お骨拾いでのマナーは?故人との最後のお別れの手順と作法を詳しく解説
火葬が終わると、故人の骨を拾う「お骨拾い」という儀式が行われます。きちんと流れやルールを把握して正しく行いましょう。本記事では、お骨拾いのマナーや手順、注意点などを詳しく解説します。
お骨拾いの意味
遺骨を骨壷に収める儀式のこと
お骨拾いは「骨上げ」「収骨」とも呼ばれ、火葬が終わった後に遺骨を骨壷へ収めることを指します。お骨拾いをする地域は世界にほとんどなく、日本独自の慣習です。
お骨拾いには、「全収骨」と「部分収骨」の二つの方法があります。全収骨とは、故人の遺骨全てを骨壷に収める方法です。部分収骨は、喉仏や歯など遺骨の一部のみを収めてその他の遺骨は火葬場で供養してもらう方法です。東日本では全収骨が、西日本では部分収骨が行われることが多いです。
収骨方法によって、準備する骨壷のサイズも異なります。部分収骨の場合は4寸前後の骨壷、全収骨の場合は7寸前後の骨壷が使用されることが多いです。
故人の魂の橋渡しを意味する
お骨拾いの際は、手ではなく専用の骨上げ箸(御骨箸)を使用して遺骨を拾います。これは、「故人の魂をこの世から極楽浄土へ橋渡しする」という意味があるとされています。お骨拾いを行う際は「故人が無事に三途の川を渡れますように」と願いを込めながら儀式を執り行うようにしましょう。
葬儀からお骨拾いまでの流れ
ここからは、葬儀からお骨拾いまでの流れについて詳しく解説していきます。いざというときに戸惑わないよう、前もって確認をしておきましょう。
出棺
葬儀が終わると、遺族や故人の友人が棺を担ぎ、霊柩車まで運びます。棺を霊柩車に乗せた後、遺族を代表して喪主が参列者に向けて挨拶を行います。挨拶では生前の思い出や、葬儀に参列していただいたことへのお礼を簡潔に述べます。その後、霊柩車は火葬場へと出棺します。
火葬場に併設された葬儀式場であれば、これらの移動は発生しません。
受付をすませる
火葬場に到着したら、喪主は受付の係員に「火葬許可証」を提出します。火葬許可証は市町村役場で発行され、故人の遺体を火葬することを許可する書類です。火葬許可証がないと火葬を行えないため、必ず持参しましょう。
火葬が終わると火葬許可証に火葬済証明印が捺印され、「埋葬許可証」として使えるようになります。埋葬許可証は遺骨をお墓や納骨堂などに収める際に必要な書類ですので、紛失しないようきちんと保管しておきましょう。
納めの式
受付が終わった後は、納めの式が執り行われます。納めの式とは、火葬の直前に行われる故人と家族とのお別れの儀式を指します。
故人のご遺体が入った棺が告別室や火葬炉に安置され、葬儀社や火葬場のスタッフが遺影や位牌を飾ります。家族で故人の棺を囲みながら僧侶が読経を行い、その後焼香をするという流れになります。焼香は喪主、故人と関係が深い家族、親族の順番で行われるのが一般的です。火葬場に僧侶が同行しない場合、納めの式では読経や焼香はせずに簡単なお別れのみが行われます。
儀式が終了した後、故人の棺が火葬炉へと送られます。参列者全員で合掌しながら、棺が火葬炉へ収められるのを見送りましょう。
火葬
納めの式が終わると、故人のご遺体は火葬されます。火葬にかかる時間は、故人の体格や棺の中に入れた副葬品の種類などによって異なりますが、一般的に1時間ほどかかります。火葬が行われている間は、家族は休憩室や火葬場のロビーなどで待機することになります。火葬場には他の遺族の方もいらっしゃるため、待機中は静かに過ごしましょう。
お骨拾いの手順・作法
火葬が終わるといよいよお骨拾いです。ここからはお骨拾いの手順について解説していきますので、ぜひ目を通してみてください。
遺骨の周りに集まる
火葬が終了すると、火葬場のスタッフが火葬が終わったことを知らせてくれるため、遺族は案内に従って収骨室に移動し、遺骨の周りに集まります。このとき、喪主が遺骨の頭側に立つのが一般的です。
台の上に棺を乗せたまま行う場合や遺骨をお骨拾い専用の台に乗せる場合もあります。全員が遺骨の周りに集まったら、スタッフがお骨拾い専用の箸を渡してくれます。
骨を拾う
準備が整ったら、故人の骨を拾っていきます。お骨拾いは2人1組になり、1人ずつ異なる箸を使用して遺骨を収めるのが一般的です。お骨拾いに参列している人同士でペアを作り、順番を待ちましょう。
2人1組でお骨拾いを行うのには、「故人を失った悲しみを共に感じる」「故人の霊がひとりに取り憑くことを防ぐ」といった意味があるとされています。地域によっては男性と女性が一緒になって行うこともあるため、係員の指示に従って行いましょう。
