海洋散骨の費用とは?海に散骨する際の注意点や実施流れ、法律での定めについても解説

お墓を持たない新しい供養形式として海洋散骨が注目されていますが、実際に海洋散骨を行うにはどのくらいの費用がかかるのか気になる方も多いのではないでしょうか。今回は海洋散骨にかかる費用と散骨の流れや注意点などについて解説します。海洋散骨を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

2006年に葬儀の仕事をスタート。「安定している業界だから」と飛び込んだが、働くうちに、お客さまの大切なセレモニーをサポートする仕事へのやりがいを強く感じるように。以来、年間100件以上の葬儀に携わる。長年の経験を活かし、「東京博善のお葬式」葬祭プランナーに着任。2023年2月代表取締役へ就任。
海洋散骨とは

海洋散骨とは、火葬後に遺骨を細かく粉砕し、海にまいて供養する方法です。日本ではこれまで遺骨をお墓に埋葬するのが一般的でしたが、近年ではライフスタイルの変化や価値観の多様化などにより、海洋散骨を選ぶ方も増えています。
海洋散骨のメリット
海洋散骨のメリット
- お墓の維持・管理が必要ない
- お墓の維持・管理が必要ない お墓を購入する費用が必要ない
- 宗教を問わない
近年、お墓を管理する後継者がいない、あるいはお墓の維持費用を支払うことや管理をするのが難しいと感じている人が増えてきています。
海洋散骨はお墓を購入する費用がかからず、維持や管理が不要なため、メリットが大きいといえるでしょう。
また、海洋散骨は宗教の形にとらわれない供養方法のため、多様性の時代にも合致しているといえます。
海洋散骨の種類
海洋散骨には、散骨を委託する方法と自ら船に乗って散骨する方法があります。
個別型海洋散骨
個別型海洋散骨は、業者に依頼し、個別で船をチャーターして海洋散骨する方法です。遺族自ら散骨することができるため、最期のお別れをきちんとしたい方におすすめです。
合同型海洋散骨
合同型海洋散骨は、業者に依頼して他の遺族とともに散骨に参加する方法で、遺族が自らの手で散骨できます。きちんとお別れしたいけど、費用を安く抑えたいという場合におすすめです。
委託型海洋散骨
委託型海洋散骨は、業者が複数の故人の遺骨を預かり、まとめて散骨する方法です。遺族は乗船しないため、その分費用が割安になりますが散骨の場に立ち会うことはできません。できるだけ費用を抑えながら海洋散骨をしたい場合におすすめです。
海洋散骨の費用相場

海洋散骨の費用は散骨の内容によって変わります。ここでは種類ごとの費用相場を解説します。最適な散骨方法を見つけるための参考にしてみてください。
なお、具体的な費用は依頼する業者や内容によって異なりますので、あくまで目安としてお考えください。
個別型海洋散骨の費用相場
個別で船をチャーターし海洋散骨を依頼する場合の費用相場は、約20万円〜30万円です。
合同型海洋散骨の費用相場
複数の遺族とともに船に乗る場合の海洋散骨の費用相場は、約10万円〜20万円です。個別型海洋散骨と比べ、合同型散骨の方が費用は安い傾向にあります。
委託型海洋散骨の費用相場
海洋散骨を完全に委託する場合の費用相場は約5万円~10万円です。一回の出航で複数人の遺骨をまとめて散骨でき、遺族が乗船するための経費もかからないため、他の海洋散骨の方法に比べて費用を抑えられます。
海洋散骨の流れ

ここからは、海洋散骨を業者に依頼する場合の大まかな流れを示します。なお、具体的な進め方に関しては依頼する業者によって異なることがあります。
①海洋散骨の専門業者を選ぶ
まずは海洋散骨を依頼する業者を選びましょう。希望の散骨ができるかどうかや、予算と相談しながら何社か比較することをおすすめします。
②遺骨をパウダー状にする
海洋散骨を行うためには、火葬した後に遺骨をパウダー状にする「粉骨」という工程が必要です。粉骨の粒の大きさは2mm以下にしなければいけません。また、粉骨をせずに海洋散骨を実施することはできません。
粉骨の方法は2種類で、個人ですり鉢などを使って砕く方法と、業者に依頼する方法があります。個人で行うと費用はかかりませんが、遺骨をパウダー状にするにはかなりの労力を要するため、専門業者に任せるのがおすすめです。
③遺骨を海にまく
沖合の散骨地点まで船で向かい、遺骨を海へまいたら、花びらなど自然へ還る副葬品も一緒にまきます。個別型や合同型海洋散骨では、散骨の後は黙祷を捧げ、故人を偲びましょう。後は帰港して終了ですが、散骨後にそのまま船の上で会食を行い、故人の思い出を語り合う場合もあります。
海洋散骨の違法性の有無

