手元供養とは?故人をより身近に感じられる供養の方法と種類を紹介
近年、供養方法の多様化に伴い、手元供養が注目されてきています。本記事では、手元供養の概要やメリット、供養の種類について解説します。手元供養の流れや注意点も紹介するので、参考にしてみてください。
手元供養とは
手元供養とは、自宅など身近な場所に故人の遺骨を置き、供養する形式を指します。日本では、火葬後の遺骨は四十九日法要の後にお墓や納骨堂に納骨されることが一般的です。
ひと昔前までは、「遺骨はお墓にきちんと納骨しないと、故人の魂が成仏できない」とも考えられていました。しかし、2000年代になってから「お墓を建てる費用がない」「田舎のお墓を継ぐのが難しい」といった理由から、手元供養が広まり始めたのです。
手元供養をするメリット
お墓や納骨堂への納骨ではなく、手元供養を選ぶのにはどういったメリットがあるのでしょうか。
故人を自宅で供養できる
手元供養には、故人を自宅で供養できるというメリットがあります。例えば、お墓に遺骨を埋葬した場合、お墓参りをしないと故人を供養することはできません。また、自宅の庭や敷地などに遺骨を埋めてお墓を建てるのは、法律違反になってしまいます。
一方、身近に遺骨を保管できる手元供養の場合、自宅にいながら故人を供養できます。「お墓参りへ行く体力がない」「毎日故人を供養したい」という方にとって、手元供養は大きなメリットといえるでしょう。
お墓の費用がかからない
お墓の費用がかからないことも、手元供養を行うメリットの一つです。新しくお墓を建てる場合、100万円ほどの費用が発生します。お墓を建てた後も、墓地の使用料や霊園へ支払う管理費、寺院へのお布施などの維持費がかかり続けます。また、子孫や親戚などにお墓の管理を引き継がなくてはいけません。
一方、故人の遺骨全てを手元供養とした場合、お墓を建てる必要がありません。お墓の建立費や維持費がかからないため、経済的な負担を大きく軽減できるでしょう。
故人を身近に感じられる
手元供養をするメリットに、故人を身近に感じられる点が挙げられます。身の回りや自宅に故人の遺骨を置いておけば、お墓や納骨堂に遺骨を納めるよりも故人を近くに感じられます。
手元供養をする方法
手元供養には、「遺骨全てを手元に置く」方法と「遺骨の一部を手元に残す」方法の2種類があります。ここからは、それぞれの方法について詳しくご紹介します。
遺骨全てを手元に置く
遺骨全て(全骨)を手元において供養する場合、遺骨をどのように供養するか考える必要があるでしょう。アクセサリーやインテリアなどの手元供養の商品は、骨壷よりも小さい場合が多いです。遺骨全てを同じ手元供養品に納めるのは難しいため、複数の品物に小分けすることになるでしょう。
また、全骨での手元供養を希望する場合は、遺骨をパウダー状に粉骨するのがおすすめです。粉骨をすると遺骨の体積が約4分の1ほどまで減るため、遺骨を手元供養品に納めやすくなります。
遺骨の一部を手元に残す
遺骨の一部(分骨)を手元に残す場合は、どの程度の遺骨を手元供養にするのか検討する必要があります。目安としては、遺骨ひとつまみほどならアクセサリーに、一握りほどならミニ骨壷に納められるでしょう。
また、残った遺骨をどのように供養するかについても考えなくてはいけません。他の家族と遺骨を分けても良いですし、散骨して供養するという方法もあります。
手元供養の種類
手元供養を行う場合、遺骨は「手元供養品」と呼ばれる品物に納められます。ここからは手元供養品の種類を解説します。どの種類の品物を選ぶか参考にしてみてください。
ミニ骨壷
手元供養品として人気なのが、ミニサイズの骨壷です。火葬場で遺骨を納めてもらう骨壷はサイズが大きく、手元に置いておくにはスペースを取ってしまいます。そのため、通常の骨壷よりもミニサイズの骨壷に遺骨を納め、手元供養をする方が多いのです。
