身寄りのない人が死亡したらどうなる?葬儀・相続・生前準備について解説

身寄りのない人が死亡したら、葬儀や財産の相続などはどうなるのでしょうか。親族や近親者がいない場合など、不安に思っている方も多いはずです。本記事では、身寄りのない人が死亡した場合の手続きの流れや葬儀、財産について詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
身寄りのない人の死亡件数が増加している

近年、ご遺体の引き取り手がいない人の死亡件数が増加しています。
これは、未婚であったり子供がいなかったりで「身寄りのない高齢者世帯が増えている」ことや、「核家族化が進み、親戚との関係が希薄になっている」などが原因で、孤独死や孤立死が増えているためと考えられます。
身寄りのない人が死亡した場合は、全国の自治体によって無縁遺体として取り扱われます。また、身元が分かっていても親戚にご遺体の引き取りを断られる場合も多くなっています。
令和6年第1四半期(1~3月分)(暫定値)における死体取扱状況(警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者)について (警察庁)
身寄りのない人が死亡した場合の手続き

身寄りのない人が死亡した場合、死亡した場所によって手続きが異なります。ここでは自宅・外出先・病院に分けて解説します。
自宅で死亡した場合
身寄りのない人が自宅で死亡した場合、孤独死になるため、腐敗が進んで異臭が発生し、近隣住民の通報で発見されることが多いです。
ほかにも郵便受けに郵便物や新聞、チラシなどが溜まっていると近隣住民が不審に思って行政機関に連絡し、そこから警察に通報されたことにより、孤独死されたご遺体が発見される場合もあります。その後、警察で検視を行い、事件性がなければ自治体がご遺体を引き取り、一定期間保管して相続人や親族を探します。
身寄りのない人の引き取り手が見つからなかった場合は、「墓地、埋葬等に関する法律」第9条により、死亡地の市町村長が火葬及び埋葬を行わなければならないと定められているため、無縁遺体として自治体が火葬や埋葬・納骨を行います。
外出先で死亡した場合
身寄りのない人が外出先で死亡した場合は、ご遺体が発見された後に警察に搬送されます。所持品などから身元を調べて、引き取り手がいないことが判明した後は、自治体に連絡し、身寄りのない人のご遺体の引き取りを依頼します。
その後は「行旅病人及行旅死亡人取扱法」に則り、身寄りのない人の死亡地の自治体が、無縁遺体として火葬や埋葬を行います。
病院で死亡した場合
身寄りのない人が病院で死亡した場合は、自治体への連絡は病院が行い、ご遺体の引き取りを依頼します。その後の流れは外出先で死亡した場合と同様に、「行旅病人及行旅死亡人取引法」により、自治体が火葬や埋葬を行います。
身寄りのない人が死亡した場合の葬儀

身寄りのない人が死亡した場合、火葬や埋葬は死亡した土地の自治体が行うことは分かりましたが、葬儀はどうなるのでしょうか。ここから、身寄りのない人が死亡した場合の葬儀について解説します。
身寄りのない人の葬儀・火葬・埋葬の手続き
身寄りのない人が死亡した場合、葬儀は行われず、自治体がご遺体を引き取り火葬や埋葬を行うのが一般的です。
ただし、身寄りのない人のご遺体の引き取り手がいなくても、近隣住民や入居施設が葬儀を行う場合もあります。葬儀後は自治体にご遺体が引き取られ火葬を行い、遺骨を一定期間保管した後に合祀墓に納骨されることが多いです。
身寄りのない人の葬儀の費用
身寄りのない人の葬儀を執り行う際は、故人自身の財産を葬儀の費用にあてることもあります。しかし、身寄りのない人に財産がない場合、葬儀を執り行う人が費用を負担することになります。その場合は、以下の制度の利用が可能です。
葬祭費補助金
葬祭費補助金とは、国民健康保険・社会保険・後期高齢者医療保険などの加入者が死亡した際に請求できる補助金です。
葬儀を執り行う人に給付される補助金で、身寄りのない人が生前に住民登録していた自治体の保健年金課に請求すると、1万円~7万円が給付されます。
埋葬料
身寄りのない人の埋葬を行う際は、埋葬を行う人に給付される埋葬料という補助金があります。
身寄りのない人が生前、共済組合に加入していた場合、もしくは所属していた法人が健康保険組合に加入していた場合に請求が可能です。共済組合や健康保険組合に請求すると、5万円程度の補助金が給付されます。
葬祭扶助制度
葬祭扶助制度とは、ご遺族が生活保護を受けているなど経済的な事情で葬儀を執り行うことが困難な場合に、最低限度の費用を自治体が負担してくれる制度です。金額は地域や世帯状況で異なりますが、ご遺体搬送や安置、火葬や埋葬など最低限度の火葬式が行える費用が支給されます。
また、身寄りがない人が死亡した場合に、家主や民生委員が葬儀を執り行う際にも、葬祭扶助制度の利用が可能です。申請場所は申請者の住民票のある自治体、または身寄りのない人が生前に生活保護費を受けていた自治体の福祉事務所や福祉係です。
身寄りのない人が死亡した場合の財産

