医師が行う死亡確認の手順とは?死亡宣告後に家族がすべき手続きもわかりやすく解説
人の死は、一般的に医師による死亡確認をもって判定されます。本記事では、医師が行う死亡確認の手順・やり方について詳しく解説していきます。死亡宣告後に家族がやるべき手続きについても確認するので、参考にしてください。
死亡と判断される基準
死亡確認は、「本当に亡くなっているのか」「生存の可能性はないか」を判断する目的で行われます。死亡確認は厳格なルールのもとで行われ、判定基準は以下です。
死の三徴候
医師による患者の死亡確認は、「死の三徴候」という基準によって行われます。
死の三徴候は、以下の3つです。
死の三徴候
- 心臓が完全に停止している
- 呼吸が完全に停止している
- 瞳孔が散大しており、光への反応が得られない
この3つの徴候全てが見られた場合、医師によって死亡が確認されます。死の三徴候による死亡確認は救急隊員や看護師ではなく、医師のみが行えるものです。
また、死の三徴候の中に脳死は含まれません。脳死とは脳全体の機能が停止し、人口呼吸器なしでは心臓も停止してしまう状態のことです。「脳死を人の死とするか」については議論が続いており、日本では、臓器を提供する意思がある場合に限って「脳死を人の死」としています。(2024年3月現在)
社会死の6つの基準
救急隊員が死亡確認を行う場合は、社会死の基準が適用されます。以下の基準が6つ全て満たされた場合のみ、死亡と判断されます。
社会死の6つの基準
- 意識レベルが300である
- 呼吸が全く感じられない
- 脈拍が全く感じられない
- 体温が異常に低い
- 瞳孔が散大している
- 死斑もしくは死後硬直が出ている
意識レベル300は「刺激や痛みに対する反応が全く見られない状態」のことです。また、以前は「死斑の確認」と「死後硬直」がそれぞれ別項目となっていましたが、現在は1つに統一されています。
一般的に、社会死による死亡判断をできるのは救急隊員のみです。救急隊員により死亡と判断された場合、病院へは搬送されません。
医師による死亡確認の手順・やり方
ここからは医師による死亡確認の方法について説明します。
①心拍の拍動および呼吸停止の確認
死亡確認の最初は、患者の心拍の拍動および呼吸の確認です。医師が聴診器を使って胸部の聴診を行い、呼吸音がしているか、心音があるかどうかを確認します。
聴診器で呼吸音や心音が確認できなかった場合、頸動脈および橈骨動脈の触診と心電図モニターで脈拍を確かめます。人工呼吸器をつけている患者の心拍および呼吸停止の確認は、専門医や主治医の判断のもとで慎重に行われます。
②脳機能の停止の確認
次に、瞳孔の反応によって脳機能が停止していることを確認します。医療用ペンライトの光を患者の目に当て、瞳孔の直径が変化しないか(対光反射)、瞳孔が広がりきっているかを確認します。
③異常死ではないかの確認
呼吸や脈拍、脳機能の停止が確認されたら、患者の首の周りや頭部付近に外傷がないか確認します。これは死亡が自然死か病死であるかを判断する目的で行われるものです。万が一異常死と判断された場合は、警察による検死が必要となります。
④死亡時刻の確認・死亡宣告
死亡が確認されたら、時刻の確認と家族に対する死亡宣告が行われます。死亡宣告では、「お亡くなりになりました」「死亡が確認されました」といった言い回しが一般的です。
死亡宣告後に家族がやるべき手続き【宣告後〜ご遺体の搬送まで】
病院で医師による死亡確認後、死亡宣告が行われたら、遺された家族はご遺体を搬送する必要があります。亡くなった方は病院に安置できないため、短時間で搬送の手続きを行わなくてはいけません。
ここからは、死亡宣告からご遺体の搬送までに家族が行うべき手続きや手順、やり方について解説していきます。
①死亡診断書を受け取る
病院で患者が亡くなると、臨終を確認した医師がカルテを参照しながら死亡診断書を書いてくれます。死亡診断書は今後の手続きで必要な書類のため、忘れずに受け取りましょう。自宅で家族が亡くなった場合は、死亡診断書に代わって「死体検案書」が警察から渡されます。
受け取った死亡診断書は、市区町村役場に提出します。死亡診断書に付属している死亡届に、前もって必要事項を記入しておきましょう。死亡診断書の提出は、家族以外でも問題ありません。葬儀を依頼する会社のスタッフや知り合いに任せることも可能なため、時間に余裕がないときは信頼できる人に提出をお願いしましょう。
手続きが完了すると、役所から火葬許可証が発行されます。
②末期の水をとる
末期の水とは、最期の時を迎えた方ののどを潤し苦しみを軽くして安らかに旅立ってもらう目的で、故人の唇を水で湿らせる儀式です。本来は死亡確認前のタイミングで行われていましたが、現在は死亡が確認された後に行うのが一般的です。
病院で亡くなった患者の場合、自宅や葬儀場などにご遺体を搬送した後に行われることもあります。
