臨済宗で読まれるお経とはどんなもの?葬儀の流れや教えについても紹介
仏教の葬儀や法要などの儀式ではさまざまなお経が読まれますが、臨済宗ではどのようなお経が読まれているのかご存知でしょうか。本記事では臨済宗で読まれるお経の意味や特徴、葬儀の基本的な流れ、マナーなどを詳しく紹介していきます。
臨済宗とは
臨済宗とは、仏教の宗派の一種です。「臨済宗」という名前は聞いたことがあるものの、特徴や教えの内容は分からないという方も多いのではないでしょうか。そこでまずは、臨済宗とはどのような宗派なのか解説していきます。
臨済宗は禅宗の一つ
臨済宗とは、日本の禅宗の一つです。禅宗とは、鎌倉時代に中国から日本に伝わった仏教の宗派のことです。明庵栄西が日本へ伝えたものが、禅宗の源とされています。栄西が持ち帰った臨済宗は、鎌倉幕府に保護されて上流階級を中心に広まりました。その後、白隠禅師が江戸時代に禅宗を確立させて今に至るのです。禅宗には臨済宗のほか、黄檗宗と曹洞宗があります。
また、臨済宗はさらに細かく十四の宗派に分かれており、それぞれの本山も異なります。中でも京都は臨済宗の本山が多く集まっており、天龍寺派や健仁寺派、東福寺派、妙心寺派など七つの本山が集っています。
臨済宗の教え
臨済宗の教えの特徴は、悟りを得ることが重要視されていることです。悟りを得るためには、ひたすら座禅をして修行を積む必要があります。座禅を通して瞑想を行い、身、心、息の調和をとることによって執着が捨て去られ、悟りが開かれるという教えです。中でも「公案」という問題について考えることや、師と対面しながら座禅を行う「看話禅」が重要視されています。
臨済宗で読まれるお経とは
同じ仏教でも、宗派によって読まれるお経が異なります。ここからは、臨済宗で読まれるお経とはどのようなものか、お経の意味や教えの内容などもまとめて解説します。
開経偈
臨済宗で読まれるお経として、「開経偈(かいきょうげ)」が挙げられます。開経偈には「仏様の徳を讃える」という意味があり、法要や葬儀を執り行う際に最初に読まれるのが一般的です。開経偈には、「仏様の教えを今後も守っていきたい」「仏様の教えが素晴らしいものである」といった内容が書かれています。「これから仏様の教えを受ける」という気持ちになるために開経偈が読まれるのです。
般若心経
「般若心経(はんにゃしんぎょう)」も、臨済宗で読まれるお経の一つです。般若心経は正式には「般若波羅蜜多心経(はんにゃはらみったしんぎょう)」と呼ばれています。般若心経の原書は、玄奘三蔵がインドから持ち帰った「大般若経」です。その後、三蔵法師は大般若経を600巻ほどにまとめました。この600巻にまとめられている内容をわずか262文字で表しているのが、般若心経なのです。
般若心経には、仏様が悟った真理についてや、大乗仏教の精髄などの教えが凝縮して記されています。臨済宗をはじめ、天台宗や真言宗、曹洞宗などさまざまな宗派で読まれているのも般若心経の特徴です。
大悲呪
観音菩薩の功徳についてが記されている「大悲呪(だいひじゅ)」も、臨済宗で読まれるお経の一つです。大悲呪は「大悲心陀羅尼(だいひしんだらに)」とも呼ばれ、お経の呪文の部分を音のまま読み上げるのが特徴です。
観音経
臨済宗では、「観音経(かんのんぎょう)」というお経も読まれます。観音経は法華経の中の章である「観世音菩薩普門品(かんぜおんぼさつふもんぼん)」のことであり、唱えることで苦しみから解放されると教えられています。お通夜の前の枕経や、遺骨を安置する際などに読まれることが多いです。
坐禅和讃
「坐禅和讃(ざぜんわさん)」も、臨済宗で読まれるお経です。江戸時代に臨済宗を広めたとされる白隠禅師が、禅宗の考え方を分かりやすく述べたものが坐禅和讃です。葬儀や法要などでよく読まれるのが特徴で、僧侶と参列者が共に読み上げるお経でもあります。
臨済宗で読まれるお経の特徴
臨済宗のお経は、ほかの仏教宗派にはない特徴を持っています。ここからは、臨済宗で読まれるお経の特徴について解説していきます。
読経の前に「南無釈迦牟尼仏」 と唱える
臨済宗で読まれるお経の特徴として、「南釈迦牟尼仏」を唱えることが挙げられます。読経の前にこの「南釈迦牟尼仏」を唱えることにより、お釈迦様に帰依することを表します。臨済宗では座禅が最も重要視されているため、浄土宗や日蓮宗のように念仏を繰り返し唱えることはしません。また、「南釈迦牟尼仏」の題目は曹洞宗でも使用されています。
根本経典がない
臨済宗のお経の大きな特徴として、根本経典がないことが挙げられます。根本経典とは、その宗派の教えの中心となるお経のことです。臨済宗では、文字に起こされたものよりもお釈迦様の教えそのものを重要視するべきと考えられています。そのため、根本経典が定められておらず、さまざまなお経が読まれるのです。
場面によって読まれるお経が異なる
