浄土真宗のお経の種類や意味とは?全文や大谷派と本願寺派の違いも紹介
阿弥陀如来を信仰する浄土真宗では、どのようなお経を唱えるのかご存知でしょうか。本記事では浄土真宗のお経の種類や意味を解説するとともに、阿弥陀経の全文や大谷派と本願寺派の違いについても紹介します。
浄土真宗とは
浄土真宗とは鎌倉仏教の一つで、浄土宗の宗祖である法然の弟子である親鸞聖人(しんらんしょうにん)が開いた仏教宗派です。
浄土真宗にはさまざまな宗派があり、代表的な宗派は「真宗十派」と呼ばれています。なかでも大きな勢力を持っているのが、東本願寺を本山としている「真宗大谷派」と、西本願寺を本山としている「浄土真宗本願寺派」です。
浄土真宗では、「他力本願」という教えから、阿弥陀仏の救いを信じて「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えれば、誰でも極楽浄土に行けるとされています。
浄土真宗のお経の種類と意味
浄土真宗で読まれているお経は、「大無量寿経(だいむりょうじゅきょう)」「観無量寿経(かんむりょうじゅきょう)」「阿弥陀経(あみだきょう)」があり、まとめて「浄土三部経」と呼ばれています。それぞれのお経の特徴について解説します。
大無量寿経(だいむりょうじゅきょう)
お釈迦様が説いた説経は7000余りありますが、なかでも重要とされるお経が大無量寿経です。略して「大経(だいきょう)」と呼ばれたり、「無量寿経」「双巻経」と呼ばれたりもします。
大無量寿経は「出世本懐の経(しゅっせほんがいのきょう)」ともいわれています。お釈迦様が世に出られた理由や仏教を説いた目的などを表したお経という意味です。
観無量寿経(かんむりょうじゅきょう)
浄土三部経の一つ観無量寿経は、「観経(かんぎょう)」とも呼ばれます。仏や仏のいる世界を観る方法を説き、さらに自分の力ではどうしようもない人生を俯瞰し、切り抜ける方法も教えてくれるという意味のお経です。
観無量寿経では「たとえ罪人でも南無阿弥陀仏を唱えれば極楽浄土へ行ける」と説かれています。
阿弥陀経(あみだきょう)
大無量寿経や観無量寿経とともに浄土三部経の一つとされる阿弥陀経は、大無量寿経が大経と呼ばれているのに対し、「小経(しょうきょう)」と呼ばれています。
阿弥陀経には極楽浄土がどこにあるのかを明らかにした経典とされており、極楽浄土の様子やそこに住んでいる人々の生活を説いたお経です。
浄土真宗で読まれている「正信偈(しょうしんげ)」とは
浄土真宗で読まれるお経の阿弥陀経の全文を紹介しましたが、それ以外に葬儀や毎日の勤行で読まれる「正信偈(しょうしんげ)」があります。ここでは、正信偈がどのようなものかを解説します。
正信偈はお経に準ずるもの
正信偈とは、親鸞が著した「教行信証(きょうぎょうしんしょう)」の一部で、正式名称は「正信念仏偈(しょうしんねんぶつげ)」といいます。
お経とはお釈迦様の説法をまとめたものを指しているため、正信偈はお経とは呼びません。
ただし、お経をもとにして仏教の真髄をとらえたものが教行信証とされ、その大事な部分を凝縮した正信偈はお経に準ずるものと考えられています。そのため、浄土真宗の葬儀でもよく読まれているのです。
正信偈は浄土真宗の主旨が書かれている
正信偈には浄土真宗の主旨が書かれており、阿弥陀如来の徳を讃えることや、阿弥陀如来によって親鸞自身が救われたと述べられています。
その上で全ての人が、親鸞自身と同じように阿弥陀如来の教えによって救われるようにという願いも綴られています。
また、インドをはじめ、中国や日本で仏教の教えを正しく説いたとされる7人の高僧の業績について讃えています。
真宗大谷派と浄土真宗本願寺派との違い
浄土真宗の大きな宗派には、東本願寺を本山としている真宗大谷派と、西本願寺を本山としている浄土真宗本願寺派があります。同じ浄土真宗であっても、さまざまな違いがあるため詳しく解説していきましょう。
ご本尊の違い
真宗大谷派と浄土真宗本願寺派では、ご本尊の形に違いがあります。真宗大谷派には船後光がありませんが、浄土真宗本願寺派には後光の下に船後光があります。
この、船後光とは仏像の光背の一種で、舟の形に似ていることから名付けられました。
また、ご本尊を掛け軸にした場合も、真宗大谷派と浄土真宗本願寺派では後光の本数に違いがあります。真宗大谷派が6本であるのに対し、浄土真宗本願寺派は8本です。
仏壇・仏具の違い
真宗大谷派と浄土真宗本願寺派では、仏壇や仏具の種類に違いがあります。仏壇の柱が黒塗りになっているのが真宗大谷派で、柱が金箔で加工を施してあるのが浄土真宗本願寺派です。
花立や香炉、蝋燭立などの仏具の種類にも違いがあり、真宗大谷派は金色のものを使用しますが、浄土真宗本願寺派は黒いものを使用します。
真宗大谷派の燭台は亀の背中に鶴が乗り、口に蓮軸を加えた鶴亀燭台を使用しますが、浄土真宗本願寺派は銅に漆塗りの宣徳製(せんとくせい)という燭台を使用するなど、仏壇や仏具の種類に違いがあります。
線香・数珠の違い
浄土真宗の葬儀の際は、線香の本数や焼香の回数、数珠の持ち方にも違いがあります。
葬儀で焼香する際、線香の本数はどちらも1本で同じです。ただし、葬儀の焼香の回数は、真宗大谷派の2回に対し、浄土真宗本願寺派は1回となっています。
また、葬儀に参列する際の数珠の持ち方は、男性は同じですが女性は真宗大谷派と浄土真宗本願寺派では違います。
数珠を二重にして房を上に向け、合掌した両手に掛けたあと左手側に房を垂らすのが真宗大谷派の持ち方です。一方、数珠を二重にして合掌した両手に掛け、房を小指の下に垂らすのが浄土真宗本願寺派の持ち方とされています。
浄土真宗のお経の意味や種類、二派の違いを理解しましょう
この記事のまとめ
- 浄土真宗は鎌倉仏教の一つで、親鸞が開いた宗派である
- 東の「真宗大谷派」と、西の「浄土真宗本願寺派」の二つの本山がある
- 南無阿弥陀仏と念仏を唱えれば、誰でも極楽浄土に行けるとされている
- 「浄土三部経」のうち阿弥陀経の全文が浄土真宗でよく読まれるお経である
- 浄土真宗ではお経の代わりに正信偈が読まれることも多い
浄土真宗は浄土三部経というお経がよく読まれていますが、お経を覚えやすくするために内容を歌詞にして宗教歌が作られることがあります。お経の意味や大谷派と本願寺派の違いを理解しましょう。