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お金・お家のこと

老後資金が1億円の生活レベルとは?貯金額や懸念点など解説

老後資金が1億円の生活レベルとは?貯金額や懸念点など解説

老後資金として1億円を準備しておけば、ゆとりある生活レベルが維持できるのでしょうか?本記事では、老後資金1億円の生活レベルがどれくらいかを解説します。必要な貯金額を年金も踏まえて紹介しますので、老後の計画を立てたい方は必見です。

監修者 SUPERVISOR
AFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士 森本 由紀

神戸大学法学部卒業。鉄鋼メーカー、特許事務所、法律事務所で勤務した後、2012年に行政書士ゆらこ事務所を設立し独立。メインは離婚業務。離婚を考える人に手続きの仕方やお金のことまで幅広いサポートを提供。法律・マネー系サイトでの執筆・監修業務も幅広く担当。

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老後資金1億円で実現する生活レベル

1億円は大きい金額というイメージから、老後資金が1億円もあれば高い生活レベルが維持できそうな気がします。実際のところ、1億円あればゆとりある生活ができるのでしょうか?

老後資金1億円で何年生活できる?

生命保険文化センターの「2022年度(令和4年度)生活保障に関する調査」では、夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考えられる生活費について、生活レベル別にアンケートをとっています。同調査によると、最低限の生活レベル、ゆとりある生活レベルを維持するための金額は、それぞれ以下のとおりです。

夫婦2人の老後に必要な生活費

  • 最低日常生活費:月額23.2万円
  • ゆとりある老後生活費:月額37.9万円

最低限の生活レベルとは、食費や日用品費、光熱費、衣料品費など日常生活に欠かせない費用も切り詰め、交際費や娯楽費などはできるだけかけずに生活する状態です。これに対し、ゆとりある生活レベルとは、日常生活を充実させた上で、旅行やレジャー、付き合いなどにもお金をかけられる生活レベルを指します。

上記の金額を目安にすると、老後資金が合計1億円ある場合、最低限の生活レベルなら約36年維持できます。60歳で定年退職して収入がない状態でも、96歳くらいまでは問題ありません。

厚生労働省の「令和4年簡易生命表」によると、日本人の平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳です。最低限の生活レベルで平均寿命まで生きると仮定すると、資金が1億円あれば十分と考えられます。

令和4年 生活保障に関する調査(生命保険文化センター)

令和4年 簡易生命表(厚生労働省)

ゆとりある生活レベルの維持は難しい

次に、老後資金1億円でゆとりある生活レベルをどれくらい維持できるかを考えてみましょう。生活保障に関する調査では、夫婦2人のゆとりある生活には月37.9万円がかかるとされています。1億円あっても、ゆとりある生活レベルを継続すると、老後資金は約22年で尽きてしまうということです。

老後の年数が何年になるかは分かりませんが、平均寿命から逆算して30年分くらいの生活費は用意しておきたいと考える人は多いでしょう。ゆとりある生活レベルを30年維持する場合、1億3,644万円が必要です。つまり老後資金が1億円では、それほど生活レベルを上げられないことが分かります。

老後資金が1億円あっても安心できない理由

老後最低限の生活レベルでよい場合、1億円あれば36年程度暮らせます。しかし、老後は最低限の生活レベルでよいと考えている人も、1億円あれば安心というわけではありません。1億円あっても安心できない理由について説明します。

老後に何年生きるか分からない

老後の生活費が何年分必要になるかは定かではありません。人は何歳まで生きるか分からないためです。日本における100歳以上の人口は令和4年時点で約9万人となっており、人生100年時代に突入しています。もし100歳まで生きるとすれば、最低限の生活レベルでも1億円では生活費が不足するでしょう。

令和5年百歳高齢者表彰の対象者は47,107人(厚生労働省)

老後に急に生活レベルを落とせない

高齢になって急に生活レベルを下げるのは難しいため、老後資金が1億円あっても安心できません。前述した通り、老後資金が1億円ではそれほど贅沢できないためです。

例えば外食が当たり前になっている人は、老後に毎日家で食事を作るのは難しいでしょう。趣味や旅行にお金をたくさん使っていた人は、やめると老後の楽しみがなくなるかもしれません。

節約するにも気力や体力が必要です。若い頃はできたことでも、歳をとると面倒になってくるものです。生活レベルを下げられず、以前と同じような生活レベルを維持していると、老後資金が尽きてしまうでしょう。

病気や介護のリスクがある

高齢になると、病気やケガのリスクが高まります。思わぬ治療費や入院費が発生するため、老後資金が1億円あっても安心できないでしょう。もし介護が必要になれば、介護サービスの利用料や自宅のリフォーム費用などもかかります。

生活レベルに関係なく、老後資金1億円では不測の事態に対処できない可能性があるのです。

インフレの可能性がある

将来インフレになってお金の価値が下がれば、1億円で十分とはいえなくなる可能性があります。同じ生活レベルを維持するにも、以前よりたくさんお金が必要になるためです。

仮に1億円を超える老後資金を確保していても、インフレになれば最低限の生活レベルを維持する期間が短くなってしまいます。

老後資金1億円を用意するために必要な貯金額

老後資金が1億円あれば、最低限の生活レベルを36年維持できます。老後資金1億円は最低限の生活レベルを維持する一つの目安といえるでしょう。しかし、「老後は最低限の生活レベルでもよいけれど、1億円も貯金できない」という人がほとんどではないでしょうか。

