埋葬料と埋葬費の違いとは?保険給付に該当する条件や加入までの流れを紹介
親族が亡くなった時にはさまざまな手続きが必要になりますが、その中でも忘れてはいけないのが埋葬料の申請です。埋葬のための費用が健康保険組合から支給される制度で、葬儀にかかる費用負担を軽減するためにも積極的に利用したい制度です。本記事では、保険給付の条件や請求の方法について解説します。
埋葬料とは?
埋葬料とは、全国健康保険協会や共済組合などの健康保険組合に加入していた方が亡くなった際に支給される給付金のことです。故人と生計維持関係にあった方に支給されます。
似たような給付金で埋葬費や葬祭費などがあるため、違いが分からない方も多いでしょう。まず、それぞれの特徴について解説していきます。
埋葬料の支給金額
埋葬料は、一律5万円受け取れます。組合によっては付加給付がありますが、基本的な給付額は固定となっています。
埋葬費との違い
埋葬料と似た給付金として、埋葬費が存在します。こちらは、埋葬料を受け取るご遺族がいない場合に支給される給付金です。生計維持関係にない方が埋葬を行った際に支給されます。
支給額は上限5万円として、埋葬した際にかかった費用の実費が支払われます。埋葬費として請求できるのは、火葬代、霊柩車代、お坊さんへのお布施などです。それらを合算した金額を埋葬費として請求できます。
葬祭費との違い
葬祭費とは、国民健康保険に加入していた方が亡くなった際に、葬祭費の一部が支払われる給付金です。埋葬料が会社員や公務員が支給対象であるのに対し、葬祭費は自営業や個人事業主、75歳未満の年金受給者などが対象になります。
葬祭費の金額は1~7万円と幅があります。金額は市区町村によって違いがあるため、詳細は各市区町村に確認しましょう。
埋葬料の保険給付に該当する条件
埋葬料の申請をする際に、給付の対象なのか疑問に思う方もいるでしょう。ここからは、埋葬料の給付要件について解説します。
健康保険加入者と生計を共にしていた人
埋葬料は、健康保険加入者(故人)と生計を共にしていた方で埋葬を行う方に支給されます。夫婦関係や親子関係はもちろん、血縁関係がなかったとしても給付の対象となります。
また、生計の一部を共にしていた人も保険給付の対象です。たとえば、同居はしていないが仕送りをしていた場合でも給付要件に該当します。健康保険加入者が世帯主である必要もありません。
健康保険の資格喪失後に支給される条件
健康保険加入者が資格喪失後に亡くなった場合も、埋葬料の支給対象となることがあります。給付の対象となるのは下記に当てはまる場合です。
資格喪失後の給付要件
- 健康保険加入者が資格喪失後3ヶ月以内に亡くなった場合
- 健康保険加入者が資格喪失後に、傷病手当金もしくは出産手当金を受け取っている間に亡くなった場合
- 健康保険加入者が⒉の給付を受けなくなってから3ヶ月以内に亡くなった場合
埋葬料の申請方法
埋葬料は、健康保険加入者が亡くなった際に自動的に支給されるものではなく、ご遺族が埋葬料の申請をして受け取れるお金です。そのため、ご遺族は埋葬料の申請方法を知っておく必要があります。
ここからは、埋葬料申請の具体的な方法について解説します。申請先や申請にあたって必要な書類なども解説しますので、ぜひ参考にしてください。
埋葬料の申請先
埋葬料の申請先は、故人が生前に勤めていた企業で加入していた健康保険組合もしくは社会保険事務所です。申請書は、各組合のホームページからダウンロードできます。
申請書を記入したら、郵送もしくは各組合の窓口に持参します。場合によっては故人の勤め先が手続きを代行してくれることもあるため、手続きを始める前に勤め先へ確認しておくと安心です。
埋葬料の申請に必要な書類
埋葬料の申請には、申請書のほかに必要な書類があります。ここからは埋葬料の申請に必要な書類を解説しますので、これから手続きを始める方は参考にしてください。
埋葬料支給申請書
まず必要なのが、埋葬料支給申請書です。こちらは、各組合の公式ホームページからダウンロードできます。全国健康保険協会(協会けんぽ)では、手書き用のPDF様式と入力用のPDF様式があります。自宅にプリンターがないなどデータ上での入手が難しい場合は、各組合の窓口で直接入手することも可能です。
故人の健康保険証
埋葬料は社会保険に加入している方が受け取れる制度なため、申請にあたり故人の健康保険証が必要になります。健康保険証のコピーではなく、原本を各組合に返納します。返納後は戻ってこないため、健康保険証を必要とする手続きをすませてから返納するとよいでしょう。
故人の死亡が確認できる書類
埋葬料の申請には、故人の死亡を確認できる書類が必要です。こちらは、埋葬許可証や火葬許可証のコピー、死亡診断書のコピー、故人の戸籍(除籍)謄本、住民票の除票などが該当します。
埋葬許可証や火葬許可証は、死亡届を提出した際に受け取れます。これらは、原本を送ってしまうと葬儀や埋葬時に困ってしまうため、コピーで対応するようにしてください。死亡が確認できる書類は、上記のいずれかが揃っていれば問題ありません。
生計維持を確認できる書類(被扶養者以外の別居の家族が申請する場合)
被扶養者以外の別居の家族が申請する場合は、定期的な仕送りの事実がわかる預貯金通帳や現金書留の封筒の写し、亡くなられた被保険者が申請者の公共料金等を支払ったことがわかる領収書の写し等が必要です。 生計維持を確認できる書類がない場合は、埋葬費の請求となります。
埋葬料が支給されるタイミング
埋葬料は申請をしてから、2~3週間ほどで支給されます。銀行振り込み扱いとなり、現金での支給はできません。振込先を故人の口座に指定してしまうと凍結されて引き出せない恐れがあるため、受取人の口座を振込先にしましょう。
なお、国民健康保険の被保険者に支給される葬祭費は、申請後1~2ヶ月後の振り込みとなることが多いです。埋葬料とは支給までに要する期間が異なるため、注意しましょう。
埋葬料の申請期限
埋葬料を受給するためには、期限内に申請をする必要があります。埋葬料の申請期限は、健康保険加入者が亡くなった日の翌日から2年以内とされています。期限を過ぎると受給できなくなるため、注意してください。
また、故人と生計を共にしていなかった人が受け取る埋葬費は、埋葬した日の翌日から2年以内となっています。埋葬料とは申請期限が異なるため、間違えないよう注意しましょう。
埋葬料に関する疑問
ここからは、埋葬料に関連する疑問にお答えしていきます。
直葬でも支給対象になるのか?
