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健康・カラダのこと

ワンオペ介護とは?日本の現状や一人で悩まず負担を軽減する方法を解説

ワンオペ介護とは?日本の現状や一人で悩まず負担を軽減する方法を解説

ワンオペ介護とは、ひとりで介護せざるを得ない状態のことをいいます。さまざまな負担が介護者に重くのしかかるため、いかに負担を軽くするかが重要です。そこで本記事では、ワンオペ介護を続けることのデメリットや具体的な負担軽減方法を紹介します。

監修者 SUPERVISOR
介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級 池田 正樹

東北公益文科大学卒業。その後、介護保険や障害者総合支援法に関する様々な在宅サービスや資格講座の講師を担当した。現在は社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームの生活相談員として、入居に関する相談に対応している。在宅・施設双方の業務に加えて実際に家族を介護した経験もある。高齢者介護分野のみならず、障がい者支援に関する制度にも明るい。

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ワンオペ介護とは

そもそも「ワンオペ」とは「ワン・オペレーション」の略で、全ての仕事がひとりの介護者に集中して過剰な負担になってしまうことを言います。ワンオペ介護とは、そこから派生した言葉です。

具体的には、以下のような状態を指します。

ワンオペ介護とは

  • 身体介護・家事・金銭管理・通院など全ての介助をひとりの介護者が担っている状態
  • 老人ホームなどの介護施設において、多数の利用者を職員ひとりでケアしている状態

ワンオペ介護になると休息が取りづらく、ミスもしやすくなります。そうすると介護者自身の心身にも悪影響を及ぼし、最終的に被介護者にも悪影響を及ぼすことになりかねず、社会問題となっています。

ワンオペ介護の現状

ワンオペ介護が続くと、介護者の体調が悪くなって介護ができず共倒れになってしまったり、介護施設の場合は職員の心身故障や離職の原因になってしまったりします。ここからは、日本におけるワンオペ介護の現状について解説します。

日本は少子高齢化によってワンオペ介護が増加

日本では、少子高齢化によって15歳〜64歳の生産年齢人口が減少していることが社会問題となっています。それに加えて、生活の多様化によって多世代が同居している世帯も減少しています。さらに人口が都市部に集中することにより、特に地方では高齢者のみの世帯が急激に増加しているのです。

その結果、ケアに対応できる介護者が同居者や近くに住む近親者に限られてしまうため、ワンオペ介護の状態になってしまいます。

介護施設でも人材不足が要因でワンオペ介護に

深刻な人材不足により、老人ホームなどの介護施設においてもワンオペ介護を強いられているという現状があります。特にスタッフの悩みとなっているのが、夜勤です。

介護施設の夜勤は特に心身の負担が大きく、スタッフの悩みとなっています。なぜなら、以下のような業務をひとりで担う過酷な状態となっているからです。

夜勤者の主な業務

  • 日勤者からの引き継ぎ
  • 夕食介助
  • 就寝介助(臥床前の口腔ケア・排泄・更衣・臥床などに関する介助)
  • 定時での巡回やオムツ交換
  • 随時のコール対応
  • 記録の作成や掃除などの雑用
  • 起床介助(起床時の更衣・洗顔・移動や移乗などに関する介助)
  • 朝食の準備
  • 朝食介助

介護保険制度は公定価格であり、介護報酬の最大値が決まっています。さらに、求人を出しても人が集まらず、常に人員不足の状況です。その一方、厚生労働省では夜勤帯の人員配置基準を25:1としています。

つまり、多くの施設が最低限の「概ね25人の入居者を職員ひとりで対応する」ことを強いられているのが現状です。

平成12年 厚生労働大臣が定める夜勤を行う職員の勤務条件に関する基準 (厚生労働省)

ワンオペ介護から生じる問題点

ワンオペ介護は、介護者にさまざまな負担がかかります。ワンオペ介護が続くと生活に問題が生じるため、対策を講じることが必要です。ここでは、ワンオペ介護を続けることで生じる問題点を具体的に解説します。

身体的な負担

ワンオペ介護は、文字通り介護者に身体介護の負担が集中します。身体介護は入浴・移乗・食事・排泄・口腔ケアなど多種多様です。特に身体介護は要介護者の体重がのしかかるため、腰・肩・手首・膝などの関節痛の原因にもなります。

