浄土真宗の葬儀の特徴や流れとは?参列する際のマナーや注意点も解説
仏教の宗派の一つである浄土真宗では、他の宗派とは葬儀の特徴や流れに違いがあるのをご存知ですか?本記事では、浄土真宗の葬儀の流れを中心に、浄土真宗の教えや葬儀に参列する際の注意点などを紹介します。浄土真宗の葬儀について知り、参列時の参考にしてください。
2006年に葬儀の仕事をスタート。「安定している業界だから」と飛び込んだが、働くうちに、お客さまの大切なセレモニーをサポートする仕事へのやりがいを強く感じるように。以来、年間100件以上の葬儀に携わる。長年の経験を活かし、「東京博善のお葬式」葬祭プランナーに着任。2023年2月代表取締役へ就任。
浄土真宗とは
まずは、浄土真宗という宗派の具体的な教えやほかの仏教宗派との違いなどについて解説します。
浄土真宗とは仏教の宗派の一つ
浄土真宗とは鎌倉時代に親鸞聖人(しんらんしょうにん)によって開かれた、仏教を代表する宗派の一つです。日本で信仰される仏教には13の宗旨があり、さらに56派に分かれます。お釈迦様が開祖した点は共通ですが、宗派によって死生観や仏となるための教えなどに違いがあるのが特徴です。
浄土真宗の代表的な宗派は【本願寺派】と【大谷派】
浄土真宗の代表的な宗派は、「浄土真宗本願寺派」と「真宗大谷派」です。歴史の流れとともに親鸞聖人の弟子や子孫が教えを解釈して広げていき、現在の浄土真宗は10派に分かれています。信仰者数は「浄土真宗本願寺派」と「真宗大谷派」の2派が多く、浄土真宗式の葬儀でも参列する機会が多い宗派といえます。
真宗十派
- 浄土真宗本願寺派
- 真宗大谷派
- 真宗高田派
- 真宗佛光寺派
- 真宗興正派
- 真宗木辺派
- 真宗出雲路派
- 真宗誠照寺派
- 真宗三門徒派
- 真宗山元派
浄土真宗の教え
浄土真宗(真宗)では、阿弥陀如来(あみだにょらい)の他力本願の教えを基礎としています。浄土真宗のご本尊(信仰対象)は「阿弥陀如来」です。阿弥陀如来を信仰し、「南無阿弥陀仏」の念仏を称えたすべての者を極楽に導くと約束しています。
仏教を開いたのはお釈迦様であるとの教えはほかの宗派と共通していますが、真宗には修行をして仏になるという概念はありません。念仏を唱えるのは修行や願掛けのためではなく、この世の苦しみから救い死後に極楽浄土へ導いてくださる阿弥陀如来への感謝の意味であることが特徴です。
浄土真宗のお通夜・葬儀の特徴
浄土真宗では阿弥陀仏の救いによって故人はすぐ仏になり浄土に往生する「即身成仏」という考えがあるため、葬儀は故人の死を供養し成仏を願うものと捉えていません。遺族や親族、生前に故人と親交があった方々とともに阿弥陀如来の恩に感謝し、阿弥陀如来の教えを学ぶ「聞法」の場とされています。
お布施もお経をあげてくれた僧侶に対してではなく、阿弥陀如来に念仏の教えを説いてもらった感謝を示す目的があり、ほかの宗派とは意味合いが異なります。
浄土真宗の葬儀はご本尊である阿弥陀如来の教えを聞き感謝を深める機会でもあり、一般的な葬儀とは流れや教えが異なることを知っておきましょう。
お通夜での末期の水の儀式がない
浄土真宗の葬儀では、末期の水の儀式がありません。末期の水の儀式とは、故人が冥土を旅する際にのどが乾かないよう願って準備し、口元に水分を与えて潤す儀式です。浄土真宗では故人が冥土を旅するという概念がなく、亡くなったら即身成仏して極楽浄土へ向かうため、末期の水を行う必要がないのです。
法名が授けられる
浄土真宗では、仏様の弟子となる証として生前または死後に「法名」が授けられます。法名とは、ほかの仏教で例えると「戒名」に当たるものです。
仏を信じて念仏を唱えた全員が浄土に導かれると教える浄土真宗では、修行や戒律の順守によって仏門に入る「授戒」が存在しないため、「戒名」ではなく「法名」を用いるのが一般的です。
引導という考えがない
