閉じる メニュー
特集

【椿鬼奴さん特別インタビュー】気丈さが、涙をさそう

【椿鬼奴さん特別インタビュー】気丈さが、涙をさそう

お笑いタレントとして、テレビや舞台で活躍する椿鬼奴さん。今回は、芸人としての理想の最後や自身が考える終活、印象的な葬儀について語ってくれました。

自分の葬儀では「やっこさんらしいね」

——芸人として、理想的な終え方を考えることはありますか。

私は、あまり想像力があるタイプではなく、明日のことさえ考えられないんです。子どもの頃からそうで、「将来の夢は何ですか」と聞かれる授業が本当に苦手でした。何も考えていなかったですし、どんな仕事があるのかさえわからなかったのですから。

だから、最初で最後のカンニングは「将来の夢」を書くとき。隣の子が書いているのを、そのまま写したんです。もう、何も考えたくなかったんですよね。

そんな性格なので、これからの仕事をどうしていくのかや、引退を含めた将来のことについて、あまり考えていません。何かあったら、その場で考えて、その場で対処する。問題が起きたときに考えるほうが、私にとってはずっと楽なんです。

——ご自身の葬儀について、考えていることはありますか?

時代の移り変わりとともに、葬儀のかたちも実に多様になってきました。参列の機会が増えるなかで、仏式に限らず、神式の葬儀ではお焼香に代えて榊を供える玉串奉奠を行うなど、さまざまな形式に触れるようになりました。そうした経験を重ねるうちに、自分自身はどのようなかたちを望むのだろうかと、ふと考えることがあります。

とはいえ、最終的に負担を担うのは喪主になる人ですから、その方にとって無理のないかたちで行ってもらえれば、それで十分だと思っています。亡くなった本人はもう苦労をするわけではありませんし、生きている人の都合を第一に考えてもらえたらありがたいですね。もし私が先に逝くことになれば、主人にとって最も負担の少ない方法を選んでほしいと思います。

お墓の管理が大変だというのであれば、樹木葬や散骨といったかたちでも構いませんし、特別なこだわりはありません。何よりも、残された人にとって無理のない方法であってほしいと願っています。

——見送ってほしい曲などはありますか?

それは考えることがあります。普段は、営業のお仕事でボン・ジョヴィの「You Give Love A Bad Name」で登場するので、その曲がいいかな。そういう希望は、周りに伝えておくのがいいかもしれないですね。

私の葬儀でボン・ジョヴィの曲が流れたら、「やっこさんらしいね」と思う人がいるかもしれません。それが、たわいもない思い出になってくれたら嬉しいです。

笑顔の椿鬼奴さん

断捨離はプロの力を借りて

——終活は何か始めていますか?

せめて断捨離くらいはしようかな、という感じですね。昨年、引っ越しをしたので、それをきっかけに、たくさんあった荷物を減らしました。ただ、もう自分では手に負えないと感じて、プロの業者の方に依頼しました。

——プロの業者に依頼してみて、いかがでしたか?

やはりプロは違っていて、「まずはざっくり二つに分けましょう」といったように、判断の基準を明確に示してくれます。言われた通りに進めていくだけで、自然と服も減っていきました。

決して焦らせることはなく、一緒に作業しながら「これは何年ぶりに見ましたか」といった具体的な問いかけをしてくれます。「この要領で、次にお会いするまでに少しやってみてください」と言われると、不思議とやる気が湧いてきて、少しずつでも手を動かせるようになりました。やっぱりプロの力はありがたいなと思いましたね。自分ひとりでは、到底できなかったと思います。

——終活には、人の手を借りるという選択肢も必要ですね。

ネットには情報やノウハウが豊富にありますし、それを活用して自分でできる人には、それで十分だと思います。ただ、知識があっても行動に移せない人もいます。私自身がまさにそのタイプなので、無理だと感じたときは、プロにお願いするという選択も、ひとつの方法ではないでしょうか。

立派で、気丈で、涙をみせることなく

——これまでに、印象に残っている葬儀はありますか?

先輩の女性芸人であるマチャマチャさんのお母様のご葬儀に参列しました。お母様は若くして亡くなられ、その知らせに私自身も大きなショックを受けました。何よりも、マチャさんがどれほどつらい思いをされているのかと、胸が痛みました。

葬儀では、待合室にモニターが設置されていて、お母様の写真が順番に映し出されるようになっていました。そこには、笑顔の写真だけでなく、ちょっとスナックでおどけた格好をしているような、思わず笑ってしまう写真もあったんです。

それを見て、くすっと笑ったり、次の瞬間には胸がじんとしたりして。悲しさだけではなく、笑いと温かさが同時にこみ上げてくるような時間でした。そうした工夫が随所にありましたね。

マチャさんが弔辞を読まれたのですが、その姿が今でも強く印象に残っています。とても立派で、気丈で、涙を一切見せることなく、お母様との思い出を静かに語っていらっしゃいました。その様子を見て、私は涙が止まらなくなってしまって……。本当に胸を打たれました。

一番つらい立場にあるはずのマチャさんが、最後までしっかりと振る舞っている。その姿が、今も強く心に残っています。気丈であればあるほど、参列している側の感情があふれてしまうものなのだと、あのとき改めて感じました。

——その他に印象に残る葬儀はありましたか?

後輩の女の子のご主人が、若くして亡くなってしまったことがありました。その葬儀で流れていた音楽が、東南アジアの音楽のような、すごく変わったジャンルで、思わず笑ってしまったんです。「なんでこの曲なんだろう」と思えば思うほど。でも「ご主人、こういう音楽が好きだったよね」とも思えてきて。ああ、こういう送り方もあるんだなと感じました。

自分の葬儀も、できれば笑ってほしいですね。あまりしんみりせず、楽しく、なるべく軽い感じで、ライトにしてもらえたらいいなと思っています。

真剣にお話される 椿鬼奴さん

火葬後は故人のことを楽しく語り合う

——『ひとたび』を読んでくれた方にメッセージをお願いします。

私は祖父母のことが大好きで、年に一度か二度会える日を、いつも心待ちにしていました。だからこそ、亡くなったときの葬儀は、悲しみに包まれました。

ひときわつらく感じたのは、最後のお別れの瞬間です。棺が火葬炉へと入っていくのを見たとき、どうしようもなく別れがたい気持ちがこみ上げてきました。

でもその後、久しぶりに会う親族たちと話をしたり、ビールを飲んだり、お寿司を食べたりするうちに、だんだんと気持ちは和らいでいきました。

祖父は正直なところ、親族に迷惑をかけた人でした。どこか私と似ているところもあったんですね。そんな祖父の、楽しくも少し困った一面を語り合える時間が、次第に生まれていったんです。

火葬場はつらい場所です。しかしその先には、楽しいひとときが待っています。献杯をし、故人との思い出を語り合いながら、その場をできるだけ明るく過ごしてほしいと、私は思います。

【プロフィール】

椿鬼奴(つばき・おにやっこ)
お笑いタレント。東京都出身。1999年にデビューし、お笑いコンビ「金星ゴールドスターズ」として活動。その後、椿鬼奴としてピンでの活動を本格化させる。ハスキーボイスを生かした独自の芸風で注目を集め、テレビのバラエティ番組やライブを中心に活躍。ロックを中心とした洋楽を好む。

SHARE この記事をSNSでシェアする