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お金・お家のこと

相続手続きは自分でもできる?相続登記の手順や必要書類を解説

相続手続きは自分でもできる?相続登記の手順や必要書類を解説

家族の死去により相続財産が発生したときは、遺産の名義変更などの手続きをしなくてはなりません。相続財産に不動産が含まれている場合は、相続登記も必要です。このような相続手続きを自分でやることは可能なのでしょうか?今回は、相続手続きを自分で行う判断基準や手順について解説します。

監修者 SUPERVISOR
公認会計士/税理士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士 岸田 康雄

平成28年度経済産業省中小企業省「事業継承ガイドライン」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施作研究調査会「事業継承支援専門部会」委員、東京中小企業診断士委員会「事業継承支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。中央青山監査法人にて会計監査及び財務デュー・デリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルネスマネジメント営業部、みずほ証券投資銀行部M&Aアドバイザリーグループ、メリルリンチ日本証券プリンパル・インベストメント部不動産投資グループなどに在籍し、中小企業の事業継承から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業継承とM&A業務を遂行した。現在は、相続税申告と相続・事業継承コンサルタント業務を提供している。

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相続手続きとは

相続手続きとは、ある人が死亡したときにその人の財産を、特定の人が引き継ぐときに行う手続き全般を指します。相続手続きの一般的な流れは以下の通りです。

相続手続きの一般的な流れ

  1. 故人の戸籍を取得して相続人を調べる
  2. 相続財産の内容を確認する
  3. 遺産分割協議を行う
  4. 預貯金の解約や名義変更を行う

相続人の数や相続財産の種類、遺言の有無、遺産の分割方法などによって必要な手続きは変わってきます。相続手続きは自分で行うことも可能ですが、専門知識が必要になるため、難しい場合は相続代行サービスや司法書士などの専門家に代行を依頼しましょう。

不動産を相続する場合は「相続登記」が必要

相続財産に不動産が含まれている場合は「相続登記」が必要になります。相続登記とは、不動産の所有者が亡くなった際に、その土地や建物の所有権を亡くなった方から相続人に移転する手続きのことです。

これまで相続登記は義務ではなく、行わなくても罰則はありませんでした。しかし、2024年4月1日からは相続登記が義務化されます。正当な理由がなく相続登記の申請を怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があるため注意が必要です。

また、相続登記をしないと「相続した不動産を売却する」「担保にしてお金を借りる」といった取引をスムーズに行えず、トラブルになる可能性もあります。そのため、不動産を相続したら速やかに相続登記を行うことが大切です。

相続手続きを自分で行う判断基準

相続手続きを自分で始めたものの、途中で挫折してしまって専門家に依頼するパターンが少なくありません。また、相続手続きに間違いがあると、手続き完了までに時間がかかってしまいます。
相続手続きは状況によって難易度や作業量が変わるため、自分で行っても問題ないかを適切に判断することが大切です。ここでは、相続手続きを自分で行えるかの判断基準を紹介します。

相続財産が預貯金のみ

相続では、どのような財産が遺されているかを確認した上で、遺産分割を行わなくてはなりません。相続財産の評価方法は、財産の種類によって異なります。

不動産の評価は複雑で、相続人が複数いる場合は簡単に分割できません。一方、預貯金は残高がそのまま評価額になるため、複雑な計算は不要です。相続財産が預貯金のみであれば、自分で相続手続きを進めることも可能でしょう。

相続人が少ない

相続人が少なければ、戸籍の収集などに手間がかからず、遺産分割についても簡単に合意できるかもしれません。しかし、相続人が多いと話し合いがうまくいかず、相続手続きがスムーズに進まないことがあります。「遺産分割で合意できず裁判になる」などの相続トラブルに発展する可能性もあるため、相続人が多い場合は専門家に依頼することを検討しましょう。

時間に余裕がある

相続では、必要書類の収集や相続財産の調査など、さまざまな手続きが必要です。「仕事が忙しくて動けるのは休日だけ」という場合は、専門家に依頼するのが無難といえます。 時間に余裕があり、平日でも役所や金融機関などを訪問できる場合は、自分で相続手続きを行うことも可能です。

