相続税申告に必要な書類(添付書類)はコレ!相続税専門のプロが徹底解説
相続が発生すると、財産の種類や分割方法によって相続税の申告が必要になる場合があります。しかし、申告時の必要書類や添付書類は戸籍や住民票、預貯金や不動産関連書類、生命保険など多岐にわたり、何を揃えればよいか迷う方も少なくありません。本記事では、相続税申告に必要な書類を分かりやすく解説していきます。
相続税申告の必要書類一覧
相続税申告をおこなう際には、さまざまな必要書類を事前に準備する必要があります。必要書類を漏れなく揃えることで相続税申告の手続きがスムーズに進み、追加の書類を求められるリスクも避けられます。
なお、国税庁のホームページでは「相続税の申告の際に提出していただく主な書類」が一覧で公開されています。公式の案内も確認しながら、必要な書類を準備しましょう。
ここでは、必要書類をカテゴリー別に整理し、相続税申告を効率的に進められるよう解説していきます。
相続税申告書
相続税申告書は、すべての相続税申告手続きの中心となる書類です。相続税申告書には、以下の内容を記載して税務署に提出します。
相続税申告書に記載する内容
- 相続財産の総額や債務
- 控除対象額
- 課税価格
- 税額計算 など
相続税申告書は税務署や国税庁のホームページから入手可能で、記入例も公開されています。近年は電子申告(e-Tax)での提出も可能になっており、添付書類も電子データで提出できる場合があります。相続税申告書を正確に作成し、修正申告や税務調査を避けられるようにしましょう。
相続人を証明する相続税申告の必要書類
相続税申告において、相続人の証明は非常に重要です。相続人の身元と被相続人との関係を明確にするために、以下の書類を揃える必要があります。
相続人が用意する相続税申告の必要書類
- 被相続人の戸籍謄本と改製原戸籍
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
- 相続人全員のマイナンバー確認書類
- 相続人全員の印鑑登録証明書
- 法定相続情報一覧登録図
法定相続情報一覧登録図があれば、戸籍謄本や改製原戸籍、被相続人の住民票、相続人全員の戸籍謄本や住民票は不要です。また、印鑑登録証明書は遺産分割協議をおこなった場合のみ必要です。
遺産分割をする際の相続税申告の必要書類
遺産分割をおこなう場合、相続人同士での協議や手続きを証明する書類が必要です。とくに遺産の分配内容や同意者の確認をおこなうための資料は、申告時に必ず添付する必要があります。
遺産分割をする際の相続税申告の必要書類
- 遺言書
- 遺産分割協議書
- 印鑑登録証明書
- 特別代理人選任の審判の証明書
- 相続放棄受理証明書
- 申告後3年以内の分割見込書
これらの書類を準備しておけば、相続手続きの透明性が高まり税務署への申告がスムーズになります。とくに遺言書や遺産分割協議書は、遺産の分配方法を明確に示す重要な証拠です。故人の死後は遺言書の有無を確認し、遺産分割協議書も明確に記載するようにしましょう。
土地や建物関連の相続税申告の必要書類
土地や建物を相続した場合、評価額や所有権を証明する書類が必要です。正確な資料が揃っていれば、課税価格の算定もスムーズになります。
土地や建物関連の相続税申告の必要書類
- 登記簿謄本
- 固定資産評価証明書
- 固定資産課税台帳
- 公図または地積測量図
- 住宅地図
- 賃貸借契約書
- 路線価図または倍率表
登記簿謄本や固定資産評価証明書は、課税明細書でも代用可能です。これらの書類は、土地や建物の所在地、面積、権利関係を正確に示すため、申告書作成に欠かせません。
現金や預貯金などの相続税申告の必要書類
現金や預貯金は遺産の中でも代表的な財産であり、申告において正確な金額を確認するための書類が必要です。残高や利息の状況を明示することで、税務署とのトラブルも防げます。
現金や預貯金などの相続税申告の必要書類
- 残高証明書
- 既経過利息計算書
- 通帳の写し
