「仏花」と「墓花」の違いとは?お供えに適した花の選び方とマナーを徹底解説
先祖や故人へのお供えの花を探している際に、「仏花(ぶっか)」や「墓花(はかばな)」という言葉を目にしたことがある方は多いでしょう。仏花と墓花は両方とも供花ですが、お供えする対象に違いがあります。本記事では、仏花と墓花の違いや、お供えに適した花の選び方、注意したいマナーなどについて分かりやすく解説します。
仏花と墓花の違い
仏花と墓花は、どちらも供花であり似た存在ではありますが、厳密にはそれぞれ意味が違います。
それぞれの違いを理解しておくと、例えば花屋などで供花を探している際にも「仏花(または墓花)を購入したいのですが」と両者を使い分けられるため便利です。まずは、仏花と墓花の違いについて詳しくみていきましょう。
仏花と墓花のそれぞれの意味
仏花と墓花は、どちらもお供え用の花という点では同じです。しかし、仏花は「仏壇にお供えする花」、墓花は「お墓にお供えする花」であり、厳密にはそれぞれ「お供えする対象」に違いがあります。
仏花は「先祖や故人にお供えする花」という意味で使われることもあるため、この意味の場合には墓花も仏花に含まれます。しかし、花屋では仏花と墓花をしっかりと区別して販売していることが多いです。
一般的に花屋では、茎の長さを仏花は仏壇の花立ての深さを考えてやや短め、墓花は同じくお墓の花立ての深さからやや長めに販売しています。
花の種類や値段の違いはある?
仏花・墓花としてお供えする花に厳密な決まりはないため、種類の違いはありません。値段も特に決まりや違いはありませんが、仏花よりも墓花の方が飾るスペースが広いため、仏花と比べて花の本数を多く用意する場合には、墓花の方がやや値段が高くなることもあるでしょう。
また、仏花と墓花の違いを探すのであれば、供える花の自由度にも違いがあります。
仏花は自宅の仏壇にお供えする花であり、弔問が落ち着いてからは家族のみが目にすることが多いため、好きな花を自由に選びやすいです。
一方、墓花は寺院や霊園に供えるので、親族や知人などの参拝者の目にも触れやすく、配慮して花を選ぶ必要があります。
また、墓前に供える墓花は、風や動物など外部の影響を受けやすいこともあり、基本的には花立てに花束を供えるスタイルです。一方、仏花は外部の影響が少ないことから、花束ではなくかごや陶器などの器に花が生けられたアレンジメントをお供えすることもあります。
仏花・墓花のおすすめの選び方
基本的に、仏花と墓花の花の種類に決まりはないため、故人を想って選んだ花であれば何でもお供えできます。しかし、初めて花をお供えするという方は、どのような花を選べばよいか分からないこともあるでしょう。このような場合は、以下の選び方を参考に仏花や墓花を選んでみてください。
故人の好きな色・種類の花
仏花と墓花は、どちらも故人を想ってお供えする花です。そのため、どのような花を選ぶべきか迷ったときには、故人の好きな色や種類の花をお供えするのがおすすめです。
花を選んでいる最中も、「いつもこの色の服を着ていたっけ」「外にでかけるたびに、この花が咲いていたら喜んでいたな」など、故人に思いを馳せることができ、いつもより深く故人を考えるひとときになるでしょう。
季節の花
日本には四季があり、季節ごとにさまざまな花が咲きます。季節の訪れを仏花・墓花で故人に伝えられるため、いつもと違う花を選びたくなったときは季節の花を供えてみてはいかがでしょうか。
季節の花は、故人だけでなくお参りに来てくれた参拝者の心も癒してくれます。
長持ちする花
手間や費用を考えても、花はできるだけ長く美しく咲いて仏壇やお墓を彩っていてほしいものです。そのため、長持ちする花は特におすすめです。
特に、墓花は頻繁に手入れすることが難しいため、長持ちする花を積極的に選びたいところです。花屋で「墓前にお供えするので、長持ちする花を探しているのですが」などと伝えると、おすすめの候補を教えてくれるでしょう。
仏花・墓花としてお供えするのに人気の種類
