生前に建てる「生前墓」とは?用意するメリット・デメリット、注意点まで解説
基本的にお墓は亡くなった後に建てられるものですが、終活が広まるにつれて「生前墓」を検討する方も増えてきています。本記事では、生前墓を用意するメリットやデメリット、注意点などを詳しく解説していきます。
生前墓とは
生前墓とは、名前の通り存命のうちに建てるお墓のことです。多くの場合、本人が亡くなった後に遺族がお墓を建てるのが一般的です。しかし現在、終活を通じて生前墓を検討する方が増えてきています。
「亡くなる前にお墓を建てるのは、縁起が悪いのでは」と感じる方もいるでしょう。しかし実は、生前墓は長生きや繁栄を願う「寿陵(じゅりょう)」とされており、縁起のよいものと考えられています。
生前墓を用意するメリット
生前墓を建てる方が増えているとは言っても、具体的なメリットが分からないと検討しにくいものです。そこでここからは、生前墓を建てるメリットについて解説していきます。
節税ができる
生前墓を建てると、節税できるというメリットがあります。お墓や仏壇、墓石などの祭祀財産は、相続税の課税対象にならない「非課税財産」です。生きているうちに生前墓を建てておけば、お墓を建てる費用分が節税され、家族が遺産を受け取った際の相続税を軽減できるのです。
亡くなった後にお墓を建ててもらおうとお金を渡しておいた場合、そのお金は相続税の対象となるため注意しましょう。相続税対策をしたい場合は、生きているうちにお墓を建てることを検討してみてください。
場所やデザインを選べる
墓地の場所やお墓のデザインを前もって自由に選べるのも、生前墓のメリットの一つです。お墓を決めていなかった場合、残された家族がお墓に関する決定をすることになります。事前に希望を伝えていても、その通りにお墓が建ててもらえるとは限りません。
お墓に関するこだわりがある場合は、生前墓を選ぶことをおすすめします。生前墓を決める際は、予算やお墓の大きさ、墓石のデザインなどを検討しましょう。
家族の負担を軽減できる
生前墓のメリットとして、家族の負担を軽減できる点が挙げられます。亡くなった後にお墓を建てる場合、残された遺族にお墓の場所探しや費用などの負担がかかってしまいます。
万が一のことが起こったとき、決めなければいけないことややるべきことに追われるのは、残された家族にとってかなり辛い状況です。前もってお墓を準備しておき、遺族の精神的な負担や不安を軽減しましょう。
金銭面の見当がつきやすくなる
前もって生前墓を検討しておくことで、費用が明確化するというメリットもあります。お墓を建てるには、100万円以上のまとまったお金が必要になりますが、お墓のデザインや墓地によって値段は大きく異なります。
生前墓を検討することで、どのくらいの費用を準備しておけばよいかが分かり、お金に関する不安を軽減できるでしょう。お墓にかかる金額を明確にすることで、遺族に残せる遺産や、この先使える生活費などの見当もつきやすくなります。
生前墓を用意するデメリット
先述した通り生前墓にはさまざまなメリットがある一方で、デメリットもいくつか存在します。ここからは生前墓のデメリットを解説していきます。
墓地管理費が発生する
生前墓を建てるデメリットに、墓地管理費が発生する点が挙げられます。墓地管理費とは、お寺や霊園に墓地を管理してもらうために必要となる費用のことです。
お墓に遺骨が入っていない場合でも、墓地管理費を支払うことになるのが一般的です。費用は寺院や霊園によって異なりますが、年間数千円から数万円ほどかかるため、金銭的な負担がかかってしまいます。
場所に制約が出ることがある
生前墓の場合、お墓を建てる場所に制約が出る可能性があることを覚えておきましょう。例えば、市区町村などが運営している公営霊園の場合、遺骨を所持していることが墓地の申し込み条件になっていることが多いです。つまり、公営霊園だと生前墓を受け付けてもらえない可能性があるのです。
ただし、近年は生前墓の受付を行っている公営霊園も増加してきています。また、寺院墓地や民間霊園であれば、生前墓を申し込める場所がほとんどです。墓地選びの際は、生前墓の申し込みを受け付けているかしっかり確認しましょう。
定期的なメンテナンスが必要
お墓をメンテナンスしなくてはいけないのも、生前墓のデメリットです。遺骨がまだ入っていない状態でも、こまめにお墓の掃除やお墓参りを行う必要があります。仏教では、生前墓にお墓参りをすることで徳が積まれていくと考えられているため、定期的にお墓参りを行うようにしましょう。
生前墓を用意する際の注意点
生前墓は一般的なお墓とは異なる形式のお墓であるため、建てる際には注意するべき点があります。ここからは、生前墓を建てる際の注意点を解説するため、参考にしてみてください。
ローンが残った場合は遺族や保証人が支払う必要がある
生前墓をローンで購入しようと考えている場合、支払いに関して注意が必要です。ローンで生前墓を購入後、費用を完済する前に亡くなった場合、残ったローンの支払いは遺族や保証人に残ります。残ったローンは債務控除の対象にはならないため、ローンでの支払いを考えている方は注意しましょう。
永代供養墓は遺族が混乱する可能性がある
