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健康・カラダのこと

知っておきたい認知症介護の方法。介護の心構えや対応を解説

知っておきたい認知症介護の方法。介護の心構えや対応を解説

家族が認知症の診断を受けたとき、どのような心構えが必要でしょうか?認知症介護は、まず認知症を正しく理解することから始まります。相手の自尊心に配慮し、その人の立場で困りごとの原因を探ることが大切です。本記事では、認知症介護の心構えや具体的な対応方法について紹介します。

監修者 SUPERVISOR
介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級 池田 正樹

東北公益文科大学卒業。その後、介護保険や障害者総合支援法に関する様々な在宅サービスや資格講座の講師を担当した。現在は社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームの生活相談員として、入居に関する相談に対応している。在宅・施設双方の業務に加えて実際に家族を介護した経験もある。高齢者介護分野のみならず、障がい者支援に関する制度にも明るい。

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認知症介護に必要な基礎知識

「認知症」という言葉は、平成16年12月24日に開催された『「痴呆」に替わる用語に関する検討会』で生まれました。それまでは「痴呆」と呼ばれており、侮辱的な表現であることなどから「認知症」へと呼び名が変更されました。認知症介護にあたって覚えておきたいポイントは、以下の二つです。

認知症の基礎知識

  • 認知症は病気である
  • 認知症には中核症状と行動・心理症状がある

まず、認知症対応を始める上で押さえておきたい基礎知識について解説します。

認知症は病気であるということ

認知症は、正常に発達した認知機能が何らかの原因で低下した状態のことです。先天的な認知機能や知的機能の障害を「知的障害」というのに対し、後天的な機能障害については「認知症」となります。

認知症の主な原因は、病気・外傷による脳細胞の損傷や機能低下です。認知症と言えば高齢者を思い浮かべる人が多いですが、病気である以上は若い人でも認知症になる可能性があります。原因疾患別の認知症で特に有名なのが、以下の四つです。

四大認知症

  • アルツハイマー型認知症
  • 脳血管性認知症
  • レビー小体型認知症
  • 前頭側頭型認知症

認知症は、脳に障害が生じる病気です。原因疾患は100以上とも言われています。原因が病気である以上、若い人でも認知症になる可能性があることを覚えておきましょう。

認知症には中核症状と行動・心理症状がある

認知症によって生じる症状は、一般的に以下の二つに分けられています。

認知症の症状

  • 中核症状
  • 行動・心理症状(BPSD・周辺症状)

ここからは、認知症の症状である中核症状と行動・心理症状の内容や違いについて紹介します。

中核症状

中核症状とは、認知症のほとんどの人に現れる症状です。俗にいう記憶障害や、日常生活に直結する認知機能が低下します。日常生活に欠かせない記憶の欠落や生活動作のやり方を忘れてしまうため、日常的な介護が必要です。

中核症状を簡単に説明した表が、以下の通りです。

中核症状の例

記憶障害(激しい物忘れ)

出来事の一部ではなく、出来事のすべてが記憶から抜け落ちること

失語

言葉の意味が分からなくなる、言葉が出てこなくなる 等

失行

服の着方が分からなくなる、電化製品が操作できなくなる 等

失認

電話の子機をTVのリモコンだと思い込む、危険認識が乏しくなる 等

見当識障害

道に迷う、家族や友人が分からなくなる、季節感がなくなる等の物事に見当をつける能力が低下する

実行機能障害

車の運転、料理等複数の工程を必要とする動作ができなくなる(要領が悪くなる)

中核症状は認知症の多くの人に現れる症状で、物忘れによって記憶や生活能力を失ってしまいます。後者の行動・心理症状とは違い、残念ながら大きな改善は期待できません。周囲の人の介護や理解が大切です。

行動・心理症状

行動・心理症状は、中核症状とは違って個人差があります。激しい物忘れや失行・失認・見当識障害などの症状により、周囲の環境に対応できなくなることで発生します。周りの方の対応や居住環境などが原因です。簡単ではありませんが、やり方次第で改善する可能性があります。

