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健康・カラダのこと

高齢者が食べやすい食べ物とは?調理の工夫や食材の選び方も紹介

高齢者が食べやすい食べ物とは?調理の工夫や食材の選び方も紹介

高齢になると、嚥下機能の低下や嗜好の変化によって食事の内容が変化してきます。自分に合った食事を摂ることは、健康に長生きするために重要です。今回は、高齢者が食べやすい食べ物や食材の選び方を紹介します。調理の工夫で食べやすくなる方法も紹介するため、参考にしてみてください。

高齢者が食べやすい食事とは

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高齢者は、加齢とともに体のさまざまな機能が衰えてきます。食事に関わる機能も例外ではなく、噛む力や飲み込む力の低下、消化吸収能力の低下は誰にでも起こることです。さらに、それらの機能低下によって食事量が減ることにより、栄養バランスが乱れ、低栄養になる可能性もあります。

高齢者が食べやすい食事とは、さまざまな機能低下に配慮し、安全に安心して食べられる食事です。そのような食事を摂るために、食材選びや調理方法、好みや食欲への配慮などさまざまな観点から食事を考えていく必要があります。

高齢者の低栄養とは

高齢者の食事では、低栄養にならない工夫が必要です。低栄養とは、体を動かすために必要なエネルギーや筋肉、内臓などを作るたんぱく質、ビタミンなどが不足した状態を指します。

高齢者は、加齢による消化機能の低下、噛む力や飲み込む力の低下による食事量の減少、偏食や食欲低下による栄養不足などにより若い頃よりも低栄養のリスクが高くなります。

高齢者の低栄養が健康に与える影響

低栄養になると筋肉量が減り、立つ、歩くなどの日常的な活動に必要な運動能力が低下します。運動ができないと活動量が減り、食欲がわかず食事が食べられない、という負の連鎖が起こってしまうのです。

低栄養では骨折のリスクも増えます。高齢者の骨折は寝たきりや介護が必要な状態を招く場合もあり、生活の質を急激に低下させる原因です。さらに低栄養は、低血糖や低たんぱく血症、免疫力の低下などさまざまな障害を引き起こします。高齢者は、低栄養にならないよう常に注意しなければなりません。

高齢者が食べやすい食べ物

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ここでは、高齢者が食べやすい食べ物を紹介します。消化機能や嚥下機能の低下があっても、口から食べて栄養を補給することが大切です。ぜひ参考にしてみてください。

のどごしのよい食べ物

豆腐やゼリー、ヨーグルトなどのどごしのよい食べ物は高齢者に食べやすい食べ物です。食欲がないときでも食べやすく、食事に1品加えたり、補食として利用するのにも便利です。

とろみのある食べ物

ポタージュスープやあんかけ料理など、とろみのある食べ物も高齢者に食べやすい食べ物です。特に、飲み込む力が低下した高齢者は、サラサラの液体は誤嚥のリスクが高くなります。そのような場合でも、とろみをつけることで誤嚥の予防になります。

口の中でまとまりやすい食べ物

飲み込む際には、口の中で食塊(食べ物をまとめたもの)を作ってから飲み込む必要があります。しかし、加齢によって口の中の筋肉が弱くなると、食べ物をまとめるのが難しくなります。そのような場合でも、お粥やうどん、とろみのついた食べ物などは口の中でまとまりやすく、高齢者が食べやすい食べ物です。

適度な水分、油分のある食べ物

マヨネーズで和えた野菜、煮物などは、適度な水分と油分があることで、口の中がパサパサになることなく食べられるため、高齢者が食べやすい食べ物になります。水分や油分が少ない食べ物でも、マヨネーズやオリーブオイルを少し和えてから食べると、口の中でまとまりやすくなり食べやすくなります。

▶噛めない高齢者におすすめの軟らかい食べ物はこちら

高齢者が食べやすい食材の選び方

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高齢者が食べやすい食事を用意するには、食材選びが重要です。食べやすい食材を選ぶことで、調理の手間が省けたり、誤嚥のリスクを下げることもできます。

主食

主食は、ご飯やうどんがおすすめです。ある程度の水分と粘度があるため、高齢者にとって食べやすい食材です。ご飯は噛む力に応じてお粥にすると、より食べやすくなります。また、卵雑炊や鮭雑炊などご飯にたんぱく質を加えると、手軽なたんぱく質補給にもなります。

