仏教の宗派とは?それぞれの違いをわかりやすく解説

仏教にはさまざまな宗派があり、考え方や修行法などが異なります。本記事では、多様な宗派の中から、主要な宗派の13宗を紹介します。「奈良時代から現存する宗派」「平安時代に伝わった宗派」「鎌倉時代に新しく生まれた宗派」に分類しているため、参考にしてみてください。
仏教の宗派とは

仏教の宗派とは、インドでブッダが開いた仏教から、教義や儀式などの違いで派生した分派のことです。
現代の日本では、主に13宗56派に分類されています。13宗56派とは、1940年に施行された「宗教団体法」以前から存在し、認知されていた宗派を指す言葉です。
戦後の1951年には「宗教法人法」が施行され、宗教法人の設立には文化庁や都道府県知事など所轄庁の認証を受けることが必要となりました。これにより、従来の宗派に限らず、条件を満たせば新たな宗教団体も法人格を得ることができるようになっています。
現在は17万8千以上の宗教法人があるとされており、仏教の中でも13宗56派以外の新しい宗派が増えています。
本記事では古くから存在する主な宗派13宗を「奈良時代から現存する宗派」「平安時代に伝わった宗派」「鎌倉時代に新しく生まれた宗派」の三つに分類して特徴や違いを紹介します。
奈良時代から現存する宗派

奈良時代は仏教が日本で定着していった時代です。国家の庇護を受けた「南都六宗」は、仏教の教義や学問の研究を重視する宗派であったため、民衆への布教はあまり行われていませんでした。
現代まで残っているのは「法相宗」「華厳宗」「律宗」の3宗派のみです。この三つの宗派の特徴を紹介します。
法相宗(ほっそうしゅう・ほうそうしゅう)
法相宗は、奈良時代に唐から伝来し、「唯識教学(ゆいしきしょうがく)」を基盤とした南都六宗の宗派のひとつです。唯識教学とは、「わたしたちが認識できる世界は、全て自分の心が生み出したものである」と説く教えを指します。
7世紀始めに玄奘三蔵がインドで仏教教義の習得に勤め、特に「唯識(一切の物事は全て心の現れとする考え)」という教えを研究しました。そして、唐に帰国してからは仏教の経典を翻訳することに注力したのです。
唯識の教えを広めることを託された一番弟子の慈恩大師が、玄奘三蔵から学んだ教えをまとめ上げたことが、法相宗の始まりです。
華厳宗(けごんしゅう)
華厳宗は唐の地論宗を基にした、南都六宗のひとつです。地論宗とは、世親が解説した「十地経論」を原点とし唐で興りました。華厳宗は宗祖の系譜が存在しており、日本では第3祖法蔵の門下である審祥により伝えられたとされています。
日本では、審祥が東大寺で講義をしていたことが、華厳宗が本格的に広まったきっかけです。その後、庶民にあまり伝わらず、一時期は勢いが弱まりましたが、鎌倉時代に、高僧の高弁や凝然の働きで再び勢いが強まったとされています。
大本山は、奈良時代に聖武天皇により建立された東大寺です。本尊は「毘盧舎那仏(びるしゃなぶつ)」で奈良の大仏様として親しまれています。
律宗(りっしゅう)
律宗は、戒律を重んじる宗派です。戒律とは、僧侶として守るべき規範や規則などを定めたもので、悟りへの道はこれらを守ることとされています。
大乗仏教の戒律の「三聚浄戒(さんじゅじょうかい)」を重視しており、摂律儀戒(全ての悪を断つ)・摂善法戒(全ての善を行う)・摂衆生戒(全ての衆生を利益する)を菩薩が守るべき規範とされているのです。
律宗は、唐の高僧である鑑真によって日本に伝えられました。鑑真は、日本に正式な戒律を伝えるために渡航を決意し、6度目の挑戦となる753年の航海で来日しました。たび重なる失敗と失明という困難を乗り越え、日本の仏教界に戒律を根づかせたのです。
来日後は、僧侶に戒を授ける活動を行い、奈良に唐招提寺を建立して律宗の拠点としました。現在も唐招提寺は、律宗の総本山として鑑真の教えと功績を伝え続けています。
平安時代に伝わった宗派

