お通夜と葬式・告別式の違いを解説。どちらに出るべき?参列時のマナーは?
一般的にお通夜と葬式・告別式は、2日間にわたって執り行われます。しかし、どちらに出るべきなのか迷っている方も少なくありません。今回は、お通夜と葬儀、葬式・告別式の違いやどちらに出るべきなのか、参列時のマナーまで詳しく解説します。
お通夜とは?
灯りをともして夜通し見守る儀式
お通夜の本来の意味は、ご遺族や親族などが集まり、故人との最後の夜を過ごす儀式です。「灯明(とうみょう)」と「線香」を絶やさないように夜通し見守っていたことから、「お通夜」と呼ばれるようになりました。近年では、ご逝去された翌日の夕方から夜にかけて行う「半通夜」が主流になっています。
お通夜の内容
近年のお通夜は、僧侶による読経や法話、そしてご遺族や親族、一般参列者による焼香が行われます。以前のような近親者のみのお通夜と異なり、葬儀場で執り行われることが増えてきました。参列者の人数にもよりますが、1~2時間程度で終えるようになっています。
また、お通夜の後には「通夜振る舞い」が行われる場合が多いです。お通夜の参列者が故人の思い出話をしながら食事をする宴席ですが、地域によって出されるものに違いがあります。通常は、大勢でつまめるような大皿料理が一般的です。通夜振る舞いも多くの場合、1~2時間程度になっています。
葬儀とは?
広義では葬送儀礼、狭義は葬儀式
葬儀とは、広義では「葬送儀礼」を指します。葬送儀礼とは、「看取り、納棺、お通夜、葬儀式、告別式、火葬、納骨、四十九日」といった一連の流れをまとめた言葉です。地域によって異なり、宗教・宗派によってもさまざまなマナーの違いがあります。
また、葬儀は狭義で「葬儀式」を表すこともあります。お通夜の翌日に行われる儀式で、遺族や親族、故人と関わりの深い友人などが参列するのが一般的です。
葬儀の内容
葬儀(葬儀式)は、近親者のみで行われる儀式です。そのため、会社関係者や知人など、一般参列者は出席しません。葬儀式の内容は僧侶の読経が中心で、参列者による焼香も行われます。概ね、30~40分程度で終わることが多いでしょう。
葬式・告別式とは?
葬式:葬儀式と告別式の総称
葬式とは、葬儀式と告別式を合わせた言葉といわれています。故人を弔う儀式は、お通夜、葬儀式、告別式と分かれているのが一般的です。しかし、近年では葬儀式と告別式をまとめて行うケースが増えてきています。そのため、葬儀式と告別式の線引きはあいまいで、故人を弔う儀式の総称として「葬式」と呼ばれているのでしょう。
葬儀式:宗教的儀式
葬儀式とは、一般的に遺族や親族、近しい友人が参列する宗教的な儀式です。一般参列者は参加せず、近親者のみで行われることが多くなります。僧侶の読経と身内の参列者の焼香で、故人の冥福を祈るという宗教的な意味合いのある儀式です。
告別式:社会的儀式
告別式は、近親者のみならず、一般参列者も出席する社会的な儀式です。そのため、仕事の関係者や友人、知人なども参列します。僧侶が中心となる宗教的なものとは異なり、参列者が別れを告げるために執り行われ、社会的な意味合いがある儀式です。
告別式の内容
告別式で行われるのは、故人への焼香や弔電、喪主の挨拶などです。また、棺を閉じる前には「お別れの儀」として、「花入れ」や「釘打ち」を行います。花入れは、参列者一人一人が故人に別れを告げながら、棺の中に花を入れることです。最後に、石で釘を打ち、棺の蓋を閉じた後、出棺になります。
近年では、葬儀式と告別式を分けずに一緒に執り行われるスタイルも少なくありません。通常、僧侶の読経中は近親者のみの焼香ですが、葬儀式と告別式を区別しない場合は一般参列者の焼香が行われることもあります。
葬儀の流れ
お通夜の流れ
近年のお通夜は、午後6~7時頃に始まるのが一般的です。受付開始は、お通夜が始まる30分~1時間前が多いでしょう。参列者は、お通夜が執り行われている時間内ならば、いつ到着しても問題ありません。一般的には、お通夜開始の15~30分前に到着するのがよいでしょう。
また、僧侶の読経が始まって10~15分経ってから、焼香を開始します。ご遺族、親族、一般参列者の順になることを覚えておきましょう。お通夜は、1~2時間程度を予定していることが多いのですが、参列者の人数によって伸びる場合もあります。
お通夜の流れ
- 受付
- お通夜開式
- 読経
- 焼香(遺族・親族・一般参列者)
- お通夜閉式
- 通夜振る舞い
葬儀式・告別式の流れ
一般的に、葬儀式と告別式は午前中、もしくは午後の早い時間帯に執り行います。通常、同じ日に続けて行われる場合が多く、全体で1~2時間ほどです。
葬儀式と告別式を区別せず、一緒に執り行われる場合には、一般参列者も最初からの出席となる場合があります。葬儀式と告別式が分けて行われる場合では、一般参列者は告別式からの参列になるので注意しましょう。
葬儀式・告別式の流れ
- 受付
- 葬儀式開式
- 読経
- 焼香(遺族・親族)
- 僧侶退場
- 告別式開式
- 焼香(遺族・親族・一般参列者)
- 弔電
- 喪主挨拶
- お別れの儀
- 出棺
一般の参列者はお通夜と告別式のどちらに出るべき?