場面によって読まれるお経が異なるというのも、臨済宗のお経の特徴といえるでしょう。例えば、お通夜の前に行われる枕経では「大悲呪」や「観音経」、「坐禅和讃」が読まれます。お通夜では、枕経でも読まれた「観音経」が唱えられるのが一般的です。葬儀では、最初に「開経偈」が読まれ、焼香が行われる前には「大悲呪」や「観音経」を唱えます。お経が持つ意味合いによって、どのような場面で読まれるかが変わってくるのです。
臨済宗の葬儀の流れ
同じ仏教を信仰していても、宗派によって葬儀の流れは異なります。宗派ごとの葬儀の流れを理解しておくことで、葬儀当日に慌てることがなくなるでしょう。臨済宗の葬儀はどのような流れで行われるのか、しっかりと押さえることをおすすめします。
①導師の入場
葬儀は、導師の入場から始まります。導師が入場すると、「授戒」という剃髪の儀式が行われます。この際、僧侶によって剃髪の偈が唱えられます。
②文を唱える
剃髪の儀式が終わった後は、三帰戒文や懺悔文などの文を唱えます。三帰戒文は「修行者となって仏様の教えを守ることを誓う」、懺悔文は「生前に犯した罪を反省して極楽浄土へ行く」という内容となっています。
③お香を焚く
次に、お香を焚いて霊前に供える「血脈(けちみゃく)授与」という儀式が行われます。血脈とは仏様の弟子になったことを示すものです。血脈授与は臨済宗の葬儀で最も大切な儀式とされているため、きちんと流れや意味を押さえておきましょう。
④焼香を行う
これらの儀式が終わったら、焼香を行います。臨済宗の葬儀や法要では、以下の流れで焼香が行われます。宗派によって焼香の流れが少しずつ異なるため、前もって確認しておくと安心です。
臨済宗の焼香の流れ
- 故人の遺影の前で合掌礼拝をする
- お香を右手の親指、人差し指、中指で摘んで1回香炉へ入れる
- 合掌礼拝をし、席に戻る
⑤導師が退場する
焼香が終わった後は、導師と僧侶が退場します。導師と僧侶の退場により、葬儀は終了です。
ただし、必ずしも導師と僧侶が一緒に葬儀に参加するわけではありません。場合によっては、剃髪の偈や退場は導師のみで行うことになります。
臨済宗の葬儀に関するマナー
ここからは、臨済宗の葬儀に関するマナーについて紹介します。きちんとマナーを押さえておかないと、ご遺族や僧侶に対して失礼になるため注意が必要です。しっかりと理解しておきましょう。
数珠に関するマナー
仏教の葬儀では基本的に数珠を持参しますが、宗派によって数珠の持ち方や扱いが異なります。臨済宗では、普段は数珠を左手首にかけておきます。略式の数珠の場合は一重で、本式の数珠の場合は二重にしてかけるのがマナーです。
叉手や合掌で手を合わせる際は、房が下に来るように左手の親指と人差し指にかけます。左手に数珠をかけたら、右手を添える形で手を合わせます。このとき、数珠は二重にしましょう。本式の数珠でも略式の数珠でも、同様の持ち方をします。
お布施に関するマナー
臨済宗の葬儀や法要では、導師に対するお礼としてお布施を渡す必要があります。お布施は、奉書紙や白い封筒などに包みましょう。表書きには「お布施」もしくは「御布施」と書き、中袋に包んだ金額と自身の氏名を記載します。お布施は読経に対する感謝の気持ちを意味するものであるため、香典とは異なり濃い墨を使って書きます。また、お札の種類も古札ではなく新札を入れるのがマナーです。
お布施の金額は、妙心寺派や東福寺派など宗派によって相場が異なります。お住まいの地域や葬儀・法要の規模によっても違いがあるため、事前に確認しておくと安心です。
服装に関するマナー
臨済宗の葬儀に参列する際は、遺族側も参列者側も喪服を着用するのがマナーです。男性はブラックスーツに白のワイシャツ、黒の靴と靴下を着用します。女性は黒のワンピースやアンサンブル、スーツなどを着用し、黒のストッキングと黒のパンプスを履きます。参列者はご遺族よりも格式が高くならないよう、正喪服の着用は避けましょう。葬儀の規模やご遺族の意向によっては、平服を着用することもあります。
香典に関するマナー
臨済宗のお通夜や葬儀に持参する香典の金額は、故人との関係や年齢によって異なります。いくら包めばよいのか不安な方は、事前に相場を確認しておきましょう。香典の表書きは薄墨で「御霊前」「御香典」などと書き、中袋には包んだ金額と氏名を記載します。お布施とは違い、新札ではなく古札を使うようにしてください。
臨済宗で読まれるお経や葬儀のマナーを理解しましょう
この記事のまとめ
- 臨済宗とは中国から伝わった禅宗の一つであり、栄西によって伝えられた
- 臨済宗では、悟りを得るために座禅を行うことが最も重要視されている
- 臨済宗では、開経偈、般若心経、大悲呪、観音経、坐禅和讃などのお経が読まれる
- 臨済宗には根本経典がなく、場面によって読まれるお経が異なる
- 臨済宗では数珠は左手にかけて持ち、合掌や叉手の時にはニ環にして左手の親指と人差し指の間にかける
臨済宗とは、栄西によって中国から伝えられた禅宗の一種です。悟りを得るために座禅を行うことが重要視されており、同じ題目を繰り返し読経することはありません。根本経典もありませんが、場面によって般若心経、大悲呪、観音経などのお経が読まれます。本記事で紹介したお経の意味や臨済宗の葬儀のマナーを押さえて、故人の供養につなげましょう。