お役立ち情報④
相続は、人が亡くなった瞬間から始まります。相続税は10ヵ月以内に申告・納付する必要があり、相続税を納めない場合でも、相続税の申告は必要となる場合があります。金融資産の名義変更、預貯金の払い戻し、有価証券の売却などを行うためには、遺産分割協議書の作成、所定の相続届への相続人全員の署名、捺印や印鑑証明書、戸籍謄本などの提出が求められます。実際の手続きは相続税の申告後になるとしても、親族が集まる四十九日法要を目安に遺言書を確認し、相続人を確定し、どんな相続財産があるか把握しておきましょう。
>(PDF)引き継ぐ手続き・支払いを受ける手続きに関する便利なチェックシートはこちら(PDFが開きます、ダウンロードしてご利用ください)
銀行や信用金庫などの金融機関に預貯金の口座を持っていた方が亡くなった場合、その事実を金融機関に知らせなければなりません。預貯金者の死を知った金融機関が口座を凍結するため、たとえ故人の配偶者や子であっても、遺産分割が終了するまで、一切の入出金を行うことができなくなります。
これまでは制度上、故人の口座からお葬式にかかる費用でさえ引き出せませんでしたが、相続に関する民法の改正により、2019年7月1日からは一定額の払い戻しが認められるようになりました。払い戻せるのは、相続開始時の預貯金額の3分の1×相続人の法定相続分で、金融機関ごとの上限は150万円です。また、家庭裁判所に遺産分割の調停と預貯金の仮払いを申し立てれば、他の共同相続人の利益を害さない範囲での仮払いも認められます。なお、仮払いを受けた分は遺産分割の際に相続額から差し引かれます。
クレジットカードの解約手続きはカード会社によって異なるので、ホームページを確認するか、カードの裏面に記載されている電話番号にかけて教えてもらいましょう。ただし、解約前に故人が使用した分の未払い金は原則として相続人が支払うことになるので、利用明細を確認してからすみやかに解約手続きをしましょう。
株式や投資信託、債券などの金融資産も、その存在を確認することがスタート。故人がどんな証券会社と取り引きしていたかは、郵便物や通帳の履歴などから推測できます。名義変更後に株式を売却するつもりでも、基本的には相続人名義の管理口座に移さなければならないので、新たに口座を開設する必要があります。証券会社を通していない有価証券は会社名を確認し、その有価証券の発行会社に手続きの方法を確認します。
インターネット専業銀行は預金通帳がないため、親族が存在に気づきにくいという問題があります。遺産分割協議を終え、相続税を申告したあとにネット銀行やネット証券口座、外国為替証拠金取引(FX)などの口座の存在が判明すれば、分割協議や相続税の納税そのものがやり直しになります。そうした事態を避けるためにも、デジタル遺品の取り扱いと同様にエンディングノートなどの記述を心がけたいものです。
生命保険には、被保険者の死亡によって保険金が受け取れる商品があり、これも重要な相続財産となります。親族が周知している以外の契約があるかどうかは金融商品と同様に、保険証書、郵便物や通帳の履歴などから推測しましょう。保険会社がわかったら、被保険者の死亡を保険会社に連絡し、保険の契約内容を確認します。というのは一般的な金融商品とは異なり、保険金の受取人が指定されている生命保険商品には、原則としてその受取人がほかの相続人の存在に関係なく、単独で受け取ることができるものがあるからです。その場合は遺産分割協議などを待つことなく、所定の手続きによって保険金を受け取ることができるため、お通夜やお葬式の費用、遺族の当面の生活費などに充てることができます。また、一定の要件を満たす死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の額の非課税枠がありますが、契約者・被保険者・受取人の契約形態により、課される税金が異なる点に注意が必要です
銀行の預金口座や不動産の名義変更は、遺産分割協議を終えてからですが、手続きには故人の出生から死亡まで一生分の戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、実印と印鑑証明などが必要になります。請求から手元に届くまでに1週間~2週間かかることもあるので、余裕を持って手続きを開始しましょう。最終的に相続関係届書・相続確認書・相続届(銀行によって異なる)を提出すれば、2週間ほどで故人の預貯金の払い戻し、または同一銀行内にある相続人の口座への名義変更が完了します。
契約形態の例 | 契約者 (保険料負担者) |
被保険者 | 受取人 | 課税方法 |
---|---|---|---|---|
Ⅰ | 父 | 父 | 母・子など | 相続税 |
Ⅱ | 子 | 父 | 子(=契約者) | 所得税 住民税 |
Ⅲ | 母 | 父 | 子など | 贈与税 |
|