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健康・カラダのこと

認知症の種類と症状は?タイプ別の特徴や対応方法について解説

認知症の種類と症状は?タイプ別の特徴や対応方法について解説

認知症は、高齢者であれば誰でもなる可能性がある病気です。 しかし、早期発見して初期の段階で治療ができれば、進行を遅らせることができます。本記事では、認知症の種類や対応方法などを紹介していきますので、ぜひ目を通してみてください。

監修者 SUPERVISOR
社会福祉士/介護福祉士/ケアマネジャー/福祉住環境コーディネーター2級 長谷部 宏依

介護職員として介護老人保健施設に勤務。
ケアマネジャー取得後は、在宅で生活する高齢者や家族をサポートする。
現在はWebライターとして、介護分野に関する記事を中心に執筆している。

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認知症とは

認知症は以前「痴呆症」と呼ばれていましたが、2004年に呼び名が「認知症」へ変更され、社会に浸透してきました。

認知症は、脳の病気やケガといったさまざまな原因によって脳細胞が壊れたり、働きが悪くなったりする病気です。そのため、記憶や判断力が低下し、生活する上で支障が出ている状態になります。一度発症すると元の状態に戻すことは難しいため、進行を抑える治療をするのが一般的です。

最近では、高血圧症や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が認知症の発症リスクを高めることが分かっています。

生活習慣病は動脈硬化を進行させ、脳梗塞や脳出血を引き起こす危険性があり、脳血管性認知症の原因につながる恐れがあります。脳血管性認知症については後ほど説明します。また、糖尿病は認知症のリスクを2倍にするといわれているため要注意です。

生活習慣病予防のため、食生活の改善や適切な運動など毎日の生活や行動を早めに見直すようにしましょう。

認知症の症状とは

認知症の症状には、「中核症状」「行動・心理症状」の2種類があります。ここからは、この2種類の症状について詳しく説明していきます。

中核症状

中核症状は、脳の細胞が損傷したり機能が低下したりすることが原因で発症する症状です。改善はできませんが、薬の服用や周囲の対応により進行を遅らせることが可能です。

代表的な中核症状を紹介していきます。

記憶障害

認知症の代表的な症状です。物事を記憶する能力が低下し、特に最近の出来事を思い出せなくなります。例えば、食事をしたことを忘れたり知っている人の名前が思い出せなかったりすることが当てはまります。

見当識障害

曜日や時間、季節や場所などが分からなくなる状態です。日時の約束が守れなくなることや、ゴミ出しの曜日を間違えるなどが代表的な症状です。

理解や判断力の障害

周囲の状況や言われたことが理解できなくなる状態です。そのため、一度に二つのことを言われたり早口で話されると混乱します。季節に関係なくダウンジャケットを着てしまったり、これまで使っていた自動販売機や、銀行のATMなどの機械を操作できなくなったりすることが代表的な症状です。

言語障害

相手が話す言葉を理解できなくなり、自分自身の思考や感情を言葉で表現することが難しくなる状態を指します。言葉の言い間違えが増えることや、字を書くことが難しくなるといったことが代表的な症状です。

行動・心理症状

行動・心理症状は、中核症状が影響して引き起こされます。本人の性格や環境、心理状態が影響を与えるため、個人差の大きい症状です。代表的な症状を紹介します。

不安・抑うつ

できないことが増えてくるため自分に自信が持てず、気分が落ち込んだり不安になったりする状態を指します。以前は意欲的に外出して趣味を楽しんでいた人も、家に引きこもりがちになる場合があります。うつ病と誤解されやすいですが、実際には行動・心理症状のうつ状態といえるでしょう。

徘徊

中核症状である見当識障害や記憶障害からくる不安やストレスなどにより、歩き回ることをいいます。周囲から見れば目的もなく歩き回っているように見えますが、本人にはしっかりとした目的があります。そのため、無理に止めようとすると激しく抵抗されることもあるでしょう。

