葬儀の際に行われる「納棺」とは?用意するものや一般的なマナー、当日の流れを解説
お通夜や葬儀の前には、納棺と呼ばれる儀式が行われます。納棺に参加したことがなく、どのようなものなのか分からない方も多いのではないでしょうか。本記事では、納棺の流れや用意するべきもの、一般的なマナーなどを解説していきます。
納棺とは
納棺とは、故人のご遺体を清めて死装束を整え、副葬品などと共に棺の中に納める儀式を指します。納棺には、「家族が故人との別れの時間を過ごす」という意味があります。昔は家族や親族のみが主体となって納棺を行っていましたが、現在は家族が葬儀社のスタッフの指示に従う形で納棺を行うのが一般的です。ご遺体の処理や着替えの際は、家族や親族は席を外して専門スタッフに作業を任せることが多いです。
自宅に故人のご遺体を確保するスペースがある場合や、故人が自宅で亡くなった場合などは納棺を自宅で行います。自宅に納棺をするスペースがない場合、葬儀社や葬祭ホールといった施設で納棺が行われます。
納棺の際に用意するもの
喪主や施主になった方は、納棺までにいくつか用意しておくものがあります。ここからは、納棺までに準備するべきものを解説していきますので、当日になって慌てないよう確認しておきましょう。
副葬品
納棺を行う前に、棺の中に入れる副葬品を用意しておきましょう。副葬品は故人があの世に行ったときに使うもので、ご遺体とともに棺におさめます。故人が気に入っていたものや、大切にしていたものなどを副葬品として入れることが多いです。
僧侶へのお車代
納棺の際は、僧侶に渡すお車代を準備しておきましょう。お車代とは、寺院からご遺体が安置されている自宅や斎場までの交通費のことで、5千〜1万円ほどが相場です。お車代は、納棺を行ったその日のうちに包んで渡しましょう。
このとき、僧侶が故人の枕元でお経をあげる「枕経」が行われますがお布施は必要ありません。お通夜や葬儀、初七日法要などを行う場合、全ての儀式のお布施をまとめて後日渡すことになります。
納棺における服装マナー
納棺は限られた家族や親族のみが参加する儀式であるため、初めて納棺に立ち会う方もいるでしょう。ここからは、納棺における服装に関するマナーを紹介します。
髪型
納棺を行う際、髪が長い方は一つにまとめましょう。納棺は、故人の衣服を着替えさせたり身体をきれいにしたりといった手順で行われます。髪の毛を束ねていないと、これらの作業の際に髪の毛が落ちて邪魔になる恐れがあります。
納棺の儀式がスムーズに進まなくなる恐れもあるため、髪が乱れないようしっかりと結びましょう。髪ゴムには茶色やグレーのものではなく、黒色を選ぶのがマナーです。
服装
納棺の際の服装は、儀式が行われる場所によって異なります。斎場や葬祭ホールなどで納棺を行う場合や、納棺後にお通夜や葬儀を続けて執り行う際は、男女ともに喪服を着用します。男性は黒に近い色味のスーツを着用し、下にはシンプルなデザインで白無地のワイシャツを着ましょう。女性は黒のワンピースやスーツ、アンサンブルを選びます。
自宅で納棺を行う場合、喪服ではなく平服を着用しても問題ないとされています。平服とは略喪服のことで、男性の場合は、黒ではなくグレーやネイビーなどの色味のスーツを着用しても問題ありません。女性の場合も、落ち着いた色味のものであれば黒以外にもネイビーやグレーなどのワンピースやスーツを着用するとよいでしょう。
「平服」を「普段着」だと考える方もいますが、基本的にカジュアルな私服で納棺に参加するのはマナー違反です。派手なデザインや色味の服装は避け、フォーマルな服装を意識してください。
鞄
納棺の際は、グレーや黒などの落ち着いた色味の鞄を持参しましょう。派手なデザインや模様が入っているものは避け、シンプルな無地に近いものを選ぶのがおすすめです。持ち手や肩掛け部分がチェーン素材のもの、光沢感の強いバッグは不適切なため注意しましょう。
もし、納棺後にお通夜や葬儀を続けて行う場合は、黒のフォーマルなバッグを持っていくとよいです。
靴
納棺に参加する際の靴は、納棺が行われる場所によってマナーが異なります。斎場や葬祭ホールなど、喪服を着用するような場所で納棺が行われる場合は、黒の革靴やパンプスを選びます。
このとき、なるべく光沢感がないマットな質感の靴を選びましょう。女性の場合、ヒールが高すぎるパンプスは派手な印象を与えるため避けた方が無難です。
自宅で納棺の儀式を行う場合は、普段使っている靴を履いても問題ないとされています。ただし、サンダルなどは避けた方がよいでしょう。
納棺の当日の流れ
納棺では、家族や親族などの参列者が儀式にまつわる作業を行うことがあります。ここから紹介する納棺の流れや方法を参考に、手順を把握しておきましょう。
末期の水
