身寄りがない方の終活まとめ。おひとりさまでも安心して最期を迎える事前準備とは?
孤独死や死後の住まいの整理など、身寄りがない方は老後への不安をより感じやすいでしょう。エンディングノートや財産整理などさまざまな終活がある中で、身寄りがない方はどのような終活に力を入れるべきなのでしょうか。本記事では、身寄りがない方におすすめの終活やその費用などについて解説します。
身寄りがない方の終活事情
身寄りがない方とは
身寄りがない方とは、自分の死後の手続きなどを任せる人がいない方のことを指します。そのため、独身の方や配偶者に先立たれてひとりになってしまった方だけでなく、子供がいなかったり親族と疎遠になっている方も含まれます。
身寄りがない方は「おひとりさま」とも呼ばれ、現代ではおひとりさまの終活やそれをサポートする葬儀社、専門家なども増えています。
身寄りがない方の終活も基本は一般の終活と同じ
基本的には、身寄りがない方の終活も一般の終活と同じです。生前整理や遺言書、エンディングノートの作成、財産管理、携帯電話やパソコンのデータ整理のことを指すデジタル終活などを行うことで安心した老後の生活をおくるとともに、死後に誰かへ負担をかけてしまう事態を防げます。
身寄りがない方の終活ならではの要点
身寄りがない方が行う終活も、一般の終活と基本的に同じではありますが、身寄りがない人ならではの要点があります。身寄りがない方は、死後の葬儀の手続きなど、家族がいることが前提である事項について、事前に準備しておく必要があります。
自分が思うように動けなくなってしまった場合に頼れる家族がいないため、将来のさまざまなケースを想定して終活を行うことが大切です。
身寄りがない方が特に行っておきたい終活
ここでは、身寄りがない方ならではの終活の要点を踏まえて、特に行っておきたい終活の内容をご紹介します。これらの終活を行うことによって将来への不安が和らぐことが多いため、ぜひ参考にしてください。
周囲の人と関わりを持つ
身寄りがない方は、周囲の人と積極的に関わりを持つことも終活の一環です。周囲の人と関わることで、ひとり暮らしでも寂しさを抱かず楽しく暮らせるだけでなく、困ったときに頼れる人も作れます。また、頻繫に人と会うことは自宅での孤独死の防止にもつながります。
この場合の周囲の人とは、万一の場合にすぐに駆けつけてくれる人たちを指します。そのため、できるだけ近所に住んでいる人がよいでしょう。地域のコミュニティに頻繁に参加したり、近くの喫茶店やカルチャースクールなどに通ったりすることで周囲の人と交流できます。
また、「朝は必ず近くの公園で近所の人と話す時間を作る」「夕方には○○喫茶店でコーヒーを飲む」などの決まった行動を習慣にすると、万が一何かあった際に異変に気付いてもらいやすいでしょう。
身元引受人を見つける
身元引受人を見つけることも、身寄りがない方に特に行ってもらいたい終活のひとつです。身元引受人とは、病院や施設の入退院の世話をしたり、死亡時の身柄を引き受けたりする人のことを指します。
身元引受人は家族が引き受けることが多いですが、身寄りがない方の場合はそうはいきません。そのため、信頼できる友人や身元引受サービスを提供している企業などに身元引受人を依頼する必要があります。老人ホームなどに入居する場合は、身元引受人を立てなければいけないことが多いです。いざというときに備えて身元引受人を見つけておきましょう。
成年後見制度を利用する
身寄りがない方は成年後見制度の利用も終活として行っておくとよいです。成年後見制度とは、認知症などで判断能力が衰えてしまった場合に本人に代わって財産の管理などを成年後見人に依頼できる制度です。
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。法定後見制度とは、親族等の申し立てがあったときや本人の判断力が衰えたと判断されたときに家庭裁判所が法定後見人を選定する制度です。法定後見人は財産に関わる全ての行為を本人に代わって行います。
一方、任意後見制度とは、本人が任意後見人を選定する制度です。こちらは、本人の判断力がしっかりしているときから依頼でき、本人の判断力が衰えたときから効力を発揮するのが特徴です。法定後見制度とは異なり、本人と任意後見人の間でいざというときにサポートしてほしい事柄を契約書(任意後見契約書)で交わします。任意後見人は任意後見監督人の監督のもとで、本人に代わって契約範囲の行為を行います。
