終活でかかる費用はいくら?項目ごとの金額目安とお金の準備方法を解説
近年、自分の残りの人生や最期の迎え方について準備する終活が注目を集めており、実際に終活を行っている方も増えています。しかし、そもそも何をすればよいのか、どのくらいの費用がかかるのかなど、終活について疑問を抱いている方も多いでしょう。そこで本記事では、終活で行うことと、その費用相場を紹介します。
終活とは?
終活は、大きく分けて二つの目的で行われます。一つ目は「残りの人生のための準備」、二つ目は「自分が亡くなった後のための準備」です。ここでは、それぞれの目的別に、するべきことや、どのようなことに費用がかかるのかを解説します。
残りの人生のための準備
まず、残りの人生のための準備として、生前整理を行います。生前整理は身の回りの不要なものを処分・整理することを指し、自分の残りの人生に必要なものは何か、何を大切にしていきたいのかを考えるきっかけになります。
方法としては、自分ひとりで行う・家族に手伝ってもらう・業者に依頼するといったパターンがありますが、どの場合でもある程度の費用が必要です。
また、医療や介護にかかる費用について考えておくことも大切です。残りの人生、いつまでも健康でいられるとは限りません。老後は病院にかかる機会が増える傾向にあるため、医療費や介護費の備えをしておきましょう。
残りの人生のための終活
- 生前整理
- 医療・介護に備える
自分が亡くなった後のための準備
終活では、自分が亡くなった後のことを考えた活動も重要です。たとえば葬儀やお墓などはさまざまな形式・種類があるため、自分の希望や意向を固め、事前に伝えておきましょう。その費用に関しても自分で準備しておけば、残された家族の金銭的負担を減らせます。
また、終活を行う上では遺産や相続の準備も大切です。自分が亡くなってから家族が揉めることのないように、できるだけ遺品の処分や相続について決めておきましょう。弁護士や司法書士に手続きを依頼する場合は、その費用が必要となります。
自分が亡くなった後のための終活
- 葬儀やお墓の準備
- 遺産や相続についての手続き
終活の生前整理にかかる費用の目安
上記の章で解説したように、終活をするにあたっては費用が必要な場合もあります。まず、生前整理にかかる費用の目安を紹介します。
一般的な費用相場
生前整理は、自分で行う場合・家族で行う場合・業者に依頼する場合によって、それぞれかかる費用は異なります。所有物の量が少なく大型のものがない場合は自分ひとりで行えるため、粗大ゴミの回収などにかかる費用など(数百円~数千円程度)ですむでしょう。
家族の助けが必要なほど所有物が多い場合は、不用品を搬出する際にトラックのレンタル料がかかる可能性もあります。車種や利用時間によって料金は異なりますが、6千円~3万円程度はかかるとみておきましょう。また、粗大ごみをゴミ処理場に持ち込む際は、重量に応じたゴミ処分費がかかります(料金は自治体ごとに異なる)。
また、生前整理を業者に依頼する場合は、一般的に部屋の広さによって費用が異なることが多いです。加えて、所有物の量が多くなると必要な作業時間や人員、車両数も増えるため、費用相場よりも料金が高くなります。
生前整理を自分で行う場合の費用相場
- 粗大ゴミ回収費用:数百~数千円程度
生前整理を家族に手伝ってもらう場合の費用相場
- 車両レンタル料金:6千円~3万円
- 粗大ゴミ処理料金:自治体ごとに異なる
生前整理を業者に依頼する場合の費用相場
- 1K/1R:3.5万円〜
- 2LDK:13万円〜
- 4LDK以上:22万円~
オプションの費用相場
生前整理を業者に依頼した際は、不用品の処分以外にオプションサービスを追加できる場合があります。例えば、デジタル情報の整理や財産目録の作成サポートです。