幻覚

実際に存在しないものを実在するように感じる症状です。レビー小体型認知症では、「幻視」と呼ばれる症状が多くみられます。例えば「お風呂の中に魚が泳いでいるから入れない」「庭から男の子が覗いていて気持ちが悪い」というように、具体的な内容で訴えてくる場合があります。

行動・心理症状は日常生活に支障をきたすことが多くなり、介護者の負担も大きくなってくるのです。

認知症の種類

認知症の種類は大きく四つのタイプに分けられます。いずれも、初期症状や特徴、原因が異なりますが早期発見が重要です。ここからは、認知症のタイプ別にそれぞれ詳しく説明していきます。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症とは、脳内にアミロイドβという異常なたんぱく質がたまることによって、正常な脳の神経細胞を破壊して脳を萎縮させる特徴があります。日本人に多くみられ、認知症患者の約半数を占めるといわれています。

初期症状の特徴は「食事の内容を忘れる」「待ち合わせの約束をしても忘れる」「日時や季節が分からない」などです。

中期に進行すると「ごはんを食べたこと自体忘れる」「通い慣れたスーパーまでの道順が分からない」「お金の払い方が分からない」といった症状がみられます。

後期になると「同居家族が誰か分からない」「直前のできごとも忘れる」などの症状がみられます。また、言語障害も出現してコミュニケーションが取りにくくなるため、日常生活全般に支援が必要になり家族の介護負担も大きくなってくるでしょう。

脳血管性認知症

脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの疾患により脳細胞に十分な酸素や栄養が送られなくなり、脳の機能を失うことによって起こる病気です。できることとできないことが明確に分かれており「まだら認知症」とも呼ばれます。

初期症状の特徴は「ズボンを下ろす」「シャツに袖を通す」という行動ができなくなります。また、会話をしているのに内容を聞くと意味が通じてないことも多いです。

中期以降は、他の認知症患者と同様に物忘れや見当識障害などの症状が見られます。しかし、症状が安定して脳血管障害の再発などが予防できれば、認知症の進行を防げるのが脳血管性認知症の特徴です。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症とは、脳内にたまったレビー小体という特殊なたんぱく質の増加が原因となり起こる病気です。

症状は、手足の震えや身体のこわばり、歩きにくさが出現して転倒の危険性が高まります。また、幻視やうつ状態、気分や態度がコロコロ変わるのが特徴です。

レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症の患者と比べた場合、進行速度が速く発症後の平均寿命も短いです。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、前頭葉や側頭葉が萎縮し、血流の低下が原因で起こります。平均発症年齢が55歳前後と若年層に起こりやすい認知症です。

前頭葉は、思考や感情の表現、判断のコントロールをする役割をしているため、前頭側頭型認知症を発症すると社会的な行動や感情の抑制ができなくなります。

一方、側頭葉は言語や記憶、感情をコントロールする場所です。そのため、発症すると相手の言葉が理解できなくなることや、しゃべりにくくなることもあります。

万引きや痴漢行為などが見られることもありますが、本人に罪悪感はありません。症状は初期段階が一番強く、病状の進行により徐々に弱まり無気力になります。

認知症と同じ症状をきたす病気

主な認知症は先ほど紹介した4つですが、これ以外にも認知症と同じ症状をきたす病気があります。これらの病気に共通することは治療によって改善できるということです。これらの症状にも思い当たる節はないか確認してみましょう。

慢性硬膜下血腫

慢性硬膜下血腫は、硬膜と脳の表面の間にゆっくりと血のかたまり(血種)ができる病気です。転倒などで頭をぶつけてできることが多く、数週間〜数ヶ月後に発見されます。そのため、自分自身が頭をぶつけたことを忘れている場合があり、高齢者の場合は「高齢だから仕方ない」と判断してしまうことが多いです。

血種が小さいうちは無症状のことが多いですが、大きくなってくると次第に脳を圧迫するため症状が現れます。

慢性硬膜下血腫の症状

  • 動作がゆっくりになる
  • 反応が遅くなる
  • 眠ることが多くなる
  • しゃべりにくい

このような症状が出た場合、病院の受診が必要です。治療により症状が改善していきます。

甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症は、身体の新陳代謝を盛んにする甲状腺ホルモンの分泌量が少なくなることで代謝が落ちて身体の活動が低下します。

