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知っておきたい「遺言の書き方」例文と共に有効な自筆証書の作成方法を分かりやすく解説

知っておきたい「遺言の書き方」例文と共に有効な自筆証書の作成方法を分かりやすく解説

遺言者の希望する相続の実現や相続争いの防止のために、遺言書を書いておくのがおすすめです。ところで、遺言書を書きたいけれど、書き方がよく分からないという人も多いのではないでしょうか?本記事では遺言書の書き方について、例文を交えながら説明します。遺言書のルールを知って、有効な遺言書を作成してください。

監修者 SUPERVISOR
AFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士 森本 由紀

神戸大学法学部卒業。鉄鋼メーカー、特許事務所、法律事務所で勤務した後、2012年に行政書士ゆらこ事務所を設立し独立。メインは離婚業務。離婚を考える人に手続きの仕方やお金のことまで幅広いサポートを提供。法律・マネー系サイトでの執筆・監修業務も幅広く担当。

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遺言書には3種類ある

遺言書は法律で定められた形式で作成しないと無効になってしまいます。通常使われる遺言書には三つの形式があるため、いずれかを選んで作成しましょう。まずは、3種類の遺言書それぞれの概要と、メリット、デメリットについて説明します。

1.自筆証書遺言

遺言者自身が全文、日付、氏名を手書きし、押印して作成する遺言書です。他人による代筆はできません。2人以上の連名で作成することはできません。自筆証書遺言は、最も手軽に作成できる遺言書と言ってよいでしょう。

自筆証書遺言のメリット

  • どこへも行かずに作成できる
  • 費用がかからない
  • 書いたことを秘密にできる

自筆証書遺言のデメリット

  • 紛失・改ざんのおそれがある
  • 亡くなった後、発見されなかったり隠されたりするリスクがある
  • 相続開始後、家庭裁判所の検認が必要
  • 手書きできない人は作成できない

2.公正証書遺言

公証役場に依頼し、公証人に作成してもらう遺言です。作成した遺言書の原本は公証役場に保管されます。公正証書遺言を作成する際には、証人2名の立ち会いが必要です。

公正証書遺言のメリット

  • 要件不備で無効となるリスクがない
  • 紛失・改ざんの心配がない
  • 相続開始後、相続人が遺言書の有無を検索可能
  • 家庭裁判所の検認が不要
  • 手書きが困難な人でも作成可能

公正証書遺言のデメリット

  • 必要書類を揃えるなど手間がかかる
  • 作成に費用がかかる
  • 遺言の存在や内容を秘密にできない

3.秘密証書遺言

自分で書いて封をした遺言書を公証役場に持って行き、公証人に遺言書の存在のみを証明してもらうものです。遺言書は手書きでもパソコンで作成したものでもかまいません。公証役場で証明を受ける際には、証人2名の立ち会いが必要です。

秘密証書遺言のメリット

  • 遺言書の内容を秘密にできる
  • 遺言書の改ざんを防止できる
  • 一律1万1千円と公正証書遺言より費用がかからない

秘密証書遺言のデメリット

  • 遺言書の存在自体は秘密にできない
  • 手続きが複雑
  • 自分で保管するため、紛失や改ざん、発見されないリスクがある
  • 相続開始後、家庭裁判所の検認が必要

遺言書に書いて有効な内容

形式の要件を満たしていても、遺言書に書いたすべての内容が有効になるわけではありません。遺言書に書いて有効になる内容は法律等で決まっているため注意しておきましょう。

遺言事項とは

遺言書に書いて法的効力が認められる事項を「遺言事項」と言います。遺言事項は、主に財産や身分に関する内容です。代表的な遺言事項について説明します。

財産の相続方法

法定相続と異なる割合で遺産を分けるよう指定したり、各相続人にどの財産を相続させるかは、遺言書で指定できます。たとえば、「長男の相続分は3分の2、次男の相続分は3分の1」「長男には自宅不動産、次男には預貯金」などと決められます。相続人以外でお世話になった人などに財産を遺贈することも可能です。

遺言執行者の指定

遺言執行者とは、相続開始後に遺言の内容を実現する手続きを行う人です。遺言書の中で、遺言執行者を指定できます。遺言執行者は相続人の中から選んでもかまいませんし、弁護士等の専門家に依頼してもかまいません。

認知

認知とは、婚姻関係にない相手との間に生まれた子を、自分の子と認める行為です。認知は遺言書でもできます。なお、認知された子は遺言者の相続人となるため、相続手続きにかかわることになります。

未成年者後見人の指定

未成年者後見人とは、親権者がいない場合に、未成年者の代理人となって財産管理等を行う人です。子供の親権者が遺言者ひとりの場合、亡くなった後の未成年者後見人を遺言書で指定できます。

