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健康・カラダのこと

親の介護で退職したらどうなる?支援制度や介護離職を防ぐ方法も紹介

親の介護で退職したらどうなる?支援制度や介護離職を防ぐ方法も紹介

親の介護が必要になった場合、仕事を退職しなければいけないと考える方もいるでしょう。しかし、介護のためだけに退職することは、おすすめできません。今回は、退職せずに親の介護を続けるための支援制度や介護離職の予防方法について紹介します。

監修者 SUPERVISOR
介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級 池田 正樹

東北公益文科大学卒業。その後、介護保険や障害者総合支援法に関する様々な在宅サービスや資格講座の講師を担当した。現在は社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームの生活相談員として、入居に関する相談に対応している。在宅・施設双方の業務に加えて実際に家族を介護した経験もある。高齢者介護分野のみならず、障がい者支援に関する制度にも明るい。

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介護離職とは

介護離職とは、親の介護をするために仕事を退職することです。退職の具体的な理由は「親の介護に集中したい」や「勤務中に何度も病院から電話が来て職場に迷惑がかかるから」など、さまざまです。例え退職しない場合でも、親の介護によって仕事のパフォーマンスや私生活に悪影響を与えることがあります。親の介護による離職や仕事の阻害は現役世代の将来設計にも影響を与えることから、解決しなければならない社会問題の一つです。

介護離職によって介護者に生じるリスク

親の介護のために退職すると、自身の将来設計や日常生活に悪影響がでる可能性があります。ここからは、介護離職によって介護者に生じる影響について具体的に紹介します。

収入の減少

親のために仕事を退職すると、今までもらえていた給料がもらえなくなります。単に毎月の給料がなくなるだけではなく、自身の将来のために必要な退職金や年金の受給額も減ってしまいます。親の介護が長引けば長引くほど、離職は経済的に大きな痛手となるでしょう。

介護負担の増大

親の介護のために退職をした人の中には、「自分が頑張らなければ」と一人で抱えすぎてしまう人もいます。退職したからといってワンオペ介護になってしまうと、想像以上に介護負担がのしかかるかもしれません。

また、一般の家庭では介護環境が充分に整えられなかったり、身体介護の方法やコツをしっかり学べていなかったりします。そのような中で無理な介護をしてしまうと、腰痛や関節痛など、介護者の身体に大きな負担がかかります。最悪の場合、介護者が自身の治療をしながら親の介護を行わなければなりません。

社会からの孤立

親の介護のために退職すれば、時間に余裕ができると考えている方もいるでしょう。しかし、実際は介護中心の生活になるため、社会や地域・友人とのつながりが次第に希薄になってしまいます。

退職し家庭の中にいる時間が多くなると、介護者は次第に孤立感を感じるようになってしまいます。

再就職が困難になる

親の介護のために退職をすると、築いてきたキャリアが途絶えてしまい、再就職が困難になる恐れがあります。

内閣府の資料では、「介護のために退職した後の再就職率は31%にとどまる」という調査結果が公表されています。また、年齢が高ければ高いほど退職後の再就職率が下がることも示されています。親の介護のために退職する場合、離職期間が長引けば長引くほど再就職が困難になることを念頭に置いておきましょう。

介護離職の現状と課題(内閣府)

親の介護で退職する前に知っておきたいこと

自身の将来のことを思うと、親の介護のために退職をしてもよいのかと悩んでいる方もいるでしょう。ここでは、親の介護で退職する前に知っておきたいことを紹介します。

以下の対策を取り入れれば退職せずにすむかもしれませんので、是非目を通してください。

介護保険制度を利用する

介護保険制度は、身体介護を始めとした高齢者のさまざまなケアに対応した制度です。自宅で生活する高齢者の生活環境や介護体制を補うことができるため、退職せずに勤務しながら親の介護をする方たちの強い味方となります。