仏花や墓花として人気の花には、菊・カーネーション・スターチス・トルコキキョウ・カスミソウなどがあります。ここからは、それぞれの花の特徴やおすすめの理由について解説します。
菊
皇室の紋章としても使われている菊は、伝統的なデザインの仏壇やお墓とも相性のよい高貴な花です。枯れても花びらが落ちにくく、花が長持ちすることから仏花・墓花として人気があります。
菊は種類もかなり豊富です。厳かな雰囲気のある大菊だけでなく、「マム」という名前で呼ばれる可愛らしい見た目の洋菊などさまざまで、故人にどれを供えようかと選ぶ時間も楽しいでしょう。仏壇やお墓の雰囲気に合わせたり、故人に喜ばれそうなものを選んでみてください。
カーネーション
母の日に贈られることの多いカーネーションは、葬儀にもよく使われる花です。その華やかな見た目と花が長持ちすることで、仏花や墓花としてもよく選ばれています。
特に、白いカーネーションは「亡くなった母に送る花」といわれることもあり、故人に供える花としてぴったりです。母の日には赤いカーネーション、父の日には黄色いカーネーションを送ることが定番にもなっているため、それらの日には赤や黄色のカーネーションを供えてもよいでしょう。
スターチス
スターチスは、水分量が少ないこともあり長持ちする花です。添え花的存在であり、花束全体をボリュームアップさせ華やかにします。
花のように見えるスターチスの紫やピンクなどの色づいた部分はガクであり、本当の花は中心に咲く白くて小さな部分です。枯れると本来の白い小花の部分は無くなってしまいますが、ガク部分は色褪せにくいため、日が経っても美しい見た目を維持できます。
トルコキキョウ
清楚で可憐な見た目のトルコキキョウは、長持ちしやすく暑さにも強いため、仏花や墓花としてよく選ばれている花です。
一重咲きは、キキョウのような見た目で落ち着いた印象を受けるため、少し華やかさを抑えて上品な花束を作りたいときにおすすめです。八重咲きやフリル系は、まるでバラのように華やかな印象があるため、目を引く花束をお供えしたいときにおすすめです。
カスミソウ
カスミソウは花が長持ちし、ふわふわとした見た目の可愛らしさもあって仏花や墓花として人気の種類です。枯れても見た目に大きな変化が無いため、お墓参りに頻繁に通えない場合でも気軽に供えられます。
カスミソウの花言葉には、「清らかな心」や「感謝」などがあります。いつでも清らかな心で人と関わった故人へ向けたり、これまでお世話になったお礼を伝えるためにカスミソウをお供えしてみたりするのもよいです。
仏花・墓花としてお供えするのは避けた方がよいとされる種類
仏花・墓花に厳密なルールはなく好きな花をお供えできますが、一般的にお供えするのを避けた方がよいとされている種類の花もあります。
特に、年配の方などはこれらの花をお供えすることに違和感を覚える方もいます。仏壇やお墓はお参りする方全員にとって大切な存在のため、特に理由がない場合には以下の花は避けた方がよいでしょう。
毒・トゲのある花
毒・トゲのある花は、「死やケガを連想させる」ことや「仏様やご先祖様に毒を供えることになる」、「お参りする方に危険を及ぼす恐れがある」ことから、仏花・墓花としてお供えしない方がよいとされています。
毒のある花は彼岸花や水仙、トゲのある花としてはバラが代表的です。トゲのある花に関してはトゲを取り除けばお供えできるため、故人が好きだったなど特別な理由がある場合にはトゲを除去してお供えしましょう。
ツル性の花
クレマチスや朝顔などのツル性の花は、成長すると墓石などに巻き付いてしまうことから避けた方がよいとされている花です。自分たちのお墓だけでなく他家のお墓にツルが伸びて巻きついてしまい、トラブルを起こしてしまう可能性もあります。
墓前に供えると上述の心配がありますが、自宅の仏壇であればこれらの心配はないため、故人が好きだった場合には仏花として供えてもよいでしょう。
花粉の落ちやすい花