仏教の葬儀で僧侶が法語を唱えて故人に死を伝え極楽浄土へ渡れるように導くことを「引導」といいますが、浄土真宗には引導の概念がありません。
即身成仏の考えがある浄土真宗では、冥土を旅することなく故人は亡くなってすぐに仏となると説いているため、葬儀で引導を行わないのです。
死装束や守り刀、枕飾りの飲食物は不要
浄土真宗の葬儀では、死装束や守り刀、枕飾りの飲食物は不要です。死装束は、故人が極楽浄土へ旅に出るためにふさわしい衣装として着せる修行僧と同じ着物です。浄土真宗では故人は亡くなった後すぐに仏となるため旅支度も必要ありません。生前に故人が好んで着ていた服や、彩りのある服など自由に着せることができます。
守り刀は、極楽浄土への旅路の道中に故人を守護するお守りとして、故人に持たせるものです。故人が逝去後すぐに旅することなく仏になるとされている浄土真宗では、守り刀も必要ありません。
また、故人が亡くなってからお通夜を開始するまでの間に故人の枕元に置く仮祭壇として枕飾りを準備しますが、浄土真宗では枕飾りにご飯や水などの飲食物は不要とされています。
浄土真宗【本願寺派】葬儀当日の流れ
ここでは、浄土真宗本願寺派の葬儀の流れを詳しく紹介します。
浄土真宗【本願寺派】葬儀当日の流れ
浄土真宗本願寺派の葬儀当日の流れは、以下の通りです。
浄土真宗本願寺派の葬儀の流れ
- 導師の入場
- 開式
- 導師による読経
- お焼香
- 弔辞の読み上げ
- 導師の退場
- 閉式
- 喪主の挨拶
- 出棺
浄土真宗以外の宗派と基本的な流れは似ています。しかし、お焼香の手順が一般的な葬儀と少し作法が異なるため、後述する注意点とあわせて対応方法を確認してください。
浄土真宗の葬儀は、参列者も一緒に阿弥陀如来への感謝や宗派の教えを聞く機会としています。読経の意味を理解して葬儀に臨めるよう、下記を参考にしてみてください。
浄土真宗【本願寺派】の読経の流れと意味
浄土真宗本願寺派の読経の流れと意味は、以下の通りです。
浄土真宗本願寺派の読経の流れと意味
- 帰三宝偈(きさんぽうげ):教えを説く
- 三奉請(さんぶしょう):諸仏のお招き
- 表白(ひょうびゃく):法要の趣旨を説く
- 正信念仏偈(しょうしんねんぶつげ):偈文を唱える
- 和讃(わさん):諸仏をたたえる
- 回向(えこう):念仏を回し故人の冥福を祈る
- 念仏(なんぶつ):僧侶と参列者がともに「南無阿弥陀仏」を唱える
浄土真宗のお経は、お釈迦様や阿弥陀如来への感謝を示したり、宗派の教えを参列者全員で聞いたりすることを目的としています。僧侶と参列者がともに念仏を唱える機会もあるため、指示に沿って対応してください。
また、地域によって読経の流れが異なる場合がある点にも注意しましょう。
浄土真宗【大谷派】葬儀当日の流れ
ここでは、浄土真宗大谷派の葬儀の流れを詳しく紹介します。
浄土真宗【大谷派】葬儀当日の流れ
浄土真宗大谷派の葬儀当日の流れは、以下の通りです。
浄土真宗【大谷派】の葬儀の流れ
- 導師の入場
- 総礼(そうらい)での開式
- 導師による読経
- 総礼(そうらい)で念仏を唱える
- 導師による読経・焼香
- 総礼(そうらい)
- 導師による読経
- 弔事
- 導師による読経
- 参列者による焼香
- 導師による読経
- 総礼(そうらい)で念仏を唱え閉式
- 導師の退場
- 閉式
- 喪主の挨拶
- 出棺
大谷派の葬儀では、参列者が全員で念仏を唱える機会が複数回あるのが特徴です。ご本尊への感謝や故人が仏となったことを尊ぶ目的があります。
浄土真宗【大谷派】の読経の流れと意味
浄土真宗大谷派の読経の流れと意味を、以下にまとめました。
浄土真宗大谷派の読経の流れと意味
- 総礼(そうらい):参列者による念仏提唱
- 伽陀(かだ):諸仏のお招き
- 勧衆偈(かんしゅうげ):信心の勧め
- 短念仏(たんねんぶつ):「南無阿弥陀仏」を10回唱える