ヘルパーに自宅へ来てもらったり、心身機能に応じたリハビリを受けさせたり、自宅介護に不安がある場合は介護施設へ入所させたりもできます。どのようなサービスが合っているか判断が難しい場合は、ケアプランも作ってもらえます。専門家に相談して介護体制を整えれば、退職せずに介護との両立を目指せるでしょう。

会社の支援制度を利用する

国が整備し勤務先に実施を義務付けている支援制度を活用する方法もあります。例えば、親の施設探しや入居手続きのために休みを取ったり、残業や夜勤などの勤務から外してもらったりすることができる制度です。

親の介護のためだけに退職するのは、介護が終わった後の生活に悪影響を与える危険性があります。すぐに退職すると判断するのではなく、まずは退職せずにすむ方法を考えるようにしましょう。

介護保険制度とは

介護保険制度では、実際にどんなサービスが利用できるのでしょうか?ここでは、介護保険制度についてより詳しく紹介します。介護保険制度を利用するか悩んでいる方は、ぜひ確認してください。

介護保険制度の概要

介護保険制度は、自宅や施設で暮らす高齢者をケアすることで、高齢者自身の自立と家族の介護負担軽減を目的とした制度です。2000年から始まった、比較的新しい社会保険制度といえます。

介護保険制度を利用するためには、以下の手順が必要です。

介護保険制度の利用手順

  1. 住民票のある市区町村に要介護等認定の申請を行う
  2. 認定結果に応じて、ケアマネジャーの事業所と契約する
  3. 担当のケアマネジャーからケアプランを作ってもらう
  4. プランを確定し、サービス提供事業所と契約する

サービスの料金は原則公定価格で、介護サービス費と食費などの保険外費用の合計額を支払います。介護サービス費は、利用者の所得に応じた自己負担割合(1割〜3割)などにより決まります。

介護保険制度で利用できるサービス

親の介護で退職することを防ぐために、積極的に介護保険サービスを利用しましょう。介護保険サービスの種類は、大きく以下の3つに分けられます。

①居宅サービス

居宅サービスは、自宅で暮らす高齢者を支援するためのサービスです。以下のようなサービスを上手に活用すれば、親の介護と仕事を両立する助けとなるでしょう。

居宅サービスの例

  • デイサービス…身体介護や機能訓練を送迎付きで実施する
  • 通所系居宅サービス…リハビリに特化したデイケアなどを行う
  • 訪問系居宅サービス…自宅にヘルパーや看護師が来て身体介護や医療ケアを行う
  • 短期入所系居宅サービス…施設に短期間宿泊し、介護や生活支援を行う
  • 福祉用具レンタル・販売・住宅改修…介護のための環境整備で後方支援を行う

②施設サービス

施設サービスとは、介護施設に入所して24時間365日必要な支援を提供するサービスです。対応する施設は、以下の3種類です。

施設サービスの種類

名称

概要

介護老人福祉施設

生活の場や、終の棲家としての機能を持つ介護施設。原則要介護3以上の方が入居可能だが、特定の条件を満たせば要介護1以上の方でも申し込みできる。減免制度が充実していて施設の中でも費用が低いため、待機者が多く入居難易度は高い。

介護老人保健施設

リハビリによって在宅復帰することを目的とした医療系の施設。定期的に在宅復帰の可能性について評価し、可能と判断されれば退去となる。そのため、回転率が高く入居がしやすい。

介護医療院

介護老人福祉施設の機能に加え、他の施設では難しい重度の医療ケアにも対応した施設。全国的に施設数が少ないため、入居難易度は高い。

③地域密着型サービス

地域密着型サービスは、地域性を活かしたきめ細かいサービスと臨機応変な対応が可能です。要介護者の住民票がある市区町村の事業所しか利用できないというルールがあります。