ホルモンの分泌量が低下し続けると、疲労感や無気力感、傾眠、人格の変化などの代表的な症状が現れます。この場合、血液検査や甲状腺超音波検査をして、甲状腺ホルモンの量や腫瘍の有無を調べます。症状が強い場合、甲状腺ホルモンを補うための内服薬が処方されます。

甲状腺機能低下症も、治療により症状が改善する認知症です。

正常圧水頭症

正常圧水頭症は、脳内の脳室と呼ばれる場所に脳脊髄液が過剰にたまる病気です。脳脊髄液が過剰にたまると脳が広範囲にわたって圧迫されるため、歩行障害や認知障害、排尿障害が現れます。

アルツハイマー型認知症の場合は初期段階での歩行障害はありませんが、正常圧水頭症は歩行障害と認知障害があわせて現れるのが特徴です。正常圧水頭症は、「髄液シャント術」の手術をすると日常生活に困らない程度まで改善できます。

認知症への対応方法

認知症高齢者は徐々に分からないことが増えていくため、毎日不安を感じています。できないことを指摘されたり責められたりすると、さらに混乱してしまうため注意が必要です。

ここからは、認知症高齢者に対する代表的な対応方法を紹介します。

否定しない

認知症高齢者から間違ったことを言われても、否定せずに共感をするように対応しましょう。

認知症高齢者にとって、幻覚や幻聴といった症状は本当の出来事として受け止めています。例えば、存在しない人が見えたり誰かの声が聞こえたりなど訴えてくることもあるでしょう。これらを否定すると本人はますます不安になってしまいます。

正しいことを伝えるよりも、わかりやすい言葉で話しかけて本人を安心させることを優先しましょう。

プライドを傷つけない

認知症になると「すぐに忘れてしまう」「言っても分からない」と思われやすいですが、昔の記憶は残っていることも多く、感情もあります。行動や発言を注意されたり、赤ちゃんや子供扱いのような対応をされると、プライドが傷つき不安な気持ちが増す可能性があるため注意しましょう。

怒られた理由を忘れてしまっても、嫌な思いや不快な経験は心の中に残っています。プライドが傷つくと積極的に話すことを避けるようになり、うつなどの症状が現れて認知症が進行する恐れもあります。

そのため、子供を相手するような対応はせずに本人のペースに合わせた行動が必要です。

距離を置く

認知症が進行すると、介護者は心身の負担が増えて疲労が蓄積されます。そのため、限界を感じる前に適切な距離を保つことが大切です。

介護者にとって、精神的や体力的にも負担が大きい場面も多いでしょう。しかし、イライラや怒りは本人を不安にさせ、別の症状を助長してしまう可能性があります。

良好な関係を維持するためにも認知症の症状を理解し、適切に対応することが必要です。また、物理的に距離を取ることで介護者は心身の余裕ができます。必要に応じてショートステイの利用や、施設入所を検討しましょう。

認知症を理解し、適切な対応方法を心がけましょう

この記事のまとめ

  • 認知症の症状には「中核症状」と「行動・心理症状」がある
  • 認知症には「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」の4種類がある
  • 認知症高齢者はできないことや記憶があいまいなことが増えて不安な日々を過ごしている。間違ったことを言っても否定せず、ひとりの大人として接することが大切
  • 介護者の疲労が蓄積したら、ショートステイや施設入所などを利用して適切な距離を保つことも必要

認知症は、高齢者なら誰でもなる可能性がある身近な病気です。生活習慣病の改善や定期的な運動、社会的な交流などに取り組むことで認知症は予防ができます。

また、早期発見をして初期の段階で治療を始めることで、認知症の進行を抑えられます。「最近物忘れが増えた」といった自覚症状がある場合、早めに病院で検査を受けるようにしましょう。

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