- 回向(えこう):念仏を回し故人の冥福を祈る
- 三匝鈴(さそうれい):大小の鈴を鳴らす
- 表白(ひょうびゃく):法要の趣旨を説く
- 正信念仏偈(しょうしんねんぶつげ):偈文を唱える
大谷派の読経は、本願寺派と同様に仏やご本尊への感謝を目的としたものが複数回あります。死を穢れや悲しみと捉えない真宗ならではの読経となるため、意味を理解しておくと故人の死に寄り添いやすくなるでしょう。
参列者が念仏を唱える総礼(そうらい)が複数回ある
浄土真宗大谷派の葬儀では、総礼といって参列者が念仏を唱える機会が複数回あります。総礼の際は、司会や僧侶によって指示があるのが一般的ですので作法や対応方法が事前に分からなくても特に問題はありません。
浄土真宗の葬儀に参列する際の注意点
浄土真宗の葬儀に参列する際、いくつか注意しておきたいことがあります。香典の表書きの種類や宗派ごとの焼香方法を知っておくとスムーズに対応できるため、参考にしてください。
香典の表書きは「御仏前」を使用する
浄土真宗の葬儀に参列する際、香典の表書きには「御仏前」と記入しましょう。浄土真宗では、故人は亡くなったらすぐに仏になるとされています。霊体になるという概念がないため、表書きの代表の一つである「御霊前」は使用しません。
宗派を問わず使用できる「御香典」でも構いません。
焼香は宗派により異なる
浄土真宗の焼香は、宗派によって作法が異なります。焼香台の前でご本尊に向かって一礼し、指でお香をつまむ点はほかの仏教と共通です。その後お香を額に押しいただくことはせず、香炉にくべるのが浄土真宗の焼香の特徴となります。今回は、代表的な宗派である本願寺派と大谷派の焼香方法を確認しておきましょう。
浄土真宗【本願寺派】焼香の方法
浄土真宗本願寺派の焼香では、お香を3本の指でつまんだ後に、香炉に1回お香をくべるのみに留めます。焼香の方法は以下の流れです。
浄土真宗【本願寺派】焼香の方法
- 焼香台でご本尊に向かって一礼する
- 右手親指・人差し指・中指でお香をつまむ
- お香を1回のみ香炉にくべる
- 合掌し「南無阿弥陀仏」と念仏を唱える
- 焼香台でご本尊に向かって一礼する
浄土真宗【大谷派】焼香の方法
浄土真宗大谷派の焼香ではお香を3本の指でつまむまでは共通で、香炉にくべる回数は2回です。焼香の方法は以下の流れで行います。
浄土真宗【大谷派】焼香の方法
- 焼香台でご本尊に向かって一礼する
- 右手親指・人差し指・中指でお香を摘まむ
- お香を2回香炉にくべる
- 合掌し「南無阿弥陀仏」と念仏を唱える
- 焼香台でご本尊に向かって一礼する
本願寺派、大谷派ではお香を香炉へくべる回数が異なる点を覚えておきましょう。葬儀での焼香の作法が心配な場合は年長者の方法を参考にしたり、葬儀社の係員に事前に聞いたりしておくと安心です。
葬儀後のお清めの塩は不要
葬儀に参列したあとは、お清めの塩を軽く全体に振り、忌みや穢れを落とすイメージを持つ方も多いでしょう。浄土真宗では亡くなることは故人が仏になり尊ぶべきものとしているため、葬儀後のお清めの塩は不要です。
浄土真宗の葬儀は他の宗派と異なる特徴があることを理解しておきましょう
この記事のまとめ
- 浄土真宗とは仏教の宗派の一つであり、その中でも本願寺派と大谷派が代表的である
- 浄土真宗の葬儀では、末期の水や枕飾りの飲食物、お清めの塩などが不要である
- 浄土真宗の香典の表書きは「御仏前」または「御香典」を使用する
- 本願寺派と大谷派では念仏の回数や焼香方法が異なる
浄土真宗の葬儀は、他の仏教宗派と特徴や流れが異なります。今回は代表的な宗派である本願寺派と大谷派の葬儀の流れを紹介しましたが、参列時の対応が不安な場合は年長者や葬儀社に聞くなど事前に確認して準備すると安心です。
一般的にイメージする葬儀と異なる点も多いため、浄土真宗の教えも知って葬儀に参列すると、故人の死にさらに寄り添うことができるでしょう。