近年はインターネットが広く普及し、さまざまなサービスを利用している方も多いはずです。そこで、必要性が高まっているのがデジタル情報の整理です。生前整理でのオプションサービスとしては、ログインパスワードの解除やSNSアカウントの削除、データの移管といったことを依頼できます。
また、財産目録の作成サポートのオプションもおすすめです。財産目録とは、一時点において、保有するすべての資産(土地、建物、現金、預金等)とすべての負債(借入金等)について、その区分、種類ごとに一覧にし、財産状況を明らかにしたリストのようなものです。終活で生前整理する際に、資産や負債を分かりやすくまとめておくことはとてもおすすめです。
自分で作ることも可能ですが、財産が多い場合は専門家に依頼したほうがよいでしょう。生前整理業者は財産目録についてアドバイスしてくれたり、提携している弁護士や司法書士、行政書士を紹介してくれたりすることもあります。
専門家を紹介してもらう場合は、生前整理のセット料金には含まれないため別途費用が発生します。また、弁護士よりも司法書士や行政書士に依頼するほうが安い傾向にあるようです。
デジタル情報に関する費用相場
- パソコン本体廃棄:8千円程度
- パソコン内の写真データ取り出し:8千円程度
- パソコン内の動画データ取り出し:1万2千円程度
- パスワード解除:2万円〜3万5千円程度
- パソコンの初期化:2万円程度
- インターネット上のID/PASSの調査費:1万5千円程度
- スマートフォン等パスワード解除費:2万円程度
財産目録の費用相場(財産調査費は別途必要になる場合がある)
- 弁護士:5万円~10万円程度
- 税理士:3万円~10万円程度
- 司法書士、行政書士:2万円~7万円程度
終活の医療・介護にかかる費用の目安
終活では、老後に必要となる医療や介護の費用について考えておくことも大切です。ここからは、医療と介護にかかる費用の目安を紹介します。
医療費の目安
健康保険法等の一部を改正する法律により、令和4年10月1日から、現役世代の負担軽減と国民皆保険の存続を目的に、一定以上の所得がある75歳以上の医療費の窓口負担割合が1割から2割に変更されました。該当する人は医療費の負担が増える可能性があります。
また、令和元年の調査では、生涯かかる医療費が2,800万円で、その半分が70歳以降にかかるといわれています。すべての人が同じように医療費がかかるわけではありませんが、終活の際にある程度の費用は備えておいた方がよいでしょう。
介護費の目安
終活で残りの人生を考える上で、介護費は欠かせないものといえます。令和元年時点で、日常生活に制約のない期間とされる健康寿命は、男性が72年、女性は75年です。平均寿命は男性が81年、女性は87年となっていることから、約10年間は日常生活に何らかの支障が出てしまうと考えられます。
また、令和4年の内閣府の調査によると、65~74歳の要支援は1.4%、要介護は2.9%であるのに対して、75歳以上の要支援は8.8%、要介護は23.1%という結果が出ています。このことから、75歳以上になると、要介護認定を受ける人の割合が上昇することが分かります。
介護保険サービスを利用する場合の負担は、かかった費用の1割です(一定以上の所得がある場合は2割または3割)が、介護保険施設を利用する際には、その他に住居費・食費・日常生活費が必要になります。居宅サービスを利用する場合、支給限度額が要介護度別に定められており、超えた分は全額自己負担になります。
さらに、高額介護サービス費は令和3年8月から負担限度額が見直されています。例えば、世帯所得の課税所得380万以上の場合、負担額は月額44,000円から93,000円と大きく増加しているのです。介護に関する負担額は今後も増える可能性があるため、介護費用はしっかり用意しておいた方がよいでしょう。
終活の葬儀・お墓にかかる費用の目安
ここまでは、残りの人生のために行う終活の費用の目安を紹介してきましたが、終活では自分が亡くなった後の費用について考えることも大切です。残された家族になるべく負担をかけないように、葬儀やお墓にかかる費用も終活を通して備えておきましょう。