埋葬料は葬儀の形態に関わらず、申請すれば支給されます。お通夜や告別式を行わず直葬で対応した場合でも埋葬料の支給対象となります。
埋葬料と葬祭費は両方受け取れるのか?
埋葬料と葬祭費の両方を受給することはできません。加入していた保険の種類によってどちらか一方のみを受け取ることになります。
埋葬料は相続税がかかるのか?
故人から相続した財産には相続税がかかりますが、埋葬料には相続税はかかりません。これは、埋葬料は故人の財産ではなく埋葬を行ったご遺族に支給されるためです。
また、ご遺族が相続放棄をしていたとしても埋葬料の請求は可能です。
埋葬料は確定申告が必要なのか?
埋葬料は所得税の対象にはならないため、確定申告をする必要はありません。実際にかかった埋葬費用よりも支給された埋葬料の方が多かったとしても、プラスになった金額を申告する必要はありません。
埋葬料以外に受け取れる給付金
ご家族が亡くなった際には、埋葬料以外にも受け取れる給付金があります。自動的に振り込まれるのではなく申請が必要な場合がほとんどですので、どのような給付金があるのか事前に把握しておきましょう。
遺族年金
遺族年金とは、国民年金や厚生年金の被保険者が亡くなった際に、故人の配偶者や子に支給される給付金です。国民年金に加入していた方には遺族基礎年金が支払われ、厚生年金に加入していた方には遺族厚生年金が支払われます。どちらか一方だけが受け取れる場合もあれば、年金の納付状況によっては両方受け取れる場合もあります。
遺族年金を受け取るためには、年金請求書や年金手帳などの必要書類を用意して提出する必要があります。年金請求書は、お近くの年金事務所や年金相談センター窓口で受け取れるほか、日本年金機構のホームページからもダウンロードできます。
死亡一時金
死亡一時金は、故人と生計を共にしていたご遺族に支払われる給付金です。国民年金第1号保険者として3年以上保険料を納めていることが支給条件になります。
死亡一時金を受け取るには、国民年金死亡一時金請求書をお住まいの市区町村役場、もしくは年金事務所や年金相談センターに提出する必要があります。国民年金死亡一時金請求書は、遺族年金と同じく日本年金機構のホームページからダウンロードできます。
寡婦年金
寡婦年金は、故人と10年以上に渡り婚姻関係があり、死亡時に生計を共にしていた妻に対して支払われる給付金です。国民年金第1号被保険者として10年以上保険料を納めていたことに加え、子供のいないことが支給条件になります。支給期間は妻が60歳から65歳の間です。
寡婦年金を受け取る場合にも申請が必要です。年金請求書や戸籍謄本などの必要書類を用意し、住まいの市区町村役場や年金事務所などに提出をしましょう。
埋葬料の仕組みを把握して遺族の負担を軽減しましょう
この記事のまとめ
- 埋葬料は、健康保険組合に加入していた方が亡くなった時に故人と生計を共にしていたご遺族に支払われる給付金
- 埋葬料の支給額は一律5万円で、組合によっては付加給付がある
- 埋葬料は自動的に支給されるものではなく、埋葬料の申請が必要
- 申請期限は、健康保険加入者が亡くなった日の翌日から2年以内
- 埋葬料は相続税の対象外で、確定申告は必要ない
埋葬料を受け取るには、埋葬料支給申請書をはじめとした必要書類を用意し、故人が加入していた健康保険組合に提出する必要があります。請求期限は2年以内ですので、余裕をもって申請するようにしましょう。
また、埋葬料と合わせて遺族年金や死亡一時金なども受け取れる場合があるため、ご自身が条件に当てはまるか確認をしてみてください。