遺骨を骨壷に収める
2人1組になったら箸で遺骨を拾い、骨壷へと収めていきます。お骨拾いには、ひとつの骨を2人で拾う方法と、1人が拾った遺骨をペアになっている人に渡す二つの方法があります。地域によってお骨拾いのやり方は異なるため、係員の指示に従いましょう。お骨拾いが終了したら、スタッフによって骨壷の蓋が閉められます。
お骨拾いでのマナー
お骨拾いには守るべきマナーがいくつかありますが、正しいやり方が分からないという方もいるのではないでしょうか。ここからはお骨拾いのマナーを詳しく解説していきますので、前もって確認をしておきましょう。
遺骨を収める順番を守る
お骨拾いを行う際は、遺骨を骨壷に収める順番を守るようにしましょう。一般的には「故人が極楽浄土へ旅立てるように」との意味を込めて、足の骨から拾うことが多いです。足、腕、背中と順番に遺骨を拾い、最後の喪主が喉仏や頭の骨を拾うという流れになります。ただし、地域によっては順番が異なることもあるため、不安な方は係員の指示に従うようにしましょう。
遺骨を骨壷に収める順番
- 足の骨
- 腕の骨
- 腰の骨
- 背中の骨
- 肋骨の骨
- 歯
- 頭の骨
- 喉仏
専用の箸を使用する
お骨拾いの際は、普段使用している箸とは異なる「骨上げ箸」が使用されます。骨上げ箸は、1本が白木、もう1本が竹でできている長さの揃っていない箸です。お骨拾いで不揃いの箸を使用するのは、「逆さ事」に由来するといわれています。逆さ事とは、現世とあの世の世界を区別するため、あえて普段のものを逆さにするという習慣です。
逆さ事に由来した箸を使うことにより、お骨拾いが特別な儀式であると表しています。また、普段とは違う箸を使ってお骨拾いをすることで、不幸が家族に伝染しないようにとの意味も込められています。
お骨拾い専用の箸は普段使っている箸よりも長いものであることが多いため、丁寧な所作で拾うように心がけましょう。
故人との関係が深い人から拾う
お骨拾いは、一般的に故人との関係が深い遺族から順番に行われます。まず、喪主を含んだペアが遺骨を拾い、血縁関係がある家族、親族と続いていきます。全員が遺骨を拾ったら再び喪主のペアに箸が渡り、最後のお骨を拾って終了です。
骨を落としたらやり直す
お骨拾いは慣れない専用の箸と作法で行われるため、緊張して遺骨を落としてしまうこともあるでしょう。遺骨を落としてしまっても、故人や遺族に対して失礼にはあたりません。再度遺骨を置き、もう一度拾い直せば問題ないため、落ち着いて行いましょう。
お骨拾いの際の注意点
お骨拾いを行う際は、いくつかの点に注意する必要があります。ここからはお骨拾いの注意点を詳しく解説しますので、参考にしてみてください。
お骨拾いができない人への配慮をする
お骨拾いは、故人が無事にあの世へ渡れるようにとの願いを込めた重要な儀式です。しかし、故人の遺骨を拾うのは精神的な負担が大きい作業でもあります。特に、故人との関係が深い家族や小さな子供は、悲しみからお骨拾いに参加できないかもしれません。
参列者が全員お骨拾いに参加する必要はないため、お骨拾いを強制するのは避けましょう。相手の悲しみに寄り添い、収骨ができない人への配慮を忘れないことが大切です。
遺骨を分ける場合は分骨証明書を準備する
一般的に、拾われた遺骨は一つの骨壷に入れられますが、中には分骨を行う場合もあります。分骨をする際は分骨証明書が必要になるため、前もって準備しておきましょう。また、分骨用の骨壷も用意する必要があるため、葬儀社のスタッフに相談しておきましょう。
埋葬許可証はきちんと保管しておく
お骨拾いが終わると、火葬場のスタッフから埋葬許可証が渡されます。こちらの書類はお墓や納骨堂に骨壷を収める際に必要になるため、なくさないよう保管しておきましょう。
マナーや作法を踏まえ、お骨拾いを行いましょう
この記事のまとめ
- お骨拾いとは、火葬後に故人の遺骨を骨壷に収める儀式であり、故人の魂の橋渡しを意味する
- 葬儀からお骨拾いまでは、出棺、受付、納めの式、火葬の流れで行われる
- お骨拾いは、遺骨の周りに参列者が集まり、遺骨を拾って骨壷に収めるという手順で行われる
- お骨拾いでは、遺骨を収める順番を守ることや専用の箸を使用するなどのマナーを守ることが大切
- お骨拾いができない人には参加を強制せず、気遣いを忘れない
- 遺骨を分骨する場合は、前もって分骨証明書を用意しておく
お骨拾いは、遺骨を骨壷に収めて故人の魂があの世に渡れるよう祈る大切な儀式です。お骨拾いには守るべき手順やマナーがあるため、参列する前に確認しておきましょう。