グロース上場企業)やリフォーム業を経て起業。米国バイオリカバリー協会から認定を受けた、日本人唯一のバイオリカバリー技術者。

[資格&修了]
・米国バイオリカバリー協会 公認バイオリカバリー技術者
・全米防疫技術研究所(NIDS)マスターズコース修了認定
・公益社団法人日本ペストコントロール協会 1級技術者

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