浄土宗のお経とは?教えの内容や葬儀の流れ、浄土真宗との違いも解説
浄土宗のお経とはどんなものかご存知でしょうか。仏教の葬儀や法要では、さまざまなお経が読まれます。本記事では、浄土宗で読まれるお経の意味や内容などを詳しく紹介していきます。浄土宗の教えの内容や葬儀の流れなどについても詳しくまとめているため、参考にしてみてください。
浄土宗とは
浄土宗は仏教の宗派の一つであり、鎌倉時代に法然上人によって開かれました。「浄土宗」という宗派があることを知ってはいるものの、どのような教えなのか、浄土真宗との違いは何なのかわからない方も多いでしょう。まずは、浄土宗とはどのような宗派なのか概要を紹介します。
浄土宗の教え
浄土宗は、「専修念仏」という教えを根幹としています。専修念仏とは、救いを信じて「南無阿弥陀仏」と唱えることで極楽浄土に行けるという考え方です。「念仏を唱えさえすれば、どんな人でも必ず極楽浄土へ行くことができる」としたのが浄土宗の特徴です。極楽浄土に往生するために阿弥陀如来を信じてひたすら念仏を唱えることは「他力」といわれます。
浄土真宗との違い
浄土宗と浄土真宗は名前が似ているため混合されがちですが、この二つの宗派は明確に異なります。
まず、浄土宗を開いたのが法然であるのに対し、浄土真宗は法然の弟子である親鸞によって開かれました。浄土宗は中心寺院を知恩院に置いており、浄土真宗は本願寺に置いています。教えの内容も異なり、浄土宗が「念仏を唱えれば極楽浄土に往生できる」としたのに対し、浄土真宗は「阿弥陀仏の教えを信じれば、善人・悪人関係なく救われる。自身の悪いところを自覚した悪人こそ、より救われる」としています。
浄土宗のお経の種類
浄土宗では、主に阿弥陀仏経、観無量寿経、無量寿経の3種類のお経が読まれます。この三つは「浄土三部経」といわれ、浄土宗のよりどころとされているお経です。ここからは、浄土宗で読まれるお経の特徴や意味について解説していきます。
阿弥陀経
浄土三部経の一つとして、阿弥陀経が挙げられます。阿弥陀経には「どうすれば極楽浄土へ行けるのか」「極楽浄土とはどのような場所なのか」が説かれています。お経自体が短いため、「小無量寿経」や「小経」と呼ばれることもあります。
観無量寿経
観無量寿経(かんむりょうじゅきょう)も、浄土宗で重要視されているお経の一つです。観無量寿経には「王舎城の悲劇」と呼ばれる物語が書かれており、韋提希(いだいけ)夫人が極楽浄土へ行くまでが説かれています。どのような悪人でも、念仏を唱えれば救われて極楽浄土へ行けると教えられています。
無量寿経
無量寿経(むりょうじゅきょう)には、阿弥陀仏が積まれた修行の内容や、阿弥陀仏が抱いた願いなどが説かれています。阿弥陀仏の願いが成就してどういったご利益が得られたのか、という内容も記載されているものです。阿弥陀仏教や観無量寿経に比べると全文が長いため、「大経」といわれることもあります。
浄土宗の葬儀で読まれるお経
ここからは、浄土宗の葬儀で読まれるお経を紹介します。普段読まれるのは前述した3種類のお経ですが、葬儀では以下5種類のお経が読まれます。それぞれのお経が読まれる意味を押さえておけば、故人の供養につながるでしょう。
香偈
香偈(こうげ)とは、汚れた心身を清めるために読まれるお経です。僧侶が勤行に入る前に唱えるのが決まりで、浄土宗だけでなくほかの宗派でも読まれることが多いです。
三宝礼
三宝礼(さんぼうらい)とは、仏教の中で大切にするべき存在である仏、法、僧を讃えて礼拝するお経です。三宝礼を読むことで、信仰心を高めたり自分の存在を阿弥陀仏に知らせたりできるとされています。
無量寿経
浄土三部経の一つである無量寿経も葬儀で唱えられます。浄土宗だけでなく、浄土真宗でも経典とされているお経です。
阿弥陀経
「南無阿弥陀仏」と唱える阿弥陀経(あみだきょう)も、浄土宗の葬儀で唱えられるお経の一つです。阿弥陀経も浄土三部経の一つであり、葬儀中に一定時間全員で唱えるのが特徴です。阿弥陀経を唱えるのには、阿弥陀如来に向けて故人が極楽浄土へ行けるよう願うという意味があります。また、阿弥陀如来と参列者の結びつきや信仰心を深めるのも目的です。
開経偈
浄土宗の葬儀で読まれるお経として、開経偈(かいきょうげ)も挙げられます。開経偈は菩薩様やお釈迦様を讃え、読経の前に読まれるものです。仏様の教えを理解して身につけるという意味や、教えに出会えたことへの感謝が込められています。開経偈は、決められたリズムに沿って16音節を唱えるのが特徴です。
浄土宗の葬儀の流れ
同じ仏教でも、宗派によって葬儀や法要の流れは異なります。ここからは、浄土宗の葬儀の流れを紹介していきます。
①香偈
参列者と遺族が全員着席し、葬儀が開始する時刻になったら僧侶が入場します。入場した僧侶がお香を焚き、香偈を読んで葬儀場内にいる人の心を静めます。
②三宝礼
香偈の後は、三宝礼が行われます。仏教の三宝とされる仏、法、僧に対し、礼をすることです。