老後資金の1億円すべてを貯金で用意する必要はありません。老後には公的年金を受給できるほか、退職金や私的年金を老後資金に充てられます。ここからは、老後資金1億円を用意するために必要な貯金額について解説します。

貯金で用意すべき老後資金の額

老後の生活の柱となるのは公的年金です。まずは、年金受給額を確認しましょう。厚生労働省の「令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金受給者(会社員)の年金の平均額は月額14万4,982円、国民年金受給者の年金の平均額は月額5万6,428円です。

平均的な年金額の会社員と専業主婦(または扶養内パート)の夫婦2人世帯の場合、2人分の年金合計は月額20万1,410円です。年金生活を30年とすると、合計で約7,250万円の年金を受け取れます。残りを貯金で用意するなら、約2,750万円貯金しておく必要があります。

なお、公的年金以外にも、老後資金に充てられるお金があります。勤務先に退職金制度や企業年金制度がある場合や、iDeCoや個人年金保険などに加入している場合には、さらに貯金額を減らせるでしょう。

参考までに、会社員の退職金の平均額は、以下のとおりです。

学歴・職種 退職金の平均額
大学・大学院卒(管理・事務・技術職) 1,896万円
高校卒(管理・事務・技術職) 1,682万円
高校卒(現業職) 1,183万円

令和5年 就労条件総合調査 結果の概況(厚生労働省)

老後資金1億円の内訳

大学卒の会社員と専業主婦の世帯を仮定して、平均額程度の年金と平均額程度の退職金をもらえるとすると、老後資金1億円の内訳は以下のようになります。

老後資金1億円の内訳
種類 金額
公的年金 7,250万円
退職金 1,896万円
貯金 854万円
合計 1億円

年金や退職金の額を計算してみると、最低限の生活レベルを維持するために必要な貯金額はそれほど多くありません。上記の試算では、貯金額の割合は約8.5%です。貯金額をさらに増やせば、生活レベルを上げたり、長生きに備えたりもできるでしょう。

受給できる年金の額やもらえる退職金の額は、人によって異なります。自分の年金や退職金を確認した上で、老後に必要な貯金額の目安を計算してください。

老後資金の不安を解消するための対策

老後の生活に実際いくらかかるかは分かりません。貯金できる額にも限界があります。ここからは、老後資金の不安を軽減するためにできることを挙げていきます。

年金受給額や退職金がどれくらいか把握する

まずは、老後どのような生活レベルで暮らしたいのかを考え、必要な生活費を計算してみましょう。その上で、年金や退職金の額を調べ、不足額を算出してください。不足額を準備できる目途が立てば、不安は軽減されるでしょう。

将来の年金見込額は、毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」で確認できます。また、会社に退職金制度がある場合には就業規則に記載されているため、確認してみましょう。

年金受給を繰り下げて受給額を増やす

年金受給を繰り下げて受給額を増やす方法もあります。公的年金は65歳から支給されるのが原則ですが、受給開始を遅らせる「繰下げ受給」が可能です。繰下げ受給の場合、1か月繰下げるごとに0.7%年金額が増額します。昭和27年4月2日以降生まれの人は最大75歳まで繰下げできるため、増額率は最大84%です。

また、国民年金の加入は20歳から60歳までですが、加入期間が40年(480か月)に満たない場合には、60歳以降も任意加入して年金を増やせる制度もあります。年金額を増やせば、生涯継続してもらえる受給額が増えるため、安心感が大きくなります。

資産運用をする

早い段階から老後資金を積み立てる場合、長期間の運用が効果的です。預貯金では金利が低く、資金を増やせません。金融商品に投資して、効率よく資産運用することを考えましょう。

老後資金の積み立てにはiDeCoやNISAを活用できます。iDeCoやNISAで積み立てると資産運用で得られた利益が非課税になるため、投資のコストを抑えられます。

生活レベルを見直す

年金生活になって、急に生活レベルを落とすのは困難です。老後が近づいてきた際は、少しずつ生活レベルを見直しましょう。保険の見直しや住宅ローンの繰上げ返済、車の売却などで固定費を抑えられることもあります。

また、対人関係を見直し、無駄な交際費を削減することなども考えてみましょう。

働ける間は働く

定年になってすぐに仕事を辞めると、収入が減って老後資金が不足することもあります。元気な間はできるだけ働いて収入を増やせば、生活レベルを下げる必要もなくなるかもしれません。厚生年金には70歳まで加入できるため、定年後も働くことには年金を増やす効果もあります。

老後にどんな生活をしたいかを考えて資金を準備しておこう   

この記事のまとめ

  • 老後資金が1億円あれば、最低限の生活レベルを36年維持できる
  • 最低限の生活レベルとは、日常生活費を切り詰め、娯楽費や交際費をかけない状態のこと
  • 老後資金1億円では、ゆとりある生活レベルの維持は難しい
  • ゆとりある生活レベルとは、日常生活を充実させ、娯楽費や交際費もかけられる状態のこと
  • 長生きする可能性や病気や事故などの不測の事態を考えると、老後資金1億円では足りない場合がある
  • 老後資金には年金や退職金もあるため、全額貯金で準備する必要はない
  • 老後資金の不安を軽くするために生活レベルの見直しも必要

老後資金として必要な金額は、生活レベルによって変わります。年金や退職金の金額も人によって異なるため、老後のためにいくら貯蓄すればよいかを計算し、貯蓄額の目安を決めましょう。早い段階から資金準備をしておけば、老後の不安を軽くできます。

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