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【ひとたび編集部が選ぶエンディング映画10選 04】おくりびと〜死を受け入れるということ〜

【ひとたび編集部が選ぶエンディング映画10選 04】おくりびと〜死を受け入れるということ〜

あなたはどのように死を受け入れていますか?偏見や差別をどう受け入れようとしていますか?ひとたびの「編集部が選ぶエンディング映画10選」では、エンディングを題材とした映画を紹介しています。この映画を通じて、相手を受け入れること、死を受け入れること、そしてどう生きていくべきかを考えてみましょう。

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連載第3回では「100歳の少年と12通の手紙」を紹介しました。こちらもぜひ合わせてご一読ください。

第4回は2008年公開の「おくりびと」を紹介します。

映画界最大の栄誉と言われるアカデミー賞で外国語映画賞を受賞し、日本アカデミー賞でも10冠とその時の映画祭を大きく騒がせた日本映画を代表する名作です。また、アカデミー賞を受賞したことが話題となり異例のロングランヒットをし、最終興行収入64億円を記録したヒット作でもあります。

そんな名作を監督したのは「壬生義士伝」「天地明察」といった話題作を手掛けた滝田洋次郎。主演は、日本を代表する俳優の本木雅弘。東京から地元山形に帰って納棺師になる大悟役を演じています。その妻の美香役には広末涼子、大悟の師匠となる就職先の社長役は日本映画界の重鎮、山崎努が演じています。

また、印象的な音楽で映画により深みを与えたのは、これまた日本音楽界の巨匠、久石譲です。キャスト、スタッフ共に日本最高峰の才能が結集された作品を紹介いたします。

あらすじ

※本記事にはネタバレ内容を含みます。あらかじめご了承の上、お読みください。

ようやくプロのチェロ奏者としての東京で職を得た小林大悟。しかし突然その楽団が解散することとなり、妻でウェブデザイナーの美香と地元の山形に帰ることにしました。

大悟は手違いで応募してしまった納棺師の仕事に即採用されます。孤独死した高齢者、事故死した不良少女、性同一性障害に悩み自殺した男性などの旅立ちを手伝っていくうちに仕事に充実感を覚えていきました。

そんな時、大悟の亡き母宛に、昔母と大悟を見捨てた父の訃報が入ります。もう何十年も会っていない父に対し、恨みすら感じている大悟は遺体を引き取ることを拒否しますが、周りの説得で父の元へ向かいます。

父親の顔すら覚えていなかった大悟でしたが、父の納棺を手掛けるうちに昔の記憶が蘇っていきます。父の手には、少年時代の大悟との思い出である石が握られていました。大悟は恨んでいた父を許し、命を次の世代に繋いでいこうと改めて思うのでした。

みどころ

葬儀とは遺族の気持ちの整理をする場

本作では様々な人が故人として見送られます。前述したように孤独な高齢者、不良少女、性同一性障害の男性、他にも夫と娘を残して先立った女性も見送られました。本作は亡くなった方々の背景を直接的には描いておらず、遺族の方々の言葉だけで故人との関係性を描いています。

例えば冒頭に性同一性障害の男性を納棺するのですが、美しい顔立ちの女性の納棺が始まったという印象から始まります。

遺族に死化粧を男性用か女性用かを確認したことから遺族間での本音の話し合いが始まり、変わっていく子供とうまく分かり合えなかったことを両親は両親で悩んでいたことが明かされます。最終的にはお別れの前にしっかり息子の意志を受け入れることで、両親の後悔は薄れていきました。

また、夫と娘を残して先立った女性の納棺の儀では、血色が悪くやつれた女性に化粧をします。その結果、死を受け止められなかった夫から「今まで見た妻の中で一番綺麗だった」と言われる出来にまで仕上げます。美しく旅立たせることで、夫と娘は彼女の死を受け入れ、前へ進むことが出来たのでしょう。

ここで考えさせられたのは、納棺とは故人を偲び旅立たせるだけではなく、残された遺族の気持ちの整理をする場でもあるということです。人はいつ亡くなるのか分かりません。どんな事があっても本音を常に言い合える関係性でいたいものですね。

しかし、誰もがそのような恵まれた環境にいるわけではなく、映画のように複雑な事情もあるでしょう。言いたいことを言えないまま、相手が亡くなってしまうこともあるかもしれません。その時はモヤモヤしたまま、遺族は故人を見送ることとなります。

本作ではそういった本音を伝えられなかったとしても死を受け入れることで、故人への想いは伝えられることも描いています。

葬儀にはきっと不思議な力があり、日本ならではの納棺、火葬という文化は、残された遺族の気持ちを整理させてくれる美しい風習であると誇りすら感じることが出来る作品です。

許し

本作では「死」を扱うと同時に「許す」ことも描いています。遺族から大悟への許し、美香から大悟への許し、大悟から父への許し。それぞれ理由は違いながら、どこかモヤモヤした気持ちを相手にぶつけていました。しかし、結果として相手の想いが伝わったからこそ許す気持ちにつながるのでしょう。

特に印象的なのは、母と自分を見捨てて女性と家を出た父親が、死に際に自分を思い出してくれていたことを理解した瞬間、恨みが一気に晴れて父親を許した大悟の涙でした。

大悟を見捨てたことを後悔していたのか、最後に一度会いたいと思っていたのか、そういった部分は描かれていませんが、恐らく大悟にその気持ちが伝わったからこそ、父を許すことが出来たのでしょう。親子の会話はありませんでしたが、父の子を思う愛が伝わる素晴らしい演出です。

相手を許すことで受け入れ、自分自身も変わることが出来るのでしょう。

納棺師という職業の尊厳

本作では納棺師という仕事は当初煙たがられています。美香は「汚らわしい」、幼馴染からは「もっとマシな仕事につけ」と真っ向から否定されています。

大悟自身も当初は後ろめたさを感じており、就職が決まったときも「冠婚葬祭関係の仕事に受かった」と美香に伝えていました。しかし、そんな風に煙たがっていた周囲の人間も大悟の仕事ぶりを見て考え方を改める様子が描かれています。

尊厳はどの職業にもあるものですが、納棺師という職業は美香や周囲の人々のようにネガティブな印象を持たれてしまうものなのかもしれません。おくりびとにあるような別れに関する数々の名シーンを通してこの職業に対しても、立派で素敵な仕事のひとつであると再認識することができるかもしれません。

まとめ

この映画では、日本の死についての概念と共に「受け入れる」ことについて考えさせられます。死を受け入れること、相手を受け入れることを通じて人生の見方や死生観すらも変えてくれるのではないでしょうか。

作品情報

公開年

2008年

監督

滝田洋二郎

キャスト

本木雅弘

広末涼子

山崎努

峰岸徹

余貴美子

笹野高史

 

おくりびと [DVD]
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