ご飯以外の食べ物では、うどんのほかにパンを食べることも可能です。パンはそのままだと食べにくいため、パン粥やフレンチトーストにしても食べやすくなります。ひと手間加えることで、食べやすい食事になるためぜひ試してみてください。

肉類

肉類では、脂の多い部位が食べやすくなります。ひき肉は軟らかく食べやすいですが、そのまま加熱するとバラバラになってしまうため、つみれ、つくね、ハンバーグなど軟らかくまとまった形にすると食べやすくなります。

魚介類

肉類と同様、魚介類も脂ののっているものが高齢者に食べやすい食べ物です。脂が少ないと、加熱した際に硬くなってしまいます。カレイ、タラなどの白身魚やブリ、鮭、鯖などの脂の多い部位がおすすめです。

野菜類

野菜類は、カボチャ、大根、なす、冬瓜、トマト、かぶなどを煮たり、蒸したりして軟らかくすると高齢者にも食べやすいです。トマトは皮を湯むきして食べるようにしましょう。白菜やほうれん草などの葉物野菜は、葉先の軟らかい部分を選び、歯や歯茎で潰せる程度まで茹でると食べやすくなります。手間はかかりますが試してみてください。

そのほかの食材

卵は軟らかい炒り卵や温泉卵などにすると高齢者が食べやすくなります。固茹で卵は誤嚥のリスクが高いため避けましょう。さらに、豆腐、プリン、ヨーグルト、ゼリーなども高齢者に食べやすい食べ物なため、食べ物で迷ったときには試してみてください。

高齢者の食事の食材選びに注意が必要な食べ物

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食材の中には、調理を工夫しても食べにくいものもあります。そのような食材は誤嚥のリスクも高いため、高齢者の食事ではできる限り避けた方が安全です。特に、介護が必要な高齢者にとっては危険性が高くなるため注意しましょう。

サラサラの食べ物

水、お茶、味噌汁などサラサラの液体は、早いスピードで咽頭へ落ちていくため、反射が遅い高齢者の方は誤嚥やむせの原因になります。液体には、少しのとろみをつけて口内でまとまりやすくすると、リスクが低くなります。

弾力のある食べ物

こんにゃく、イカ、タコ、餅などの弾力のある食べ物は咀嚼しづらく、高齢者にとっては口内で飲み込む状態まで整えるのが困難です。これらの食べ物もできる限り避けるのが安全です。

噛み切れない食べ物

きのこ類やゴボウなど繊維の多い野菜、海藻類は歯で噛み切って細かくするのが難しい食べ物です。これらは大きいまま飲み込んで喉に詰まらせたり、喉に貼り付いてむせたりする原因になるため注意が必要です。

水分の少ない食べ物

パン、クッキー、茹で卵など水分の少ない食べ物は口の中の水分を奪い、飲み込みにくい食べ物です。また、誤嚥やむせの原因にもなるため高齢者にとって食べにくい食品です。そのまま食べるのではなく、牛乳に浸したり、マヨネーズで和えたりなどの方法で工夫してから食べましょう。

硬く、バラバラになる食べ物

ナッツ類や大豆、せんべいなどの硬い食べ物、噛み砕いたときに口内でバラバラになる食べ物は誤嚥しやすく危険です。どうしても食べたいときには、細かく砕いてからお茶などの水分と一緒に食べるなどの方法で、工夫して食べましょう。介護が必要な高齢者の方は、リスクが高いため避けましょう。

高齢者の食事での調理の工夫

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高齢者が食べやすい食事を用意する際には、調理を工夫することがポイントです。普段の食事が少しの手間でも、食べやすい食事に変わるため知っておくと便利です。

食材を軟らかく煮る、蒸す

食材は軟らかく煮たり、蒸したりすると食べやすくなります。固さの目安は、舌や歯茎で潰せる固さです。歯が欠損している方や入れ歯の方でも食べやすいよう、軟らかくすることがポイントです。

野菜や肉は、繊維を断ち切る

野菜や肉の繊維はなかなか嚙み切れず、喉への引っかかりや誤嚥のリスクを高めます。調理の際にあらかじめ繊維を断ち切っておくと食べやすくなります。ただし、すじ肉やゴボウのように細かく切っても繊維が残るような食べ物は、食べないようにしましょう。

