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自筆証書遺言とは?要件を満たした正しい作成方法と注意点を解説

自筆証書遺言とは?要件を満たした正しい作成方法と注意点を解説

「誰にどのような財産を残したいか」といった自分の意思を伝えるには、遺言書を作成するのが有効です。自筆証書遺言であれば気軽に作成できますが、要件を満たさないと無効になるリスクがあります。そこで本記事では、自筆証書遺言の要件や作成方法、注意点について解説します。

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自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とは、遺言者が遺言の全文を自分で手書きする遺言書です。紙とペンがあれば作成できるため、思いついたときに自宅で気軽に作成したい場合に向いています。

ただし、自筆証書遺言の作成にはルールがあり、民法で定められた要件を満たさないと遺言書の内容が無効になってしまいます。自筆証書遺言を作成する際には、概要や正しい作成方法を理解しておくことが大切です。

公正証書遺言とは

遺言書には、自筆証書遺言のほかに公正証書遺言もあります。公正証書遺言とは、弁護士や司法書士などの公証人に作成してもらう遺言書です。証人2人以上の立ち会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に伝え、その内容を公証人が筆記して遺言書とします。

法律の専門家が作成してくれるため、遺言書が無効になる可能性が低いのがメリットです。また、遺言書の原本が公証役場で保管されるため、紛失や改ざんの心配がありません。ただし、2人以上の証人が必要で、作成に費用や手間がかかります。

自筆証書遺言のメリット

自筆証書遺言のメリットは以下の二つです。

自筆証書遺言のメリット

  • 作成費用がかからない
  • いつでも書ける、書き直せる

自筆証書遺言は遺言者本人が手書きで作成するため、費用がかかりません。公正証書遺言は作成手数料がかかるため、無料で作成できるのは大きなメリットでしょう。

また、一度遺言書を作成しても、しばらくすると考えが変わったり、想定外の出費などで相続内容が変わる可能性もあるでしょう。自筆証書遺言であれば、こういった場合でもご自身で書き直すことができます。

自筆証書遺言のデメリット

一方で、自筆証書遺言には以下のようなデメリットもあります。

自筆証書遺言のデメリット

  • 遺言が無効になる恐れがある
  • 紛失・盗難・改ざんのリスクがある
  • 家庭裁判所の検認手続きが必要

自筆証書遺言の内容が有効と認められるには、民法で定められた要件を満たさなくてはなりません。最低限の要件を満たしていないと、遺言書を作成しても無効になる恐れがあります。

作成した遺言書を自宅に保管する場合は、紛失や盗難、改ざんのリスクが高まります。家族に遺言書の存在を伝えていなければ、自分が亡くなったあとに遺言書を見つけてもらえず、遺言通りに相続が行われない可能性もあるでしょう。

また、自筆証書遺言は、遺言書を開封する際に家庭裁判所による検認手続きが必要です。検認を受けないと、遺言に基づいた遺産の名義変更などができなくなります。なお、公正証書遺言であれば、家庭裁判所の検認は不要です。

自筆証書遺言の五つの要件

自筆証書遺言が有効と認められるには、具体的にどのような要件を満たす必要があるのでしょうか。ここでは、自筆証書遺言の五つの要件について説明します。

1.遺言者本人が遺言書の全文を自書する

自筆証書遺言では、遺言者本人が遺言書の本文をすべて手書きしなくてはなりません。パソコンで作成したり、誰かに代筆してもらったりすると、要件を満たせず遺言書自体が無効となるため注意が必要です。

ただし、遺言書に添付する財産目録については、パソコンでの作成も認められます。また、預金通帳や登記事項証明書などのコピーを添付する方法も有効です。パソコンで作成した目録や証明書などのコピーには、各ページに自書による署名・押印が必要です。

2.作成した日付を具体的に記載する

自筆証書遺言では、作成した日付を具体的に記載することも重要なポイントです。作成日は「令和〇年〇月〇日」のように、正確な日付を記載する必要があります。

年度を書き忘れて「〇月〇日」とだけ記載すると、遺言書は無効になってしまいます。また、「〇月吉日」のような書き方も認められないため注意しましょう。

3.署名する

自筆証書遺言は、遺言者本人が手書きで署名する必要があります。戸籍上の氏名を正確に自筆します。遺言者であることが分かるように、住所も記載しておくとよいでしょう。

4.押印する

自筆証書遺言では、署名だけでなく押印もする必要があります。押印を忘れてしまうと、有効な遺言書として認められません。また、印影が不鮮明な場合も無効になる可能性があるため、正確に押印しましょう。押印は認印でも問題ありませんが、より信頼性の高い実印を使用するのがおすすめです。

5.変更する場合は訂正ルールを守る

自筆証書遺言を書き間違えて内容を変更する場合は、訂正ルールを守らなくてはなりません。訂正した遺言書の具体例は以下の通りです。

Photo by www.gov-online.go.jp

訂正する際は間違えた部分に二重線を引き、訂正のための押印をします。そして正しい内容を書き加える際は「吹き出し」を使って書き入れましょう。また、下部などの余白部分に「〇字削除〇字追加」のように変更した旨を記載し、署名します。

自筆証書遺言の作成方法

自筆証書遺言は以下の流れで作成します。

自筆証書遺言の作成方法

  1. 財産を把握する
  2. 誰にどの財産を相続させるかを決める
  3. 遺言書を書く
  4. 要件を満たしているかを確認する
  5. 紛失に注意して保管する

