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お金・お家のこと

株式の相続はどのようにして行う?手続きの流れや分割方法を押さえてトラブルを防ごう

株式の相続はどのようにして行う?手続きの流れや分割方法を押さえてトラブルを防ごう

亡くなった方が株式投資をしていた場合、死亡後の相続手続きはどのようにすればよいのでしょうか。本記事では、株式における相続手続きの流れや、相続で株式を分ける方法について紹介します。手続きのポイントや注意点を押さえて、相続トラブルを防ぎましょう。

監修者 SUPERVISOR
AFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士 森本 由紀

神戸大学法学部卒業。鉄鋼メーカー、特許事務所、法律事務所で勤務した後、2012年に行政書士ゆらこ事務所を設立し独立。メインは離婚業務。離婚を考える人に手続きの仕方やお金のことまで幅広いサポートを提供。法律・マネー系サイトでの執筆・監修業務も幅広く担当。

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株式の相続手続きの流れ

故人が保有していた株式がある場合、株式の相続手続きが必要です。まずは、株式の相続手続きの全体像を把握しておきましょう。

①株式の調査

故人の死後は自宅などで相続財産調査をし、株式を保有しているか調べる必要があります。故人が株式を持っているかどうかは、誰も把握していないことも多いからです。故人が株式を持っていた場合、どのような会社の株式がどれくらいあるのかを明確にする必要があります。

故人が保有している株式が上場株式である場合には、証券会社が窓口になっているはずです。取引している証券会社を突き止め、証券会社に問い合わせて株式の詳細を調べましょう。

②遺産分割協議

株式を含めた相続財産が明らかになったら、遺産をどう分けるか相続人同士で話し合って決めなければなりません。遺産の分け方についての話し合いを遺産分割協議といいます。

遺産分割協議は、相続人全員で行うのが原則です。遺産分割協議で遺産の分け方が決まったら、遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議をしようにも話し合いができない場合や、話し合っても遺産の分け方が決まらないこともあります。遺産分割協議で遺産が分けられないときには、家庭裁判所に遺産分割調停や遺産分割審判を申し立て解決するのが一つの手段です。

なお、故人が遺言書を残しており、遺言書で株式を相続する人が指定されていれば、遺産分割協議は不要です。この場合には、遺言書で指定された人が株式を相続することになります。

③株式の名義変更

遺産分割協議で株式を相続する人が決まったら、証券会社等で株式の名義変更手続きを行います。名義変更の際には、遺産分割協議書が必要です。

故人が所有していた株式の調べ方

株式について調べる方法を説明します。現在、上場株式は電子化されており、株券は発行されていません。そのため、故人の死後に自宅を探して株券が見つからなくても、株式を所有している可能性があります。

取引していた証券会社を見つける

故人が上場株式を持っていた場合には、取引していた証券会社を見つける必要があります。上場株式と非上場株式の違いは次の通りです。

株式の種類

概要

問い合わせ先

上場株式

証券取引所で取引されている株式

証券会社

非上場株式

証券取引所に上場(公開)されていない株式

発行会社

故人が株式投資をしていた場合には、証券会社を通じて上場株式を購入しているのが一般的です。故人の自宅に証券会社からの郵便物がないか調べてみましょう。証券会社が判明したら、口座名義人本人が死亡した旨を伝え、残高証明書の発行を依頼します。残高証明書の発行は、相続人の代表ひとりからでも依頼可能です。

証券会社の発行する残高証明書には、故人が死亡日時点で保有していた銘柄や株式数、株価などが表示されます。残高証明書は、相続人の間で遺産分割協議を行う際に使用するものです。

なお、故人の死後、株券電子化の手続きをしないまま放置されている「タンス株」が出てくることもあります。タンス株は信託銀行の特別口座で管理されているため、証券口座に移す手続きが必要です。株式発行会社に問い合わせて信託銀行を確認し、信託銀行に連絡して手続きしましょう。

上場株式は「ほふり」で照会することも可能

故人の自宅で株主総会招集通知が見つかる場合や、通帳に株式配当金の振込履歴がある場合もあります。株式を持っている会社が分かっても、証券会社が分からないときは、証券保管振替機構(ほふり)で調べることができます。

「ほふり」は、上場株式などの有価証券を一括管理している機関です。ほふりに「登録済加入者情報の開示請求」をすれば、故人が取引していた証券会社等を調べられます。

非上場株式は発行会社に問い合わせる

故人が会社経営者であるか、親族の会社の役員になっていた場合、非上場株式を所持している可能性があります。会社に直接問い合わせ、故人が株主になっていないかを確認しましょう。

遺産分割協議で株式を分ける方法

故人の死後、相続財産が判明したら、相続人全員で遺産分割協議を行います。相続人には民法で定められた相続割合(法定相続分)があるため、遺産分割協議でも法定相続分に応じて分けるのが原則です。遺産分割の方法には次の三つがあるため、いずれかの方法で公平になるように分けましょう。

現物分割

現物分割は、財産を換金することなく、現物のまま分ける方法です。たとえば、親が亡くなって相続人が兄弟2人、相続財産が不動産と株式である場合、兄が不動産、弟が株式のように分けます。株式を銘柄ごとに分けたり、株式数で分けたりする場合も、現物分割になります。