終活の一環としては、自分の判断力がしっかりしているうちから事前に後見人を選定できる任意後見制度を活用するとよいでしょう。基本的に成人していれば誰でも任意後見人になれるため、信頼できる友人と契約をしても構いません。しかし、財産行為を代理して行うため、司法書士などといった法律の専門家と契約を結ぶことがおすすめです。
死後事務委任契約を検討する
身寄りがない方は相続人がいないため、死後にあらゆる手続きをしてくれる人を事前に探すことも重要となってきます。そのために利用したいのが、死後事務委任契約です。死後事務委任契約とは、死亡届の提出や葬儀の手続きなどといった死後に発生する諸手続きを生前に委任する契約のことを言います。
死後事務委任契約についても、成年後見制度と同じく誰にでも依頼できますが、死後のさまざまな手続きを行うなど負担が多いため、専門家に依頼するのがおすすめです。
介護サービスを事前に検討しておく
事前に介護サービスを検討しておくことも特に行ってもらいたい終活のひとつです。いざ介護が必要になった状態で、訪問介護や施設入居を探すのはかなり骨が折れる作業になるため、必ず要介護状態になる前に準備しておきましょう。
インターネットで調べたり、介護施設の資料を取り寄せたりして情報を集め、自分が将来どのような介護を受けたいかを考えておきます。サービス内容や費用などを検討し、実際にどの施設を希望するかも記録に残しておくとよいでしょう。
ただし、介護施設も条件や定員などがあるため、必ずしも自分の希望通りにいくとは限りません。そのため、複数の選択肢を準備しておくと希望が通りやすいでしょう。
葬儀の生前契約をする
身寄りがない方は、葬儀の生前契約も行っておくべき終活のひとつです。葬儀を生前契約しておらず、代わりに葬儀を行ってくれる人もいない場合、身寄りがない人は死亡地の行政機関によって火葬のみといった最低限の葬儀が行われることになります。
身寄りがなくても葬儀を行いたい方は、生前契約をしておくことで希望通りの葬儀を行えます。近年では、葬儀の生前契約を請け負ってくれる葬儀社も増えているため、葬儀内容や費用などから希望の葬儀社と契約を結びましょう。
また、一般の葬儀とは異なりますが、身寄りがない方に検討していただきたいのが生前葬です。生前葬とは生きている間に行う葬儀のことを言います。身寄りがない方は家族を通じてお世話になった人に感謝を伝えることができないため、生きているうちに直接お礼を言える生前葬は特におすすめです。
ただし、生前葬を行っても、死後に少なくとも火葬は必ず行わなくてはいけないため、葬儀の生前契約は必要です。生前葬を行っていれば、死後に行う葬儀は直葬(火葬のみを行う葬儀)を生前契約してもよいでしょう。
お墓の生前契約をする
葬儀と同様、身寄りがない方はお墓の生前契約も大切な終活です。お墓には一般墓から合祀墓までさまざまな種類がありますが、身寄りがない方は永代供養墓をおすすめします。
永代供養墓は後継ぎがいらず、お寺や霊園が管理を行ってくれるお墓です。管理が必要ないため、年間の管理料も発生しません。永代供養墓の中でも種類はさまざまあり、最初は個別に遺骨を安置して一定の期間が経ったら合祀するタイプの永代供養墓や、最初から合祀するタイプの永代供養墓などがあります。
ペットの次の飼い主を見つける
身寄りがない方がペットを飼っている場合、そのペットの次の飼い主を見つけることも重要です。ペットのもらい手を見つけておくと、自分の死後でも大切なペットの命の保証ができます。また、次の飼い主が決まった場合には、自分の死後だけでなく病院入院時や施設入居時にも飼育をお願いしておきましょう。
ペットのもらい手が自分の周囲で見つからないときには、インターネットなどで里親募集をしたり、動物愛護団体に相談したりして飼い主を探します。役所などの行政機関に相談すると、殺処分されてしまう可能性があるので注意しましょう。
次の飼い主を決めるときは、その人が本当にペットを大切にしてくれるのかをしっかり見極めることが大切です。
身寄りがない方の終活はいつから行うべき?