ここからは、2日間にわたって執り行われるお通夜と告別式で、参列者がどちらに出るべきかを解説します。
正式な意味では告別式
本来の葬儀の意味で考えれば、一般の参列者は告別式に出席するのがよいでしょう。お世話になった方や親しい友人などの訃報が届いたら、すぐにでも駆けつけたいと思うかもしれません。しかし、お通夜や葬儀式はご遺族や親族などの近親者で執り行われる儀式です。
そのため、それ以外の一般の参列者は、故人が生前関わりの合った人が出席してもよいとされる告別式に出るのが適切でしょう。ただし、近年は葬儀式と告別式を一緒に進める場合が多く、読経の最中に一般参列者が焼香する形式もあります。その場合は、一般参列者も葬儀式から参列するのがよいでしょう。
近年はお通夜に参列するのが主流
本来のお通夜は、近親者で執り行われるものです。しかし、近年はお通夜に参列するのが主流になってきています。告別式は日中に執り行われる儀式のため、仕事の都合上、参列が難しいという人も多くなっているためです。夕方から執り行われるお通夜のほうが、仕事を終えた後からでも出席しやすいという理由もあるのでしょう。
故人との関係が深ければ両方が望ましい
お通夜や告別式への参列は、故人との関係性によっても違いがあります。故人との関係が深ければ、お通夜と告別式のどちらにも参列したほうがよいでしょう。親族や親しい友人などは、どちらにも出るのが一般的です。
ただし、どちらか一方しか出られない場合には、友人同士で予定を合わせるというように、周りの人と相談して決めたほうがよいでしょう。地域によっては、告別式には必ず出席しなければならない場合もあります。個人的な事情だけでなく、地域の風習も考慮して参列する日を決めてください。
お通夜・告別式に参列する際のマナー
お通夜や告別式に参列するときは、マナーを踏まえた服装や振る舞いをすることが大切です。そこでここからは、参列する際の不安を解消するため、お通夜や告別式のマナーやポイントなどを紹介します。
服装
お通夜と告別式のどちらも、基本的に喪服を着用して参列するのがマナーです。一般的に男女とも、準礼装のブラックフォーマルが望ましいとされています。喪主よりも格式が高い服装はマナー違反とされているため、正式礼装は避けるのが基本です。
案内状に平服と記載されている場合は、略礼装を着用しましょう。また、お通夜の場合は出先で訃報を受けて急遽参列する可能性があるため、平服でもよいとされています。
ただし、平服とは「普段着」という意味ではないため、ネクタイを黒色にしたり地味な服装にしたりなどの配慮が大切です。
男性の服装マナー
- 喪服として販売しているブラックスーツが基本
- ネクタイ・靴下・靴は黒色
- ワイシャツは白色、襟はレギュラーカラー
女性の服装マナー
- 黒色のアンサンブル・ワンピース・スーツ
- インナー・ストッキングは黒色
- 靴は黒色のパンプス
- アクセサリーはなるべく身に着けない(真珠・黒曜石は可)
お悔やみの言葉
故人の死を悼んでご遺族にお伝えするお悔みの言葉にも、マナーがあります。ご遺族に失礼のないよう、しっかり覚えておきましょう。葬儀でお伝えする代表的な言葉は、「お悔やみ申し上げます」「ご愁傷さまでございます」などです。
お悔やみの言葉のマナー
- 小さめの声で挨拶する
- 忌み言葉を避ける(たびたび・ますます・もう一度・繰り返し)
- 直接的な言葉は言い換える(死亡→ご逝去、急死→突然のご不幸、生存中→ご生前)
香典
香典についても、さまざまなマナーやポイントがあります。不祝儀袋の表書きは、「御香典」「御香料」など宗教や宗派によって異なるので、事前に確認し、ご遺族に合わせたほうがよいでしょう。もし分からない場合は、「御霊前」にしても構いません。
