合祀墓の費用は安い?具体的な相場や安さがゆえのデメリットまで解説
費用が安く抑えられる埋葬方法として注目されている「合祀墓」ですが、具体的にはどれぐらいの費用がかかるのかご存知でしょうか? 本記事では、合祀墓にかかる費用の内訳や相場を解説します。合祀墓のメリット・デメリットも紹介しますので、お墓選びの参考にしてください。
合祀墓とは
費用が安くご遺族に金銭的負担がかかりにくい埋葬の方法として、近年「合祀墓」が注目されています。では、そもそも合祀墓とはどのような埋葬方法なのでしょうか。まずは、合祀墓とは何かについて、合葬との違いとともに解説します。
複数の遺骨を一緒に埋葬するお墓のこと
合祀墓とは、地面の下や仏像の中など一つの大きなスペースに家族や一族以外の複数の遺骨を一緒にまとめて埋葬(=合祀)するお墓のことです。「合同墓」や「共同墓」とも呼ばれています。合祀はもともと神道において複数の神を一緒に祀ることを表す言葉でした。近年では仏教にも考え方が派生していき、遺骨をまとめて埋葬することを合祀と呼ぶようになり、血縁関係や信仰する宗教の枠組みを超えた埋葬の方法として定着しています。
合祀に似た言葉に「合葬(がっそう)」があります。合葬は家族や一族以外の複数の骨壷を合同で供養することを指します。これに対して合祀は、骨壷から遺骨を取り出してまとめて埋葬する方法です。合葬をして、一定期間が過ぎたら骨壷から遺骨を取り出し、合祀墓へ移されることが一般的です。
お墓の形状・埋葬方法によってさまざまな種類がある
費用が安く抑えられる埋葬方法として注目されている合祀墓ですが、納骨場所の形状や埋葬方法によってさまざまな種類があります。ここからは、合祀墓の種類別の特徴について解説します。種類ごとに見た目や費用が異なるため、故人の希望や参拝のしやすさなどを踏まえて選んでみましょう。
合祀型の埋葬方法と費用
合祀型は合祀墓のなかで定番の埋葬方法で、費用を安く抑えられます。すでに他の人の遺骨が埋葬されている場所の上から新しく遺骨を加え、遺骨同士を混ぜる埋葬形式です。故人ごとに納骨・埋葬スペースが用意されないため費用が安く、相場は2.5万円~10万円です。
慰霊碑型合祀墓の埋葬方法と費用
慰霊碑型合祀墓は合祀型の一つで、納骨室の上にお墓の目印として石碑・仏像などのモニュメントが建てられているタイプの合祀墓を指します。一般的なお墓と同じように参拝できるため、お墓じまいをして合祀をする場合でもスムーズにお墓参りしやすいでしょう。
モニュメントの加工の有無によって多少費用は変動しますが、相場は2.5万円~10万円です。
自然葬型合祀墓の埋葬方法と費用
自然葬型合祀墓も合祀型の一つで、墓標の代わりに樹木をシンボルとして植えている合祀墓です。遺骨は樹木の下に埋葬されるため、自然に還りたいという故人の希望を叶えられるでしょう。
中には、イギリス式庭園のような美しい合祀墓もあり、明るい気持ちで参拝ができます。樹木の維持に費用がかかるため、相場は慰霊碑型に比べて3.5万円~10万円と少し高めです。
個別安置型合祀墓の埋葬方法と費用
個別安置型は、合祀墓の中でも納骨堂に近い埋葬方法です。納骨堂とはなにか、詳細については記事の後半で紹介します。
一つの合祀墓の中に個別に区画や納骨スペースが用意されており、それぞれの遺骨は骨壷ごと保管されるため、中身が他の人の遺骨と混ざり合うことがありません。個別に埋葬するスペースが用意されている分、相場も20万円~30万円とほかの合祀墓と比較すると高い傾向にあります。
合祀墓にかかる費用
一般的なお墓とは違った埋葬方法である合祀墓ですが、実際にはどれくらいの費用がかかるのでしょうか。ここからは、合祀墓にかかる費用の種類と相場について解説します。
合祀墓にかかる費用は2.5万円〜30万円が相場
