【ひとたび編集部が選ぶシニアが活躍する映画10選10】ニュー・シネマ・パラダイス〜人生はノスタルジック〜
ひとたびの「シニアが活躍する映画10選」では、シニア世代が主役として活躍する映画を紹介します。今回紹介するのは、映画愛が詰まった永遠の名作。イタリアの小さな村に住む少年が、映画技師との交流をきっかけに映画を知って人生を歩んでいく物語です。映画を好きな人全てに送る映画讃歌と呼べるほど映画愛がつまっており、誰もが幸せな気持ちで涙を流せる作品です。
第10回は「ニュー・シネマ・パラダイス」を紹介します。
こちらは1989年に公開されたイタリア映画で、世界各地で大ヒットを記録した作品です。公開当時からカンヌ映画祭、ゴールデングローブ賞、アカデミー賞といった世界中の映画祭で絶賛され、日本でも超ロングランヒットを記録しています。
監督は「海の上のピアニスト」「マレーナ」といった名作を残し続ける、イタリアを代表する名監督のジュゼッペ・トルナトーレです。この作品は彼が29歳で手掛けた監督2作目で、早くもその才能を発揮しています。
そして、この映画の主役と言っても過言ではない音楽を作り上げたのは、トルナトーレ監督との名コンビぶりが有名なエンニオ・モリコーネです。「荒野の用心棒」「アンタッチャブル」「ヘイトフル・エイト」なども手掛けており、アカデミー賞に6度もノミネートされている巨匠です。
主演のサルヴァトーレは、少年時代をサルヴァトーレ・カシオ、青年時代をマルコ・レオナルディ、成人時代をジャック・ペランと3人がそれぞれの時代を演じ分けています。中でもジャック・ペランはイタリアで長く活躍した俳優で、端正な顔つきで多くの人を魅了していたそうです。
本作のキーパーソンであるアルフレードを演じたのは、フィリップ・ノワレ。この方はフランス映画界の重鎮だった方で、出演作はゆうに100作を超えています。
映画愛が詰まった作品というだけでなく、若かりし頃の眩しい思い出や初々しい初恋、歳を取ってそれを思い出すノスタルジーなど多くの感情を呼び起こしてくれるでしょう。そんな作品を今回は紹介したいと思います。
あらすじ
映画監督であるサルヴァトーレはある晩、母からアルフレードの訃報を受け取ります。サルヴァトーレはベッドの中で、アルフレードとの昔の日々を思い出しました。
第二次世界大戦終結から間もない頃、「トト」と呼ばれていた幼いサルヴァトーレは、イタリアの小さな村で母と妹と暮らしていました。父は戦争に徴兵されてから消息不明でした。当時、小さな映画館だけが、その村唯一の娯楽施設だったのです。
新作映画が封切られる日、多くの人たちが映画館に集まりました。しかし教会の圧力もありラブシーンだけはカットされ、ひんしゅくを買いました。
映画という存在に魅了されたトトは、映写室に入り浸っていました。映写技師のアルフレードはトトを見つける度に叱りつつも親しみを感じ、トトは映写機の操作を見様見真似で覚え始めます。
ある晩、フィルムの発火事故が発生し、映画館は全焼してしまいました。トトの助けもありアルフレードは救われましたが、火傷のせいで視力を失ってしまったのです。トトは新しく建て直された映画館「新パラダイス座」で、映写技師として働きはじめました。
月日が過ぎ青年となったトトは、手に入れたカメラで映画を撮るようになりました。エレナと出会い初恋を経験しますが、トトは徴兵されてしまいます。
除隊後帰郷すると「新パラダイス座」の映写室には知らない男が座り、エレナとは音信不通になってしまいました。落ち込むトトにアルフレードは「若いのだから外に出て道を探せ、村にいてはいけない、そして帰ってきてはいけない」とメッセージを送ります。トトはその言葉を受け止め、ローマへ旅立ちます。
それから30年、映画監督として成功していたサルヴァトーレは、アルフレードの葬儀に出席するために母の待つ故郷の村へと帰ってきました。そこで「新パラダイス座」が閉館してしまい、建物の解体ももうすぐということを知ります。サルヴァトーレはアルフレードが遺した形見である、フィルムの断片を渡されました。
