位牌の役割とは?一般的な種類や選び方、用意する際に確認すべき注意点を解説
位牌とは、重要な意味を持つ仏具の一つです。本記事では、位牌の役割や種類、選び方などについて分かりやすく解説します。これから故人の位牌を用意する場合や必要な供養を知りたい人はぜひご覧ください。
位牌とは
まず、位牌の意味や役割について解説します。
位牌とは故人の霊が宿るとされているもの
位牌とは、故人の戒名(宗派によっては法名・法号)や没年月日、俗名(本名のこと)、行年(満年齢)または享年(数え年)が記載された木の板のことです。
位牌は、故人の情報が書かれただけの仏具というわけではなく、故人の霊が宿る依り代(よりしろ)です。僧侶が開眼供養を行うと位牌に故人の霊が宿り、手を合わせる対象となります。
基本的に位牌はひとり一つとされていますが、夫婦二人で一つの位牌を作る夫婦位牌や、複数人のご先祖の位牌を一つにできる(八~十枚の札板をまとめる)箱型の繰り出し位牌(回出位牌)などもあります。
位牌は仏壇に安置する仏具で、仏壇の一番上の段にある須弥壇(しゅみだん)にご本尊を祀り、その一つ下の段にある位牌壇(いはいだん)にご先祖の位牌を祀ります。
浄土真宗では位牌を必要としない
位牌は、仏教の全ての宗派で必要というわけではありません。浄土真宗は、他の宗派とは違って「故人は死後すぐに成仏する」という考え方を持っている宗派のため、故人の霊をお祀りする役割を持つ位牌は必要ないのです。代わりに、過去帳や法名軸を仏壇に供えて故人を偲びます。
過去帳とは、故人の法名(浄土真宗における戒名のこと)や没年月日、俗名、行年または享年を記録する帳簿のことをいいます。浄土真宗以外に、その他の宗派でも使用する仏具です。
法名軸とは故人の法名と没年月日を記載した掛け軸のことを言い、仏壇の内部に掛けて飾ります。浄土真宗特有の仏具であり、過去帳とは違ってその他の宗派では使用しません。
位牌の種類
位牌の種類はさまざまありますが、用途別には白木位牌・本位牌・寺位牌の3種類に分けられます。ここでは、それぞれの位牌の意味や役割を紹介します。
白木位牌(仮位牌)
白木位牌とは、加工がされていない白木で作られた位牌のことを言います。白木位牌は、故人の死後に葬儀社が用意してくれます。「仮位牌」とも呼ばれるように、葬儀から四十九日まで故人の霊が宿る役割を持つ仮の位牌です。
四十九日以降も引き続き白木位牌を使ってはいけないわけではありませんが、耐久性がないため長持ちはしません。故人の霊の依り代となる大切な仏具ということを考えると、長く使い続けるのは避けた方がよいでしょう。
本位牌
本位牌とは、四十九日の忌明け後に使用する正式な位牌のことです。四十九日までに役目を果たす白木位牌の次に使用します。本位牌は仏壇に安置されている黒や茶色の位牌のことを指します。
本位牌は、忌明け後に白木位牌から故人の霊を抜き、本位牌に霊を宿らせてから仏壇に安置します。多くの宗派では、一般的に四十九日で故人が成仏すると考えられていることから、白木位牌から本位牌に替えることは「故人が無事に成仏した」ことを意味すると考えてよいでしょう。
本位牌の種類
- 塗位牌:木に漆を塗って金箔などをあしらった一般的な位牌
- ・唐木位牌:黒壇や紫壇などの高級木材を使用した位牌
- モダン位牌:現代の暮らしに合わせてガラスや天然石を使ったデザインの位牌
寺位牌
寺位牌とは、自宅の仏壇ではなくお寺に安置する位牌のことを言います。新たに作成するだけでなく、元々自宅にあった位牌をお寺に安置してもらえることもあります。
お寺で供養をしてもらえるため、自宅に仏壇がない場合や本位牌とは別に寺位牌を安置してほしい場合、後継ぎがいない場合におすすめな位牌です。
寺院によっては寺位牌のサイズを限定している場合もあるため、まずは寺院牌を納めるお寺に相談することが大切です。
位牌の選び方
基本的に位牌は自由に選ぶことができる仏具です。ここからは、位牌のおすすめの選び方を紹介します。
サイズで選ぶ
位牌を選ぶ際は、位牌のサイズに注意して選ぶようにしましょう。
位牌のサイズで注意したい点
- 仏壇に入るサイズであること
- 仏壇に安置したときに位牌がご本尊より高くならないこと
- 複数の位牌が仏壇に安置されている場合、全ての位牌が並べられるサイズであること
- ご先祖の位牌がある場合、故人の位牌はご先祖と同じサイズがそれより小さいサイズにすること
- 夫婦の位牌のサイズは揃えること
- 寺位牌の場合、お寺が許可するサイズであること
自宅の仏壇が一般的なものより小さい場合、位牌が入るかどうか事前にサイズを確認しておきましょう。
