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健康・カラダのこと

認知症の方との接し方のポイント|症状別に対処の方法を細かくチェック

認知症の方との接し方のポイント|症状別に対処の方法を細かくチェック

家族などが認知症になると、さまざまな精神症状によって対応に困ることが増えてしまいます。症状は周囲の接し方や環境によって生じるため、対応の仕方で改善できる場合があるのです。本記事では、認知症の方との接し方のポイントを具体例と一緒に紹介します。ポイントを押さえて日々の介護に役立てましょう。

監修者 SUPERVISOR
介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級 池田 正樹

東北公益文科大学卒業。その後、介護保険や障害者総合支援法に関する様々な在宅サービスや資格講座の講師を担当した。現在は社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームの生活相談員として、入居に関する相談に対応している。在宅・施設双方の業務に加えて実際に家族を介護した経験もある。高齢者介護分野のみならず、障がい者支援に関する制度にも明るい。

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認知症の困りごとは周囲の対応や環境で改善できる

認知症の症状は、記憶力や時間、場所、人の感覚などが失われていく「中核症状」と、中核症状に個人因子が影響して発生する「行動・心理症状(BPSD・周辺症状)」の2種類があります。

中核症状は脳の変質が原因であるため改善は難しいですが、行動・心理症状は接し方のポイントを意識して対応すると改善する可能性があります。

行動・心理症状の主な症状は、以下の通りです。

行動・心理症状の例

  • 暴言
  • 暴力
  • 介護拒否
  • 不潔行為(便いじり、放尿など)
  • 徘徊
  • 収集癖
  • 昼夜逆転
  • 鍋を焦がす
  • 異食(食べられない物を食べる)

行動・心理症状は、中核症状の「記憶障害」「時間・場所・人間関係の感覚障害」に本人の不安感や周囲の理解・配慮の不足、環境の不備などが重なって生じます。

周りの接し方によって症状が大きく変化するため、原因を見定めて家族と相談しながら対処方法を見つけましょう。

認知症の方との接し方の4つのポイント

行動・心理症状は、認知症の特性を理解して対応することが接し方のポイントです。対応方法の基本を把握しておくと、さまざまな症状に応用できます。ここでは、認知症の基本的な接し方のポイントを4つ紹介します。

1.正面から目を見て話しかける

認知症の人に話しかける際、正面から相手の目を見て、名前を呼んでから話しかけるようにしましょう。認知症になると周囲への目配りや気配り、周囲の状況把握が難しくなるため、目を見て話すことが大切です。

例えば、視界の外から急に声をかけられたり肩を叩かれたりすると、驚いて警戒心を抱く原因となります。警戒心は本人の自己防衛本能を呼び起こし、介護拒否や暴力に発展する恐れもあるため注意しましょう。

正面からゆっくりと近づき、相手の目を見て話しかけることが接し方のポイントです。

2.短い言葉で分かりやすく伝える

認知症の人は長い言葉や難しい言葉、分かりにくい表現の言葉を理解するのが苦手です。

認知症の人への伝え方として、「受付するから、ここの椅子に座って待っていて」というように、馴染みのある言葉を選ぶことがポイントとなります。「今から外来にチェックインしてくるから、向こうのソファーで待っていて」というように、馴染みのない言葉で説明してしまうと内容が難しくて伝わらない恐れがあります。

認知症の人は相手が何を言っているのか分からないと不安な気持ちになります。言葉を区切り、簡単な表現で話すことが大切です。

3.否定・指示・叱責をせず、受容する

敬意をもって接することを心掛け、否定したり怒ったりせず、相手を傷つけないように配慮しましょう。

認知症で日常生活に介助が必要になったとしても、人格を持った人間であり、尊敬すべき家族や友人です。本人の言動を否定してしまうのは逆効果になります。本人が感じている不安や無力感などを理解した上で、受容と共感の姿勢を心掛けることが接し方のポイントとなります。

4.性格や表情・日常の言動から状況を考察する

認知症の行動・心理症状は、うまく自分の言葉で物事を説明できない場合や、どのようにしたらよいのか分からなくなった場合に起きやすいです。日頃の様子を観察しておき、行動を予測して接し方を考えておくことがポイントです。

例えば、認知症の人が大事な物をどこかにしまって忘れてしまい、家中を探し続けているという状況があったとします。日頃から「大切な物をどこにしまっているか」「いつもどこに物を置いているか」をこちらも把握しておくと、大切な物も発見しやすいでしょう。

認知症になると言葉にして説明することが難しくなりますが、どのような行動にも理由があります。表情や日頃の言動、生活などから、考えていることや行動の意味を理解できるようにしておくことが接し方のポイントです。

認知症によくある症状と対処方法

認知症の人への接し方に苦労する行動・心理症状の具体例としては、以下のようなものがあります。

認知症によくある症状

  • ご飯を食べていないと訴える
  • 物を盗られたと訴える
  • 家に帰ると訴え、徘徊する
  • 失禁する・トイレ以外に排泄する
  • 介護を拒否する・攻撃的になる

これらの症状にポイントを絞って対処すると、行動・心理症状をある程度は抑えられます。ここからは、具体的な認知症の症状に対する接し方のポイントを紹介していきます。

ご飯を食べていないと訴えるときは食事の出し方を工夫する

認知症になると、食事の直後でも「ご飯を食べていない」と訴えてくることがあります。この場合、食事の出し方に工夫をすることがポイントです。

「記憶の欠落」が起きたり満腹中枢が鈍ったりするため、食べたことを思い出せない状況になり、いくら説明をしても伝わりません。

おすすめの方法は、1回当たりの食事量を減らすことです。ご飯の量を半分にして食べてもらい、次に食事の要求をしてきた際に残りの半分を出します。「食べていない」と訴えてくることを予測して、対処することがポイントです。

これ以外にも、「もう少しだからお茶を飲んで待っていてね」と本人の関心が他に向くのを待つ方法や、「終わるまで〇〇をして待っていてくれますか?」と他の行動を促して気を逸らしたりする方法も有効です。

物を盗られたと訴えるときは一緒に探す

認知症の人の場合、自分でどこかに置きっ放しにしたり隠したりしたことを忘れて「誰かに盗られた」と勘違いすることがあります。

特に、日頃から一緒にいる時間が長い家族が疑われる対象になりやすく、認知症患者の家族として対処方法や接し方に困っている人も多いのではないでしょうか?

