自然葬とは?意味や種類、注意点について分かりやすく解説
自然葬は、葬送の種類が多様化する現代で注目されています。自然葬という言葉自体を聞いたことはあっても、一体どのようなものなのか具体的に知っているという方はそこまで多くないかもしれません。本記事では、自然葬の意味や種類、注意点について分かりやすく解説します。
自然葬とは
最初に、自然葬の意味や近年自然葬が注目されている理由について解説します。終活で自分のお墓について悩んでいる方や、故人の葬送形式に迷っている方は参考にしてみてください。
自然葬とは遺骨を自然に還す葬送形式のこと
自然葬にしっかりとした定義はありませんが、遺骨を海や山などに還す葬送形式を意味します。「葬」の言葉がついていることから一般葬や家族葬などと同じくお葬式の一つと勘違いしやすいですが、実際には一般墓や納骨堂と同じ埋葬形式の一つです。
動物や植物と同じように、人間も命の終わりには自然に還ろうという考えがもとになっています。
一般墓は墓石の下に遺骨を納めて後継者が墓地を管理しますが、自然葬は墓標や区画が必ずしもあるわけではなく、後継者による管理も必要ありません。また、一般墓の場合は宗教・宗派が限定されることもありますが、自然葬の場合は基本的に宗教・宗派を問わないことも特徴です。
自然葬が近年注目されている理由
自然葬が近年注目を集めている理由は、埋葬方法が多様化していること、都市部で墓地が不足していること、一般墓と比べて費用が安い傾向にあること、お墓の後継者が必要ないことなどが挙げられます。特に費用が安い点や後継者が必要ない点は、自然葬の大きなメリットと言えるでしょう。
自然葬の人気は、少子高齢化や核家族化によって代々引き継いでいく一般墓が当たり前ではなくなってきていることを意味しています。
自然葬の種類
自然葬は、遺骨を海や山などに還すだけではありません。ここからは、自然葬の種類について解説します。
樹木葬
樹木葬とは、墓石の代わりに樹木または草花を墓標とするお墓のことを言います。自然葬の中でも、残された家族が故人が眠る場所に訪れられるのが特徴です。
樹木葬には合祀型や個人型、集合型といった、さまざまな種類があります。
樹木葬の埋葬方法
- 合祀型樹木葬…他の人と同じ区画で合祀され、区画につき1本の木を墓標とするもの
- 個人型樹木葬…一般墓と同じく個別に納骨し、それぞれ1本の木を墓標とできるもの
- 集合型樹木葬…複数の個別区画でシンボルツリーを共有して供養するもの。一定期間を過ぎると合祀されることが多い
遺骨を骨壷から出して直接埋葬したり、土に還る骨壷や骨袋で埋葬したり、一般墓のようにカロート(納骨室)に骨壷を納めたりと、埋葬方法もさまざまあるため、実際に遺骨が土に還る場合とそうでない場合があることを覚えておきましょう。
樹木葬の墓地は、自然を存分に感じられる景観が豊かな墓地であることが多いです。バラ園があったり、景色を堪能しながら故人を偲ぶ休憩用のベンチがところどころに置かれている墓地もあり、爽やかな気分でお墓参りができます。
季節によって景色が変わるため、四季ごとに自然と足を運びたくなることもあるでしょう。また、墓地によってはペットと一緒に眠れる樹木葬もあります。
そのため、自然豊かな場所で眠りたい方や、残された家族に公園に行くような感覚でお墓参りをしてほしい方などに適しているでしょう。
なお、樹木葬は上述のようにお墓の一種であり、墓地として認められた場所でのみ行えるものです。自宅の庭で樹木葬を行うことはできないため、注意しましょう。
散骨
自然葬の一つである散骨は、遺骨をパウダー状に粉骨して海や山などに撒く葬送方法です。樹木葬とは違いお墓ではないため、墓地の認可を受けていない海や山でも行えますが、周辺住民などには配慮する必要があります。
遺骨を撒くと聞くと、「墓地、埋葬等の法律」の遺骨遺棄に抵触するのではと心配する方もいるかもしれませんが、あくまで葬送方法の一つであり法律上問題はないとされています。ただし、条例で散骨を禁止している自治体もあるため、事前に確認しておきましょう。
