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健康・カラダのこと

老老介護とは?増加の原因や問題解決のために利用できる制度を紹介

老老介護とは?増加の原因や問題解決のために利用できる制度を紹介

老老介護とは、高齢者が高齢者を介護する状態のことです。本記事では、老老介護の問題について具体的に解説します。増加の原因や、問題解決のために利用できる制度も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

監修者 SUPERVISOR
社会福祉士/介護福祉士/ケアマネジャー/福祉住環境コーディネーター2級 長谷部 宏依

介護職員として介護老人保健施設に勤務。
ケアマネジャー取得後は、在宅で生活する高齢者や家族をサポートする。
現在はWebライターとして、介護分野に関する記事を中心に執筆している。

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老老介護とは

老老介護とは、65歳以上の高齢者が同じく65歳以上の高齢者を介護する状況のことです。高齢化社会の進展にともない長寿の方が増え、老老介護が急増しています。80代の妻が認知症の夫の介護を行ったり、70代の夫婦が互いの健康状態を気遣いながら暮らしを送ったりする事例が増えています。

老老介護は介護する側とされる側の双方に大きな負担がかかるため、社会全体で支援していく必要がある問題です。

老老介護が増加している原因

そもそも、老老介護はどのような背景で増加しているのでしょうか。まずは、老老介護の主な原因を解説していきます。

高齢化社会の進展

高齢化は、老老介護が増加している要因の一つです。内閣府による2020年の統計では、65歳以上の人口が全体の28.8%を占めており、この割合は今後も上昇すると予測されています。

特に地方の過疎地域では若者の流出により高齢化がさらに進んでおり、長寿の方が増えていることもあり老老介護は珍しくない状況です。高齢化は今後も続くと予想されているため、老老介護の問題はさらに深刻化する可能性があります。

令和3年度 高齢社会白書(概要版)(内閣府)

平均寿命と健康寿命の期間の変化

平均寿命の延伸も、老老介護を増加させています。日本人の平均寿命は延びていますが、健康寿命との差が開いているため、介護を必要とする期間が長くなっています。厚生労働省による2019年の統計では、日本人の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳で、健康寿命はそれぞれ72.68歳、75.38歳です。

この平均寿命と健康寿命の差が、高齢者が高齢者を介護する期間を生み出しています。75歳の夫が80歳の妻を10年以上介護するような場合も珍しくありません。

e-ヘルスネット 平均寿命と健康寿命 (厚生労働省)

高齢者世帯の増加

高齢者世帯の増加も、老老介護を増加させている原因です。若い世代が都市部に移住し、高齢の親が地方に残る場合が増えているため、高齢の親同士で介護をせざるを得ない状況が生まれています。

例えば、子供たちが東京で働く中、地方に残った80代の両親が互いの面倒を見合うような事例です。高齢者世帯の増加の傾向は今後も続くと予想され、老老介護の問題解決には地域社会全体での支援が不可欠となっています。

他人に相談することの抵抗

介護の問題を他人へ相談することに抵抗を感じる方が多く、問題が深刻化するまで外部の支援を求めない場合も少なくありません。例えば、近所の目を気にして介護サービスの利用を躊躇する高齢者や、「家族の面倒は家族で見るべき」という考えから外部の助けを拒む場合があります。

親族にさえも、介護の状況を相談していないという人も多いです。この価値観を変えていくことが、老老介護の問題を軽減する一つのポイントとなるでしょう。

金銭的な問題

経済的な問題も、老老介護を増加させている理由です。介護サービスの利用や施設入居には費用がかかるため、年金だけで暮らしている高齢者にとっては、外部サービスの利用をためらう要因となっています。経済的支援や介護保険制度の充実が、老老介護の負担軽減につながる可能性があります。

老老介護の問題点

老老介護には、介護者の体力や精神的な負担などの問題があります。ここからは、老老介護の主な問題点について、詳しく解説していきます。

体力の負担が大きい

老老介護は、高齢である介護者の身体に大きな負担をかけます。また、転倒や腰痛などのリスクが高まります。

75歳の夫が80歳の妻を抱え上げて入浴介助を行うような場合では、介護者自身が怪我をする恐れもあります。介護者の身体的負担を軽減するためには、適切な介護技術の習得や介護サービスの利用、福祉用具の活用が重要です。

精神的に大きな負担となる

老老介護は、介護者に大きな精神的ストレスをもたらします。24時間体制の介護は、精神的に大きな負担となり、介護うつや虐待の可能性も出てくるでしょう。

認知症の配偶者を介護する高齢者が、睡眠不足や社会的孤立により精神的に追い詰められる場合も多くあります。老老介護の解決には、介護者の精神的な支援やレスパイトケア(一時的な休息)の機会の提供が必要です。

社会的つながりが減る

老老介護は、介護者の社会的孤立を引き起こします。介護に時間を取られることで、外出の機会が減り、社会との接点が失われてしまいます。社会的つながりの減少は、介護者の生活の質を著しく低下させる要因となるでしょう。

例えば、介護が要因で趣味の活動や友人との交流を諦めて、家に引きこもりがちになる高齢介護者が多く見られます。介護者の社会参加を促進し、地域コミュニティとのつながりを維持することが重要です。

老老介護の問題解決のために利用できる制度

老老介護の解決には、ひとりで抱え込まずにさまざまな制度を利用することが有効です。ここからは、老老介護になったときに利用できるサービスを紹介します。

地域包括支援センターを利用する

地域包括支援センターは老老介護の問題解決に有効です。地域包括支援センターは高齢者の総合相談窓口として、介護に関する情報提供や適切なサービスの紹介を行っています。

地域包括支援センターは全国に約5,400か所設置されており、専門職が常駐しています。介護サービスの利用方法が分からない方や、認知症の疑いがある家族の対応に悩む方などの相談が可能です。

