弔辞の正しい書き方とは?基本構成や例文、マナーを徹底解説
ご遺族から弔辞を依頼されたものの、どのように書けばよいか分からないと悩む方もいるのではないでしょうか。本記事では、弔辞の正しい書き方について解説します。弔辞の基本的な構成や、故人との関係別の例文などをまとめています。ぜひ参考にしてみてください。
弔辞とは
お通夜や葬儀に参列した経験が少ない場合、弔辞とはどのようなものか分からないこともあるでしょう。そこでまずは、弔辞を読む意味や読む人の決め方などを解説していきます。
弔辞を読む意味
弔辞とは、葬儀の際に読まれる故人への追悼の気持ちを表した言葉です。故人を失ったことに対する悲しみや、故人へのメッセージなどを伝えます。生前の故人との思い出やエピソードを弔辞として話すことで、最後のお別れを行うという意味もあります。
弔辞を読む人の決め方
弔辞を読む人には、故人との関係が深い家族や友人が選ばれるのが基本です。弔辞には、参列者を代表して故人へ最後の言葉を伝えるという意味合いがあります。そのため、故人とのつながりが強く思い出の多い人が選ばれるのが一般的とされています。
ご遺族から弔辞を依頼された場合、何か特別な事情がない限りは引き受けた方がよいです。
弔辞の正しい書き方
弔辞を初めて任される方や、葬儀に参列した経験があまりない場合、弔辞の書き方が分からないこともあるでしょう。そこでここからは、弔辞の正式な書き方について解説していきます。こちらで紹介する書き方を踏まえて、弔辞を書きましょう。
弔辞用の紙に書く
奉書紙
弔辞を書く際は、奉書紙を使用するのが正式なマナーとされています。奉書紙とは、古来より公文書として使用されてきた和紙の一種です。高級感がある質感で、お布施や香典を包む際に使うことも多いです。
奉書紙に弔辞を書いたら、まず奉書紙を横長に置いて左右を合わせるように折ります。次に三つ折りにして、上下を合わせるように折れば完成です。
巻紙
巻紙とは、半切り紙を横長につないで巻いた紙のことです。楮という植物が原料ですが、近年はパルプ製の巻紙も増えてきています。楮製でもパルプ製でも、どちらを使っても問題ありません。巻紙に弔辞を書いたら、巻紙を少しずつ開きながら読めるように折り曲げましょう。折った巻紙は包紙や封筒に入れて持ち運びます。弔辞を裸のまま持ち歩くのはマナー違反となるため、注意が必要です。
便箋
奉書紙や巻紙が準備できない場合は、便箋に弔辞を書いても問題ありません。便箋を使用する場合は、白無地で落ち着いたデザインのものを選びましょう。便箋は、文房具専門店やデパート、コンビニなどで販売されています。また、弔辞を書いた便箋は白無地の封筒に入れて持参しましょう。
薄墨を使用する
弔辞は、筆ペンもしくは毛筆を使って薄墨で書くのが基本です。薄墨を使用して弔辞を書くのは、「故人を失った悲しみで涙が混じり、墨が薄くなった」ことを表しています。また、紙の上下や左右には十分な余白を持たせるようにしましょう。ただし、便箋に弔辞を書く場合は万年筆を使っても問題ありません。筆の扱いに慣れておらず綺麗に書けるか不安な場合は、パソコンで作成しても構いません。
3分〜5分ほどの長さにまとめる
弔辞は、3分〜5分ほどで読める長さにまとめましょう。弔辞を読むのは一人とは限らず、複数人が弔辞を読む場合も多いです。一人が長時間話してしまうと、葬儀の進行に影響する恐れがあります。一方、あまりにも弔辞が短すぎると失礼な印象を持たれる可能性があります。書いた文章を何度か読み返しながら、適当な長さになるよう調節する必要があるでしょう。
弔辞は保管されるため丁寧な文字で書く
読み上げた弔辞は祭壇に飾られたのち、ご遺族の手元に渡ります。ご遺族が読み返すこともあるため、読みやすいよう丁寧な文字で書きましょう。
弔辞の基本的な文章構成
ここからは、弔辞の基本的な文章構成や流れを紹介します。どういった構成で書けばいいか悩んでいる方は、こちらの文章を参考にしてみてください。
①導入・挨拶