素材で選ぶ
位牌は、漆が塗られているもの(塗位牌)や、黒壇や紫壇を使ったもの(唐木位牌)、無垢材やガラス素材、天然石で作られた位牌など、さまざまな素材から選べます。
厳かな雰囲気の位牌を選びたい場合には塗位牌や唐木位牌、温かみを感じるような位牌を希望している場合は無垢材がおすすめです。素材によって受ける印象は大きく変わるため、複数の素材を見比べて決めるとよいでしょう。
デザインで選ぶ
位牌にはさまざまなデザインがあり、本体の角の形から選んだり、モダンなデザインが施されている位牌を選んだりできます。
自宅の仏壇と合うものや故人に似合うもの、家族が慕えそうなデザインなどから選ぶとよいでしょう。ただし、寺位牌の場合には選べるデザインに制限があることがあるため、お寺に相談するのがおすすめです。
費用で選ぶ
位牌は、種類やサイズ、素材によって費用が変わります。位牌は故人が宿る依り代という大切な役割があるものの、故人の死後はさまざまな場面で費用がかかり金銭的に余裕がない人も多いでしょう。そのため、無理のない範囲で購入できる位牌を選ぶことが大切です。
本位牌の費用
- 塗位牌:合成漆は1万円程度、本漆は4万円~10万円程度
- 唐木位牌:2万円~10万円程度
- モダン位牌:3万円~10万円程度
それぞれ、10万円程のものもあれば、手に届く価格で素敵な仕上がりの位牌もあるため、仏具店やインターネットで調べてみてください。
位牌に必要な供養
位牌は故人の霊が宿る特別な仏具であるため、開眼供養や閉眼供養が必要となります。ここからは、各供養の意味について解説します。
開眼供養
開眼供養(開眼法要)とは「魂入れ」とも呼ばれる儀式で、仏壇や位牌、お墓に魂を入れることを言います。
開眼供養は浄土真宗以外の宗派で新しく仏壇や位牌、お墓を購入したときには必ず行う必要のある儀式です。位牌などは開眼供養が完了し、初めて手を合わせる(供養する)対象となります。
開眼供養は、一般的に四十九日法要と一緒に行います。儀式の内容はその他の仏教儀式と同じく、僧侶による読経と参列者による焼香が主な内容です。
閉眼供養
閉眼供養(閉眼法要)とは「魂抜き」とも呼ばれる儀式で、仏壇や位牌、お墓に入れた魂を抜くことです。開眼供養で魂を入れた位牌を処分する場合、必ず事前に閉眼供養を行う必要があります。
閉眼供養が完了すると故人の魂はいなくなっているため、位牌はただの木の板となります。その後、不要となった位牌は、お寺や仏具店に依頼してお焚き上げをしてもらうのが一般的な処分方法となっています。また、そのまま自治体の規定に従ってゴミとして処分することも可能です。
なお、位牌における閉眼供養が必要な場合には以下の場合があります。
位牌において閉眼供養が必要な場合
- 位牌を処分する場合
- 白木位牌から本位牌に作り替える場合(白木位牌に閉眼供養をする)
- 今の位牌をご先祖の繰り出し位牌にまとめる場合(今の位牌に閉眼供養をする)
位牌を用意する際に確認すること
先述の通り、位牌は、ご本尊や掛け軸と同じくらいに大切な意味や役割を持つ仏具です。位牌を購入する際は、以下の事項をしっかり確認してから購入しましょう。
位牌を用意する際に確認すること
- 仏壇が自宅にあるか(位牌は仏壇に安置するため。ない場合は寺位牌を検討する)
- 位牌のサイズが仏壇に合っているか
- 戒名などの故人の情報に間違いがないか
- 四十九日法要と一緒に開眼供養を行う場合、法要までに本位牌が自宅に届くか
故人の象徴とも言える仏具のため、心からよいと思える位牌を購入するのがおすすめです。ようやく手にした位牌に不備がないようにするためにも、事前の確認は必らず行ってください。
位牌とは故人が宿る重要な仏具のこと
この記事のまとめ
- 位牌とは、故人の戒名(法名・法号)や没年月日、俗名、行年または享年が記載された木の板のことを言う
- 位牌は故人の霊が宿る依り代であり、とても大切な意味・役割を持つ仏具である
- 浄土真宗は他の宗派とは違い「故人は死後すぐに成仏する」という考え方を持っているため、故人の霊をお祀りする位牌を必要としない
- 位牌の種類を用途別で分類すると、①白木位牌(仮位牌)②本位牌③寺位牌
- 位牌は①サイズ、②素材、③デザイン、④費用で選ぶ
- 位牌に必要な供養には、開眼供養(開眼法要)と閉眼供養(閉眼法要)がある
今回は位牌の役割や種類、用意する際の注意点などを紹介しました。位牌は大切な仏具の一つであるため、本記事で解説した選び方などを参考に故人にぴったりの位牌を用意してください。