酸味の強い味付けは避ける

酢の物や柑橘類などの酸味が強い食べ物は、喉への刺激が強く、むせる原因となります。高齢者が食事中にむせると誤嚥につながり危険なため、酸味の強い味付けは避けましょう。ただし、酸味が全くダメというわけではありません。

梅干しやレモンのような適度な酸味は唾液の分泌を促してくれるため、唾液の分泌量が減少している高齢者にとってはメリットもあります。しかし、先述したとおり刺激が強くむせる原因になるため、味付けに使用したり少しずつ食べたりなどの工夫をして上手く取り入れましょう。

水分の多い食べ物はとろみをつける

飲み込む力が低下した高齢者の方にとって、水分の多い食べ物は誤嚥のリスクが高くなります。水分の多い食べ物には少しとろみをつけて食べるようにしましょう。しかし、とろみをつけすぎてしまうと、かえって誤嚥しやすくなってしまうため、粘度の調整には十分注意してください。

▶とろみ食の作り方はこちら

高齢者の食事の注意点

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高齢者が食べやすい食事には、食材選びや調理の工夫が大切です。さらに、嚥下機能の問題や介護が必要な場合もあるため、食事の際に注意するべきポイントを解説します。

嚥下機能に合った食事形態にする

味付けや好みが合う食べ物は、高齢者にとっても食べやすい食べ物です。しかし、嚥下能力に合った食事形態を考慮するようにしましょう。噛む力が低下している場合は、刻んだり、軟らかくし、飲み込む力が低下している場合は、ペースト状にしたり、とろみをつけたりなどの方法で食べやすい食事形態にして食べましょう。

栄養バランスも考慮する

食事は栄養バランスが整うよう、いろいろなものを食べましょう。ご飯、おかず、汁物のように一汁三菜を心がけると栄養バランスがよくなります。食べやすいからといって、好きな食べ物ばかりを食べたり、同じ食べ物ばかりを食べたりしていると栄養バランスが偏るため注意が必要です。

味付けも同じで、似たような味付けばかりだと、塩分や糖分の過剰摂取につながります。心と身体の健康を維持するためには、適量の必要な栄養素を食事から摂取するよう心がけましょう。

▶栄養バランスのよい食事にするポイントはこちら

食事の好みも大切にする

高齢者が食べやすいと思える食事には、食事の好みが大きく関わってきます。好みに合った食事を摂ることで食欲も増し、食事量が自然と増える効果もあります。食欲が低下したときには、高齢者の好きな食べ物を食卓に並べてみましょう。

介護食の場合でも、食べているものが自分の好きな食べ物であることを伝え、認識してもらうことで、食べる意欲の向上につながります。少し手間はかかりますが、食事の好みを把握し、食事に取り入れてみてください。

見た目も食欲のわくものにする

高齢者が食べやすい食事は、見栄えもよくして食欲のわくものにしましょう。「美味しそう」「食べたい」と思えることが、摂取量を増やし、健康にもつながります。旬の食材を取り入れる、彩りを豊かにする、盛り付けを工夫するなど、ひと手間加えて見た目も楽しめる食事にしましょう。

高齢者が食事を摂りやすくなるよう、食材選びと調理の工夫を心がけましょう

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この記事のまとめ

  • 高齢者はさまざまな原因によって食事量が減り、低栄養になるリスクが高い
  • 高齢者が食べやすい食事にするには、嚥下機能に合った食材を選ぶことが重要
  • 誤嚥の危険性が高い食材はできる限り避け、安全に食べられる食材を選ぶ
  • 高齢者が食べやすい食事は調理の工夫も必要で、食材を軟らかくしたりとろみつけたりすると食べやすい
  • 食事は高齢者の好みや楽しみを大切にすると食欲促進効果がある

高齢者の食事は、嗜好だけでなく嚥下機能や体調に合った食べ物を選ぶことが大切です。高齢者が食べやすい食材、食べにくい食材、調理方法を把握し、安全で安心な食事を摂りましょう。

監修者 SUPERVISOR
管理栄養士/食生活アドバイザー/フードスペシャリスト/食品衛生管理者 古山 有紀

武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科卒業。
管理栄養士として病院に勤務し、患者様の栄養管理及び栄養指導に従事。
糖尿病患者や腎臓病患者を中心に、病状の進行を防ぐための食事指導を行う。食事と健康、美容に関する記事を中心に管理栄養士ライターとして活動中。

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