納棺では、最初に「末期の水」という儀式が執り行われます。末期の水とは、故人が安らかにあの世へ旅立てるようにとの願いを込め、水と割り箸、脱脂綿、お椀を使って故人の口元を潤す儀式です。
割り箸の先端部分に脱脂綿を巻きつけ、糸で固定します。その後、お椀に入れた水に脱脂綿をつけて湿らせ、故人の口元や唇に当てます。上唇の左から右側に脱脂綿を当て、次に下唇の左から右になぞるようにするのが、一般的な末期の水の方法です。
無理に故人の口に水を含ませる必要はなく、唇を軽く湿らす程度で問題ありません。地域によっては、脱脂綿ではなく鳥の羽を使ったり、割り箸の代わりに筆を使ったりする場合もあります。
末期の水の儀式は、一般的に個人との血縁関係が深い人から順番に行います。まず、配偶者が故人の唇を湿らせ、次に子供、兄弟姉妹、親族といった順番で儀式を行います。全員が末期の水を終えたら、故人の顔全体を優しく拭きあげます。
湯灌
末期の水が終わったら湯灌を行います。湯灌とは、浴槽にお湯をためて故人の身体をきれいに清める儀式であり、「現世での汚れや疲労を洗い清める」という意味があります。斎場で納棺をする場合は持ち込み浴槽を、自宅の場合は家の浴槽を使うのが基本です。
湯灌の際は、故人の身体を清めるだけでなくマッサージや髭剃りなども行われます。自宅の浴室が狭い場合や持ち込み浴槽を準備できなかった場合は、湯灌はせずに清拭のみが行われます。
死に化粧を施す
湯灌が終わった後は、故人の顔に死化粧を施します。死化粧とは、故人が元気だった頃に近づけるために施されるメイクのことであり、男女を問わず行われます。
まず、髪の毛を整えて顔の産毛を剃り、ファンデーションやチーク、コンシーラー、口紅などを使って化粧を行います。このとき、ご遺体が乾燥しないよう保湿ケアも行われます。
死装束を着せる
次に、故人に死装束を着せます。死装束とは白い着物のような衣服で、亡くなった方が最後に着る仏衣です。仏式の葬儀の場合は上下が白の死装束を着せ、脚絆や笠などの小道具をつけます。
基本的にはスタッフが仏衣を準備してくれますが、故人が愛していた洋服やエンディングドレスなどを着せる場合もあります。死装束にこだわりたい場合は、前もって斎場のスタッフに相談しておきましょう。
ご遺体を棺に納める
故人の身支度が完了したら、ご遺体を棺に納めます。棺へご遺体を入れる入棺作業は、故人との関係が深かった方が行うのが一般的です。
ご遺体を納めたら、故人を弔うためにお花や生前に使っていたもの、思い出の品などの副葬品も一緒に入れます。最後に棺の蓋を閉めたら、納棺の儀式は終了です。
副葬品に関するマナー
入れてよいものと避けるべきものがある
納棺の際には副葬品を用意しますが、入れてよいものと避けるべきものがあるため注意しましょう。例えば、故人が好きだったお菓子やお気に入りの洋服、手紙などを副葬品とする場合が多いです。
一方、火葬炉の設備が損傷する恐れがあるものや、遺骨に悪影響を与える危険があるものは副葬品としては認められません。例えば、火葬中に爆発する恐れがある缶飲料、スプレー缶や水分を多く含む果物類などがあげられます。燃えないゴルフクラブやメガネなども、副葬品として入れることはできません。
また、生きている人が写っている写真を棺に入れると不快に思う方もいるため、写真を入れる際は映っている方に確認をとってから入れましょう。
副葬品に適さないもの
- スプレー缶
- 乾電池
- 枕
- ライター
- ゴルフクラブ
- 釣竿
- 入れ歯
- 杖
- メガネ
- お金
- CDやDVD
- 携帯電話やスマートフォン
- ガラス製品
- 缶に入った飲料
- 果物類
届出や確認が必要なものもある
副葬品の中には、届出や確認が必要なものもあります。例えば、故人がペースメーカーを体内に埋め込んでいた場合は火葬中に爆発する恐れがあるため、火葬場のスタッフに確認しておきましょう。また、大きなぬいぐるみや分厚い書籍などは、燃えきらずに残ってしまう恐れがあるため、こちらも事前に確認しましょう。
納棺前にマナーや流れを踏まえておきましょう
この記事のまとめ
- 納棺とは、故人の遺体を清めて身支度を整えた後、棺の中に納める儀式。
- 納棺を行う際は、副葬品と僧侶へのお車代を用意しておく
- 服装や靴に関するマナーは、納棺を行う場所によって異なる
- 納棺は末期の水、湯灌、死化粧、死装束、入棺の手順で行われる
- 副葬品には入れてよいものと避けるべきものがある
納棺とは、故人が安心してあの世へ旅立つ準備であり、家族が故人とゆっくり過ごす最後の時間でもあります。重要な意味を持つ儀式のため、しっかりと流れや手順を押さえておくことが大切です。本記事で紹介した納棺の流れや用意するべきもの、マナーなどを参考に納棺の準備を行いましょう。