また、お通夜と告別式の両方に出る場合でも、香典は一度で問題ありません。タイミングとしては、先に参列するお通夜で渡すのが基本です。お通夜に参列できなかった場合は、告別式で問題ありません。
不祝儀袋のマナー
- 白無地が基本
- 表書きは薄墨で、水引下の中央に楷書でフルネームを書く
- 水引は黒白または双銀の結びきり
- 中袋の裏に金額・住所・名前を書く
- 外袋の裏、下側を折ってから上側を重ねる
- 香典は新札を使わない
香典金額の目安
- 勤務先の社員の家族:3,000円
- 友人・知人・勤務先の上司や同僚:5,000円
- 親族:10,000円
香典の出し方
- 受付でお悔やみの言葉を述べる
- 袱紗(ふくさ)から香典を出す
- 受付側に正面を向けて手渡す
記帳
お通夜と告別式、それぞれ芳名録へ記帳を行います。両方に参列する際、「香典を渡さずに記帳する」という行為にためらいを感じる場合もあるかもしれません。しかし、芳名録は喪主側が参列した人を把握するためのものです。記帳を省略してしまうと、参列した人や人数の把握が難しくなる可能性があるため、必ず記帳しましょう。
焼香
焼香は、お通夜と告別式のどちらに参列しても行います。多くの場合は、細かく砕いた香をつまんで、香炉に落として焚くスタイルです。しかし、焼香の作法は宗教や宗派によって異なるため、葬儀がどの形式で行われるか調べておいた方がよいでしょう。下記に、一般的な焼香の作法を紹介します。
焼香の作法の例
- 焼香台の手前でご遺族と僧侶に一礼
- 焼香台の前に進んで一礼
- 数珠を左手にかけ、右手で抹香をつまみ、額におしいだく
- 抹香を静かに香炉の炭の上に落とす
- 合掌
- 少し下がって、ご遺族に一礼して戻る
宴席
お通夜の後に行われる宴席を「通夜振る舞い」といい、かつては精進料理を出すのが習わしでした。近年では精進料理にこだわらず、お寿司やサンドイッチなど気軽につまめるものを出す傾向があります。
地域によっては、お茶だけだったり、お菓子や軽食だったり、親族のみで行われたり、さまざまです。首都圏の場合でいうと、通夜振る舞いで最低でも一口は箸をつけることがマナーとされています。
また、本来は四十九日の忌明けに行う宴席の「精進落とし」は、告別式当日に行われることが多いです。近年では、初七日の法要が続けて行われる場合もあり、僧侶や故人が生前お世話になった方々を労う宴席という意味が強まっています。どちらの場合も、葬儀においてのマナーを覚えておきましょう。
宴席のマナー
- 故人と関係のないこと、故人の死に直結する話題を避ける
- ご遺族に配慮し、長話・長居をしない
- 大声で騒がない
お通夜・告別式はマナーを踏まえて参列しましょう
この記事のまとめ
- お通夜はご逝去の翌日、夕方から夜にかけて行う「半通夜」が主流
- お通夜の後は通夜振る舞いが行われる場合が多い
- 葬儀とは広義で「葬送儀礼」、狭義は「葬儀式」
- 葬儀式は、近親者のみで行われる儀式
- 告別式は、一般参列者も出席する社会的な儀式
- 葬儀式と告別式をまとめて行うケースが増えている
- 一般参列者は正式な意味では告別式に出席するほうがよいが、近年はお通夜が主流
- 故人との関係が深い人は、お通夜と告別式両方に参列するのが望ましい
- 男女とも準礼装のブラックフォーマル
- 忌み言葉や直接的な言葉を避ける
- 香典はお通夜で渡す(両方に出ても、一度でよい)
- 焼香は葬儀の宗教や宗派の作法に従う
- 葬儀の宴席では長話・長居をしない
今回は、一般的な参列の例やマナーを紹介しました。地域によって風習が異なり、マナーにも違いが出る場合があるので、事前に確認しておくことをおすすめします。一般参列者は都合によりどちらにも出ても構いませんが、近年はお通夜が主流です。地域の風習を意識し、マナーを踏まえた振る舞いで故人をお見送りしましょう。