ローマに戻ったサルヴァトーレが観たそのフィルムは、少年時代に教会の圧力でカットされたラブシーンのフィルムを繋ぎ合わせたものでした。サルヴァトーレはスクリーンを見ながら、少年時代を懐かしみました。
みどころ
映画への愛
『ニュー・シネマ・パラダイス』は、映画そのものへの愛情を余すところなく描いた作品です。物語は、主人公のサルヴァトーレが子供時代を過ごしたイタリアの小さな村の映画館「新パラダイス座」を中心に展開します。この映画館は村の人々にとっての憩いの場であり、サルヴァトーレにとっては夢の場所でした。
映画館の熱狂、上映中のシーン、そしてフィルムを扱うプロジェクターの音など、映画の魅力を全編にわたって感じさせてくれます。特に、サルヴァトーレが映画館で経験する喜びや感動は、観客に映画が持つ魔法の力を思い知らせてくれます。
本作を見ることで多くの人が映画自体の素晴らしさを思い出すことができ、映画が好きでよかったと感じることでしょう。
時間と思い出
「ニュー・シネマ・パラダイス」はトト少年が愛する映画館と愛する人たちとのふれあいを描いた作品です。また、彼が成長するにつれて愛する存在に対してどのような変化が起きていたのかも、この作品が描きたいメッセージだと思います。
年を重ねたサルヴァトーレが故郷に戻り、思い出の場所を再訪するシーンは特に印象的です。彼が幼少期に抱いていた夢や情熱は時とともに変わってしまったものの、映画館での思い出やアルフレードとの絆は彼の中で忘れられないものとなっていたのです。
サルヴァトーレが映画を通じて体験したさまざまな出来事や人々との出会いは、観客に「時間は流れるが思い出は消えない」というメッセージを伝えてくれます。このテーマは、多くの人々が共感できるものであり、観客も皆同じような経験があることを思い出させてくれるでしょう。 いくつになっても忘れられない思い出や経験は、誰にでもあります。大人になったときにその経験を思い出し、自分がどれだけ成長したか、もしくはどれだけ変わらずにいれたかで感傷的になるのでしょう。ノスタルジーこそが人生であり、小さな経験の積み重ねが人生になると訴えているように感じます。
もはや台詞の音楽
この作品では、音楽が作品のテーマを強く引き立てる要素となっています。エンニオ・モリコーネ作曲によるトラックは感動的なストーリーを一層心に染み込ませる役割を果たしており、主人公サルヴァトーレの成長や恋愛、懐かしい故郷の思い出といった多くの心情を音とともに描いています。静かなピアノの旋律やオーケストラの壮大なサウンドは、トトの内なる葛藤や切なさを鮮明に描き出し、強く共感させてくれます。
また、音楽によって醸し出される映画のノスタルジックな雰囲気はれ、映画館での観客の反応と音楽が重なる瞬間に映画がもつ魅力を再認識させてくれます。
この映画での音楽の使い方は非常に優れており、ストーリーの進行に不可欠であり、時にはセリフ以上のメッセージを伝えてくれています。モリコーネの音楽はただの背景ではなく、ストーリーとキャラクターの感情を深く結びつけ、映画としての美しさや感動を増幅させて多くの人の心に残りつづけます。
まとめ
本作は、映画への愛情や人生の時間と思い出の大切さ、人間関係と成長が交錯する感動的なストーリーが、とても印象に残る映画です。
見た時期、年齢によって受け取り方が大きく変わる映画であり、映画を愛するすべての人々に自身の過去や夢を思い起こさせ、共鳴させる力を持っています。
ジュゼッペ・トルナトーレによるこの名作は映画史に大きなインパクトを与え、観る者に深い感動とノスタルジックな気持ちを思い出させてくれます。ぜひこの機会に鑑賞してみてください。
公開年 |
1989年 |
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監督 |
ジュゼッペ・トルナトーレ |
キャスト |
フィリップ・ノワレ |