葬儀費用の目安
経済産業省が過去に行った調査によると、葬儀費用の全国平均は140万円程度です。しかし、葬儀形式はさまざまあり、規模の大きさによっても費用は大きく異なります。例えば、一般葬の費用相場は100万円~200万円程度で、家族葬であれば60万円~150万円程度です。
ただし、これらは葬儀の基本料金と飲食接待費を合わせた金額で、お布施が別にかかる場合もあります。また、基本のセットではなくオプションを追加したり、葬祭用品のグレードを上げたりすると相場を超えることがあるでしょう。
葬儀形式別の費用相場(葬儀の基本料金+飲食接待費の例)
- 一般葬:100万円~200万円程度
- 家族葬:60万円~150万円程度
- 一日葬:50万円~140万円程度
- 直葬:20万円~50万円程度
お墓の費用の目安
終活の一環として生前にお墓を準備する人が増えています。お墓は墓石代・永代供養代・管理費などが必要となり、お墓の形態によってかなり価格に幅がありますが、決して少ない金額ではありません。そのため、家族に経済的な負担をかけないように、自分でお墓の形態を決めて予約や購入をする方も多くいます。
また、近年ではお墓を不要と考える人も増えています。残された家族がお墓を管理するのが困難だったり、埋葬方法が多様化していることも影響しているのでしょう。自分がどういった埋葬方法を望んでいるのか生前に意向を示し、自分で資金を準備しておくことで、希望が叶いやすくなります。
お墓・埋葬の費用相場
- 墓石タイプ:100万円~200万円程度
- 納骨堂:10万円~100万円程度
- 合同墓:10万円~30万円程度
- 永代供養墓:2.5万円~100万円程度
- 樹木葬:5万円~80万円程度
- 海洋散骨:5万円~30万円程度
- 山散骨:5万円~15万円程度
- 宇宙葬・空中葬:20万円~120万円程度
終活の遺産整理・相続にかかる費用の目安
終活では、葬儀やお墓の準備に加えて、自分が亡くなった後の遺産整理や相続の準備もしておいた方がよいでしょう。
遺産相続準備の費用の目安
遺産相続の手続きは、あなたが亡くなったことを知った日の翌日から、残された家族が10ヶ月以内という短い期間で行わなければなりません。スムーズな遺産相続を行えるように、遺産の相続準備を始めておきましょう。
財産目録を生前整理で作成した際に、遺産の分割方法も決めておくと、相続人同士のトラブルを未然に防げる可能性があります。例えば、不動産や自動車などの分割できない種類の資産は、事前に専門家に相談しておいた方がよいでしょう。
遺産相続に関して問題がある場合は、ほとんどの相続手続きの種類に対応できる弁護士に相談するのがおすすめです。また、遺産相続に問題がない場合も、不動産が含まれる場合は相続登記の手続きを司法書士に依頼する必要があります。
遺産相続に問題がなく不動産も含まれない場合、ある程度は自分で手続きが進められますが、複雑な手続きに不安を感じる方は行政書士へ依頼するとよいでしょう。
相続税についての申告や手続きについては税理士に依頼します。複雑な手続きの代行や相続税対策もしてくれるため、生前から相談しておくとよいでしょう。
遺産相続手続きの費用相場
- 弁護士:30万円程度~
- 司法書士:5万円~15万円程度
- 行政書士:3万円~15万円程度
相続税の基礎控除
- 「3千万円+(6百万円×相続人の数)」
遺言書作成にかかる費用の目安
終活では、遺言書を作成しておくことも大切です。自筆の遺言書を残すことも可能ですが、作成上のルールを守っていない場合、無効となることがあります。そのため、専門家に依頼して公正証書という種類の遺言書を残しておくのがよいでしょう。
保管場所についても考えておく必要があります。自宅で保管して紛失したり、亡くなった後に見つけてもらえなかったりすることがないように、しっかりと検討しましょう。また、弁護士に遺言執行者を依頼する場合は別途費用がかかります。遺産の金額にもよりますが、最低でも30万円程度はかかるでしょう。
