曹洞宗の焼香のやり方とは?手順やマナー、流れを詳しく解説

曹洞宗では、どのような作法で焼香を行うのかご存知でしょうか。焼香の手順は宗派によって異なるため、事前に確認しておくことが大切です。本記事では、曹洞宗の焼香の作法や手順、葬儀に参列する際のマナーなどを解説します。
曹洞宗とは

曹洞宗とは、鎌倉時代に道元禅師により中国から伝えられた禅宗の一つです。日本三禅宗に数えられる宗派です。まずは、曹洞宗とはどのような教えや歴史を持つのかについて紹介します。
曹洞宗の教え
曹洞宗の教えの特徴として「只管打坐(しかんたざ)」が挙げられます。これは、お釈迦様が坐禅をすることで悟りを開いたという伝承に基づき、無心に坐禅をするという修行です。また「命を持つものは生まれた時から仏の心を持つ」という「即心是仏(そくしんぜぶつ)」という考えも特徴の一つです。
曹洞宗の歴史
曹洞宗の歴史は、鎌倉時代に遡ります。宋(現在の中国)に留学した道元は、天童如浄という禅師と出会って弟子となり、中国の禅宗である曹洞宗の修行を行います。坐禅の修行を通し、道元は如浄より悟りを開いたと認められました。道元はその後日本へ帰国し、坐禅の教えを広めるために「普勧坐禅儀(ふかんざぜんぎ)」という書物を執筆しました。これが、日本における曹洞宗の始まりとされています。
曹洞宗の焼香の手順・やり方

焼香には立ち焼香、座り焼香、回し焼香の3種類があります。同じ仏教でも宗派や焼香の種類によって手順ややり方が異なるため、覚えておくとよいでしょう。ここからは、曹洞宗の焼香のやり方を種類別に紹介します。
立ち焼香の手順・やり方
立ち焼香とは、その名前の通り立った状態で行われる焼香です。ほとんどの葬儀会場で、この立ち焼香が行われています。この立ち焼香が最も一般的なものとされています。
立ち焼香の手順・やり方
- 数珠を左手に持って祭壇の前に進み、ご遺族に一礼する
- 故人の遺影に向かって一礼して左手に数珠をかけ、合掌礼拝を行う
- 抹香を右手の親指、人差し指、中指でつまみ、額の高さにおしいただいで香炉に入れる
- もう一度抹香をつまみ、今度はおしいただかずに香炉へ入れる
- 数珠を左手にかけ、遺影に向かって合掌礼拝を行う
- 祭壇に向かって礼をして、自席に戻る
座って焼香をする場合の手順・やり方
座って行う焼香は「座礼焼香」と呼ばれ、文字通り座った状態で焼香を行います。椅子席のない規模が小さい会場や、お寺や自宅の和室などで葬儀を執り行う場合の焼香方法です。自席から移動する際は腰を落とすのが一般的ですが、長い距離を移動するのであれば中腰で歩いても問題ありません。
座って焼香をする場合の手順・やり方
- 座ったままご遺族に一礼する
- 祭壇前に移動し、故人に挨拶をする
- 左手に数珠をもち、抹香を額の高さにおしいただいてから香炉の中に入れる
- 再度抹香をつまみ、今度はおしいただかずに香炉に落とす
- 合掌礼拝を行い、ご遺族に一礼してから自席に戻る
回し焼香の手順・やり方
回し焼香とは、お盆に乗せた抹香と香炉を参列者間で回して行うものです。自分で祭壇や焼香台に向かうという動作がないため、他の種類の焼香とはやり方が異なります。
回し焼香の手順・やり方
- 香炉が回って来たら、一礼して受け取る
- 自分の前に香炉を置き、故人の遺影に向かって礼をする
- 抹香をつまみ、額の高さにおしいただいて香炉へと落とす
- もう一度抹香をつまみ、今度はおしいただかずに香炉へ落とす
- 数珠をかけて合掌し、一礼して次の人へ香炉を渡す
曹洞宗の焼香に関するマナー

