喪中におせちを食べてはいけない理由とは?注意点や代わりの料理を紹介
おせちは、一年の幸せを願いながら食べる正月料理のひとつです。しかし、喪中のときには、おせちを食べるのを控えるのが一般的とされています。本記事では喪中におせちを食べてはいけない理由やマナー、おせちに代わる料理について解説します。
喪中におせちを食べてはいけない
おせちは、重箱にめでたい食べ物が詰められた、お正月に食べる定番の料理です。ここでは、おせちや宗派による違いなどについて解説します。
おせちとは
おせちは漢字で「御節」と書き、新年を祝うときに食べる縁起のよい料理のひとつです。おせちの重箱に詰められた食べ物は、神様へのお供え物という意味もあり、豊穣の感謝や幸せな一年であるようにという願いが込められています。
昔はお正月だけでなく、3月3日の桃の節句や5月5日の端午の節句などに食べる料理も、おせちと呼ばれていました。おせちは季節の節目をお祝いする食べ物でしたが、江戸時代から特に重要であるお正月の料理として位置付けられたといわれています。
宗教・宗派によっては食べてもよい
仏教において、喪中のときは新年におせちを食べてはいけないとされていますが、他の宗教や宗派によってはおせちを食べてもよい場合もあります。
例えば、浄土真宗やキリスト教では喪中という概念がないため、おせちを食べても問題ないとされています。
宗教や宗派の考え方に合わせて、おせちを用意するべきか検討しましょう。
喪中におせちを食べてはいけない理由
浄土真宗以外の仏教において、喪中におせちを食べてはいけないのはなぜなのでしょうか。ここでは、喪中におせちを避けたほうがよい理由について解説します。
おせちは喪中に避けるべき慶事にあたるため
結論からいうと、おせちは「慶事」にあたるため、喪中には食べてはいけません。慶事とは、お祝い事やめでたいことを指します。
喪中の間はめでたい行事は避けるのが一般的ですので、お正月を祝うおせちも食べない方がよいのです。
おせちには縁起のよい食材が使われているため
おせちは、縁起のよい食べ物が使われている料理です。喪中の期間は慶事を避ける方がよいとされているため、縁起のよい意味を持つ食べ物も避けなくてはいけません。縁起のよい食べ物とはどんなものか、おせちの食材の意味を一部紹介します。
喪中は故人を偲び、静かに過ごすため
喪中は、故人を偲んで静かに過ごす期間です。「喪に服す期間」即ち、故人が亡くなったことを受け入れ悲しむ期間であるため、新年を祝い賑わっておせちを食べる行為は避けた方がよいでしょう。
おせちの食材の意味 | |||
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鯛 | 鯛は長生きな魚であるため、長寿祈願の意味。また「めでたい」の語呂合わせ | ||
海老 | 背中が丸くなるまで「長生き」するという意味 | ||
紅白なます・紅白かまぼこ | おめでたい紅白の食べ物。「紅」は赤ちゃん「白」は老いや死という人生を表した色。また、赤飯(赤)と餅(白)という説もある | ||
昆布巻き | 「子生(こぶ)」から、「子孫繁栄」の意味。また「よろこぶ」「「養老昆布(不老長寿)」の語呂合わせ | ||
数の子 | 金色で縁起がよく、多くの卵を持つため「子孫繁栄」を願うという意味が込められている |
喪中におせちを食べる際の注意点
喪中はおせちを食べないのが一般的ですが、喪中は最長で約1年間と長く、すでにおせちを用意してしまっている場合もあるでしょう。ここでは、喪中におせちを食べる際の注意点について解説します。
重箱・祝箸を使わない
おせちは重箱に詰めるのが一般的ですが、喪中に食べるときには使わないようにしましょう。祝箸もめでたいものであるため、使わないのが一般的です。
重箱には「めでたい事が重なる」という意味があり、喪中に重箱を使うと「悲しいことが重なる」という意味になると考えられています。
喪中におせちを用意する場合は、別のお皿や容器に料理を入れましょう。また、食べる際は割り箸や普段使いの箸など、祝箸以外で食べてください。
縁起のよい食材を使わない
おせちを作る場合は、縁起のよい食べ物を使わないようにしましょう。先述した通りおせちの定番の料理には、縁起がよいとされる食べ物が多く使われているため注意が必要です。
また、喪中におせちを作る際は、食材の切り方にも注意しましょう。松竹梅などの形を作る「飾り包丁」や、「つながり」というめでたい意味を持つこんにゃくの「手綱切り」などは、喪中にはふさわしくありません。
家族のみなど少人数で食べる
喪中におせちを食べるときには、家族のみなどできるだけ少人数になるよう心掛けましょう。大勢人が集まって賑やかに過ごすのは、喪中にはふさわしくありません。
喪中におせちを食べるときは、お祝いの雰囲気を出さないようにしましょう。
お酒を飲むのは夜のみにする
お正月に飲む「御屠蘇(おとそ)」は、縁起のよいお酒ですので喪中には飲むのを避けましょう。御屠蘇でなくとも、喪中の飲酒には注意が必要です。