遺言書作成の費用相場
- 弁護士:10万円~30万円程度
- 司法書士:7万円~15万円程度
- 行政書士:5万円~15万円程度
空き家の処分費用の目安
自分が亡くなった後の自宅に誰も住む予定がない場合は、終活として空き家の処分についても考えなければなりません。一軒家の解体費用は、一般的な住宅で100万円~200万円といわれています。
しかし、木造・鉄構造・RC(鉄筋コンクリート)造などの構造や立地、築年数、隣家との距離によっては、解体費用がさらにかかることもあるでしょう。
また、庭木の撤去費用やブロック塀の解体費用がかかったりすることもあります。空き家の解体後は、整地(土地をきれいにするための工事)も必要となり、土地に段差がある、伐根や地盤改良が必要といった場合は、金額が高くなる場合もあるのです。
そのため、住宅についても終活であらかじめできることをやっておくと、ご自身が亡くなった後の家族の負担を軽減できるでしょう。
空き家解体の費用相場
- 木造:3万円~5万円程度/坪
- 鉄構造:5万円~7万円程度/坪
- RC(鉄筋コンクリート)造:6万円~8万円程度/坪
空き家解体にかかるその他の費用相場
- 庭木の撤去:2千円~3千円程度/平方メートル
- ブロック塀解体:1万円程度/1本
- 整地:500~1,500円程度/平方メートル
終活費用を準備する方法
終活にはさまざまな費用がかかり、ある程度まとまった金額が必要であることが分かりました。ここからは、その終活にかかるお金をどのように準備すればよいか、三つの方法を提案します。
1.預貯金
終活費用を準備する上で、預貯金は今すぐに始められる方法の一つです。現在の収入の中から少額でも構わないため、預貯金にまわしていきましょう。
また、光熱費や通信費などの固定費を見直すのもおすすめです。ライフスタイルに合ったプランにすることで、余計な出費を減らし、預貯金にまわす余裕ができるでしょう。
2.保険の見直し
終活を行う際は、保険の見直しも検討してみましょう。これから必要になる費用が保障されているのかを確認し、不要な保障をなくすことで月々の負担が少なくなる場合があります。
また、預貯金や金融資産が少なく葬儀費用が心配な場合は、「葬儀保険」を追加するのも一つの方法です。終活でいざという時に備えておけば、家族に経済的負担をかけることがなくなります。
3.金融商品の利用
終活費用を準備する際は、金融商品を利用することも検討してみましょう。終活ではさまざまな費用が必要になるため、預貯金だけでは資金が底をついてしまう可能性もあります。
なかでも、「NISA」は政府が推奨している資産形成の方法の一つです。少額投資非課税制度で、毎年一定の新規購入分に対して、配当や譲渡益が最長で5年間非課税になります。
また、2024年の「新NISA」移行に際し、積み立てを行っている場合、別枠の非課税投資が可能になる「二階建て制度」に見直されることになりました。そのため、目減りするリスクはありますが、比較的安定した資産形成が期待できるでしょう。
終活費用は早めに準備を始めましょう
この記事のまとめ
- 終活は、残りの人生と、自分が亡くなった後の準備のために行う
- 残りの人生のための終活には、生前整理の実施、医療費・介護費の準備がある
- 自分が亡くなった後のための終活には、葬儀やお墓、遺産や相続の費用が必要
- 終活にかかる費用を準備するには、預貯金や保険、金融商品の活用がおすすめ
終活では、残りの人生と自分が亡くなった後の両方に備えて費用を用意することが大切です。不要なものの処分や相続に必要な遺産分割、遺言書の作成などを生前にすませておくことで、残された家族のさまざまな手続きにかかる金銭的負担を減らせます。
早めに終活費用を準備して、余裕のある終活を行いましょう。