ここからは、曹洞宗の焼香に関するマナーを紹介します。
焼香は2回行うのが一般的
曹洞宗では、焼香を2回行うのが特徴です。一度目は抹香をつまみ、額の高さに上げておしいただいた後に香炉に入れます。二度目は抹香をおしいただかずにそのまま香炉へ落とします。この時、一度目よりも二度目の方がつまむ抹香の量が少なくなるように調節します。一般的にはこの手順で行われますが、参列者が多い場合は一度だけとアナウンスされることもあります。
焼香の際は数珠をかける
焼香を行う際は、手に数珠をかけるのが作法です。左手に数珠をかけて、右手を左手に添えるようにするのが曹洞宗の正しい数珠の持ち方です。
曹洞宗の葬儀の流れ

曹洞宗の葬儀では、他の宗派とは異なった流れが特徴です。ここからは、曹洞宗の葬儀の流れを解説します。
①剃髪
まず最初に僧侶が入場し、剃髪(ていはつ)と呼ばれる儀式を行います。剃髪とは仏門に入る際の準備として行われるものであり、僧侶が故人の頭に剃刀を当てて髪を切るふりをします。この時、僧侶は「剃髪の偈(げ)」と呼ばれる偈文を唱えます。
②授戒
授戒では、懺悔文(さんげもん)、酒水(しゃすい)、三帰戒文(さんきかいもん)、三聚浄戒(さんじゅうじょうかい)・十重禁戒(じゅうじゅうきんかい)、血脈授与(けちみゃくそうじょう)の五つを行います。これらを行うことで、故人が仏門に入る準備が整うとされています。
③入棺諷経
授戒が終わったら、入棺諷経(にゅうかんふぎん)を執り行います。入棺諷経とは、故人のご遺体を棺に納める際に香を焚いたり、僧侶がお経を読んだりするものです。すでに故人が棺に納められている場合は、僧侶によって回向文(えこうもん)が読み上げられます。この回向文を読んでいる間、参列者は焼香を行います。
④龕前念誦
続いて、龕前念誦(がんぜんねんじゅ)を執り行います。龕前念誦とは、故人が納められた棺の蓋を閉じる際に行われるものです。入棺諷経の際に唱えた回向文と、十仏名(じゅうぶつみょう)と呼ばれるお経を僧侶が唱えます。十仏名とは、仏法僧の三宝を念じるもので、一つの法と十体の仏様の名前が唱えられます。
⑤挙龕念誦
次に、挙龕念誦(こがんねんじゅ)を執り行います。挙龕念誦とは、故人を火葬する前に行われるもので、故人の成仏を願います。故人が穏やかに極楽浄土へと旅立てるよう、大宝楼閣陀羅尼(だいほうろうかくだらに)というお経を唱えながら鳴り物の音を響かせるのが特徴です。
⑥引導法語
引導法語(いんどうほうご)とは、故人の邪気や悩みなどを取り払うために行われるものです。僧侶が松明で円を描きながら、故人を悟りの世界へと導きます。松明は右回り、左回りの順番に円を描くように回し、払子(ほっす)と呼ばれるものを振って故人についている邪気を払います。その後、僧侶による読経が行われます。
⑦山頭念誦
山頭念誦(さんとうねんじゅ)とは、故人が悟りの世界へ辿り着けるように願うためのものです。山頭とは火葬場のことを指す言葉であり、葬儀場から火葬場に向かう際に行われます。山頭念誦では「修証義(しゅしょうぎ)」という経典が読み上げられます。
⑧出棺
全てが終了したら、僧侶が退場します。その後喪主は参列者に対して挨拶を行い、感謝の気持ちを述べます。挨拶をしてから参列者が故人とお別れをして、出棺となります。出棺の際に鳴り物を鳴らす鼓鈸三通(くはつさんつう)を行ったり、お経を読んだりすることもあります。
曹洞宗の葬儀に関するマナー