しかし、お酒には「邪気を祓う神聖なもの」という意味も含まれています。夜に飲むことで邪気を祓うという意味が強くなるため、喪中のお正月にお酒を飲む場合は、日没後にするとよいでしょう。
おせちに代わる喪中におすすめの料理・食べ物
喪中のときのお正月には、おせちのようなめでたい食事の代わりになる食べ物がおすすめです。ここでは喪中に食べても問題のない、おせちの代わりになる食事を紹介します。
①ふせち料理
「ふせち料理」とは、喪中のときのおせちの代わりになるもので、中身は精進料理が中心です。「御節」の「御」を「不」に変えて、「不節」となったという説があります。めでたい意味のある縁起のよい食材を避けて作られているため、喪中にふるまう料理におすすめです。
ふせち料理におすすめの食材の意味 | |||
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黒豆 | まめに働けるように「健康」を願う意味で、黒いため喪中でも問題なくいただける | ||
れんこん | 多く穴が開いていることから「見通しが効く」という意味 | ||
ごぼう | 深く根を張り生えるため「地に根を張り家を絶やすことなく残す」という意味 | ||
里芋 | 親芋に子芋や孫芋が生える子沢山の野菜であるため、「家を絶やさない」という意味 | ||
伊達巻 | 巻物の形に似ていることから「知識が豊富になる」という意味 |
②お雑煮
「お雑煮」は、喪中に食べてもよいお正月料理です。お雑煮はお祝い事があるときに食べる食事ではありますが、1年の健康と幸せを祈って食べるものであり、近年は一般的な料理として定着しているため、喪中に食べても問題ないとされています。
しかし紅白のかまぼこや海老、飾り切りにしたにんじんなど、縁起のよい食材を入れるとめでたい意味のある食べ物になってしまうため注意しましょう。また、喪中に食べるお雑煮は具材が豪華にならないよう工夫が必要です。
③魚の煮付け
喪中のときおせちの代わりになる料理のひとつに、「魚の煮付け」があります。しかし「鯛」には、めでたいという意味があるため避けましょう。また、尾頭付きの魚にもお祝い事の意味が含まれているため避けてください。
喪中に食べる魚の煮付けは切り身のものを選ぶとよいでしょう。
ただし、忌中の場合、殺生を禁止する仏教の教えから肉や魚を食べないという習わしもあります。人を招いての食事の場合は、習わしや考え方などを事前に確認するとよいでしょう。
④鍋料理
喪中のときには、おせちの代わりに鍋料理やすきやき、焼き肉などもおすすめです。鍋料理はごちそうの印象がありますが、縁起がよい料理というわけではありません。家族が集まり食べる温かな鍋料理は、故人を思い語る時間にもなるでしょう。
ただし、先述した通り忌中の場合は肉や魚を食べてはいけないという考え方もあります。家族で過ごす分には問題ありませんが、人を招く際は事前に考え方や習わしを確認しておくとよいでしょう。
喪中の食べ物に関してよくある質問
年末年始に身内の不幸があった場合は、おせち以外にも気を付けるべきことがあります。ここでは、特に気になる点が多い年越しそばと鏡餅について解説します。
Q. 喪中に年越しそばは食べてもよい?
結論からいうと、喪中に年越しそばを食べても問題ありません。年越しそばには、「長いものを食べて長寿を願う」「1年の厄を落とす」といった意味があります。年越しそばに特別めでたい意味合いがあるわけではないため、喪中でも食べられます。
しかし、喪中に年越しそばを食べる際には入れる具材に配慮が必要です。例えば紅白のかまぼこや梅の形に切ったにんじんなどを入れると、お祝いの意味が含まれてしまいます。
また、そもそも喪中には年越しそばを食べないという習わしがある地域やご家庭もあるため、心配な場合は事前に家族や親戚に確認すると安心です。
Q. 喪中に鏡餅を飾ってもよい?
喪中のときには、鏡餅を飾らないようにしましょう。お正月に飾る鏡餅には、年神様が宿るとされています。喪中の家には「穢れ」があるため、お正月に神様をお迎えできません。玄関の正月飾りや門松、しめ縄なども同じ意味が含まれているため、喪中には飾らないほうがよいでしょう。
しかし、地神道における忌中の50日間を過ぎていれば問題ないという考えもあります。不安な場合は、事前に確認しておきましょう。
喪中のお正月はおせちなどの祝い事を避けて過ごそう
この記事のまとめ
- 喪中には「おせち」を食べてはいけない
- 宗教・宗派によっては食べてもよい
- 喪中におせちを食べてはいけない理由は、①慶事にあたるため②縁起のよい食材が使われているため③喪中は故人を偲び静かに過ごすため
- 喪中におせちを食べる場合は、お祝い事にならないよう配慮をする
- 喪中は、おせちの代わりになる「ふせち料理」や「お雑煮」などを食べる
- 喪中に年越しそばを食べるのは問題ないが、鏡餅などの正月飾りは避ける
喪中のお正月は、故人を偲ぶためにお祝い事を避けます。親戚で集まるときはお正月を祝うのではなく、故人を思い静かに過ごすよう心掛けましょう。