奈良時代の仏教が学問を重視していたのに対し、平安時代は実務的な仏教へ変化していきました。その中で新たな教えを唐から学んできた僧侶によって広まった宗派が、「真言宗」と「天台宗」です。それぞれの特徴を紹介します。
真言宗(しんごんしゅう)
真言宗は、平安時代初期に空海(弘法大師)により開かれた宗派です。密教を基盤としており、「即身成仏(そくしんじょうぶつ)」の教えを重視しています。即身成仏とは、現世の肉体のまま仏になることを意味するものです。
仏教では一般的に「輪廻転生を繰り返し、長い修行を経て仏になる」という考え方がありますが、真言宗はそれらとは違い、生きたまま仏になるとされています。
また、真言宗は「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」を唱えますが、これは空海に帰依するという意味です。
天台宗(てんだいしゅう)
比叡山延暦寺を拠点とした天台宗は、唐の僧侶、智顗(天台大師)の教えを基盤とした日本仏教の宗派のひとつです。最澄(伝教大師)により、平安時代初期に日本に伝えられました。法華経に重きを置きながらも、「密・禅・戒」の三宗の要素も取り入れています。
総合仏教として確立され、法然・親鸞・日蓮などの宗祖たちも学んだことで、比叡山は仏教の母山と呼ばれています。さまざまな教えが融合されているため、寺院によりご本尊が異なり、「釈迦如来」「大日如来」「阿弥陀如来」「薬師如来」なども祀られているのが特徴です。
なお、かつては他宗派との間で教義上の対立や批判も見られましたが、それぞれが独自の宗学体系を発展させ、日本仏教の多様性に大きく寄与しています。
鎌倉時代に新しく生まれた宗派