散骨は遺骨を撒く場所やその方法によって「海洋散骨」「山散骨」「空中葬」「バルーン葬」「宇宙葬」などに分かれます。それぞれについて以下で詳しく見ていきましょう。
海洋散骨
海洋散骨は、船で沖合まで向かい、パウダー状にした遺骨を海に撒く散骨方法です。生命のはじまりである海に還れることなどから人気を得ています。
海洋散骨には、委託型や合同型、個別型といった種類があります。
海洋散骨の種類
- 委託型海洋散骨…散骨業者に散骨を委託する方法。基本的に遺族は散骨に立ち会えない
- 合同型海洋散骨…散骨を希望する人たちと一緒に船をチャーターして散骨する
- 個別型海洋散骨…個別に船をチャーターして散骨する
海洋散骨では、ただ海に散骨するだけでなく、船で故人の好きだった曲を流したり、献花や黙禱などをするお別れのセレモニーを行うこともあります。
仕事や趣味で海に関わることが多かった方や、海の近くに住んでいた方などにおすすめです。
山散骨
山散骨は、その名の通り山に散骨をする方法です。山の所有者に許可を得てから行う必要があります。寺院の持ち物である里山に散骨をしたり、自身が所有している山に散骨をすることが多いようです。
登山が好きだった方や、山に思い出がある方は山散骨を候補にするとよいでしょう。
空中葬
空中葬とは、ヘリコプターや小型飛行機に乗って海上を飛び、空中から海へと向かって散骨をする方法を指します。ただ空中に散骨するだけでなく、故人の思い出の地の上空を旋回してくれることも特徴です。
海だけでなく空も好きだった方や、パラグライダーやスカイダイビングが好きだった方は、空中葬を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
バルーン葬
バルーン葬は、2m程度のバルーンにパウダー状にした遺骨を入れて飛ばす散骨方法です。高度が上がって成層圏まで達したバルーンが気圧の変化で膨らんで破裂し、散骨される仕組みとなっています。
バルーンに入れられる遺骨の量には限りがあるため、全ての遺骨を散骨するのは難しいと考えておきましょう。そのため、分骨した遺骨をバルーン葬にします。
高度の高い場所からの散骨や、普通とは違うめずらしい散骨方法を故人が希望している場合はバルーン葬がおすすめです。
宇宙葬
宇宙葬はパウダー状にした遺骨をカプセルなどに入れ、ロケットで宇宙まで運んで散骨する方法です。宇宙葬にはカプセルを月まで運んだり、人工衛星として宇宙を永遠に漂ったりとさまざまな種類があります。
宇宙葬は日本の業者でも扱っていることがありますが、海外業者に依頼することが多いようです。日時が限定されたり、ロケットの打ち上げが失敗したりすることもあるため留意しておきましょう。
またバルーン葬と同様、カプセルに入れる遺骨の量には限りがあるため、分骨を前提として考える必要があります。宇宙旅行が夢だった方や、天体観測が趣味だった故人の散骨を考えている場合は宇宙葬も視野に入れてみてください。
自然葬を行う流れ
自然葬を行うまでの流れは以下の通りです。自然葬を検討している方は流れを事前に確認しておくと、スムーズに手続きなどを行えるでしょう。
自然葬を行うまでの流れ
- 樹木葬、海洋散骨などといった自然葬の形式を決める
- 希望の自然葬を依頼する業者を決定する
- 火葬を行う。火葬後にもらう埋葬証明書はなくさずに保管する
- 粉骨する(自分で行ってもよいが業者に依頼するのがおすすめ。2で決定した業者が行ってくれることが多い)
- 自然葬(樹木葬・散骨)を行う
樹木葬は納骨する際に埋葬証明書(火葬済みの印が押された火葬許可証)が必要となります。散骨の場合も、業者によっては埋葬証明書の提出を求められることがあるため、なくさないよう保管しておきましょう。
また、分骨の場合は分骨する数だけ埋葬証明書が必要となります。分骨の一部を散骨する場合にも準備しておくと安心です。埋葬証明書ではなく分骨証明書が発行されることがありますが書類の役割は同じです。