生前墓を永代供養墓にしようと考えている場合も、注意が必要です。永代供養墓は、個別のお墓ではなく他の人の遺骨と共に弔われる形式のお墓です。
永代供養墓を選んだ場合、合祀された後「個別にお参りができない」「手を合わせる場所が分からない」と遺族が混乱する恐れがあります。永代供養墓を検討している場合は、きちんと家族にその旨を伝えておきましょう。
独断で進めるとトラブルになる可能性がある
家族や親族などに相談せず、独断で生前墓を建てると、のちのちトラブルになる可能性があります。すでに先祖代々のお墓がある場合、自分ひとりの問題ではなくなるからです。
また、生前墓の購入に反対されたくないからと誰にも伝えていない場合、家族や親族の誰もが生前墓の存在を知らないまま、お墓が放置されてしまうことも考えられます。一定期間放置されたお墓は『無縁仏』とみなされ、最終的に遺骨は合祀墓に移されてしまいます。
これでは、せっかく生前墓を建てた意味がなくなってしまうことはもちろんのこと、霊園や寺院墓地にも迷惑をかけてしまうでしょう。
生前墓を検討する際には家族や親族と話し合いをしておくことをおすすめします。
生前墓を準備する流れ
ここからは、生前墓を準備する方法・流れについて解説していきます。「生前墓を選びたいけれど、どのように手続きを進めればよいか分からない」と迷っている方は、目を通してみてください。
墓地や霊園に資料請求をする
まずは、生前墓を受け付けている墓地や霊園へ資料請求を行いましょう。その際、宗教や宗派に指定はあるかの確認や、石材店の選定なども同時に行います。
資料請求は、公式サイトや電話などから可能です。基本的に無料で行えるため、気になっている霊園や墓地の資料を請求しておきましょう。
現地を見学する
資料請求をして気になった墓地や霊園があったら、実際に現地を訪れます。施設の充実度やお墓の様子、敷地内の整備状況や、購入したい場所の雰囲気などを確認しておきましょう。不安なことや分からないことがあれば、その場で施設の方へ確認することをおすすめします。
申し込みを行う
生前墓を建てたい場所が決まったら、申し込みを行います。生前墓の予約・契約には、住民票などの資料の提出や、永代使用料・管理費などの支払いが必要です。申し込みが終わると「永代使用承認証」が発行され、生前墓の建築が可能になります。
墓石を建ててもらう
永代使用承認証が発行されたら、石材店にお墓を建ててもらいます。墓石の種類やデザイン、彫刻したい文字などを打ち合わせして見積もりをもらい、納得できたら契約を行います。お墓が完成するまでの期間はデザインによって異なりますが、一般的には2〜3ヶ月程度で完成します。
生前墓の種類と費用相場
生前墓にはさまざまな種類があるため、どの形式のお墓を建てるか迷う方もいるでしょう。ここからは、生前墓の種類や費用をご紹介します。
継承墓
継承墓とは、子供や孫に引き継いでいくお墓です。相場は150〜250万円ほどで、人口が多い都市部になるほど費用が高額になる傾向にあります。また、5千円〜1万5千円ほどの年間管理費も発生します。
永代供養墓
永代供養墓は、合祀タイプか個別供養がついているかで相場が異なります。合祀タイプの永代供養墓は、他の人の遺骨と共に大きな供養塔などに埋葬されるのが特徴です。費用相場は一人あたり10〜30万円ほどで、管理費はかかりません。
個別供養がついている永代供養墓は、契約期間中は個別のお墓にお墓参りができ、個別供養の期間が過ぎたら合祀される形式のお墓です。相場は100〜200万円ほどで、管理費がかかることも多いです。
納骨堂
納骨堂とは、遺骨が納められた骨壷を専用スペース内に収納するお墓のことです。骨壷を納める個別の空間があるロッカー式や、骨壷が運ばれてくる自動搬送式などさまざまなタイプがあり、相場は50〜150万円ほどです。施設によって管理費の有無は異なるため、納骨堂への埋葬を検討している方は前もって確認しておきましょう。
樹木葬
樹木葬とは、樹木の周りに遺骨を埋葬するタイプのお墓です。個別に割り当てられた区画に樹木を植えるものや、大木の周辺に他の人の遺骨と共に埋葬するものなど、さまざまな形式のものがあります。相場は30〜150万円ほどで、個別区画を設けるものは金額が高くなります。
メリットやデメリットを押さえ、生前墓を建てるか検討しましょう
この記事のまとめ
- 生前墓とは、自分が存命のうちに建てておくお墓のこと
- 生前墓には、節税ができる・場所やデザインを前もって選べる・家族の負担を軽減できるといったメリットがある
- 墓地管理費や定期的なメンテナンスが必要だったり、墓地の場所が限られたりといったデメリットもある
- 生前墓をローンで購入する際や、永代供養墓を選ぶときは注意が必要
- 生前墓を検討している場合、前もって家族と話し合いをしておく
- 生前墓には継承墓・永代供養墓・納骨堂・樹木葬などの種類があり、それぞれ費用が異なる
生前墓とは、亡くなった後ではなく生きているうちに建てておくお墓です。節税対策になる、家族の負担を軽減できるといったメリットがある一方、定期的なメンテナンスや墓地管理費が必要になるというデメリットもあります。本記事で解説したメリット・デメリットや注意点を参考にしながら、生前墓を検討してみてください。