生前戒名とは?メリットや費用、注意点などを理解して検討しよう
戒名は亡くなった後に寺院から授かるのが一般的ですが、実は生前に戒名をもらうことも可能です。本記事では生前戒名の意味やメリット、かかる費用の目安について解説します。生前戒名を授かる際の注意点もまとめているので、合わせて確認しましょう。
生前戒名とは?
亡くなる前に戒名をもらうこと
戒名(かいみょう)とは仏教において、亡くなったあとに付けてもらう名前のことです。一般的には、故人の遺族がお寺の僧侶に依頼し、戒名をもらうという流れになります。その中でも「生前戒名」は、存命のうちに戒名を授かることを意味します。
仏教では縁起が良いとされる
生前戒名はあまり知られていませんが、実は仏教において縁起が良いとされています。仏教では、生きている間に葬儀や供養の準備をすることを「預修(よしゅ)」「逆修(ぎゃくしゅう)」と言います。生前に行うことによって7倍もの功徳を得られるとされているため、生前戒名は仏教において良いものとされています。生前戒名のほかにも、存命のうちにお墓を建てることも預修にあたる行いです。
生前戒名を授かるメリット
生前戒名が仏教において縁起の良いことだと説明しましたが、そもそも本当に生前戒名を授かる必要はあるのでしょうか?ここからは、生前戒名を授かるメリットについて詳しく紹介していきます。
ある程度望む戒名がもらえる
生前戒名を授かるメリットとして、ある程度望んだ戒名がもらえることがあります。基本的に戒名は、その人にふさわしい名前を僧侶が検討してつけるもので、完全に希望が通るわけではありません。しかし、戒名の位をどれにするかを決めたり、入れて欲しい文字などを伝えたりすることは可能です。戒名に対する要望がある方は生前戒名を検討してみるとよいでしょう。
費用を抑えられる
生前戒名は、亡くなった後に授かる通常の戒名よりも、費用を抑えられるというメリットもあります。費用が安くなるのは、生前戒名をつけることでお寺の檀家になってもらえるというお寺側のメリットがあることや、時間に余裕を持って戒名をつけられることが理由です。
また、生前戒名の場合は費用に納得した上で支払える、というメリットもあります。亡くなった後は四十九日までに本位牌を作成する必要があるため、それまでに戒名を授からなくてはいけません。そのため、急いで授かった戒名に対して高額な費用を請求されても支払ってしまう方が多いようです。しかし、生前戒名の場合は急いで戒名を決める必要がないため、じっくり費用について検討できます。
家族の負担を軽減できる
生前戒名を授かっておくと、あなたが亡くなった後の家族の負担を軽減できるというメリットもあります。一般的に、戒名を授かる際は、故人が亡くなってからお通夜の前までに、お寺の僧侶へ依頼しなくてはいけません。遺族はお通夜・葬儀の準備や知り合いへの連絡など、さまざまな仕事で手一杯になっています。生きている間に戒名を授かっておけば遺族の仕事が減り、負担を軽減できるのです。
また、亡くなった後に戒名を授かる場合は、遺族が僧侶へのお布施を支払う必要があります。一方、生きている間にお布施を支払って生前戒名を取得しておけば、家族の経済的な負担を減らすことにもつながります。
生前位牌を作成できる
生前位牌を作成できるというのも、生前戒名を授かるメリットの一つです。基本的に、亡くなった人の近親者が戒名をもらい、位牌を作るという流れが大半です。しかし、生前に戒名を授っておけば、存命のうちに自分で位牌を作ることが可能になります。生前位牌は、上述した「逆修」「預修」の一つで、仏教の教えでは徳が高い行いとされています。
生前戒名を授かるのにかかる費用
生前戒名は、死後に戒名を授かるよりも費用が安くなると上述しましたが、具体的にどの程度の費用がかかるのでしょうか?ここからは、生前戒名に必要な費用について解説します。
位号の階級によって異なる
戒名には「位号」と呼ばれる階級があり、位の高さによって費用が異なります。最も階級が低いのが「信士」「信女」などで、その上には「居士」「大姉」などの位号があります。また、「院信士」「院信女」など院が付くものは、費用が高くなります。
死後に授かる戒名は、「信士」「信女」が20万円〜50万円ほど、「居士」「大姉」の場合は50万円〜80万円ほどです。階級の高い「院信士」「院信女」は80万円〜100万円ほどかかり、「院居士」「院大姉」は上限が定められていません。しかし、生前戒名の場合は時間をかけて戒名をつけられることや、檀家になってもらえるというお寺側のメリットから、この費用が安くなる傾向にあります。ただし、どの程度費用が安くなるかはお寺によって異なります。
宗派ごとに異なる
戒名の相場は、宗派によっても異なります。浄土宗や真言宗、天台宗、曹洞宗、臨済宗では、最も安い戒名で15万円〜20万円ほどかかります。浄土真宗は他の宗派よりも費用が安く、10万円ほどから生前戒名を授かることが可能です。また、日蓮宗は「院」の文字がついている戒名でも、相場は15万円ほどとなっています。
宗派別の戒名
戒名の付け方や位号などの階級は、宗派ごとに異なります。ここからは、宗派別の戒名について詳しく紹介します。
浄土宗
浄土宗の戒名は、院号・誉号・戒名・位号の四つの要素で構成されています。「誉号(よごう)」とは浄土宗でのみ用いられており、基本的には浄土宗の教えを受けた人しか使用できません。また、「梵字(ぼんじ)」と呼ばれる文字を戒名に入れる場合もあり、文字数は6〜10文字ほどになります。