曹洞宗の葬儀では、香典や服装、数珠などのマナーに注意する必要があります。ここで紹介するマナーを踏まえた上で、葬儀に参列しましょう。
香典のマナー
曹洞宗の葬儀に参列する際は、弔意の表れとして香典を持参します。香典の相場は故人との関係や年齢によって異なるため、具体的な金額を前もって確認しておきましょう。また、包む金額によって使用できる香典袋の種類も異なります。
香典を用意する際は、新札ではなく古札を使うのが一般的です。新札で香典を用意すると「故人が亡くなることを前々から予想していた」という印象を与えかねません。「訃報に触れて慌てて香典を準備した」という意味になるよう、折り目やシワ、汚れなどが少ない古札を使いましょう。新札しか手元になく古札が用意できない場合は、新札に折り目を付けて対応します。
香典袋の表面には、入れたお金の用途を表す「表書き」を記載します。表書きは、薄墨の筆ペンや毛筆を使用して書きましょう。表書きの文字は四十九日前であれば「御霊前」、四十九日後であれば「御仏前」を使います。
服装のマナー
曹洞宗の葬儀では、喪服を着用するのが一般的です。参列者は、ご遺族よりも喪服の格式が高くならないよう準喪服を選びます。男性はブラックのジャケットとズボン、白無地のシャツを着用してください。靴は光沢のない素材の革靴を、靴下は模様や柄のない黒のものを選びましょう。ピアスやネックレスなどのアクセサリーは外しますが、結婚指輪は着用していても構いません。
女性は、黒のアンサンブルやワンピース、スーツなどを選びます。足元には黒のストッキング、光沢のない素材でヒールが高すぎないパンプスを着用してください。アクセサリーは結婚指輪もしくはパールのネックレスのみ着用可能です。ただし、二重のネックレスは「不幸が重なる」という意味になるため、必ず一重のものを選びましょう。
子供の場合、制服がある場合は制服を着用します。制服がない学校に行っている人や未就学児は、黒やグレー、ネイビーなどの落ち着いた色味のジャケットと白いシャツ、ズボンやスカートを着ます。女児の場合は、落ち着いた色味のワンピースでも構いません。
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数珠のマナー
曹洞宗の葬儀では、焼香や読経の際に数珠を使用します。数珠には持ち主を厄や魔から守るという役割があり、貸し借りは禁止されています。数珠を忘れてしまった場合でも、誰かから借りるのは避けましょう。葬儀が行われている間、数珠は左手に持っておきます。使わないときは畳や椅子、床に直接置かず、かばんの中にしまうようにしてください。
曹洞宗の葬儀に参列する際は焼香などのマナーを踏まえておきましょう

この記事のまとめ
- 曹洞宗とは日本三禅宗の一つであり、只管打坐や即心是仏などの教えが特徴
- 曹洞宗の焼香の手順ややり方は、立ち焼香・座り焼香・回し焼香によって異なる
- 曹洞宗では、焼香を2回行うのが一般的
- 焼香を行う際は手に数珠をかける
- 曹洞宗の葬儀は、剃髪、授戒、入棺諷経、龕前念誦、挙龕念誦、引導法語、山頭念誦、出棺の流れで行われる
- 曹洞宗の葬儀に参列する際は、香典や服装、数珠に関するマナーを守る
曹洞宗とは禅宗の一つであり、他の宗派と焼香の回数や手順などが異なります。また、葬儀の流れや行う儀式などにも特徴があります。曹洞宗の葬儀に参列する際は、本記事で紹介した焼香や参列マナーなどを踏まえておきましょう。

2006年に葬儀の仕事をスタート。「安定している業界だから」と飛び込んだが、働くうちに、お客さまの大切なセレモニーをサポートする仕事へのやりがいを強く感じるように。以来、年間100件以上の葬儀に携わる。長年の経験を活かし、「東京博善のお葬式」葬祭プランナーに着任。2023年2月代表取締役へ就任。