ミニ骨壷はデザインのバリエーションが豊富なため、希望に合った商品を見つけやすいです。ミニ骨壷には主にステンレスや真鍮、ガラス、陶器などの素材が使用されていますが、中には金や銀が使われている骨壷もあります。部屋のインテリアに合わせて、骨壷の素材やデザインを選ぶとよいでしょう。
プレート
遺骨をパウダー状にして金属と混ぜ合わせ、プレート状に加工して手元供養をする方法もあります。プレートタイプの手元供養品は、「エターナルプレート」「遺骨プレート」といわれることもあります。プレートには故人の名前や生年月日、没年月日などが刻印されます。
遺骨プレートは加工に手間と時間がかかるため、約10〜30万円と費用がやや高めです。プレートは写真立てほどの大きさに加工されることが多く、サイズが大きくなるほど高額になります。また、プレートに使用する金属の種類やデザイン、写真を刻印するかなどによっても料金が変動します。
ミニ仏壇
「仏壇を設けてしっかり故人を供養したいけれど、仏壇を置くスペースがない」という方に選ばれているのが、ミニ仏壇です。従来の仏壇よりもサイズが小さいため、場所を取らず好きな場所に故人のための空間を作れるのがメリットです。また、デザイン性が高くおしゃれなものが多いため、インテリアの邪魔にもなりません。
アクセサリー
アクセサリータイプの手元供養品は、女性や若い世代によく選ばれている品物です。自宅ではもちろん、外出先や仕事中など、場所を問わず故人を身近に感じられるのが特徴です。遺骨をアクセサリーに収骨する技術の発展に伴い、選べるアクセサリーの種類もどんどん増えています。
定番なのが、ブレスレットやペンダント、数珠に加工するタイプです。特にペンダントは非常にデザインの種類が多く、価格帯も比較的安価です。また、遺骨を合成ダイヤモンドに加工し、そのダイヤモンドを指輪やネックレスなどのアクセサリーに加工する方法もあります。アクセサリーを身につける習慣がない場合、キーホルダーに加工することも可能です。
インテリア
インテリアタイプの手元供養品は、一目では遺骨を納めていると分からないデザインのものが多いです。例えば、人形やぬいぐるみ、花瓶などが挙げられます。インテリアとしての手元供養品を選べば、毎日の暮らしの中で故人の存在を感じられるでしょう。「遺骨や遺灰が自宅にあると知られたくない」という方にもおすすめの品物です。
手元供養をする流れ
「故人の遺骨を手元供養したいけれど、どのようなやり方で手元供養をすればいいか分からない」という方もいるでしょう。そのような方のために、ここからは手元供養の流れを詳しく紹介します。手元供養のやり方に悩んでいるのなら、以下の流れを参考にしてみてください。
家族に相談する
手元供養を検討しているのなら、まずは家族に相談してみましょう、手元供養を選ぶ方は年々増加していますが、それでも「一般的な供養の仕方」とはいえません。ご家族の中に、「お墓に納骨するべき」「手元供養には抵抗がある」と考える方がいる場合もあります。きちんと家族と話し合い、自宅で手元供養することを了承してもらいましょう。
手元供養の方法を決める
賛同が得られたら、手元供養の方法を決めます。全ての遺骨を手元供養する「全骨」か、一部の遺骨のみを手元供養する「分骨」かによって、選べる手元供養品の種類が異なります。手元にどの程度遺骨を残すか、家族の誰と遺骨を分けるかなどをしっかりと相談しましょう。
手元供養品を決める
手元供養の方法が決まったら、手元供養品の種類を決定します。先述した通り、手元供養品にはミニ骨壷やアクセサリー、ミニ仏壇、プレートなどさまざまな種類があります。それぞれの種類の特徴やメリットを押さえて、品物を決定してください。
業者に依頼する
手元供養品の種類によっては、業者への製作依頼が必要な場合があります。ミニ骨壷やミニ仏壇などは商品を購入するだけで良いですが、アクセサリーやプレートなどは遺骨の加工を業者に依頼することとなります。製作にかかる日数や商品のデザインなどをチェックして、自分の希望に合う業者を探してみてください。
手元供養をする際の注意点