末期の水の手順
- 箸の先に脱脂綿を巻き、上からガーゼを巻き付ける
- 白い糸を使ってガーゼを縛る
- お椀に水を入れ、ガーゼを浸す
- ガーゼを故人の上唇につけ、左から右に動かす
- 次に下唇を左から右に潤す
③ご遺体の清拭
末期の水をとった後は、ご遺体の清拭が行われます。こちらも病院で亡くなった患者の場合は看護師が準備を進めてくれるため、家族が行う必要はありません。なお、病院では行わず、自宅や葬儀場などにご遺体を搬送した後に行われることもあります。
ご遺体の清拭の手順
- 故人のまぶたを優しく手でさすり、目を閉じさせる
- ぬるま湯かアルコールに浸してよく絞ったタオルでご遺体の全身を拭き上げる
- ご遺体から体液が漏れ出るのを防ぐため、肛門や耳、鼻などの穴に脱脂綿を詰める
- 胸の上で故人の手を組ませる
④葬儀社を決める
故人の臨終が確認されたら、葬儀社を決定する必要があります。葬儀プランや料金などを確認しながら、どこに依頼するか決めましょう。
⑤ご遺体の搬送先を決める
死亡が確認されたら、ご遺体の搬送先を決めなくてはいけません。清拭が終わるとご遺体は霊安室に移されますが、霊安室に安置できるのは長くても24時間までです。なるべく短時間でご遺体の安置場所を決めましょう。自宅に搬送しようと考えている場合は、安置する場所はあるか、搬送経路は確保できているかの確認も必要です。
⑥家族や親戚に訃報を知らせる
ご遺体の搬送場所が決まったら、故人の看取りに参加していない家族や親戚に訃報を伝えます。ここで訃報を知らせるのは、臨終の前に危篤を告げた人や葬儀に携わる人など関係が深い人です。それ以外の方には、お通夜や葬儀の日程が確定してから訃報を伝えるようにしましょう。
⑦菩提寺へ連絡する
仏教の場合、死亡確認後にやることとして、菩提寺への連絡が挙げられます。ご遺体を自宅や斎場の安置場所に搬送した後、菩提寺の僧侶に枕経(枕勤め)をお願いする必要があります。そのため、死亡宣告がされたらなるべく短時間で菩提寺の住職に連絡しなくてはいけません。
菩提寺がない場合は、信仰宗派の寺院や葬儀社から紹介してもらったお寺に依頼するのがおすすめです。インターネットの僧侶派遣サービスを利用する方法もあります。
⑧治療費の精算をする
病院で亡くなった場合は、治療費の精算を行います。故人が入院していた間にかかった治療費は、相続する財産から充てることが可能です。相続財産から費用を捻出する場合は、病院から領収書をもらいましょう。
死亡宣告後に家族がやるべき手続き【ご遺体の搬送後〜葬儀まで】
続いて、死亡宣告後に家族がやるべき手続きのうち、ご遺体の搬送から葬儀までに家族が行う内容ついて説明します。
①ご遺体の安置
安置場所にご遺体を搬送したら、布団にゆっくりと寝かせます。このとき、ご遺体の損傷を防ぐ目的でドライアイスを当てます。ドライアイスは葬儀社が手配してくれるため、家族が用意する必要はありません。布団にご遺体を安置するときは、頭が北になる位置で寝かせます。
②枕経
ご遺体を布団に寝かせたら、寺院の僧侶に連絡して枕経(枕勤)を行ってもらいます。法名や法号などの戒名を授かっていない場合は、このタイミングで戒名を授与してもらうことが一般的です。
③湯灌
枕経が終わったら、湯灌を行います。これは、ご遺体を清める目的でお風呂に入れる儀式です。葬儀社によっては湯灌がプランに含まれていない場合もあるため、湯灌が必要な場合は前もって相談しておきましょう。
④納棺
湯灌が終わったら、ご遺体を棺に納める「納棺」と呼ばれる儀式を行います。葬儀社のスタッフの説明に従って棺にご遺体を納め、故人が愛用していたものを入れて蓋を閉めます。
⑤葬儀の打ち合わせ
納棺の儀式が終わったら、葬儀社とお通夜や葬儀の打ち合わせを行います。火葬場や斎場の空き状況や僧侶の都合などと照らし合わせながら、日程や場所などを決めていきます。
⑥葬儀に関する連絡
葬儀の詳細が決まったら、葬儀に参列してほしい方に連絡します。喪主が代表して連絡を行うのが一般的ですが、連絡する相手が多く手が回らない場合は、家族と手分けして連絡しても構いません。
死亡が確認されたら、速やかに葬儀までの手続きを進めましょう
この記事のまとめ
- 死亡と判断される基準は、死の三徴候と社会死の6つの基準がある
- 医師による死亡確認は、心拍・呼吸・瞳孔反射があるかを確認する
- 死亡が宣告されたら、末期の水や清拭が行われる
- 死亡宣告後は、速やかに葬儀社やご遺体の搬送先を決める必要がある
- ご遺体の搬送後は枕経や湯灌、納棺などを行い、葬儀の準備を進める
人の死は、厳密な決まりのもとで確認されます。医師により死亡が確認された後は、遺された家族はさまざまな手続きをしなければなりません。本記事で解説した死亡確認の方法ややるべきことを参考に、速やかに葬儀の準備に取り掛かりましょう。