代償分割

代償分割は、財産を相続した相続人が、他の相続人に金銭(代償金)を支払うことで公平になるように分ける方法です。たとえば遺産が株式のみの場合、兄が株式を取得して弟に株式の評価額の2分の1を支払えば、遺産を平等に分けたことになります。

換価分割

換価分割は、相続財産を売却して、売却代金を相続人で分ける方法です。相続人全員が株式に関心がない場合には、換金して分けるのが最も公平でしょう。なお換価分割する場合でも、故人の名義のまま株式を売却することはできません。相続人の代表者を決め、代表者名義に変更してから売却手続きを進める必要があります。

換価分割のために株式を売却した場合、利益が出ていれば譲渡所得税が発生します。譲渡所得税が発生するときは、株式の名義人である相続人の代表者だけでなく、相続人全員が税金を負担することになるため注意が必要です。

株式の名義変更はどうやって行う?

株式を相続する人が決定したら、名義変更を行う必要があります。ここでは、株式の名義変更のやり方を説明します。

上場株式の名義変更

上場株式については、次のような書類を証券会社に提出して名義変更手続きを行います。

株式名義変更の必要書類

  • 株式名義変更依頼書(各証券会社が用意する書式)
  • 遺産分割協議書
  • 戸籍謄本(または法定相続情報一覧図)
  • 相続人全員の印鑑証明書

上場株式を相続するには、証券口座が必要です。証券口座を持っていない場合には、あらかじめ証券会社で口座開設の手続きをしておきましょう。

非上場株式の名義変更

非上場株式については、発行会社に株主名簿記載変更申請書を提出して手続きをします。具体的な方法は、発行会社に直接確認しましょう。

株式を相続する際の注意点

相続手続きは複雑なため、抜け漏れがないように注意して行うことが大切です。ここでは、株式の相続に関する注意点を説明します。

相続税の申告が必要な場合がある

相続財産の総額が次の基礎控除額を超える場合には、相続税がかかります。 基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数

相続税を計算するためには、株式の評価額を出さなければなりません。上場株式については、次の四つのうち最も低い価格で評価します。非上場株式については、評価方法が複雑になるため、税理士に相談しましょう。

上場株式は1~4のうち最も低い価格で評価

  1. 相続が開始した日の終値
  2. 相続が開始した月の毎日の終値の平均額
  3. 相続が開始した月の前月の毎日の終値の平均額
  4. 相続が開始した月の前々月の毎日の終値の平均額

相続税がかかる相続において財産を相続した人は、故人の死後10ヶ月以内に税務署に申告・納税が必要です。相続税の申告期限は原則延長できません。遺産分割が終わっていない場合にも、法定相続分で相続したものと仮定して申告・納税する必要があります。

すぐに売却する場合も相続人への名義変更が必要になる

遺産分割協議で株式を相続することになったけれど保有する気がなく、すぐに売却したい場合もあるでしょう。株式は故人名義のままでは売却できません。すぐに売却する場合でも、一旦相続する人の名義に変更する必要があります。証券口座を開設し、相続手続きのための必要書類を提出して速やかに名義変更を行いましょう。

なお、相続した株式を売却した場合、譲渡所得(売却益)に対して20%(所得税15%・住民税5%)の譲渡所得税がかかる点にも注意が必要です。譲渡所得は次の計算式で算出できます。

譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)

収入金額とは売却価格のことです。取得費は故人が株式を購入したときの価格、譲渡費用は売却の手数料が該当します。相続税の申告期限から3年以内に株式を売却した場合には、払った相続税の一部を株の取得費に加算できます。

非上場株式については、定款で株式の譲渡制限が定められている場合が多いです。株式譲渡制限がある場合は、株主総会の承認の後、名義変更が可能になります。

未受領配当金の受け取りには時効がある

株式を保有していると、株式発行会社から配当金が支払われます。故人が亡くなったとき、配当金を受け取る権利が発生しているのに受け取っていない「未受領配当金」が存在している場合があります。相続人は未受領配当金を受け取れますが、時効があるため注意しましょう。

多くの会社では、配当金管理の事務負担軽減のため、定款で未受領配当金の時効を3年~5年と定めています。未受領配当金がある場合には、あらかじめ発行会社に問い合わせ、時効を確認しておくと安心です。

株式相続の流れや注意点を押さえてトラブルを未然に防ごう

この記事のまとめ

  • 株式を含む遺産については、遺産分割協議を行って遺産の分け方を決定する
  • 株式を相続する人が決まったら、株式の名義変更手続きが必要
  • 遺産分割には、現物分割、代償分割、換価分割の三つの方法がある
  • 上場株式の相続手続きは証券会社で行う
  • 非上場株式の相続手続きは発行会社と行う
  • 株式を含めた遺産の総額が基礎控除額を超える場合は相続税の申告が必要

故人が株式投資をしていた場合は、証券会社で株式の相続手続きを行いましょう。親族などの会社の非上場株式を保有している場合は、発行会社に問い合わせて手続きする必要があります。また相続財産の額によっては、相続税の申告が必要です。速やかに手続きを終わらせるためにも、この機会に相続手続きの流れや注意点を把握しておきましょう。

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