自然葬にかかる費用
一般墓よりも安価なことが多い自然葬ですが、費用は自然葬の種類によっても異なります。中には一般墓よりも高価な自然葬もあるため、事前に確認しておきましょう。なお、費用は地域や業者などによって下記の範囲でないこともあります。あくまで目安として参考にしてください。
自然葬にかかる費用
- 合祀型樹木葬…5万円~30万円程度
- 個人型樹木葬…20万円~80万円程度
- 集合型樹木葬…15万円~60万円程度
- 委託型海洋散骨…5万円~10万円程度
- 合同型海洋散骨…10万円~20万円程度
- 個別型海洋散骨…20万円~30万円程度
- 山散骨…5万円~15万円程度
- 空中葬…35万円〜40万円万円程度
- バルーン葬…20万円~30万円程度
- 宇宙葬…100万円~250万円程度
自然葬を行う際の注意点
自然葬を行う際には、いくつかの注意点があります。あとからトラブルにならないよう、自然葬を検討する場合には以下のことに気をつけましょう。
散骨する場所は注意して選ぶ
散骨は個人でも行える葬送形式ですが、自治体によっては条例で散骨を規制していることがあります。条例で規制されていない場合でも、漁場や海水浴場などは避け、その地域で生活・仕事をする人に配慮して場所を選ばなくてはいけません。
これらのことを個人で判断するのは難しいため、散骨を希望する場合には専門の業者に依頼することをおすすめします。
お墓参りが難しい場合がある
樹木葬の場合、自然豊かな場所であることから町外れに位置することが多く、アクセスがよくない場合があります。また、散骨の場合はそもそもお墓がないため、お墓参りができません。
このように、自然葬を選ぶ場合はお墓参りが難しいこと、不可能なことも理解しておく必要があります。これらをデメリットと感じる場合には一般墓や納骨堂、手元供養などを選択するとよいでしょう。
家族と話し合って決める
自然葬で故人を弔うかどうかは、ひとりの意見ではなく家族と話し合って決めることが大切です。
一般墓を希望していたり、心の拠り所としてお墓での供養を希望する家族や親族がいる場合もあります。特に散骨の場合はお墓がないため、しっかりとそのことを伝えた上で話し合いましょう。
故人が散骨を希望していた場合は、家族の意見も汲んで分骨し、お墓での供養と散骨の両方を行うのも一つの方法です。故人と家族の両方に配慮した方法を話し合いで決めましょう。
遺骨は取り出せないことが多い
自然葬の場合、特に合祀型の樹木葬や散骨では遺骨は取り出せません。別の形式で供養をし直そうとしても難しいため、自然葬を選ぶときには後悔のないようしっかりと考えて決断する必要があります。
自然葬の種類や注意点を理解して供養をしましょう
この記事のまとめ
- 自然葬は、遺骨を海や山などの自然に還す葬送形式を意味する
- 自然葬は、埋葬方法が多様化していること、都市部で墓地が不足していること、一般墓と比べて費用が安い傾向にあること、お墓の後継者が必要ないことなどから注目を集めている
- 自然葬の種類には①樹木葬、②海洋散骨、③山散骨、④空中葬、⑤バルーン葬、⑥宇宙葬がある
- 自然葬を行うまでの流れは①自然葬の形式を決定、②業者を決定、③・火葬、④粉骨、⑤自然葬
- 自然葬の費用は、樹木葬…5万円~80万円程度、海洋散骨…5万円~30万円程度、山散骨…5万円~15万円程度、空中葬…35万円~40万円程度、バルーン葬…20万円~30万円程度、宇宙葬…100万円~250万円程度である
- 自然葬を行う際の注意点には①散骨する場所は注意して選ぶ、②お墓参りが難しい場合がある、③家族と話し合って決める、④遺骨は取り出せないことが多いなどがある
自然葬はお葬式の種類ではなく葬送形式の一つです。費用が一般墓よりも比較的安価なことや、後継者が必要ないことなどから人気を得ていますが、散骨をする場合には特に周囲への配慮が必要不可欠です。あとからトラブルにならないよう、本記事で解説した注意点を理解した上で埋葬形式を選びしましょう。