ユリやポピーをはじめとする花粉の落ちやすい花は、花粉が墓石や参拝者の服に付くとシミになってしまうことから避けた方がよいとされています。
それでもお供えしたい場合には、事前に花粉を取り除いてから飾ることで対処が可能です。墓石や服を汚さないためにも、お供えする場合はひと手間加えることが大切です。
香りの強い花
ユリやキンモクセイなど香りの強い花は、甘い香りに誘われて虫が寄ってくることや線香の香りを邪魔するため、避けられる傾向にあります。
特に、キンモクセイは強い香りを放つため、墓地であれば自分のお墓以外にも香りが及ぶ恐れがあります。どうしてもお供えしたい場合は、仏花として自宅の仏壇に供えるとよいでしょう。
仏花・墓花におけるマナー
普段リビングなどに飾る花とは違い、仏花・墓花には意識しておきたい供え方のマナーがいくつかあります。仏壇やお墓に花をお供えすることに慣れていない方や、大切な故人や先祖の仏壇のお参り・お墓参りに行く方はぜひ参考にしてみてください。
お供えの花は左右対称に飾る
仏壇とお墓は、どちらも両端に一つずつ花立てがあります。そのため、仏花や墓花をお供えする際は、左右対称になるように種類・色・本数を揃えた花束を一対用意して飾ります。
左右対称に飾るのは、「極楽浄土を表すため」「仏壇やお墓の見栄えをよくするため」などといわれています。故人や参拝者に喜んでもらうためにも、ぜひ意識してみてください。
故人の四十九日までは白を基調とした花をお供えする
故人の四十九日があけるまでは、白を基調とした花を仏花・墓花としてお供えすることもマナーとなっています。これは白が清らかさを表す色であり、故人への敬意を示すことができると考えているためです。四十九日があけたら、黄色や紫、赤、ピンクなどの鮮やかな色の花を加えて華やかにするとよいでしょう。
仏花・墓花についての厳格なマナーはないため、こちらについても必ず守らなくてはいけないマナーではありません。しかし、自分の家族以外の仏壇のお参りやお墓参りでお供えする場合には配慮が必要です。
造花をお供えする際には参拝者に配慮する
いつまでも枯れることなく仏壇やお墓を綺麗に彩ってくれる造花は、頻繁に仏花・墓花の手入れができない場合に役立ちます。
しかし、「仏花・墓花には生花をお供えするべき」という意見を持つ方もいらっしゃるため、造花をお供えする際は事前に親族などに相談してから供えるようにしましょう。
大切なのは、花をお供えしたいという気持ちです。故人のことを想って造花を選んだのであれば、造花をお供えしてもマナー違反にはあたりません。関係者に了承を得られた場合には、素敵な造花を飾って仏壇やお墓を華やかに彩ってみてはいかがでしょうか。
常に生花や造花のどちらか一方をお供えするのではなく、多くの参拝者が訪れる時期には生花、そうでない時期には造花を使用するなど、場合によって使い分けるのもおすすめです。
仏花と墓花はお供えする対象の違いであり花の種類に違いはありません
この記事のまとめ
- 仏花は「仏壇にお供えする花」、墓花は「お墓にお供えする花」であり「お供えする対象」に違いがある
- 仏花・墓花としてどのような花を選ぶか迷ったときには、①故人の好きな色・種類の花②季節の花③長持ちしやすい花から選ぶのがおすすめ
- 仏花・墓花としてお供えするのに人気の種類には、①菊②カーネーション③スターチス④トルコキキョウ⑤カスミソウなどがある
- 仏花・墓花として避けた方がよいとされる種類には、①毒・トゲのある花②ツル性の花③花粉の落ちやすい花④香りの強い花などがある
- 仏花・墓花におけるマナーには、①お供えの花は左右対称に飾る②故人の四十九日までは白を基調とした花をお供えする③造花をお供えする際には関係者に配慮するなどがある
仏花と墓花はどちらも供花であり混同されやすいですが、お供えする対象に違いがあります。お供えする花の種類や色などの違いはなく、故人を想って選んだ花であれば基本的にはどのような花もお供えして構いません。 本記事を参考に、故人に思いを馳せて花を選んでみてください。