③奉請
次に、仏様の入堂をお願いする奉請を行います。奉請では鳴り物が使用されます。
④懺悔偈
奉請の後は、懺悔偈(さんげげ)が行われます。懺悔偈とは、奉請で入場していただいた仏様に対して自分の罪を懺悔し、仏様の話を伺うことです。
⑤転座・作梵
懺悔偈の後は、転座と作梵を行います。ここまで参列者や僧侶は体を本尊に向けていましたが、転座で体を棺の方へ向け、梵語の四智讃である「作梵」を唱えます。
⑥下炬引導
次に、僧侶によって「下炬引導(あこいんどう)」という儀式が行われます。僧侶が故人の眠る棺の前で焼香を行った後、松明を意味している法具を2本取って1本を捨てます。法具を1本捨てるのには、煩悩に塗れている現世を離れるという意味合いがあります。
残った1本の松明を使って円を描いた後、「下炬の偈」を読み上げて松明を捨てます。これには、「心から極楽浄土に行きたいと求めている」という意味が込められています。これら一連の儀式は、火葬時の点火を表しています。
⑦弔辞
次に、参列者による弔辞が行われます。弔辞では、故人を失ったことの悲しみや思い出、故人へのメッセージなどが読まれます。弔辞は故人と親しかった友人や親族など、故人との関係が深い人物が読むのが一般的です。葬儀の規模によっては、複数人が弔辞を読むこともあります。
⑧開経偈後、誦経と焼香
弔辞後、開経偈が行われます。これは、故人が仏様の教えを得られることを願うための儀式です。その後、僧侶によって阿弥陀経の「仏身観文」もしくは「四誓偈」が読まれます。誦経の間に僧侶から合図を受け、参列者が焼香を行います。
⑨摂益文
焼香が終わったら、僧侶によって「摂益文(しょうやくもん)」という偈文が読まれます。これには、「念仏を唱えていれば阿弥陀仏の光明に照らされ、利益を得られる」と記されています。
⑩念仏一会
念仏一会は、浄土宗の葬儀ならではの儀式です。僧侶と参列者全員が同時に「南無阿弥陀仏」と念仏を複数回唱えます。念仏一会には仏様に感謝するという意味があるため、体は本尊に向けます(複座)。
⑪総願偈・三身礼
念仏一会の後、総願偈が読まれます。これには、極楽浄土の願いは広く、仏様が人々を救ってくださるという内容が記されています。次に、阿弥陀仏の功徳を讃えて帰依を表す「三身礼」を行います。この功徳とは、「人々を極楽浄土へ導くこと」「念仏を唱える者を救済する心」「救済のために悟りを開いたこと」の三つです。
⑫僧侶退場後、出棺
全ての儀式が終了したら、僧侶は退場します。その後、故人と最後のお別れをして出棺となります。故人と親しかった友人や親族が棺を持って会場の外へ運び出し、霊柩車へ乗せます。霊柩車が火葬場へ出棺したら、葬儀は終了です。
浄土宗の葬儀に関するマナー
ここからは、浄土宗の葬儀に関するマナーについて解説していきます。浄土宗の葬儀に参列することになったり、遺族として葬儀を執り行う立場になったりした場合は、こちらを押さえておきましょう。
焼香に関するマナー
同じ仏教でも、宗派によって焼香の流れや回数などが異なります。浄土宗での焼香の回数は、3回です。香炉の前に進んで故人の遺影に合掌した後、お香を親指、人差し指、中指で摘んで落とします。最後に合掌と一礼をします。
香典に関するマナー
浄土宗の香典は、受付で渡すのが一般的です。家族葬や規模が小さい葬儀など受付が設けられていない場合は、ご遺族に直接渡します。香典の金額は故人との関係や年齢によって異なるため、事前に確認しておきましょう。また、香典袋の表書きは薄墨を使って書くのがマナーです。
服装に関するマナー
浄土宗の葬儀では、遺族も参列者も喪服を着用します。遺族や近親者は本式の喪服を、参列者は略式の喪服を着用することが多いです。
お布施に関するマナー
浄土宗の葬儀を行う場合、僧侶に対するお礼としてお布施を渡します。お布施は感謝の気持ちを伝えるものであるため、新札で準備するのが一般的です。金額相場は葬儀の形式やお住まいの地域によって異なるため、事前に菩提寺や近隣の方に確認しておくとよいでしょう。
浄土宗のお経の意味や教えとは何かを知り、正しく理解しましょう
この記事のまとめ
- 浄土宗とは法然上人が開いた宗派で、念仏を唱えると極楽浄土に行けると説かれている
- 浄土宗では主に阿弥陀経、観無量寿経、無量寿経が読まれ、これらは「浄土三部経」といわれる
- 浄土宗の葬儀では、香偈、三宝礼、無量寿経、南無阿弥陀仏、開経偈が読まれる
- 浄土宗の葬儀では、焼香は3回行われる
浄土宗とは、法然上人によって開かれた仏教宗派の一つです。浄土宗の葬儀では、阿弥陀経や観無量寿経といった浄土三部経や、香偈、開経偈などが読まれます。お経の意味や役割を理解することで、故人の供養につながります。また、ほかの宗派の葬儀とは儀式の内容や流れなどが異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。