お役立ち情報⑤
世帯主である配偶者が亡くなったとき、苗字をそのままにするか、結婚する前の苗字に戻すか、遺された人が自由に決めることができます。これを「復氏届」といい、「旧姓に戻って心機一転、再出発をしたい」「夫婦関係に問題があって死別後は配偶者の姓を名乗りたくない」など、理由はさまざまです。戸籍に関わる問題なので難しく感じられるかもしれませんが、「復氏届」の提出には裁判所の許可や配偶者の親族の同意は必要なく、本人の意思のみで自由に提出することができます。
「復氏届」を提出する人は旧姓に戻るにあたり、結婚前の戸籍に戻るのか、新たな戸籍をつくるのかを選択します。
結婚前の戸籍に戻る際は結婚前の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)が必要です。一方、新たに戸籍をつくる際は「分籍届」も同時に提出します。この場合は本籍地をどこに置くかも自分で決めることができます。提出先は本籍地、または住所地の市区町村役場となり、後者の場合は戸籍謄本(戸籍全部証明書)を添付する必要があります。「復氏届」の提出には期限はありませんので、よく考えてから手続きを行いましょう。
「復氏届」は本人の意思のみで提出できますが、子どもがいる場合は注意が必要です。たとえば夫を亡くした妻が「復氏届」を提出すると、旧姓に戻るのは本人のみで、子どもは夫の戸籍に残り、苗字も変わりません。子の苗字も変更し、旧姓に戻った人の戸籍に入れる場合は、家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立書」を提出し、許可審判を受けた上で入籍届を提出します。
「復氏届」の提出は原則として期限がありませんが、配偶者である外国人の死亡に伴う復氏届については、亡くなった日の翌日から3ヵ月以内に届け出ることと、届け出に際して家庭裁判所の許可が必要となります。
「復氏届」を提出すると配偶者の戸籍から抜けますが、配偶者の相続人という地位はそのまま残ります。また、苗字を変えても離婚したわけではないので、配偶者の親族(配偶者の父母や兄弟姉妹=姻族)との法律上の関係は変わらず、扶養義務も残ります。配偶者の親族である「姻族」との関係を解消したいときは、本籍地または住所地の市区町村役場に「姻族関係終了届」を提出します。「姻族関係終了届」は遺された配偶者が単独で手続きすることができ、姻族の同意は不要です。届け出たその日から姻族関係は終了しますが、姻族と子どもとの関係はそのまま維持されます。また、相続権に影響はなく、遺族年金も受給できるので、法律的なデメリットはほとんどありません。
配偶者の死をきっかけに提出可能となるこのふたつの届はまったく別物です。どちらか一方を提出することも、両方提出することもできます。
どちらを先に出してもかまいませんが、最新の戸籍に姻族関係終了の記載を残したくない場合は、姻族関係終了届を先に、その後に復氏届を提出します。「姻族関係終了届」は配偶者の死後に提出するだけで、義理の親族との縁を絶つことができ、扶養の義務から解放されるため、近年は「死後離婚」の意味で使われることがあります。しかし、「姻族関係終了届」は離婚のように姓を変えられるわけではなく、復氏届のように姓を戻す効力はありません。ふたつの届け出の意味をよく考え、配偶者亡きあとの人生に生かせるような賢い選択をしましょう。
届け出 | 提出できる人 | 提出先 | 必要なもの |
---|---|---|---|
復氏届 (窓口で入手) |
遺された配偶者 | 届出人の本籍地の市区町村役場 届出人の住所地の市区町村役場 |
・届出書 ・戸籍謄本(本籍地に届け出る場合は不要) ・婚姻前の戸籍に戻る場合は婚姻前の戸籍謄本 ・印鑑など |
分籍届 (窓口で入手) |
分籍する本人 | 届出人の本籍地の市区町村役場 届出人の住所地・転籍地の市区町村役場 |
・届出書 ・戸籍謄本(本籍地に届け出る場合は不要) |
子の氏の変更許可申立書 (家裁の窓口で入手) |
子法定代理人 (15歳未満) |
子の住所地の家庭裁判所 | ・申立書 ・子の戸籍謄本 ・父母の戸籍謄本 ・800円分の収入印紙(子1人につき) |
入籍届 (窓口で入手) |
子法定代理人 (15歳未満) |
子の本籍地の市区町村役場 届出人の住所地の市区町村役場 |
・届出書 ・子の氏の変更許可申立書の審判書(家庭裁判所で交付) |
姻族関係終了届 (窓口で入手) |
遺された配偶者 | 届出人の本籍地 住所地の市区町村役場 |
・届出書 ・死亡配偶者の死亡事項の記載がある戸籍(除籍)謄本印鑑など |