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お金・お家のこと

遺産相続における預貯金の分け方について|分割方法や必要な手続きの流れを解説

遺産相続における預貯金の分け方について|分割方法や必要な手続きの流れを解説

預貯金は、代表的な相続財産の一つです。家族が亡くなって相続が発生した場合、預貯金はどのように分ければよいのでしょうか。預貯金には複数の分割方法があるため、特徴を理解した上で最適な方法を選択することが大切です。今回は、遺産相続における預貯金の分け方や手続きの流れ、注意点について解説します。

監修者 SUPERVISOR
AFP 大西 勝士

FP資格や投資経験をもとに、大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで記事の執筆や監修を行っています。得意領域は不動産、投資信託、税務。

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預貯金は遺産分割の対象に含まれる

遺産分割とは、被相続人(亡くなった人)が所有していた財産を複数の相続人で分けることです。遺言書がある場合は、その内容に基づいて分割します。遺言書がなければ、相続人同士で話し合って遺産の分け方を決めなくてはなりません。

預貯金は、以前は「遺産分割の対象外」とされており、法定相続分は単独で払戻しが可能でした。しかし、2016年(平成28年)に最高裁判所が「預貯金は遺産分割の対象」とする判決を出したため、現在では遺産分割協議によって分け方を決めることが可能となっています。

遺産相続における預貯金の分け方

相続が発生して預貯金を分ける場合は、以下三つの方法があります。

1.預金口座ごとに分割する

被相続人が複数の預金口座を所有していた場合、各口座を相続人に割り当てる方法です。たとえば、A銀行の口座は配偶者、B銀行は長男、C銀行は長女のように分割します。

預金口座ごとに分割する方法では、相続人が各自で割り当てられた口座の払戻しを行うことができます。 一方で、相続人の間で不公平が生じやすいのがデメリットです。口座残高がすべて同じであれば問題ないですが、預金口座ごとに残高が違う場合は、誰がどの口座を相続するかでトラブルになりかねません。 口座残高の違いによる不公平を解消するには、預貯金以外の財産で調整する必要があります。

2.払戻し後に現金を分割する

被相続人が所有していた預金口座をすべて解約し、払戻し後の現金を相続人同士で話し合って分割する方法です。預金口座ごとに分割する方法に比べると、不公平が生じにくい分け方といえるでしょう。

相続による預貯金の払戻しは、金融機関によって手続きの流れや必要書類が異なります。一部の金融機関では、その金融機関以外の相続人名義口座にも振り込んでくれます。

相続が発生した際は、被相続人の口座がある金融機関に早めに問い合わせましょう。

3.代償分割を行う

代償分割とは、相続人のひとりが財産を取得し、他の相続人に代償金を支払って清算する遺産分割方法です。代償分割は、不動産など複数人で分けるのが難しい財産を相続する際によく使われますが、状況によっては預貯金を分けるときにも有効です。

具体例として、預貯金3,000万円と株式1,000万円(合計4,000万円)を長男と次男の2人で分割するケースについて確認しましょう。長男が預貯金3,000万円、次男が株式1,000万円を受け取る場合、長男が次男に代償金1,000万円を支払えば、2人とも財産を2,000万円ずつ相続できます。

代償分割は専門知識が必要で、手続きが複雑になることもあるため、専門家と相談しながら進めるとよいでしょう。

預貯金の相続手続きの流れ

預貯金を相続する際は、以下の流れで手続きを行います。

預貯金の相続手続きの流れ

  1. 相続人を確定させる
  2. 預貯金の口座や残高を確認する
  3. 遺産分割協議を行う
  4. 預貯金を分割する

それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。

STEP①相続人を確定させる

被相続人が亡くなったら、まずは誰が相続人なのかを確定させなくてはなりません。

法定相続人の範囲は民法で定められており、配偶者は常に相続人となります。あくまでも法律上の配偶者であり、内縁関係の人は含まれないため注意が必要です。配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人となります。

法定相続人の範囲

  • 第1順位:死亡した人の子供
  • 第2順位:死亡した人の父母や祖父母(直系尊属)
  • 第3順位:死亡した人の兄弟姉妹

第1順位の人がいないときは第2順位、第1順位の人と第2順位の人のどちらもいない場合は第3順位の人が法定相続人となります。再婚や養子縁組をしている場合は、相続関係が複雑になることがあるため要注意です。

また、遺言書がある場合は、遺言によって法定相続人以外の人を相続人に指定できるため、遺言の有無も必ず確認しておきましょう。

STEP②預貯金の口座や残高を確認する

次に、被相続人の預金口座や残高を確認して、遺産分割の対象となる預貯金を把握します。

預貯金がいくらあるかを明確にするために、各金融機関に「残高証明書」を発行してもらいましょう。残高証明を請求する際は、「被相続人の戸籍謄本」などの書類が必要です。金融機関に指定された書類を用意して手続きを進めましょう。

また、相続財産を平等に分けるために、不動産や有価証券など預貯金以外の財産を確認しておくことも大切です。被相続人から生前贈与を受けている場合は「特別受益」とみなされ、遺産分割に影響がでる可能性があります。