地域包括支援センターを活用することで、老老介護の負担を軽減し、一人ひとりが適切な支援を受けられます。早期に相談することで、問題の深刻化を防げるでしょう。

地域包括支援センターについて (厚生労働省)

介護サービスを利用する

老老介護の解決には、介護サービスの利用が有効です。要介護認定を受けていれば、簡単に介護サービスを利用でき、負担を軽減できるでしょう。具体的にどのようなサービスを受けられるのか、以下にて解説します。

訪問介護

訪問介護とは、高齢者の自宅にヘルパーが訪問して介護を行うサービスです。ヘルパーが自宅を訪問し、食事や入浴、排せつなどの日常生活の支援を行います。介護保険制度を利用することで、比較的低コストでサービスを受けられます。

例えば、夫が寝たきりの妻の介護をする場合、週に数回ヘルパーが訪問して入浴介助や食事介助を行うことで、夫の負担を大きく軽減できます。訪問介護を利用することで、高齢の介護者の身体的・精神的負担を減らし、在宅介護を継続しやすくなるでしょう。

▶在宅介護についてさらに詳しく知りたい方はこちら

デイケア・デイサービス

デイケア・デイサービスとは、通所リハビリとも呼ばれ、施設に入所せず通って利用できる介護サービスです。要介護者が日中施設で過ごすことで、介護者は休息の時間を確保できます。入浴や食事、レクリエーションなどのサービスを受けられ、要介護者の心身機能の維持・向上にも役立ちます。

例えば、認知症の夫を介護する妻が、週3回デイサービスを利用することで、自分の時間を持ち、ストレス解消や社会参加の機会を得られるでしょう。デイケア・デイサービスの利用は、介護者と要介護者双方のQOL(生活の質)向上につながります。

▶デイケア・デイサービスをさらに知りたい方はこちら

ショートステイ

ショートステイとは、要介護者が短期間施設に宿泊することで、介護者は休息をとったり、急な用事に対応したりできるサービスです。

妻が夫を介護している場合、月に1週間ショートステイを利用することで、妻は十分な休養をとり、自分の健康管理や趣味などに時間を使えます。ショートステイの定期的な利用は、介護者の燃え尽き症候群を予防し、長期的な在宅介護の継続を可能にするでしょう。

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介護施設へ入居する

老老介護に限界を感じた際には、介護施設への入居をおすすめします。ただし、要介護者の要介護度や年齢などで入居できる介護施設が異なるため注意しましょう。以下にて、主な介護施設についてそれぞれ具体的に解説します。

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームとは、重度の要介護者のための介護施設です。常時介護が必要な方に向けた施設で、原則として要介護3以上の方が対象となります。24時間体制の介護や、医療的ケアが提供されます。

例えば、身体機能が低下し、常時介護が必要な90代の親を70代の子が介護している場合などに、特別養護老人ホームへの入居がおすすめです。特別養護老人ホームの利用により、老老介護の負担を大幅に軽減し、高齢の介護者自身の生活の質を向上できます。ただし、入居待ちの状況が続いているため、早めの申し込みが必要な点には注意してください。

▶要支援・要介護認定についてはこちら

介護老人保健施設

介護老人保健施設とは、リハビリテーションを中心としたケアを提供する介護施設です。在宅復帰を目指す方に適しており、医療的ケアと生活支援を受けられます。

例えば、脳卒中後のリハビリが必要な80代の夫を、同じく80代の妻が介護している場合、一時的に介護老人保健施設を利用することが考えられます。介護老人保健施設の利用によって、専門的なリハビリを受けながら、高齢の介護者の負担の軽減が可能です。在宅復帰を目指しつつ、老老介護の負担を軽減する選択肢として有効でしょう。

有料老人ホーム

有料老人ホームとは、さまざまなニーズに対応できる民間の介護施設です。サービスの内容や料金は介護施設によって異なり、比較的自立度の高い人から要介護者まで幅広く対応しています。

利用例としては、70代の夫婦が互いの健康に不安を感じ始めたときに、将来の介護に備えて入居を検討する場合が考えられます。有料老人ホームの利用により、専門的な介護や医療的ケアを受けられるため、老老介護の負担が軽減できるでしょう。

サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅とは、比較的自立した暮らしが可能な高齢者向けの住宅です。バリアフリー設計の住宅で、安否確認や生活相談などの基本的なサービスが付いています。

サービス付き高齢者向け住宅の利用により、プライバシーを保ちながら必要な支援を受けられます。老老介護の予防や、軽度の介護が必要になった際の受け皿として有効な選択肢です。

老老介護になったら介護サービスの利用を検討しましょう

この記事のまとめ

  • 老老介護とは、高齢者が高齢者の介護をすること
  • 老老介護が増えている原因には、社会の高齢化や平均寿命と健康寿命の差が大きいこと、周りに頼れないといった問題がある
  • 老老介護の問題点は、介護者の身体的・精神的な負担が大きいこと
  • 老老介護の負担軽減には、地域包括支援センターや介護サービスの利用が効果的

長寿の方が増えたことなどが要因で、老老介護も増えてきました。老老介護の負担軽減には、早期の介護サービスの利用が不可欠です。介護保険制度を活用することで、比較的低コストでさまざまなサービスを利用できます。

ひとりで抱え込まず、社会の支援を積極的に活用することで、老老介護の負担を軽減し高齢者が互いに支え合いながら尊厳ある暮らしを送ることができます。ためらわずに専門家のアドバイスを求め、適切なサービスを利用しましょう。

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