付言事項とは

遺言書に書いて有効になるのは遺言事項のみですが、それ以外の内容を書いてもかまいません。法的効力を得る目的以外で書かれた事項は「付言事項」と呼ばれます。

付言事項を書く意味

付言事項としてよく書かれる事項は、遺言書を書いた理由、お世話になった人へのメッセージ、葬儀や散骨、献体の希望などです。付言事項には法的効力はないとはいえ、決して書く意味がないわけではありません。遺言者の率直な気持ちを伝えることにより、相続人間のトラブルを予防できることもあります。

自筆証書遺言の書き方

自筆証書遺言は自分ひとりですぐに書けるため、最も簡単に作成できる遺言書です。ただし、法律で定められた書き方を守る必要があります。ここからは、自筆証書遺言の書き方について、詳しく説明していきます。

全文を自筆で書く

財産目録以外の部分は、すべて遺言者自身が手書きする必要があります。筆記用具に決まりはありませんが、消えないようにボールペンや万年筆で書きましょう。なお、遺言を他人に代筆してもらうことはできません。録音や動画なども無効です。

日付を書く

遺言を書いた日付を記載します。日付は具体的に特定しなければなりません。「令和5年3月吉日」等の記載は無効です。

署名・押印する

署名はフルネームを記載して行います。押印は実印である必要はなく、認印でもかまいません。ただし、シャチハタなどスタンプ式の印鑑は使わないようにしましょう。

遺言を訂正する場合

遺言を途中で書き間違えた場合にも、修正液や修正テープは使えません。

自筆証書遺言の訂正方法

自筆証書遺言を訂正する場合、訂正した箇所に押印した上で、「〇字削除、〇字追加」等、変更内容を記載して署名する必要があります。

遺言書の訂正
Photo by www.moj.go.jp

遺言書の訂正方法

【出典】法務省:遺言書の訂正の方法に関する参考資料

財産目録の作成

遺言書を書くと決めたら、まず財産目録を作成しましょう。財産目録とは、遺産を品目別に明記したリストです。財産目録は必須ではありませんが、作ることでスムーズに遺言書を作成できます。

財産目録
Photo by www.moj.go.jp

財産目録の例

【出典】法務省:自筆証書遺言の方式(全文自書)の緩和方策として考えられる例の参考資料

2019年の法改正により、財産目録については例外的にパソコンで作成できるようになりました。ただし、本文と同じ用紙にパソコン作成の財産目録を印字することはできず、別紙として添付しなければなりません。なお、手書きでない財産目録を添付する場合、財産目録の各頁に署名押印が必要です。

不動産の書き方

登記関係の書類と同様、正確に記載する必要があります。法務局で登記事項証明書を取得し、不動産の表示を確認しましょう。登記事項証明書は、財産目録の一部として添付してもかまいません。

預貯金・株式等の書き方

銀行、支店、種類、口座番号を書いておきます。預金残高は変動することがあるため、書かなくてもかまいません。通帳のコピーを財産目録に添付してもよいでしょう。株式は証券会社、口座番号、銘柄、種類、株式数などを記載します。

借入金・ローンの書き方

負債がある場合には、借入先や借入金額を書いておきましょう。ただし、遺言書により負債を特定の相続人にのみ承継させるのは、避けた方が無難です。遺言書の内容に関係なく、債権者は法定相続人に法定相続分に応じた支払いを請求できるため、トラブルになることがあります。

一般的な自筆証書遺言の例文

遺言書では、遺産や相続させる人を正確に特定し、意味が分かるように指示しなければなりません。ここからは、一般的な遺言書の例文をケース別に紹介します。書き方の参考にしてください。

配偶者に全財産を相続させる場合

遺産を配偶者のみに相続させたい場合には、妻の氏名を書いた上で、「一切の財産を相続させる」「すべての財産を相続させる」等と記載します。

【配偶者に全財産を相続させる例文】

遺言者鈴木太郎は、遺言者の所有する一切の財産を、妻鈴木和子(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。

不動産を特定の人に相続させる場合

相続人に譲る場合には「相続させる」と書きますが、相続人以外に譲る場合には「遺贈する」と記載します。

【相続人以外に不動産を遺贈する例文】

遺言者鈴木二郎は、遺言者の所有する別紙一の不動産を、山田四郎(昭和〇年〇月〇日生)に遺贈する。

内縁の妻(夫)に相続させる場合

内縁の妻(夫)は、相続人にはなりません。遺産を相続させたい場合には、遺言を書く必要があります。内縁の妻(夫)の氏名、生年月日を書いて、財産を遺贈する旨記載しておきましょう。