身寄りがない方がいつから終活を行うべきなのか明確な決まりはありませんが、早いうちから終活を行うことが大切です。家族がいる場合は、お墓の準備などやり残したことがあっても最終的に家族に頼れますが、身寄りがない方はそれができません。
その上、終活は多くのことを決定・整理しなくてはならないため気力や体力を要します。これらを考えると、健康なうちから少しずつ、準備を始めていくことがおすすめです。また、資金面から考えても同じことが言えます。急に終活の費用を生み出すことは難しいため、早いうちから終活にどの程度の費用がかかるかを把握し、資金を貯めておくことが大切です。
「そうは言ってもなかなか重い腰が上がらない」という方は、定年退職をしたときなどの落ち着いたタイミングで終活を始めてもよいでしょう。
身寄りがない方の終活の費用
費用の概算
身寄りがない方も、エンディングノートや遺言書の作成などといった一般的な終活を行う場合は、終活にかかる費用は特に変わりません。しかし、先述したような身寄りがない方が特に行っておきたい終活をする場合は費用が増えるでしょう。
以下は、身寄りがない方が特に行っておきたい終活の主な費用です。
終活の内容 |
費用の概算 |
---|---|
身元引受人の依頼 |
数万~150万円程度+月額費用 |
成年後見制度の利用 |
初期費用20万円程度+月額2~5万円程度 |
死後事務委任契約の締結 |
100~150万円程度(契約内容によって変動がある) |
葬儀の生前契約 |
一般葬の場合:150~200万円程度、直葬の場合:10~30万円程度 |
お墓の生前契約 |
一般墓の場合:120~200万円程度、永代供養墓(合祀タイプ)の場合:5~30万円程度 |
ペットの飼い主の依頼 |
0~40万円程度 |
これらはあくまで概算で、個々のサービス内容によって異なり、上記の費用より高い金額を選択することも可能です。一部項目では、一般的なものに加えて、直葬や永代供養墓など身寄りがない方向けの金額も記載しています。身寄りがない方は、特にそちらの項目を検討してみてください。
終活の費用を抑える方法
終活の費用を抑えたい場合は、身元引受人・成年後見人・死後事務委任契約の受任者を専門家ではなく友人などに依頼する方法がおすすめです。費用を全く支払わないということにはならないかも知れませんが、専門家よりも費用を抑えることは可能でしょう。実際の費用は、友人などと話し合った上で決定します。
ただし、友人に依頼すると費用は抑えられるものの、専門家ではないため何かしら不都合が生じることもあり、その点については注意が必要です。
また、葬儀やお墓の費用を抑える方法もおすすめです。葬儀の場合は火葬のみを行う直葬、お墓の場合は合祀墓などが比較的費用を抑えられます。
身寄りがなくても安心して暮らせるように終活を行いましょう
この記事のまとめ
- 身寄りがない方とは、独身者だけでなく親族と疎遠の人なども指す
- 身寄りがない方が特に行っておきたい終活は、①周囲の人と関わりを持つ、②身元引受人を見つける、③成年後見制度を利用する、④死後事務委任契約を検討する、⑤介護サービスを事前に検討する、⑥葬儀・お墓を生前契約する、⑦ペットの次の飼い主を見つける
- 身寄りがない方は家族に頼ることができないため、特に早めに終活を行うとよい
- 身寄りがない方の終活の費用は一般の終活の費用と変わらないが、成年後見制度や死後事務委任契約などを結ぶのであれば費用が増える
- 身寄りがない方が終活の費用を抑えたい場合、専門家でなく友人などを頼る方法や、葬儀やお墓の費用を抑えるなどの方法がおすすめ
身寄りがない方は頼れる人が少ないため、特に老後に対する不安を感じやすいです。そこで、終活として早めに行動に移すことで、安心して老後を過ごせるようになるでしょう。身寄りがない方の終活は、多くのことを自分で決定しないといけないため大変ですが、困ったときには友人や専門家に話を聞いてもらい、ストレスなく終活を行ってください。