合祀墓の費用は管理している霊園・墓地によって多少の違いはありますが、一霊あたり2.5万円〜30万円です。主な内訳は永代供養料・納骨料・彫刻料の3つに分かれます。定期的な合同供養・個別法要などのサービスを利用する場合、費用がさらに高くなります。
永代供養料
永代供養料とは、霊園・墓地の管理者がご遺族に代わり、永代にわたって遺骨の供養を行うために必要な費用です。永代供養料を払うことで、遺骨や合祀墓の管理を任せられます。地域や合祀墓の種類によって変わりますが、費用は2万円~30万円程度と、合祀墓にかかる費用の多くを占める要素です。
納骨料
納骨料とは、霊園・墓地の管理者に遺骨を合祀墓へ納めてもらう際に発生する費用です。納骨料は、永代供養料の金額に含まれていることも多いです。僧侶の読経に支払うお布施や郵送での納骨などで、別途請求される場合の費用は5千円~2万円程度です。
彫刻料
彫刻料は、モニュメントやプレートに故人の俗名や戒名などを彫る際に発生する費用です。合祀墓の中でも特に慰霊碑型を利用する際にオプションサービスとして用意されていることが多くあります。
永代供養料とは違って必須というわけではありません。しかし彫刻をしておくと、故人の遺骨が眠っている場所が明確になります。費用は2万円~5万円程度が目安です。
墓じまいの費用がかかる場合もある
すでに先祖代々のお墓を持っており、そこに安置されている全ての遺骨を合祀に移したい場合には、墓じまいの費用も必要です。墓じまいには墓石解体工事費や魂抜きにかかるお布施、離檀料がそれぞれ必要となり、費用は全体で20万円~45万円程度かかります。お墓の大きさによっては、さらに費用が高くなる可能性もあります。
合祀墓のメリット・デメリット
一般的なお墓と合祀墓とでは、費用だけでなく特徴や注意点も異なります。ここからは、合祀墓のメリット・デメリットを解説します。
合祀墓のメリット
合祀墓のメリットは、主にご遺族への負担と費用の二つが軽減できることです。遺骨やお墓の管理を霊園・墓地の管理者に任せられる点は、合祀墓を選ぶ大きな魅力でしょう。
お墓を購入するよりも費用が安い
お墓を購入した場合よりも総合的に費用が安く抑えられる点は、合祀墓を選ぶ最大のメリットです。一般的な墓石タイプのお墓を建てる場合の費用は100万円~200万円程度とされており、管理費も継続的に払う必要もあります。
対して合祀墓は、墓石の購入・建立費用がかからないこともあり、費用は2.5万円~30万円と比較的安めです。利用する霊園やサービスによっては、お墓を建てた場合の10分の1程度まで費用を抑えられることもあります。
お墓を管理する負担が軽減できる
お墓を管理する負担が軽減できる点も、合祀墓の大きなメリットです。お墓を購入すると、墓石や墓地スペースのお手入れは利用者が行わなくてはいけません。ゆえに、自宅から遠い場所に墓地がある場合や管理者が高齢の場合などには、身体的な負担がかかってしまうことがあります。
合祀墓であれば、霊園・墓地の管理者が遺骨の管理や区画のお手入れをしてくれます。そのため、忙しくてなかなかお墓参りに行けなくても無理なくご先祖の供養ができるでしょう。
お墓の継承を考える必要がない
お墓の継承を考える必要がない点も、合祀墓のメリットの一つです。特に近年は少子高齢化に伴い、現在所有しているお墓を継承してくれる人がいない「無縁墓」が増加傾向にあるとされています。
合祀墓であれば、遺骨の管理は霊園・墓地の管理者が行うため、ご遺族がお墓の継承者を探す必要はありません。
宗旨・宗派を問わずに利用できる
多くの合祀墓は宗旨・宗派を問わずに利用することができます。お寺のお墓を利用する場合、お寺の宗旨・宗派に改宗したり檀家に入ったりしないとお墓を建てられないことがありますが、合祀墓の場合は檀家にならずにどの宗旨・宗派でも受け入れてもらえます。
ただし、お寺が運営する合祀墓の場合はお寺の宗旨・宗派に改宗したり檀家に入ったりすることが条件となっている場合もありますので、事前の確認は必要です。