天台宗
天台宗の戒名は、院号・道号・戒名・位号の四つの要素から構成されています。天台宗には信徒全てに戒名を授けるという教えがあるため、生前に戒名をもらっている人も多い宗派です。また、天台宗では位牌に戒名を記す際、最上部に阿弥陀仏・大日如来・地蔵菩薩のいずれかを示す梵字を刻むこともあります。
曹洞宗・臨済宗
曹洞宗と臨済宗の戒名は、院号・道号・戒名・位号の四つの要素で構成されています。曹洞宗と臨済宗は戒律を重視するのが特徴です。
日蓮宗
日蓮宗では「日蓮上人に導かれて法華経の道に入る」という教えから、戒名を「法号」と呼ぶのが特徴です。法号は、院号・道号・日号・位号の四要素から構成され、7〜9文字ほどの長さになります。道号の部分で、男性は「法」、女性は「妙」という文字がつくことが多いのも特徴の一つです。
真言宗
真言宗の戒名は、上述した天台宗と同じく院号・道号・戒名・位号の四つの要素から構成されます。戒名の最初に梵語を付けることも多く、基本的に戒名の長さは9文字です。真言宗で使用する梵字は地蔵菩薩か大日如来を示すもので、阿弥陀如来を示す梵字は使われません。
浄土真宗
浄土真宗には、「戒律を守ることよりも阿弥陀如来を信仰する」という教えがあり、戒名のことを「法名」と呼びます。法名では位号をつけず、院号と法名の6〜7文字で構成されるのが特徴です。法名をつける際は、仏陀の弟子になったことを意味する「釋(しゃく)」という文字が使用されます。
宗派別の戒名 | |||
---|---|---|---|
宗派 | 戒名 | ||
浄土宗・天台宗・曹洞宗・臨済宗・真言宗 | 〇〇院居士 〇〇院大姉 〇〇居士 〇〇大姉 〇〇信士 〇〇信女 |
||
日蓮宗 | ○○院居士 ○○院大姉 ○○院日信士 ○○院日信女 ○○院信士 ○○院信女 ○○信士 ○○信女 |
||
浄土真宗 | 〇〇院釋 〇〇院釋尼 〇〇釋 〇〇釋尼 |
生前戒名を授かる方法
では、実際に生前戒名を授かるにはどのような手順を踏めばよいのでしょうか?生前戒名を授かるには、主に以下の3通りの方法があります。
1.菩提寺に相談する
先祖代々お世話になっている菩提寺がある場合は、生前戒名をもらえるか聞いてみましょう。前もって相談すれば、ほとんどのお寺で生前戒名をいただけるでしょう。菩提寺と相談する際は、事前に戒名の位号をどの階級にするか、どんな文字を入れたいかなどの希望を固めておくと、スムーズに話を進めることができます。
2.寺院の檀家になって戒名をもらう
菩提寺がない場合は、近くのお寺の檀家になって戒名をもらうという方法があります。基本的に生前戒名は、檀家になっている人にしか行わないという寺院がほとんどです。今後も檀家として付き合い続けることを考えた上で、生前戒名を受ける寺院を探すようにしましょう。
お寺へ直接訪問して相談する、もしくはホームページなどで生前戒名を受け付けている寺院を検索してもよいでしょう。
3.戒名授与サービスを利用する
「生前戒名を取得したいけれど、寺院の檀家にはなりたくない」という方には、戒名授与サービスを利用することをおすすめします。戒名授与サービスとは、寺院の檀家にはならず、一部の寺院や僧侶派遣会社などから戒名を授けてもらう方法です。料金が明確に決まっているため費用が準備しやすく、一般的な生前戒名より値段が安いことがほとんどです。さらに、現金での精算だけでなく、後払いやクレジットカード払いなどにも対応してもらえるのも利点です。
生前戒名を授かる際の注意点
上述の通り生前戒名にはさまざまなメリットがありますが、授かるにあたっていくつか注意点もあります。ここからは、生前戒名を受ける際の注意点を解説します。
親族に相談しておく
生前戒名を検討している場合は、必ず親族に相談しておきましょう。もし生前戒名を受けたことを誰にも話していないと、あなたの死後に家族が再度戒名をいただくことにつながりかねません。費用が無駄になってしまうだけでなく、望んだ戒名を授かれないこともあるため、必ず配偶者や子供など身近な人と情報を共有しておいてください。
菩提寺がある場合は、その寺院から戒名をもらう
菩提寺がある場合は、そこから戒名をもらうようにしてください。もし、菩提寺以外から生前戒名を授かってしまうと、菩提寺で弔いを拒否されるなどのトラブルが発生してしまうこともあるため、注意してください。
生前戒名は宗派や注意点を踏まえて検討しましょう
この記事のまとめ
- 生前戒名とは、亡くなる前に戒名を寺院から授かることで、仏教では徳が高い行いとされている
- 生前戒名には費用を抑えられる、希望に近い戒名がもらえるなどのメリットがある
- 生前戒名の費用は、戒名のランクや宗派によって異なる
- 生前戒名をもらうには、菩提寺に相談する、お寺の檀家になる、戒名授与サービスを利用する方法の3種類がある
- 菩提寺がある場合は、必ず菩提寺から生前戒名を授かる
生前戒名は亡くなる前に戒名を授かることを意味し、仏教では縁起のよいこととされています。生前戒名を授かる際は菩提寺や他のお寺に相談するか、戒名授与サービスを利用しましょう。ただし、菩提寺がある場合はトラブルの原因になるため、他のお寺や戒名授与サービスを使うのは避けてください。また、親族に生前戒名を授かったことを伝えておくことも必要です。