さらに、日本の住宅には段差が多いことも、身体介護における負担増の原因となっています。介護者自身の将来のためにも、身体介護の負担を軽減する必要性があります。

精神的な負担による家族関係の悪化

ワンオペ介護による負担は、介護する家族の心にも影響を与えます。親の介護が必要になったときに配偶者から協力を得られなかったり、親戚から介護の方針に口を出されて八方塞がりになることもあります。介護による精神的なストレスが重なると些細なことで怒りっぽくなったり、介護を投げ出したくなったりしてしまうでしょう。

こうなると家族関係が悪化し、家庭が崩壊することもありえます。ワンオペ介護は特定の家族に相当な精神的ストレスがかかるため、対策が必要不可欠です。

金銭面の負担

介護が必要になった親に貯蓄や財産がない場合、介護する子供世代が費用を補填しなければなりません。特にひとりっ子でワンオペ介護の場合は、金銭的な負担もひとりに集中します。

また、介護する時間を取るために介護離職が頭をよぎることもあるでしょう。そこで仕事を辞めたりしたら、介護者自身もいずれ経済的にひっ迫してしまいます。

いったん介護離職をしてしまうと積み上げたキャリアが途切れてしまうため、復職や再就職も困難です。ワンオペ介護は、自身の将来にも禍根を残しかねません。

介護者自身の生活との両立が困難

ワンオペ介護のデメリットとして、介護者自身の生活との両立が困難であることも挙げられます。ワンオペ状態が続くと、介護者自身の時間が奪われてしまいます。友人や地域住民などとの交流がなくなると、次第に人が離れていきます。また介護離職をした場合、ますます社会から孤立してしまうでしょう。

確かに親の介護は大切です。しかし、ワンオペ介護によって社会との繋がりが閉ざされてしまえば、介護が終わったあとに残るのは介護者の社会的孤立です。介護と介護者自身の生活の両立も、解決が必要な重要な課題といえるでしょう。

ワンオペ介護は限界の見極めが難しい

ワンオペ介護には、介護者に蓄積している疲労やストレスの度合いが分かりづらく、限界が見極めにくいという問題もあります。ワンオペ介護を続けている人は孤立しがちで周囲の目が届きにくくなるだけでなく、「頼れる人がいない」という考えから頑張りすぎてしまう傾向にあるからです。

ワンオペ介護で負の連鎖に陥りやすい人には、以下のような特徴があります。

ワンオペ介護で疲弊しやすい人の傾向

  • 親に優しく、頼みを断りづらく感じる人
  • 情に流されやすい人
  • 真面目で義理堅く、几帳面な人
  • 人を頼るのが苦手な人

ワンオペ介護は、もはや社会問題です。社会的孤立を防ぎ、声を上げられずにいる人の声をいかに顕在化させていくかが重要な課題です。

ワンオペ介護の負担を軽減する方法

ワンオペ介護で悩んでいる人は限界を感じる前に専門家へ相談することが重要です。そこで、ワンオペ介護の負担を軽減するための方法や専門的な相談先を紹介します。

地域包括支援センターなどの専門家に相談する

地域包括支援センターは、地域の高齢者を支える総合相談窓口です。主に保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員などの専門職が配置され、さまざまな相談に対して連携しながら対応しています。その範囲は多岐にわたり、主な業務内容は以下のとおりです。

地域包括支援センターの主な業務内容

  • 地域に住む高齢者を対象にした介護予防や健康増進に関する活動
  • 介護や支援を必要とする人に関する介護相談や要介護認定の代行申請
  • 市区町村が実施する福祉サービスの相談・申請窓口
  • 介護保険法に基づく「事業対象者」や要支援認定者のケアマネジメント
  • 成年後見制度などの権利擁護制度の利用支援
  • 高齢者虐待の早期発見や予防対策
  • 地域のケアマネジャーに対する助言や指導

地域包括支援センターでは、自らの機関のみで対応が困難な場合、より専門的な支援先の紹介も行っています。また、介護者がセンターを訪問して相談するだけでなく、自宅を訪れる訪問相談にも対応しています。ワンオペ介護のことで困ったら、まずは多方面の専門家が在籍している地域包括支援センターに相談するとよいでしょう。

在宅で利用できる介護保険サービスを活用する

在宅のワンオペ介護で困っている場合は、保険適用によって専門的な介護を受けられる介護保険サービスを活用しましょう。要介護者自身の収入に応じた1割〜3割の安価な自己負担で、さまざまな介護サービスを利用できます。在宅の高齢者が利用できる介護保険サービスの例は、以下のとおりです。