ここでは、それぞれの内容について詳しく確認していきましょう。

STEP①財産を把握する

まずは、自分がどのような財産をいくら保有しているかを把握することから始めましょう。不動産や有価証券、生命保険、自動車など、預貯金以外の財産もすべて書き出します。

その価値が不明な資産は、評価額を確認できる書類を準備しておくことが大切です。不動産関係であれば「固定資産税評価証明書」や「登記事項証明書」、有価証券は「残高証明書」などを入手しましょう。その上で財産目録を作成すると、相続人や受遺者に残す財産が明確になります。

STEP②誰にどの財産を相続させるかを決める

財産を把握できたら、誰にどの財産を相続させるかを決めましょう。

遺言書がない場合は、法定相続によって相続が行われます。しかし、遺言書があれば、法定相続人以外の第三者を受遺者に指定できます。また、特定の相続人に不動産を相続させるといったことも可能です。

STEP③遺言書を書く

誰にどの財産を相続させるかを決めたら、遺言書を作成していきます。自筆証書遺言は、遺言者本人が全文を手書きしなくてはなりません。また、間違えた場合はルールに則って訂正する必要があります。清書する前に、下書きをしておくとよいでしょう。

STEP④要件を満たしているかを確認する

遺言書を作成したら、自筆証書遺言の要件を満たしているかを確認しましょう。上述したように、自筆証書遺言は遺言者本人が全文を自書し、具体的な日付を記載して署名・押印する必要があります。内容を変更する場合は、訂正ルールを守ることもポイントです。心配な場合は、弁護士などの専門家に確認してもらうことを検討しましょう。

STEP⑤紛失に注意して保管する

遺言書を作成したら、紛失に注意して大切に保管しましょう。

自宅は保管場所が限られるため、紛失や盗難、改ざんのリスクが高まります。また、遺言書の存在を家族に知らせておかないと、自分が亡くなったときに遺言書が発見されない可能性もあります。自筆した遺言書が無効になるのを防ぐには、「自筆証書遺言保管制度」を利用するのも選択肢のひとつです。

自筆証書遺言保管制度とは、自筆証書遺言とその画像データを法務局で保管する制度です。全国312か所の法務局で利用できます。

法務局が遺言書の原本と画像データを保管してくれるため、紛失や盗難の心配がありません。遺言者が亡くなった際は、法務局があらかじめ指定した人へ通知してくれます。また、家庭裁判所による検認手続きが不要になるのもメリットと考えられます。

自筆証書遺言保管制度では、遺言書の様式が決まっています。「用紙はA4サイズ、裏面には何も記載しない」「一定の余白を確保する」など、決められた様式で遺言書を作成しなくてはなりません。また、遺言者本人が法務局に出向いて申請手続きをする必要があります。

必要に応じて、自筆証書遺言保管制度の利用を検討しましょう。

自筆証書遺言を作成する際の注意点

自筆証書遺言を作成する際は、以下の点に注意が必要です。

夫婦共同の遺言は無効になる

民法975条では「共同遺言の禁止」が定められており、複数人による共同の遺言は無効となります。そのため、夫婦共同で作成した遺言は認められません。どうしても夫婦で遺言を残したい場合は、十分に話し合った上で、どちらか一方が代表して作成するとよいでしょう。

あいまいな表現を避ける

自筆証書遺言を作成するときは、あいまいな表現を避けることもポイントです。たとえば、「渡す」「任せる」ではなく、「相続させる」「遺贈する」といった言葉を使う必要があります。不動産については、登記事項証明書の内容を正確に記載しなくてはなりません。

遺言が無効にならないよう、誰にどの財産を相続させるのかを明確に記載しましょう。

家族に自筆証書遺言の存在を伝えておく

自筆証書遺言を作成して自宅に保管する場合は、家族に遺言書の存在を伝えておきましょう。「自分が亡くなるまで遺言書のことは秘密にしておきたい」と思うかもしれません。しかし、相続人が遺言書を見つけられなければ、遺言を執行できなくなり、法定相続により相続が行われることになります。

自分が亡くなった後に相続トラブルを避けるには、家族には遺言書の保管場所を伝えておくのが無難です。どうしても遺言書の存在を知られたくない場合は「自筆証書遺言保管制度」を利用して、自分が亡くなった際に法務局から指定した人に通知されるようにしておきましょう。

要件や注意点を踏まえて​​自筆証書遺言を作成しましょう

この記事のまとめ

  • 自筆証書遺言とは、遺言者が遺言の全文を自分で手書きする遺言書
  • 自筆証書遺言のメリットは「作成費用がかからないこと」「いつでも書き直せること」
  • 自筆証書遺言のデメリットは「無効になる恐れがあること」「紛失・盗難・改ざんなどのリスクがあること」
  • 自筆証書遺言が有効と認められるには、「全文を自書する」「具体的な日付を記載する」「署名・押印する」などの要件を満たす必要がある
  • 自筆証書遺言の内容を変更する場合は、「間違えた部分に二重線を引き押印する」などの訂正ルールを守らなくてはならない
  • 自筆証書遺言を自宅に保管するのが不安な場合は、法務局の「自筆証書遺言保管制度」を利用する
  • 自筆証書遺言を作成する際は、「夫婦共同の遺言」や「あいまいな表現」は避ける

自筆証書遺言は思いついたときに気軽に作成でき、費用がかからないのがメリットです。ただし、要件を満たさないと遺言が無効になるリスクもあります。自分で遺言書を作成するのが難しい場合は、弁護士などの専門家に相談しましょう。

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