まずはじめに、導入・挨拶を述べます。「〇〇さんの御霊前にお別れの言葉を申し上げます」といった挨拶が使用されます。
②自分と故人との関係
次に、自分と故人の関係を述べます。友人や会社の関係者への弔辞の場合は、どこで出会ったのかやどういった間柄だったのかを詳しく組み込むとよいでしょう。
③訃報を受けたときの心境
弔辞の構成には、訃報を受けたときの心境も組み込みましょう。「突然の訃報でまだ信じられない気持ちです」「以前は元気だっただけに、まだ訃報を受け入れられません」のように、悲しみを表現します。
④哀悼の気持ち
訃報を受けた際の心境のあとは、故人に対する哀悼の気持ちを述べます。「〇〇さんにもう会えないと思うと、深い悲しみを覚えます」のように、故人が亡くなったことに対する辛い気持ちを表現しましょう。
⑤故人とのエピソードや思い出
弔辞には、故人とのエピソードや思い出も記載しましょう。具体的なエピソードを述べることで、故人の人柄や生前の様子が参列者に伝わりやすくなります。故人の魅力が伝わる思い出深いエピソードを選び、構成に組み込んではいかがでしょうか。
⑥お別れの言葉
最後に、故人に対するお別れの言葉を述べます。お別れの言葉の前に、「〇〇さんとの思い出を胸にこれから頑張っていきます」のように、今後の思いを述べてもよいでしょう。
弔辞の書き方の例文【関係別】
家族・親族
家族や親族が弔辞を読む場合、飾らない正直な気持ちを述べるとよいでしょう。一緒に過ごした思い出や故人との具体的なエピソードなどを組み込むことで、参列者の心に届く弔辞になります。また、遺族を代表して故人の葬儀に参列していただいたことへの感謝を述べてもよいでしょう。
家族・親族が読む弔辞の例文
遺族を代表してご挨拶させていただきます。本日は祖父〇〇の葬儀にご会葬くださり ありがとうございます。 祖父とのお別れの日が来たことをまだ実感できないでいます。 あんなに元気で過ごしていたのに、こんなにあっけなくいなくなってしまうものかと放心しています。
祖父は厳しくも優しい人で 人生の先輩として多くのアドバイスをくれました。受験で私が苦しい思いをしているとき、厳しくも温かい言葉で激励してくれたことを今でも昨日のように思い出します。寡黙な祖父でしたが、その裏にある優しさにはいつも助けられていました。思い出せば、祖父と暮らしたこれまでの日々がとめどなくあふれてきます。
家族だけでなく周りの人から慕われていた祖父は私たちの誇りです。
祖父がもうこの世にいないということを受け入れるのには時間がかかりそうですが、これからも祖父にもらった助言を胸に生きていこうと思います。 どうか安らかに眠ってください。そして、私たちを見守っていてくださいね。
友人
友人への弔辞の例文
〇〇さんの御霊前に謹んでお別れの言葉を申し上げます。
訃報を耳にした時から受け入れられない気持ちでいっぱいです。本当にもう〇〇さんに会うことはできないんでしょうか。悲しみで胸がつぶれてしまいそうです。
〇〇さんとは高校の部活動で出会いました。同じ部活で切磋琢磨する中で意気投合し、共に行動するようになりました。部活動のことだけでなく、勉強や恋愛の相談にも乗ってもらったね。お互いの家を行き来して、夜遅くまでたくさん話をしたことを今でも鮮明に思い出せます。時にはぶつかることもあったけれど、〇〇さんの明るさ、優しさにいつも救われていましたよ。
いつもまっすぐで、誰よりも優しかった〇〇さん。私の人生には、いつもあなたがいました。
私とあなたはこれからもずっと一緒だと思って疑いませんでした。まさかこんなにはやく別れがくるなんて、悔しさと寂しさでいっぱいです。本当に残念ですが、あなたとの思い出を胸にこれから前を向いて生きていきます。今まで本当にありがとう。どうか安らかに眠ってください。心よりご冥福をお祈りします。
会社の関係者
会社の関係者への弔辞の例文