在宅高齢者が利用できる介護保険サービスの例

  • 自宅にて身体介護や家事援助、医療ケアを受けられる訪問系サービス
  • 日帰り・送迎付きで施設に通って介護やリハビリを受けられる通所系サービス
  • 短期間施設に入所することで介護者の負担を軽減する短期入所サービス
  • 訪問・通所・短期入所を同一施設で利用できる多機能系サービス
  • 医療系専門職から自宅療養に関する訪問指導を受けられるサービス
  • 福祉用具のレンタルや、特定福祉用具購入・住宅改修に関する助成金制度

※利用できるサービスの種類・内容・利用上限は、要介護認定の結果により異なります

介護保険サービスを利用するためには、住民票のある市区町村から要介護認定を受けた後、認定の区分に応じて担当を依頼する地域包括支援センターや居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)と契約を結ぶ必要があります。

要介護認定の申請は、最寄りの地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に相談すると、申請代行から介護相談まで一貫して対応してもらえるためおすすめです。

▶︎詳しい介護サービスや公的制度はこちら

減免制度を活用し、費用負担を抑える

ワンオペ介護によって親の介護費用の負担が必要になったときは、まず減免制度の対象になるかを確認しましょう。担当のケアマネジャーや地域包括支援センター、市区町村の高齢者介護担当窓口に相談すると各種減免や給付に関する制度を紹介してもらえます。

具体的には、以下のような減免制度があります。

主な介護費用の減免制度

  • 施設利用時の実費負担を抑える「負担限度額認定制度」
  • 一定の上限を超えた場合に介護費用の一部を還付する「高額介護サービス費制度」
  • 最低限の生活を保証する最後の砦「生活保護」

※利用には、それぞれの制度に応じた条件を満たす必要があります。

ここで重要なのは、実際に減免対象となる条件を満たしている状況でも、申請しなければ減免を受けられない点です。また、多くの制度が申請日もしくは申請日が属する月から減免の対象となるため、過去に支払った分まで減免を受けることはできません。少しでも気になったら、早めに相談することがポイントです。

近親者や近所の方に協力を求める

ワンオペ介護で困ったときは、近親者や近所の方に相談するのも選択肢の一つです。近親者であれば介護に協力してくれる可能性があり、近所の方や知人に相談することで体験談やよい施設の情報なども聞けるかもしれません。また、誰かに悩みを相談するだけでも心が軽くなることもあるでしょう。

介護は先が見えない長丁場です。決してひとりで抱え込もうとせず、周囲に協力を求めるという姿勢がワンオペ介護から脱却する第一歩といえます。

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辛さを感じたときは、老人ホームも早めに検討する

たとえ頑張って在宅介護を続けていても、いずれは限界を感じるときが来ます。なぜなら、要介護者の心身状況は一定ではなく、加齢とともに生じる認知症の進行や転倒による骨折・脳卒中の再発などによって徐々に悪化していく可能性が高いからです。

現在では、終の棲家である「特別養護老人ホーム」やリハビリに特化した「介護老人保健施設」、医療ケアに特化した「介護医療院」などの介護保険施設をはじめ、さまざまな需要に対応できる老人ホームが充実しています。入所までは待機が必要になることも多いため、限界を迎える前に施設探しを始めることをおすすめします。

▶︎介護が難しくなった時はこちら

ワンオペ介護で悩んでいるときは、無理せず専門家へ相談しましょう

この記事のまとめ

  • ワンオペ介護とは、介護者ひとりに負担が集中している状態を指す
  • ワンオペ介護は近親者が陥りやすく、プロの介護現場でも生じている
  • ワンオペ介護は問題点が多いため、避けたほうがよい
  • 専門機関に相談し、ワンオペ介護の負担を軽減するのがおすすめ

ワンオペ介護は介護者の心身にとって大きな負担となるだけでなく、社会的孤立を引き起こす原因にもなります。まずは最寄りの地域包括支援センターに相談して、要介護認定を受けましょう。その結果に応じて介護保険サービスや費用減免制度を活用しながら、負担を分散させていくのが一般的な解決策です。

辛いときに誰かを頼ることは、恥ずかしいことではありません。疲労が積み重なると共倒れになるというリスクもあるため、介護のことで悩んだときは早めに専門家へ相談しましょう。

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