STEP③遺産分割協議を行う

相続人が確定し、預貯金の額を把握できたら、遺産分割協議で預貯金の分け方を決めましょう。

上述したように、預貯金の分割方法は複数あります。相続人の数や相続財産の額・種類などによって最適な方法は変わってくるため、状況に応じて分け方や受け取り額を決めることが大切です。

遺産分割協議がうまくまとまらない場合は、弁護士などの専門家に相談するとよいでしょう。

遺言書は遺産分割協議や法定相続分に優先する

遺言書は、遺産分割協議や法定相続分よりも優先されます。そのため、遺言書がある場合は、遺言の内容に基づいて遺産分割を行わなくてはなりません。被相続人が、遺言書の存在を誰にも伝えていない可能性もあります。遺言書が後から発見されると相続トラブルの原因になるため、自宅の引き出しや金庫などに保管されていないか確認しておきましょう。

また、兄弟姉妹以外の法定相続人には「遺留分」が認められます。遺留分とは、相続で最低限もらえる遺産のことです。たとえ遺言書があっても、遺留分の請求は可能です。

STEP④預貯金を分割する

遺産分割がまとまったら、遺産分割協議の内容に基づいて預貯金を分割しましょう。金融機関に必要書類を提出して、各相続人の預金口座への振込を依頼します。必要書類に不備がなければ、一般的には書類提出から2週間程度で振込が完了します。

預貯金を相続するときの必要書類

ここでは、預貯金を相続するときに、金融機関に提出する主な必要書類を紹介します。

遺産分割協議書

遺産分割協議書とは、遺産分割について相続人同士で合意した内容をまとめた書類です。遺産分割協議書を作成するには、相続人全員の合意が必要になります。決められた様式はありませんが、相続人全員が署名し、実印を押印しなくてはなりません。

被相続人の戸籍謄本

被相続人の戸籍謄本は、被相続人が死亡した事実や法定相続人を金融機関が確認するために提出します。被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本などが必要です。被相続人や相続人の状況によって用意すべき書類は変わってくるため、詳細は金融機関の担当者に確認しましょう。

相続人全員の戸籍謄本

被相続人だけでなく、相続人全員の戸籍謄本も提出します。金融機関が法定相続人を把握することが目的です。

相続人全員の印鑑証明書

遺産分割協議書に押印した、相続人全員の印鑑証明書も用意しましょう。相続人が未成年者の場合は、親権者や代理人の印鑑証明書が必要になることもあります。

預貯金の遺産分割に関する注意点

預貯金の遺産分割に関する注意点は以下の通りです。

被相続人の預金口座は凍結される

被相続人(口座名義人)が亡くなり、金融機関に届出を行うと預金口座は凍結されます。原則として、遺産分割が終了するまでは預貯金を引き出せません。

凍結前の預金引き出しは相続トラブルになる

被相続人の預金口座が凍結される前に、あわてて預金を引き出すのは避けましょう。被相続人の預貯金は遺産分割の対象です。他の相続人との共有財産を勝手に引き出すことになるため、相続トラブルの原因となります。

生活費や葬儀費用が必要な場合は「払戻し制度」を利用する

預貯金は、基本的に遺産分割が終わるまでは引き出せません。

ただし、当面の生活費や葬儀費用が必要な場合は、「相続預金の払戻し制度」により遺産分割前であっても一定額の払戻しを受けられます。民法が改正され、2019年(令和元年)7月から相続預金の一部払戻しが可能になりました。

制度利用には、本人確認書類のほかに所定の書類が必要です。また、払い戻された預貯金は、払戻しを受けた相続人が取得するものとして遺産分割の際に調整されます。本制度を利用できるかどうかは、被相続人の預金口座がある金融機関に問い合わせましょう。

適切な手続きのもと、預貯金の相続を行いましょう

この記事のまとめ

  • 被相続人の預貯金は遺産分割の対象であるため、原則として遺産分割が終了するまで引き出せない
  • 預貯金の遺産分割方法には、「預金口座ごとに分割する」「払戻し後に現金を分割する」「代償分割する」の三つがある
  • 預貯金を相続する場合は、まず誰が相続人かを確定させる
  • 遺産分割の対象となる預貯金を把握するために、金融機関に残高証明書を発行してもらう
  • 預貯金の分け方は遺産分割協議で決めるが、遺言書がある場合はその内容に基づいて分割する
  • 口座凍結前の預金引き出しは、相続トラブルの原因となるため避ける
  • 当面の生活費や葬儀費用が必要な場合は、「相続預金の払戻し制度」を利用する

被相続人の預貯金は遺産分割の対象であるため、基本的には遺産分割が終了するまで引き出せません。相続人同士で話し合い、どのように分割するかを決める必要があります。遺産分割協議がまとまったら、金融機関に必要書類を提出すると預貯金の払戻しを受けられます。

遺産分割前に当面の生活費や葬儀費用が必要な場合は、「相続預金の払戻し制度」の利用を検討しましょう。

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