身寄りのない人が死亡した場合、残った財産はどうなるのでしょうか?ここからは、身寄りのない人が死亡した場合の相続について解説します。
身寄りのない人の財産は最終的に国庫に帰属される
身寄りのない人が死亡した際に残された財産があり、遺言書が無い場合、または特別縁故者がいない場合は相続人不在となり財産は国庫に入ります。
特別縁故者に当てはまる人
- 内縁関係にある人や認知していない子供、養子援組してない配偶者の連れ子
- 生前に故人の身の回りの世話や看護を報酬をもらわずにしていた人
- 1.2と同等程度に親密な関係だった人
特別縁故者になるためには、それを証明できる書類を準備し、家庭裁判所に財産分与審判の申し立てをしなければなりません。裁判で特別縁故者と認められれば相続財産の全部もしくは一部を取得できますが、認められなかった場合は国庫に帰属します。
借金がある場合は「相続財産管理人(相続財産清算人)」により清算される
身寄りのない人が生前借金をしていたり家賃を滞納していたり負の財産がある場合は、相続人が引き継がなけらばなりません。しかし、相続人がいない場合は債権者が家庭裁判所に申し立てれば、家庭裁判所が相続財産管理人(相続財産清算人)を選任し、借金の返済を行ってもらえます。
相続財産管理人とは、身寄りのない人が死亡した際の財産の管理や清算を行う人のことです。一般的に弁護士のような法律の専門家が選ばれます。相続財産管理人は選任された後、債権申立公告(債権者を探すために広く知らせる)、相続人捜索公告(相続人を探すために広く知らせる)という手続きを行います。
これらの手続きで相続人がいないことを確認した後、身寄りのない人の財産から債権者への清算が行われるという流れです。清算後に残った財産がある場合は国庫に入ります。
身寄りのない人の生前準備のやり方

身寄りのない人が死亡した場合、相続人探しや財産の整理などさまざまな手続きが必要になります。ここからは、身寄りのない人が生前に準備しておいた方がよいことについて解説します。
葬儀会社に事前に相談する
身寄りのない人が死亡してご遺体の引き取り手がいなかった場合、自治体が無縁遺体として取り扱い火葬や埋葬を行うため、葬儀は行われないのが一般的です。よって、葬儀に対する希望がありスムーズに葬儀を進めるためには、葬儀会社に事前に相談し、死亡した後の契約をしておく必要があります。
さらに、葬儀会社との契約が決まった後は、周囲の親しい人や家主、入所施設の方などに契約した旨を伝えておくのがよいでしょう。葬儀には喪主が必要になるため、依頼できる方がいれば、生前に承諾を得ておくことをおすすめします。
財産管理等委任契約を結ぶ
身寄りのない人が死亡した後の財産にはさまざまな手続きが必要になるため、事前に財産管理等委任契約を結んでおくとよいでしょう。
財産管理等委任契約とは、病気や怪我、または死亡したときに財産管理に関する法律行為について、第三者に委任する契約のことです。契約の内容により、家の賃貸契約や病院の清算、福祉サービスの退所手続きも行ってもらえる場合もあります。
財産管理等委任契約は法律の専門家でなくても結べるため、信頼できる友人でも構いません。ただし、契約を悪用した事件も発生しているため、弁護士や行政書士といった法律の専門家を交えて契約を結んでおくのがよいでしょう。
後見人制度を活用する
後見人制度は、大きく分けて「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。法定後見制度は、判断力が低下した人を法的に保護する制度です。親族などが家庭裁判所に申し立てをして成年後見人などを選任してもらい、本人を支援します。
一方、任意後見制度は本人の判断力があるうちに自らが選んだ任意後見人と後見契約を結び、本人の代わりにしてもらいたいことを決めておく制度です。身寄りのない人は法律の専門家を指定することも可能です。また、支援の内容についても、判断能力が不十分になったときや死亡してからのことまで本人の希望で決められます。
任意後見制度は家庭裁判所から「任意後見監督人」を選任してもらうと、任意後見の効力が発生します。任意後見監督人とは、任意後見人が契約した通りに仕事をしてくれるかどうかを監督する人です。
遺言書を作成する
身寄りのない人の財産は相続人がいない場合は国庫に入ってしまうため、お世話になった方に相続してもらいたい場合や、関心のある団体に寄付したい場合などは遺言書を作成しておくのがよいでしょう。
ただし、遺言書の書き方に不備があると無効になるため、「公正証書遺言」の作成を公証人に依頼することをおすすめします。
身寄りのない人は死亡する前の生前準備が重要

この記事のまとめ
- 身寄りのない人が死亡した場合、ご遺体の引き取り手がなければ無縁遺体として自治体が火葬や埋葬を行う
- 身寄りのない人の葬儀は行われないのが一般的だが、近隣住民や入居施設が葬儀を行う場合もある
- 身寄りのない人の遺骨は自治体に引き取られ、一定期間保管した後に、合祀墓に納骨されることが多い
- 身寄りのない人の財産は、相続人がいなければ国庫に入る
- 生前に葬儀会社や財産管理等委任契約、後見人制度などを契約するとよい
- 希望通りの葬儀や相続が行われるように遺言書を作成する
身寄りのない人が死亡した場合、ご遺体の引き取り手や法定相続人の捜索をしたり、葬儀や財産管理などのさまざまな手続きが必要になることがあります。葬儀会社や法律の専門家に相談しておくと、希望通りの葬儀や相続が行われやすくなるため、生前に準備をしておきましょう。

2006年に葬儀の仕事をスタート。「安定している業界だから」と飛び込んだが、働くうちに、お客さまの大切なセレモニーをサポートする仕事へのやりがいを強く感じるように。以来、年間100件以上の葬儀に携わる。長年の経験を活かし、「東京博善のお葬式」葬祭プランナーに着任。2023年2月代表取締役へ就任。