相続の基礎知識がある

相続手続きをスムーズに進めるには、専門知識が必要です。手続きにミスがあるとやり直しになり、手続き完了に時間がかかってしまいます。そのため、相続の基礎知識がない場合は自分で相続手続きを行うのは難しいでしょう。

調査や書類作成が得意

相続手続きでは、相続財産や相続人に関する調査を行い、さまざまな必要書類を作成します。調査や書類作成が得意で、スケジュール通りに実行できる人であれば、相続手続きを自分で行えるかもしれません。反対に、調査や書類作成が苦手な場合は専門家に依頼するのが無難です。

相続登記の流れ

上述したように、相続財産に不動産が含まれている場合は相続登記が必要です。相続登記を自分で行うには、どのような手順で手続きを進めればよいのでしょうか。ここでは、相続登記の流れを紹介します。

STEP①相続する不動産について調べる

最初に、相続する不動産について調べましょう。具体的には、相続不動産の数や所在地、名義人などの確認が必要です。

固定資産税の課税明細書を確認すれば、被相続人(亡くなった人)がどのような不動産を所有していたかを把握できます。また、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得することによって、対象不動産の名義人や所在地、抵当権などの権利関係が分かります。

STEP②必要書類を準備する

相続登記では、さまざまな必要書類を準備しなくてはなりません。登記申請時には、不動産や相続人に関する書類の提出が求められます。相続登記の必要書類については、後ほど詳しく説明します。

STEP③相続人を確定する

相続登記では、相続人を確定することも重要です。離婚や再婚をしている場合など、戸籍を収集しないと誰が相続人なのかを判断できないケースもあります。相続人が明確になると、遺産分割についての話し合いを始められるでしょう。

STEP④必要に応じて遺産分割協議書を作成する

法律には、相続人が引き継ぐ財産の割合(法定相続分)の目安が定められています。法定相続人が配偶者と子ひとりの場合、法定相続分では配偶者と子が財産を2分の1ずつ相続するというのが目安となります。

遺言書が無ければ遺産分割協議を行い、相続人同士の話し合いによって遺産分割の割合を決めることになります。その場合、遺産分割協議書を作成して、遺産分割協議で合意した内容をまとめます。

STEP⑤相続登記の申請書を法務局に提出する

遺産分割について合意したら、相続登記の申請書を法務局に提出しましょう。申請書や添付書類に不備がなく、法務局で登記手続きが完了したら、登記識別情報通知や登記完了書を受け取ります。

登記識別情報とは、不動産の名義変更を行った際に、新たな名義人に対して通知される書類です。不動産売買などで必要になるため、紛失しないように注意しましょう。

登記完了書は、登記手続きが完了したことを証明する書類です。登記識別情報に比べると重要度は高くありませんが、念のため登記識別情報と一緒に保管しておくとよいでしょう。

相続登記の必要書類

ここでは、上述の相続登記の過程で必要となる書類を詳しく解説します。

登記事項証明書

登記事項証明書とは、不動産の名義人や所在地、権利関係などが記載されている書類です。法務局が管理している登記情報を印刷し、証明書として発行します。登記事項証明書の内容に基づいて、登記申請書に対象不動産の情報を記入します。登記事項証明書は、法務局の窓口またはオンライン請求で取得可能です。

固定資産税評価証明書

固定資産税評価証明書は、固定資産課税台帳に登録されている不動産の固定資産税評価額を証明する書類です。こちらは、相続登記の登録免許税額を計算する根拠資料として準備します。固定資産課税台帳は市区町村が管理しており、対象不動産が所在する自治体の窓口で取得できます。

登記申請書

登記申請書は、相続登記を法務局に申請するための書類です。登記の目的や原因、相続人の住所・氏名、対象不動産の情報などを記載します。登記申請書は法務局の窓口で取得するか、法務局のホームページからダウンロードしましょう。

法定相続情報一覧図

法定相続情報一覧図とは、被相続人と相続人の関係を図で表したものです。登記申請の際に法定相続情報一覧図を提出すると、申請書に添付した戸籍謄本や住民票、遺産分割協議書などの原本が返却されます。この手続きを「原本還付の手続」と言います。原本還付を希望する場合は、法定相続情報一覧図を準備しましょう。