行動・心理症状の具体例は以下の通りです。

行動・心理症状の具体例

被害妄想・作話

紛失したものを誰かのせいにする、事実と異なる話をする 等

徘徊

歩き回る、ベッドの上で這い回るなど動き回ること

暴力・暴言

介護に対して手を振り払う・叩く・怒鳴りつける 等

昼夜逆転

夜間何度も覚醒してしまい日中眠っている、昼と夜が逆転し通常は日中やるべき活動を夜間に行っている 等

帰宅願望

外出中に「家に帰る」と訴え落ち着かなくなる、自宅にいても「家に帰る」と出て行ってしまう 等

身勝手な行動

食事中に突然関係ないことを始める、他人の物を自分の物だと思い込む 等

行動・心理症状は、介護のやり方を工夫することで症状が改善する可能性があります。また、専門医に相談して服薬調整をお願いするなど、医療的な面からの対応も可能です。対応は決して簡単ではありませんが、ひとりで抱え込まずに専門家に相談するなどして、方法を検討するとよいでしょう。

認知症介護のポイント

認知症の介護を行う場合、以下に紹介するようなポイントを押さえるとよいです。特に初めて介護をする際は、怒ったり子供扱いをしてしまう人も少なくありませんので気をつけましょう。

怒らない・否定しない

認知症になると、どうしても周りの人が困るような言動が出てしまいます。介護で腹が立つこともあるかもしれませんが、怒ったり否定したりしないようにしましょう。

なぜなら、本人にしてみれば何が悪かったのか理解できない可能性があるからです。理解できたとしても忘れてしまい、また同じことを繰り返す可能性もあります。

「怒られてしまった」という感情のみが残って逆効果になり、かえって興奮してしまう場合もあるため気をつけましょう。

急かさない

認知症になると順序立てた行動が苦手になります。行動の遅さが気になって急かしてしまうと、介護拒否につながったり「じゃあ私は行かないわ」などと意欲を削いでしまうかもしれません。介護する側が時間的余裕をもって声をかけたり、やり方を丁寧に説明するなどして本人のペースに合わせましょう。

命令しない

介護される側のお年寄りは、人生の大先輩です。命令するような話し方では本人の自尊心を傷付けるためやめましょう。また、命令口調では相手を怒らせてしまい、スムーズに介護できなくなる心配もあります。「〇〇してくれますか?」といった丁寧な対応を心がけましょう。

子供扱いしない

中には「認知症になると子供に還る」という表現をする人たちがいます。ですが、赤ちゃん言葉で話しかけたり子供をたしなめるような言い方はやめましょう。認知症になったとしても、尊厳のあるひとりの人間であることを忘れてはいけません。

閉じ込めない

認知症の人を介護していると、どうしても手が離せずに対応しきれなかったり、介護される人をひとりにできないことで自身の行動に制約が生まれ、不自由に感じることもあるでしょう。鍵をかけて部屋に閉じ込めてしまうのは簡単ですが、それは間違った介護です。

閉じ込める行為は「身体拘束」や「身体的虐待」に該当するため、「高齢者虐待防止法」によって禁止されています。お互いが無理のない介護生活を送れるように、専門家に相談して適切な介護サービスを利用するとよいでしょう。

役割を持ってもらう

できないことが増えると、本人も自信をなくして生活意欲の低下につながります。意欲低下は心身機能が衰える原因となるため、対策が必要です。

例えば、「朝の玄関掃除」「外の草むしり」など本人ができる役割を持ってもらうようにするとよいでしょう。本人の活動を促し、自尊心を取り戻す効果も期待できます。

自尊心に配慮する

認知症の人は周囲から物忘れやできないことを指摘され続けることで、自尊心が傷ついてしまう人が多いです。自分に対して否定的になってしまうと認知症の悪化を招くため、介護するときは自尊心を傷つけないように意識して声掛けを行いましょう。

抱え込まない

認知症介護の生活は、長ければ10年以上にもなる場合があります。そのような長期間をひとりで介護するのは非常に大変なことです。頑張りすぎると介護する側が疲弊し、共倒れになる恐れがあります。抱え込まずに他の家族や親戚に協力を求めたり、最寄りの地域包括支援センターといった専門機関に相談することを強くおすすめします。

介護離職はしない

働きながら家族を介護する場合、最も大切なことは「介護離職はしないこと」です。以前は親の介護のために仕事を辞める人も多かったのですが、介護離職には二つのデメリットがあるためおすすめできません。

一つは、離職することで介護者の世帯収入が減り、自身の生活が破綻するリスクがあることです。

二つめは、「介護をするために仕事辞めたんだから、頑張らなきゃ」と強い責任感から、精神的ストレスを感じたり周囲から過剰に期待されたりしてしまうことです。

認知症介護はいつ終わるか予測できません。何年も続く可能性もあるため、持続的に介護が続けられる方法を考えるのがよいでしょう。

認知症の症状に応じた具体的な介護方法

ここからは、認知症の症状ごとにおすすめの介護方法を解説します。上手に対応し、お互いが安心して生活できるようにしましょう。

無断外出や帰宅願望

無断外出や帰宅願望の訴えがあるときは、なるべく定期的に所在を確認するようにしましょう。家にいても「家に帰る」と訴えて出て行ってしまうこともあるため、ソワソワしだしたら簡単な家事を頼んだり本人が好きな音楽をかけたりするなど、注意を他にそらすのも有効です。