合祀墓のデメリット
合祀墓は費用が安い反面、他の人の遺骨と合同で埋葬・管理されることによるデメリットもあります。後から取り返しがつかなくなる場合もあるため、合祀墓を検討する際には、デメリットも理解しておきましょう。
一度合祀すると遺骨を取り出せなくなる
合祀墓のデメリットの一つは、一度合祀すると遺骨を取り出せなくなる点です。一般的なお墓とは異なり、合祀墓では埋葬時に他の人の遺骨と混ざり合い、物理的に故人の遺骨を特定できなくなります。そのため、合祀後に故人の遺骨を取り出すこと自体が不可能で、後から分骨や改葬をしたりお墓を建てたりすることができません。
霊園・墓地によっては、一定期間は個別に遺骨を保管してくれる場合もありますが、期間を過ぎると合祀されてしまいます。「合祀を選択したいが、後から気が変わるかもしれない」という場合は慎重に検討しましょう。
ゆっくりお墓参りしづらくなる
一般的なお墓に比べると、合祀墓は長時間のお墓参りがしにくいというデメリットもあります。合祀墓では、遺骨は一つのスペースに他の人の遺骨とまとめて埋葬されるため、参拝も他のご遺族といっしょになることがあります。ゆえに、ゆっくりご先祖を供養したい人には不向きといえるでしょう。
合祀に抵抗を感じる人もいる
合祀自体に抵抗を感じる人がいることも、合祀墓を利用するうえでのデメリットであり注意点ともいえます。合祀墓は近年注目されている埋葬方法ですが「埋葬時に家族や一族以外の人の遺骨と混ざる」という特徴上、一般的なお墓による埋葬にこだわりがある人からは理解されにくいかもしれません。
合祀墓の利用を検討する際には、あらかじめ他の親族に相談し、理解を得たうえで手続きを進めましょう。
合祀墓以外で安く供養する方法
費用を安く抑えられる埋葬・供養方法として人気の合祀墓ですが、他にも安い費用で供養する方法があります。ここからは、安い費用で供養する方法を紹介します。
納骨堂
納骨堂は、屋内に個人や夫婦などのさまざまな単位で遺骨を保管するための施設です。故人一人ひとりの遺骨を個別に保管できるため、合祀墓のように他の人の遺骨と混ざり合う心配がありません。お墓を建てる必要もないため費用も安く、一人用で10万円~50万円程度、夫婦・家族用の納骨堂で60万円~150万円程度が目安となります。
樹木葬
樹木葬は、墓石ではなく樹木や花をシンボルとする永代供養墓の一つです。一つの樹木のもとに多数の遺骨を埋葬する合祀型をはじめ、骨壷ごと遺骨を埋葬するものの個別に区画が分かれていない「集合型」、故人一人ひとりに専用の埋葬区画が用意されている「個別型」など、希望に合わせてさまざまな種類が用意されています。
樹木葬の費用は合祀型で5万円~30万円、集合型で15万円~60万円、個別型で20万円~80万円が目安です。
手元供養
故人の存在を身近に感じていたい人には、手元供養もおすすめです。自宅や身近な場所で遺骨を保管する方法であり、近年では手元供養用のミニ骨壷に入れたり遺骨をアクセサリーに加工して持ち歩いたりするなどのやり方があります。費用は手元供養の方法によって変わりますが、1万円以下から購入できるものが数多くあります。
合祀墓は費用が安いがゆえにデメリットもあることを知っておきましょう
この記事のまとめ
- 合祀墓は形状・埋葬方法によって種類や費用が変わる
- 合祀墓にかかる費用は全体で2.5万円~30万円が相場
- 合祀墓の費用は永代供養料・納骨料・彫刻料の3つに分かれる
- 合祀墓は費用面だけでなく、お墓の継承・管理の負担がない点もメリット
- 合祀墓は一度合祀すると遺骨を取り出せない点がデメリット
お墓の継承・管理に関するさまざまな悩みを解消する選択肢の一つといえる合祀墓ですが、埋葬方法が特殊であるがゆえにデメリットや注意点も少なくありません。今回紹介した費用やメリット・デメリットなどの情報も踏まえたうえで、合祀墓の利用を検討してみてはいかがでしょうか。