手元にある現金も合わせて把握し、必要に応じて申告に含めましょう。金融機関ごとに残高証明書を取得しておくと、整理もしやすくなります。
有価証券関連の相続税申告の必要書類
株式や投資信託などの有価証券を相続した場合、所有状況や評価額を証明する書類が必要です。とくに非上場株式は評価方法が複雑なため、詳細な資料を揃えるようにしましょう。
有価証券関連の相続税申告の必要書類
- 取引残高報告書
- 配当金支払通知書
- 非上場株式の関連書類
これらの資料があれば、有価証券の正確な評価と課税計算が可能です。証券会社から取得する報告書や取引履歴は、必ず最新のものを用意しましょう。
生命保険金などの相続税申告の必要書類
生命保険金や退職手当などは、現金以外の財産として相続税申告の対象になります。受け取った金額や契約内容を証明する書類を用意しましょう。
生命保険金などの相続税申告の必要書類
- 死亡保険金支払通知書
- 生命保険証書
- 解約返戻金がわかる資料
- 退職手当支払計算書
これらの書類を揃えておけば、正確に課税対象額の計算ができます。とくに解約返戻金は契約によって金額が異なるため、最新情報の確認が必要です。
債務関係の相続税申告の必要書類
被相続人に借入金や未払金がある場合、債務関係を証明する書類を添付する必要があります。課税価格から債務控除が可能になることもあるため、忘れずに用意しましょう。
債務関係の相続税申告の必要書類
- 借入残高証明書
- 金銭消費貸借契約書
- 未納の租税公課の領収書
- 未払い金の領収書
債務に関する必要書類は、金融機関や税務署に提出すれば正確な課税計算をしてもらえます。とくに借入残高証明書は、申告時点の残高を示す重要な資料なため、必ず用意しておきましょう。
各種特例などを利用する際の相続税申告の必要書類
相続税には、一定の条件を満たす場合に税額が軽減される特例があります。特例の適用を受けるには、申告書と合わせて特例ごとに証明書類を用意しておかなければなりません。
小規模宅地等の特例を利用する際の相続税申告の必要書類
小規模宅地等の特例は、居住用や事業用の宅地を相続した場合に、評価額を大幅に減額できる制度です。
この特例を適用するためには、申告書に加えて相続人や被相続人の関係を証明する書類や、遺産分割の内容を示す書類も用意しなければなりません。
小規模宅地等の特例を利用する際の相続税申告の必要書類
- 被相続人と相続人全員の戸籍謄本(「法定相続情報一覧図」の写しで代替可能)
- 遺言書または遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 申告期限3年以内の分割見込み書
遺産分割協議書は写しでも問題ありません。申告期限3年以内の分割見込み書は、申告期限までに遺産分割が完了できない場合に必要です。
また、相続人全員の印鑑証明書は遺産分割協議をおこなった場合のみ添付します。これらの書類を確実に揃え、特例適用の申告を進めましょう。
配偶者の税額軽減を利用する際の相続税申告の必要書類
配偶者の税額軽減は、配偶者が相続した財産について一定額まで相続税がかからない特例です。適用する場合、遺産分割や相続関係を証明する書類が必要です。
配偶者の税額軽減を利用する際の相続税申告の必要書類
- 被相続人と相続人全員の戸籍謄本
- 遺言書または遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 申告期限3年以内の分割見込み書
遺産分割協議書は写しで提出できます。申告期限3年以内の分割見込み書は、申告期限内に遺産分割が完了できない場合に必要です。
また、相続人全員の印鑑証明書は、遺産分割協議をおこなった場合に添付します。
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葬儀費用に関する相続税申告の必要書類
葬儀費用は、相続税の課税価格から控除できる経費として申告に含められます。控除対象となる費用を明確にするには、領収書や記録を揃えておくことが大切です。