また、お住いの市区町村によっては、徘徊リスクがある人を登録することで地域全体で見守るサービスや、GPS・QRコードを活用した早期発見サービスを運用している所も多いです。まずは最寄りの地域包括支援センターに相談してみましょう。

排泄の失敗

排泄失敗の原因は、「尿や便が出る感覚が分からなくなった」「トイレの場所が分からなくなった」「足腰が弱くなって、トイレに間に合わなくなった」「疾病や老化による身体的な機能低下」などさまざまです。

どれに当てはまるのかを観察し、対応方法を検討しましょう。頻尿や便秘で困っている場合は、医師に相談して治療を受けることで改善することもあります。

物盗られ妄想

物盗られ妄想の原因の大半は、「どこかに自分で置いたが、その記憶が欠落した」「必要なものを見失ったことや周囲の環境への不安感」によって起こります。介護するときは自身が味方であることを伝え、一緒に探す姿勢を見せると安心してもらえる場合が多いです。

一緒に探して介護者が先に見つけたときは、本人をさりげなく在り処まで誘導して本人に見つけてもらうようにしましょう。これは、介護者が犯人扱いされることを防ぐことと、「誰かから盗られたのではない」と理解してもらえる効果が期待できます。

薬の飲み忘れや服薬ミスの対策

薬の飲み忘れや過重服薬、処方通り飲めないといった場合、介護者が預かって本人へ手渡すようにしましょう。薬を預けることを本人が拒否する場合は、市販のお薬カレンダーを活用して一緒に確認できるようにするとよいでしょう。

飲んでいる薬の種類が多くて管理しきれない場合は、薬剤師に相談することがおすすめです。複数の薬を一つの袋にまとめる「一包化」をして分かりやすくしたり、医師に掛け合って効果が重複している薬を削るといった提案や対応方法を検討してくれます。

認知症介護に困ったときの対応方法

認知症専門医を受診する

認知症介護に困難さを感じたときは、「心療内科」「精神科」「物忘れ外来」といった認知症専門医を受診しましょう。認知症の種類を診断して適切な対応方法を教えてもらえたり、投薬によって進行を抑える治療をしてくれたりします。

本人がどうしても受診に同意してくれない場合は、市区町村が設置している「認知症初期集中支援チーム」に相談することもおすすめです。

要介護認定を受ける

認知症の対応で困った場合は抱え込まず、要介護認定を受けて介護保険サービスを利用しましょう。申請から結果が出るまでは概ね1~1.5ヶ月ほどかかります。認定を受けた結果は申請日に遡って有効となるため、申請直後から介護保険サービスの利用も不可能ではありません。

介護保険サービスを利用するためには、ケアプランの作成が必要です。地域包括支援センターに相談に行くと、代行申請してくれるだけでなくその後のケアプラン作成についても相談できるのでおすすめです。

認知症介護はひとりで抱え込まずに家族や親戚と協力しましょう

この記事のまとめ

  • 認知症は病気であり、認知症には中核症状と行動・心理症状がある
  • 認知症介護のポイントは、①怒らない・命令しない②急かさない③命令しない④子供扱いしない⑤閉じ込めないなど
  • 無断外出や帰宅願望の訴えがあるときは、定期的に所在確認をすることに加え、注意を他にそらすのも効果的
  • 物盗られ妄想があるときは、一緒に探す姿勢を見せて味方であることを示したり、本人に見つけてもらえるよう誘導する
  • 認知症介護に困難を感じる場合は「心療内科」「精神科」「物忘れ外来」といった認知症専門医を受診する
  • 認知症の対応で困った場合、要介護認定を受けて介護保険サービスを利用する

本記事では、認知症介護の心構えや対応方法について紹介しました。認知症介護はひとりで抱え込まず、自身の生活を守る視点が必要です。どのようにして介護したらよいか分からない場合や、やり方に不安がある場合は認知症の専門医や地域包括支援センターといった専門家に相談することも大切です。

認知症による困った言動には、必ず原因があります。対応と環境を工夫することによって、症状を軽減することも可能です。物忘れや介護が必要になったとしても、尊厳をもった対応を心がけるようにしましょう。

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