社員を代表し、〇〇さんの御霊前に謹んでお別れのご挨拶を申し上げます。〇〇さんの突然の訃報に接し、深い悲しみに包まれております。もう〇〇さんにお会いできないとは、まだ信じられません。
〇〇さんは営業部の部長として、我が社の発展に尽力されてきました。私も同じ部署に所属しており、新人の頃から長年お世話になってきました。誰に対しても常に笑顔で接し、私に寄り添ってくださった〇〇さん。時には厳しい言葉を頂戴することもありましたが、それは私のことを考えての優しさだとわかっていました。〇〇さんの温かさのお陰で、これまで仕事を続けることができました。
こうして〇〇さんのことを考えると、浮かんでくるのは優しく温かいお姿ばかりです。また共に仕事ができると信じて疑わなかったところに、悲しい知らせが入りました。
まだ〇〇さんの訃報を受け止めきれておりませんが、このような姿を見せては〇〇さんが心配してしまうと思います。これから〇〇さんの遺志を受け継ぎ、日々の仕事に励んでいきます。本当にお世話になり、職場の全員を代表して心よりお礼を申し上げます。〇〇さん、ありがとうございました。どうか安らかにお眠りください。
弔辞を書く際のマナー・注意点
ここからは、弔辞を書く際の注意点を紹介します。弔辞は故人に対する最後の言葉になるため、書き方は注意が必要です。
忌み言葉を避ける
弔辞を書く際は、忌み言葉を使わないように注意が必要です。忌み言葉とは、失う、切れる、相次ぎなどの不幸を連想させるような言葉です。日頃何気なく使用している表現も多いため、うっかり使用しないよう配慮しましょう。
重ね言葉を避ける
弔辞には重ね言葉も使わないよう注意しましょう。重ね言葉とは「くれぐれも」「しばしば」のように同じ言葉を繰り返す表現のことです。重ね言葉は「不幸が繰り返される」といった意味になるため、葬儀の場にはふさわしくありません。
生死を直接的に表現する言葉を避ける
生死を直接的に表現する言葉も、弔辞では使わないのが基本です。例えば、「生きていた頃」「急死」「悲運」「死ぬ」といった表現が当てはまります。このような言葉を使いたい場合は「ご逝去」「お元気な頃」「御生前」といった言葉に置き換えましょう。
葬儀の宗教・宗派に言葉遣いを合わせる
弔辞を書く際の注意点として、葬儀の宗教に合わせて言葉遣いを変えることが挙げられます。宗教・宗派によっては、使用できない表現があります。例えば、仏教で使用される「ご冥福をお祈りします」という表現は、浄土真宗やキリスト教、神道では使用されません。宗教によって亡くなった際のお悔やみの言葉が異なるため、注意が必要です。
故人の経歴に間違いがないよう事前に確認する
葬儀の前に、故人の経歴に間違いがないか確認しておきましょう。弔辞で誤った経歴を述べてしまうのは、故人に対してもご遺族に対しても失礼になります。情報が曖昧な場合はご遺族に確認するか、弔辞で触れないようにするのがおすすめです。
弔辞を依頼されている他の人と内容が重複しないようにする
弔辞が複数人に依頼されている場合、内容が重複してしまう恐れがあります。エピソードが重ならないよう、葬儀の前に他の人の弔辞の内容を確認しておくと安心です。
書き方や例文を参考にして弔辞を作成しましょう
この記事のまとめ
- 弔辞とは、故人への追悼の気持ちを表す言葉で、葬儀や告別式の際に読まれる
- 弔辞を読む人は、故人との関係が深い人が選ばれる
- 弔辞は、奉書紙や巻紙、便箋などに薄墨を使って書く
- 弔辞は3分〜5分ほどの長さにまとめるのが一般的
- 弔辞の文章は、導入・挨拶、故人との関係、訃報を受けた際の気持ちと哀悼の言葉、故人とのエピソード、お別れの言葉といった流れで構成する
- 弔辞を書く際は、忌み言葉や重ね言葉、生死を直接的に表現する言葉を使わないよう注意する
- 葬儀の宗教・宗派に言葉遣いを合わせる
弔辞は、お葬式で故人に伝える最後のお別れの言葉です。弔辞の書き方をしっかりと踏まえ、悔いのないお別れができるようにしましょう。本記事で紹介した文章の流れや例文を参考に、心のこもった弔辞を作成してください。