葬儀費用に関する相続税申告の必要書類
- 通夜や葬儀に関する領収書
- 香典などの記録
- お布施やお礼などの記録
相続税から差し引ける葬儀費用の例
- 葬儀会社に支払ったお通夜、告別式の費用
- お通夜、告別式の飲食費用
- 葬儀を手伝ってもらった人への心付け
- お通夜・告別式にお寺・神社・教会へ支払ったお布施など(戒名料・読経料を含む)※
- お通夜、告別式の参列者に渡す会葬御礼の費用
- 火葬、埋葬、納骨の費用
- 遺体や遺骨の捜索、運搬の費用
- 死亡診断書の発行費用
※寺院などに支払うお布施や戒名料・読経料は、領収書が発行されないこともあります。その場合は「いつ・誰に・いくら支払ったか」をメモしておき、その記録を税務署に提出する方法も認められています。
これらを用意しておくことで、相続税申告時に葬儀費用を漏れなく控除できます。とくに領収書や証明書類は、税務署に提出する際の添付が必須です。
相続税申告の必要書類を効率的に集めるポイント
相続税申告の必要書類は種類が多く、発行元も異なるため効率よく集めることが大切です。計画的に書類を揃えれば、申告期限に余裕を持って手続きを完了できるでしょう。 ここでは、相続税申告の必要書類を効率的に集めるポイントを解説します。
身分証明書から先に集め始める
相続人や被相続人の戸籍謄本、住民票などの身分証明書は、相続関係を証明するうえで欠かせない資料です。このような書類は役所で発行されるため、事前に請求しておくと時間を節約できます。
とくに戸籍謄本や改製原戸籍は取得に日数を要することがあるため、最優先で準備することをおすすめします。
発行に時間がかかる書類を早めに申請する
固定資産評価証明書や登記簿謄本、借入残高証明書といった金融機関や自治体から取得する書類は、発行までに時間がかかる場合があります。
早めに申請して到着次第整理することで、手続き全体が円滑に進むでしょう。
領収書や証明書などを整理しておく
葬儀費用、医療費、保険金関連書類など、申告に必要な領収書や証明書は、日付や種類ごとに整理しておくと便利です。
フォルダや封筒で分けて保管すると、申告書作成時に必要な情報をすぐに確認でき、計算ミスや書類の抜け漏れを防げます。
相続税申告では、各種の証明書や領収書を正確に揃えましょう
この記事のまとめ
- 相続税申告には、相続人や被相続人の戸籍謄本・住民票・マイナンバー確認書類・印鑑登録証明書・法定相続情報一覧登録図などの身分証明書が必要
- 遺産分割の有無や方法により、遺言書や遺産分割協議書など追加の書類が求められる
- 財産の種類ごとに必要な証明書が異なり、土地・建物、預貯金、生命保険などそれぞれに対応した準備が重要
- 小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減といった特例・控除を利用する場合は、条件を満たす証明書や分割見込書を揃える必要がある
- 書類を効率的に収集・整理しておけば、申告手続きの負担を減らし、正確な申告や節税にもつながる
相続税申告では、各種の証明書や領収書を正確に揃えることが重要です。効率よく進めるためには、取得に時間がかかる戸籍や固定資産評価証明書などから先に申請し、葬儀費用や保険金の資料は日付ごとに整理してください。
特例を適用する際は、添付不足によって認められない場合もあるため、早めに必要書類を確認しましょう。計画的に準備を進めれば、期限内に正確な申告を行い、節税効果を最大限に活かせます。
国税OB税理士(国税庁出身税理士)。
相続税を専門とする税理士法人チェスターのパートナー税理士。
国税在籍時には、2か所の税務署長、国税不服審判所で部長審判官、税務大学校で主任教授、
国税局訟務室で主任訟務官、さらには国税庁で審理担当課長補佐を歴任。
著書に「令和6年度版相続税・贈与税コンパクトブック」、「デジタル財産の税務」など多数。
また、「相続大辞典」、「税理士が教える相続税の知識」の記事監修も務める。