手元供養にはさまざまなメリットがありますが、注意しなくてはいけないポイントもあります。ここからは、手元供養を行う場合の注意点を解説します。
紛失のリスクがある
手元供養を選んだ場合、品物を紛失するリスクがあることを覚えておきましょう。例えば、遺骨を収めたネックレスがちぎれて紛失したり、遺骨が入ったキーホルダーを落としてしまったりする恐れがあります。持ち運べるタイプのミニ骨壷を鞄に入れ、その鞄をどこかに忘れてしまうこともあるでしょう。
また、ミニ仏壇やプレートといった自宅に保管するタイプの手元供養品も、地震や火事などで失うリスクはあります。このような危険性があることを把握した上で、手元供養品を大切に保管しましょう。
保管場所に注意
手元供養品の保管場所にも注意が必要です。特に、ミニ骨壷を選んだ場合、遺骨にカビが生える恐れがあります。遺骨を保管している容器の外と中の温度差が大きいと、カビが発生しやすくなるため注意してください。また、高温多湿の場所もカビの温床になりやすいため、キッチンやお風呂場の近く、クローゼットの中などはなるべく避けましょう。
周囲の了承を得られないことがある
手元供養を行う場合、周囲の了承を得られない可能性があります。手元供養はここ10年ほどで広まった新しい供養形式であるため、抵抗を抱く人は少なくありません。
「遺骨はお墓に納めて供養するもの」と考える方も多く、理解を得られない場合もあります。家族や親族から反対を受けたら、自分や故人の気持ちを丁寧に伝えて話し合いを行いましょう。
残った遺骨を供養する方法
遺骨をプレートやアクセサリーなどに加工して供養する場合、一部の遺骨が残ってしまうことがあります。このように残った遺骨は、どのように供養すればよいのでしょうか。
お墓に納骨する
一般的に、残った遺骨をお墓に納骨する方が多いです。「お墓はあるけれど故人を近くで感じたい」「お墓参りになかなか行けない」という方は、遺骨の一部を手元供養品に加工し、残った遺骨をお墓に納めるとよいでしょう。
納骨堂・永代供養墓に納骨する
納骨堂や永代供養墓に遺骨を納める方法もあります。遺骨の管理を任せられるため、「あまり手間をかけられない」という方に選ばれています。また、一般的なお墓よりも費用が抑えられるのもポイントです。
樹木葬
樹木葬とは、木の周りに遺骨を埋葬する方法です。墓石の代わりに樹木を故人のシンボルとするのが特徴で、費用相場は70万円ほどとお墓に比べて比較的安価です。故人が自然に還ることを望んでいたのなら、樹木葬を検討してみてください。
散骨
散骨とは、遺骨をパウダー状に加工して、山や海などに撒く方法です。お墓のように維持費がかからないため、経済的な負担を軽減したい方に選ばれています。自分で散骨を行うことも可能ですが、自治体によっては散骨が禁止されていることもあるため、トラブルを避けるためにも専門業者に依頼するのがおすすめです。
方法や種類を押さえて手元供養を行い、故人を偲びましょう
この記事のまとめ
- 手元供養とは、故人の遺骨を自宅や身のまわりに保管して供養する方法
- 手元供養には、遺骨を自宅で供養できる、お墓の費用がかからない、故人を身近に感じられるといったメリットがある
- 手元供養の方法には、遺骨全てを手元に置く「全骨」と、一部の遺骨を手元に残す「分骨」がある
- 手元供養の種類としては、アクセサリー、インテリア、骨壷、プレート、ミニ仏壇などがある
- 手元供養を考えている場合、家族に相談してから手元供養の方法、手元供養品を決めると良い
- 紛失のリスクや保管場所などに注意が必要
- 手元供養は、家族や周りの了承を得られないこともある
手元供養は、2000年代から広まり始めた比較的新しい供養の仕方です。方法や手元供養品にはさまざまな種類があるため、手元供養を検討している方は参考にしてみてください。ただし、手元供養は家族や親族など、周りの了承を得られない場合もあります。手元供養を行う場合は、前もって周囲に相談することをおすすめします。