委任状

共同相続人全員のために、相続人のひとりが代表して相続登記を申請する場合は、委任状が必要です。委任状には、代理人に委任する権限や委任者の住所・氏名などを記載します。

被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本

法定相続情報一覧図を用意できなかった場合は、被相続人の出生から死亡までの経過が分かる戸籍謄本を準備します。こちらは、法定相続人を確定したり、被相続人との関係を明確にしたりするために必要です。本籍地のある自治体の窓口で取得できますが、遠方で直接訪問するのが難しい場合は郵送でも取得可能です。

被相続人の住民票の除票

除票とは、死亡などの理由で住民登録が抹消された住民票のことです。被相続人が亡くなった際に死亡届を提出することによって、住民登録が抹消されます。被相続人の最後の住所が登記記録上や本籍の住所と異なる場合は、住民票の除票が必要です。

相続人全員の戸籍謄本

相続登記の申請では、相続人全員の戸籍謄本を添付します。こちらは、被相続人が死亡した時点で、相続人が生存していたことを証明するために必要です。ただし、被相続人の戸籍謄本に相続人が記載されている場合は不要となります。

相続人全員の住民票

相続人の住所を証明する書類として、相続人全員の住民票を準備します。住民票は、住所地のある自治体の窓口やコンビニで発行可能です。

収入印紙(登録免許税)

相続登記では、対象不動産の評価額に応じて登録免許税を納めなくてはなりません。登録免許税額分の収入印紙を準備し、登記申請書に貼付して納付します。収入印紙は、法務局や郵便局などで購入できます。

遺産分割協議書

遺産分割協議で遺産の分け方を決める場合は、遺産分割協議書を作成します。登記申請書に記載する持分は、遺産分割協議書に記載されている持分と一致していなくてはなりません。ただし、法定相続で分割する場合や遺言がある場合は不要です。

相続人全員の印鑑証明書

遺産分割協議を行う場合は、相続人全員の印鑑証明書も必要です。遺産分割協議書に押印した実印の印鑑証明書を準備します。印鑑証明書は、自治体の窓口やコンビニで発行できます。

相続登記を自分で行う場合の費用

相続登記を自分で行う場合の費用は、不動産の評価額や被相続人の状況、相続人の数などによって変わってきます。ここでは、相続登記でかかる費用と金額の目安について解説します。

登録免許税

相続登記の登録免許税額は「固定資産税評価額×0.4%」で計算します。相続不動産の評価額が2千万円であれば、登録免許税額は8万円(2千万円×0.4%)です。固定資産税評価額は自治体が管理する固定資産課税台帳に登録されている価格で、「固定資産税評価証明書」で確認できます。

必要書類の取得にかかる手数料

戸籍謄本や住民票などを取得する際は、手数料が発生します。金額は書類によって異なりますが、1枚あたり数百円が目安です。被相続人の状況や相続人の数によっては取得枚数が多くなるため、まとまった費用がかかる可能性もあります。また、法務局や自治体窓口への交通費もかかります。

相続手続きは自分で行えるが、専門家への依頼も検討しましょう

この記事のまとめ

  • 相続手続きは「戸籍の取得」「相続財産の確認」「遺産分割協議」「名義変更」などがある
  • 不動産を相続する場合は「相続登記」が必要
  • 相続手続きを自分でやるかは「相続財産の種類」「相続人の数」「相続に関する基礎知識の有無」などで判断する
  • 相続登記を自分で行う場合は、相続する不動産について調査し、必要書類を準備して法務局に申請する
  • 相続登記の申請時は「登記事項証明書」「固定資産税評価証明書」「登記申請書」「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本」などの必要書類を準備する
  • 相続登記には「登録免許税」「必要書類の取得手数料」などの費用がかかる
  • 相続手続きを自分で行うのが難しい場合は、無理せず専門家に相談する

相続手続きを専門家に依頼せずに自分で行うと、費用の節約ができます。ただし、複数の不動産を相続する場合などは手続きが複雑で、専門知識が求められます。「自分でやるのは難しい」と感じたら、無理をしないで代行サービスや法律事務所などの専門家に相談しましょう。

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