【内縁の妻に特定の財産を遺贈する例文】

遺言者鈴木三郎は遺言者の所有する別紙二の預金を、同居中の内縁の妻田中京子(昭和〇年〇月〇日生)に遺贈する。

子を認知する場合

子供の母親と、子供の住所、氏名、生年月日、本籍を記載し、認知する旨を書きます。子の出生前に父親が死亡するおそれがある場合、遺言で胎児を認知することも可能です。

【子を認知する例文】

遺言者鈴木五郎は、遺言者と山本文子(昭和〇年〇月〇日生)との間に生まれた下記の子を自分の子として認知する。
        記
住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
氏名 山本信二
生年月日 平成〇年〇月〇日
本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番
戸籍筆頭者 山本文子
【胎児を認知する例文】

遺言者鈴木健一は、下記の者が懐胎している子を自分の子として認知する。
         記
氏名 山下良子
本籍 〇〇県○○市〇〇町〇丁目〇番
生年月日 平成〇年〇月〇日

有効な遺言書を作成するポイントや注意点

遺言書を書いても、効力がなければ意味がありません。有効な遺言書を作成するために注意しておきたい点を説明します。

遺言書作成のルールを確認

遺言書には決まった書き方があります。自筆証書遺言を書き間違えた場合には、訂正もルールに従って行わなければなりません。遺言を書く前に、遺言書の書き方を確認しておくことが大切です。

遺言で失敗したくないなら

遺言書を書いたことを秘密にしたい場合には、家族に書き方を聞くわけにもいかないでしょう。自分ひとりできちんと書ける自信がない人は、弁護士などの専門家に相談することもできます。確実に遺言を残したい場合は、公正証書遺言を作成するのがおすすめです。

早めに作成しておく

「遺言を書くのはまだ早い」と、書くのを先延ばしにしている人もいるでしょう。しかし、遺言書は早めに書いておくのが安心です。先のことはどうなるか分かりません。高齢になれば認知症になるリスクもあり、有効な遺言書が書けなくなる場合もあります。

遺言は何度でも作り直しできる

遺言を書いた後、やはり内容を変えたいと思うこともあるでしょう。遺言書は何度でも作り直すことができます。とりあえず現段階の希望を書いておき、状況によって作り直すことも検討しましょう。

遺留分に注意する

遺言を残していれば、遺言書に従った相続が行われます。ただし、遺留分に注意しておかなければなりません。遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に最低限保障されている遺産の相続割合です。

遺留分を無視すればトラブルになるかも

遺留分を無視した遺言も、直ちに無効になるわけではありません。ただし、遺言により遺留分を取得できなくなった相続人が、遺留分侵害額請求をする場合があります。遺留分侵害額請求とは、遺留分に相当する金銭の支払いを請求する手続きです。遺留分に配慮した書き方をしないと、相続トラブルになる可能性があります。

付言事項も活用

遺言は遺留分に配慮した内容にするのがおすすめです。どうしても遺留分を侵害する内容になってしまう場合、付言事項でその理由を説明しておくと、相続人の理解が得られるかもしれません。

自筆証書遺言書保管制度を利用

自筆証書遺言には、紛失・改ざんや、発見されないリスクがあります。こうしたリスクを解消するために、2020年7月より「自筆証書遺言書保管制度」がスタートしました。自筆証書遺言書保管制度は、自分で書いた自筆証書遺言を法務局に預けられる制度です。

自筆証書遺言書保管制度のメリット

自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、法務局で形式面のチェックをしてもらえます。また、亡くなったときに、あらかじめ指定した人に、遺言の存在を通知してもらうことも可能です。法務局で保管されている自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認も不要になります。

自筆証書遺言書保管制度の利用方法

法務局に保管する遺言は、民法に定められている要件に加えて、制度上定められている様式のルール(用紙の大きさや余白の指定など)を守って作成する必要があります。

事前予約した上で法務局に行き、遺言書と申請書のほか、本人確認書類、住民票などの必要書類を提出して保管申請を行います。保管手数料は遺言書1通につき3900円です。

遺言書の書き方のルールを知って有効な遺言を残しましょう

この記事のまとめ

  • 遺言には①自筆証書遺言②公正証書遺言③秘密証書遺言の3種類がある
  • 遺告に書くことで有効になる内容は法律等で決まっており、法的効力が認められる事項を「遺言事項」と言う
  • 遺言書は財産目録以外の部分を手書きで書く必要があり、遺言を他人に代筆してもらったり録音や動画も無効となるので注意する
  • 有効な遺言を作成するには、遺言作成のルールを確認したり自筆証書遺言書保管制度を利用するのがポイント

遺言を活用すれば、遺産を希望どおりに相続させることも可能になります。遺言の書き方は法律で決まっており、ルールに従っていない遺言は無効になってしまいます。遺言の書き方を確認した上で、有効な遺言を残しましょう。

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