心身状態に応じ、事業所の判断や利用者のニーズに合わせて小回りのきくサービスを実施できるのが地域密着型の特徴です。時間を問わず定期的な訪問と緊急時対応を組み合わせて利用できる巡回型の訪問介護や、認知症専門のデイサービス・入所施設などもあります。また、訪問・通所・泊まりの複合的なサービスを一体的に提供する施設もあります。

居宅サービスと地域密着型サービスの一部は、併用が可能です。介護の困り事をケアマネジャーと相談し、一緒にケアプランを考えてもらいましょう。

介護保険制度の相談先は地域包括支援センターがおすすめ

地域包括支援センターは、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員などの専門家が在籍している地域福祉に関する総合相談窓口です。親の介護で退職を考えている場合は、まず地域包括支援センターに相談することをおすすめします。

地域包括支援センターでは、身体機能が衰えた方に対する介護予防の取り組みや認知症の方との接し方への助言、介護相談、高齢者の権利擁護などの複雑な課題に対して専門職が連携して相談に応じます。解決が難しい場合は、ほかの専門機関の紹介も行っています。

さらに地域包括支援センターでは、要介護等認定の代行申請も受け付けています。営業日は平日のみというのが一般的ですが、あらかじめ相談すれば土日でも対応してくれる場合もあります。親の介護で退職しようか悩む前に、気軽に相談してみるとよいでしょう。

親の介護に関する勤務先の支援制度の一覧

介護離職は自身の生活や将来設計に影響するため、親の介護に困ったからといってすぐに退職を決意しないようにしましょう。国としてもこの社会問題に向き合っており、介護と仕事を両立するための法整備を進めています。

最後に、国が勤務先の会社に実施を義務付けている介護支援制度について紹介します。

①介護休業

介護休業は、要介護状態(2週間以上にわたり常時介護を要する状態)の親の介護のため、労働者に対し通算で3回(93日間)の休みを与えることを定めた制度です。条件を満たせばパートやアルバイトでも利用可能です。別途ハローワークに申請すれば、給与の67%相当の介護休業給付金も受給できます。

勤務先と合意できればまとまった日数を休めるため、この間に介護サービスや施設探しをすることができます退職せずとも自宅での看取り介護ができた、という事例もあります。

②介護休暇

介護休暇は、要介護状態の親の介護のため、対象家族一人に対し年間5日間の休みを与えるという制度です。

例えば、親の受診やケアマネジャーとの打ち合わせのために休みたいときなどに活用できます。

③短時間勤務等の措置

短時間勤務等の措置は、要介護状態の親の介護のため、以下のいずれかの制度を設けることを義務付ける措置のことです。

短時間勤務等の措置の例

  • 短時間勤務制度
  • フレックスタイム制度
  • 時差出勤の制度
  • 介護費用の助成措置

④所定外労働の制限

要介護状態の親の介護のため、申請した者に対し所定外労働を免除する制度です。

⑤時間外労働の制限

要介護状態の親の介護のため、申請した者の残業を24時間/月・150時間/年までに制限する制度です。

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⑥深夜業の制限

要介護状態の親の介護のため、申請した者の深夜業(22時〜翌5時)を制限する制度です。

退職を決意する前に周囲に相談し、介護との両立を検討しましょう

この記事のまとめ

  • 介護離職とは、親の介護のために退職することを指す
  • 親の介護のために退職すると、介護者自身の生活に悪影響がある
  • 親の介護と仕事の両立を図るため、介護保険や勤務先の支援制度が利用できる
  • 介護保険制度利用の相談先は地域包括支援センターがおすすめ
  • 勤務先には介護のためのさまざまな制度実施が義務付けられている

親の介護が必要になったときは、退職する前に専門家や周囲の人に相談するようにしましょう。仮に親のために退職することを選んだ場合、介護が終わったあとの人生に影響が出る可能性があるためです。

まずは地域包括支援センターに相談し、介護保険サービスの利用を検討することがおすすめです。会社の時短勤務制度などを活用したり、他の近親者と相談したりして退職せずに介護する方法を見つけましょう。

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