このような認知症状に対する接し方は、一緒に探すことで「自分は味方である」と安心感を持ってもらうことがポイントです。日頃から本人の行動を観察しておき、よく物を仮置きしている場所や貴重品の保管場所を確認しておきましょう。

家族が見つけてそのまま本人に渡してしまうと、「あなたが隠していたのでは?」と誤解されてしまう恐れがあります。本人より先に見つけた場合は、さりげなく「私はあちらを探してみるので、〇〇の方を探してみてはいかがですか?」と探し物を本人が見つけられるように誘導することも一つのポイントです。

一緒に探すことで「敵ではない」、本人が見つけることで「誰かが盗ったのではない」と思ってもらえるように接しましょう。

家に帰ると訴えるときは閉じ込めずに散歩や気分転換を

認知症が進行すると、記憶と場所の感覚が失われていきます。自分の家にいても「家に帰る」と訴えたり、外出先でいなくなってしまうこともあるでしょう。帰宅願望や徘徊は命に関わる事故につながる恐れがあるため、接し方に工夫をして対応する必要があります。

帰宅願望や徘徊を防ぐためには、不安感を和らげて気分転換をしてもらうことが有効な接し方のポイントです。

例えば、「お家にお送りしますね」と一緒に外出して本人が落ち着いた頃に戻ってくるようにする方法や、他の家事や作業などをお願いして気分が切り替わるのを待つ方法が有効です。

帰宅願望や徘徊の対応が大変であっても、本人を閉じ込めることはしないでください。鍵をかけて物理的に部屋から出られないようにすることは身体拘束(身体的虐待)にあたり、強い言葉で本人の行動を抑制することも不安に拍車をかけ逆効果となります。

帰宅願望や徘徊を訴える人への接し方は、散歩や他のことに興味を逸らして気分転換を図ることがポイントです。無理に行動を抑制しようとするのではなく、自分の居場所だと思ってもらえる雰囲気作りを心がけましょう。

失禁する・トイレ以外で排泄してしまうときはトイレへの誘導を

認知症になると、尿意や便意の感覚が分からず失禁してしまう場合があります。また、トイレ以外のところで排泄をしてしまうこともあるでしょう。認知症でトイレを失敗するようになると自宅介護を諦める要因にもなるため、対応を検討する必要があります。衛生管理のためにも、接し方のポイントを把握しておきましょう。

トイレの感覚が分からなくなった人に対する接し方のポイントは、時間を決めてトイレに誘導することです。夜間は睡眠の質を確保するために夜用の尿取りパットを使用して起こす間隔を長めにとるか、起こさずに本人が目覚めたところでトイレへ誘導する方法がよいです。

トイレの場所が分からない人に対しては、トイレの場所を矢印や絵で分かりやすく表示する方法がおすすめです。高齢になると筋力の低下や足元の不安で視線が下に向くため、表示は低めの位置に貼り付けると気付いてもらいやすくなります。

介護を拒否する・攻撃的になるときは分かりやすく説明する

認知症になると会話の理解が難しくなるため、何を言っているのか分からずに警戒心から拒絶されることがあります。認知症の人を無理に介助すると、攻撃的になってしまう恐れがあります。これは、本人が何をされるのか分からない恐怖から身を守るための防衛行動だと覚えておきましょう。

認知症で介護拒否などがある場合、相手の正面から目を見て分かりやすく短い言葉で説明することが接し方のポイントです。時には身振り手振りも交えて話すと、理解してもらいやすくなるでしょう。

介護拒否などがある人にしてはいけないのが、複数名での対応や押さえ付けるなどの対応をとることです。そもそもの原因は警戒心からくる自衛行動であるため、威圧的な態度や行動で対応するのは逆効果になります。

認知症の人は、自分の身を守るために介護拒否や暴力行為に至ってしまうことがあります。うまく相手に伝わらない場合は時間を変えたり、また別の方法を試したりと不快感や恐怖心を与えないように接し方を工夫しましょう。

認知症の症状を理解し、接し方を工夫しましょう

この記事のまとめ

  • 認知症の症状は周囲の接し方次第で改善できる可能性がある
  • 認知症によくある症状は、ご飯を食べていない、物を盗られた、家に帰りたいと訴えてくる、失禁する、攻撃的になるなど
  • ごはんを食べていないと訴えるときは、一回の量を少なくしたり食事の出し方を工夫する
  • 物を盗られたと訴えるときは、一緒に探して味方になる
  • 家に帰りたいと訴えるときは、散歩や他のことに興味を逸らすなどして気分転換をさせる
  • 失禁してしまうときは、時間を決めてトイレへ誘導する
  • 認知症の方への接し方のポイントは、①正面から目を見て話しかける②短い言葉で分かりやすく伝える③否定や指示、叱責をしない④性格や表情、日頃の言動から様子を確認すること

認知症になると、記憶力や理解力の低下による行動・心理症状が起こります。認知症状は家族や支援者が接し方を工夫することで改善できるため、今回紹介した接し方のポイントを参考に対応を考えてみてください。

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