日本ではこれまで、誰かが亡くなったら火葬して遺骨をお墓に埋葬するのが一般的でした。そのため、海洋散骨が法律的に問題ないか気になる方も多いのではないでしょうか。ここでは、海洋散骨の違法性の有無について詳しく解説していきます。
海洋散骨は違法ではないと解釈される
2024年1月現在では、海洋散骨を規制する法律はありません。「墓地、埋葬等に関する法律」では火葬した骨を墓地以外に埋葬すると遺骨遺棄罪になるとありますが、粉骨してパウダー状にすれば問題ありません。
法律制定時は海洋散骨を想定しておらず、規定がないため違法ではないという解釈になります。したがって、海洋散骨をする場合、許可や届出といった法律上の手続きは特にありません。
実際に東京都福祉保険局のホームページには、「墓地、埋葬等に関する法律においてこれを禁止する規定はない。この問題については、国民の意識、宗教的感情の動向等を注意深く見守っていく必要がある。」との見解が示されています。
遺骨をそのまままくのは違法
遺骨はパウダー状にすれば問題ありませんが、火葬後にそのまま散骨すると遺骨遺棄罪に抵触します。何も知らないまま粉砕せずに海にまいてしまうと、罪に問われる可能性がありますので、海洋散骨をする際は必ず粉骨しましょう。
条例で海洋散骨を禁止している場合もある
現段階で海洋散骨を禁止する法律はありませんが、自治体によっては条例で散骨を規制しています。具体的な規制内容としては、禁止して罰則を科す条例や一定の要件を満たせば許容される条例など、自治体によってさまざまです。海洋散骨を行う場所の条例は、事前に確認しておきましょう。
散骨に関する条例がある自治体の例
- 北海道長沼町:長沼町さわやか環境づくり条例
- 宮城県松島町:松島町環境美化の促進に関する条例
- 神奈川県箱根町:箱根町散骨場の経営の許可等に関する条例
- 静岡県三島市:三島市散骨場の経営等の許可等に関する条例
- 愛媛県愛南町:愛南町散骨事業等の適正化に関する条例
- 鹿児島県伊佐市:伊佐市環境保全及び美化推進条例
海洋散骨を行う際の注意点

海洋散骨を行うことになった場合、費用以外にも考えなくてはならないことがあります。トラブルを避けるために、注意すべき内容をあらかじめ把握しておきましょう。
海洋散骨を行うかどうか親族とよく話し合う
海洋散骨という方法で供養してもよいかどうかは、きちんと親族と話し合っておきましょう。
海洋散骨を検討する方が増えてきているとはいえ、日本ではお墓への埋葬が一般的で、海洋散骨に抵抗がある方もいるためです。一番大切なことは故人本人の希望ですが、周りの理解や協力も必要です。
費用だけで業者を選ばない
海洋散骨の業者を安さだけで選ぶのは危険です。その業者が予約後に倒産したり、追加費用の請求でトラブルになったりする可能性があるためです。故人と気持ちよくお別れできるように、専門業者を費用だけで選ぶのではなく、きちんと対応してもらえて信用できる業者なのかを見極めましょう。
海洋散骨の業者を選ぶときのチェックポイント
- 船の不定期航路事業の届出の有無
- 費用の内訳について説明があるかどうか
- 天候不良で延期になった場合の費用や対応内容
- 厚生労働省のガイドラインを遵守しているかどうか
- 相談した際のスタッフの対応
- 他の業者とのサービス内容や費用の違い
トラブルになる場所での散骨は避ける
海洋散骨の場所に関して、国の法律による制限はありません。しかし、海水浴場や観光客の多い海岸、養殖場などは一般常識から考えて散骨に適していません。
そういった場所でのトラブルを避けるためには、周りの方への配慮が必要です。陸から離れ、沖合に出てから散骨しましょう。
自然に還らない素材は海にまかない
故人のお墓を建てる場合、故人との思い出の品や好きだった食べ物など、さまざまなお供えが可能です。しかし、海洋散骨では環境に配慮する関係で、副葬品にできるものが限られています。
例えば、プラスチックや金属などの自然へ還らない素材は好ましくありません。花束の場合、ラッピングを外して花びらのみをまいてください。副葬品を検討する際は、環境に害がないかどうかを確認しましょう。
喪服の着用は控える
一般的に納骨時は喪服を着ますが、海洋散骨では普段着を着用しましょう。人目につかない場所で散骨を行うとしても、出港場所には一般観光客もいます。そのような中で喪服を着た集団は目立ってしまうため、不安を与えてしまうことがあります。
また、安全を確保する意味でも身動きの取りにくい喪服はおすすめしません。万一の場合も対応できるように、着慣れた服装を用意しておきましょう。
海洋散骨する場合は費用だけでなく違法性やトラブルに注意しましょう

この記事のまとめ
- 海洋散骨には、お墓を購入する費用が発生せず、遺族がお墓を維持・管理しなくてよいなどのメリットがある
- 海洋散骨には個別型海洋散骨、合同型海洋散骨、委託型海洋散骨があり、それぞれで費用が異なる
- 現在の法律において海洋散骨は違法ではないと解釈されるが、自治体の条例では禁止されることがある
- 遺骨をそのまままくと遺骨遺棄罪に抵触するため、必ず粉骨しなければならない
- 散骨する場所に注意し、喪服は控えるなど周囲への配慮が必要
海洋散骨は時代の変化に応じた新しい供養の方法として注目されており、費用や管理の面で多くのメリットがあります。しかし、法律の規制はないものの自治体ごとの条例や守るべきルールがあることから専門知識が必要です。
今回紹介した海洋散骨の費用を参考にし、故人や遺族の希望に沿った供養を行いましょう。