激しく社会情勢が変化する鎌倉時代は、人々が精神的な救いを求めるようになりました。それに伴い、法然・親鸞・栄西・道元というリーダーをはじめ、日蓮という新たなリーダーも登場します。
これらの開祖は、最澄が開いた比叡山延暦寺でさまざまな教えを学び、全てを習得しました。しかし、一般に向けては一つだけに専念するよう布教したのです。
この鎌倉時代に生まれた宗派は、「浄土系」「禅宗系」「法華系」の三つに分類されます。さらに、その中でも宗派が分かれるため、それぞれの特徴を紹介します。
浄土系
浄土系とは、「阿弥陀如来」を信仰しており、念仏を唱えることによって「極楽浄土への往生を願う」という教えのことです。鎌倉時代に広まった宗派で、特に「浄土宗」や「浄土真宗」が代表的ですが、ほかに「時宗」「融通念仏宗」などもあります。
浄土宗(じょうどしゅう)
浄土宗は、法然を宗祖とした宗派です。「知恩院」を総本山としており、「阿弥陀如来」の救いを信じています。法然の著書「選択本願念仏集」では、「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」と念仏を唱えることで極楽浄土への往生を願うという教義を伝えています。
当時の仏教では、難しい教えや厳しい修行を行う宗派が一般的だったため、庶民には手が届きにくかったのですが、浄土宗は分かりやすい教えを説いたことで、多くの人々に広く伝わりました。
戒律についても、仏教全般と同様に「五戒(不殺生・不偸盗・不邪淫・不妄語・不飲酒)」などを重んじていますが、修行の厳格さよりも念仏の信仰を中心に据えている点が特徴的です。また、葬儀でもほかの宗派と同様に、故人に対して「般若心経」を唱えます。
浄土真宗(じょうどしんしゅう)
浄土真宗は、法然の弟子である親鸞が浄土宗から派生して開いた宗派です。浄土真宗は後に、「浄土真宗本願寺派」と「真宗大谷派」にわかれます。
浄土真宗本願寺派の本山は「龍谷山本願寺」で、「お西さん」と呼ばれることもあります。一方、真宗大谷派の本山は「真宗本廟」です。「お東さん」と呼ばれることもあります。
浄土真宗本願寺派と真宗大谷派は、いずれも親鸞の教えを受け継いでいますが、教義の解釈に違いがあります。本願寺派は、阿弥陀仏の本願を信じた瞬間に救いが定まるという立場を強調し、信心の確立を重視します。一方、大谷派は、自身の煩悩や迷いに目を向けながら、他力の救いに目覚めていく姿勢を重んじる傾向があります。
また、浄土真宗には戒律がなく、僧侶は結婚も可能で髪型も自由です。「信心」で往生を説いているため、修行を行うことで成仏できるという考えの般若心経は、浄土真宗の葬儀では唱えません。
時宗(じしゅう)
時宗は、開祖を一遍上人とした浄土系の宗派です。全国の寺で修業をし、弟子と一緒に各地を巡って念仏の大切さを伝えました。定地を持たなかったため、遊行上人(ゆぎょうしょうにん)とも呼ばれています。
総本山は「清浄光寺(しょうじょうこうじ)」で、一遍上人が遊行上人とも呼ばれていたことから、「遊行寺(ゆぎょうじ)」の名でも親しまれています。
時宗の教えは信仰の有無に関わらず、「南無阿弥陀仏」を唱えれば極楽浄土に行けるというものです。また、念仏を唱える際は執着から離れることが大切とされています。
融通念仏宗(ゆうずうねんぶつしゅう)
融通念仏宗は、天台宗で修業を積んだ聖応大師、良忍によって開かれた宗派です。日本で生まれた仏教で、「融通念仏によって、自他ともに救われる」という教えを持っています。日本仏教13宗の中で6番目に成立し、浄土系では最も歴史が長い宗派です。
総本山は「大念佛寺(だいねんぶつじ)」で、本堂は総けやき造りとなっており、国の登録有形文化財に指定されています。経典は「華厳経」「法華経」「阿弥陀経」などです。葬儀でも故人が迷わず浄土へ行けるように、参列者も「南無阿弥陀仏」を唱えます。
禅宗系
禅宗系とは、座禅の修行を重視している宗派を指します。日本では、「臨済宗」「曹洞宗」「黄檗宗」の三つの宗派のことです。
「禅」とは「禅定(禅譲)」とも呼ばれ、雑念を持たず心を集中させる瞑想をすることで真理を悟ります。また、特定の経典や文字は用いず、「以心伝心」で心から心へ伝えるのが特徴です。
臨済宗(りんざいしゅう)
臨済宗は、開祖が唐の臨済義玄(りんざいぎげん)で、中国禅宗五家のひとつです。鎌倉時代に栄西によって日本に伝えられました。宋に渡来した栄西は、臨済宗黄龍派の印可を受け、日本最初の禅道場とされる聖福寺を博多に建立しています。
臨済宗は「妙心寺派」「建長寺派」など、14もの宗派にわかれており、京都や神奈川、山梨や静岡など多くの寺院があるのが特徴です。浄土宗や浄土真宗などとは異なり、臨済宗は座禅で悟りを得る「自力」を重視し、ひたすら座禅をすることで純粋な人間性を悟り、浄土に繫がるとされています。
曹洞宗(そうとうしゅう)
曹洞宗は、臨済宗と同様、唐の禅宗五家のひとつで、唐の洞山良价(とうざんりょうかい)が開祖です。唐から正伝の仏法を道元禅師(どうげんぜんじ)が日本に伝え、瑩山善治(けいざんぜんじ)によって全国に広められたことで、曹洞宗の礎が築かれました。
臨済宗は「臨済将軍曹洞士民」と呼ばれ、鎌倉幕府や室町幕府といった武家政権と結びつきが強かったのに対し、曹洞宗は武士や民衆に広まっていったという違いがあります。
道元は宋から帰国後、「興聖寺」を建立し、のちに「永平寺」を開いて曹洞宗を確立しており、「只管打坐(しかんたざ)」という座禅こそが仏の姿であること、「修証一如(しゅしょういちにょ)」という修行と悟りが一体とされる教えを説いています。
黄檗宗(おうばくしゅう)
黄檗宗は、開祖が隠元流儀(いんげんりゅうき)禅師で、本山は「黄檗山萬福寺」です。「弘戒法儀(ぐかいほうぎ)」「黄檗清規(おうばくしんぎ)」などを書き記すなどして、日本の禅宗に功績を残しています。
「唯心の浄土、己身の弥陀」を教えの核とし、仏や浄土は心の中に存在しており、これは、阿弥陀仏や極楽浄土を求めるのであれば自身の心に仏性を見出すのが大切ということです。
臨済宗と共通する部分が多いですが、黄檗宗は「念仏禅」を重視しており、自己究明という哲学的な面も持ち合わせています。
法華系
法華系とは、「法華経」を最も重要な経典としている宗派の総称のことです。法華経は、「一切衆生悉有仏性(いっさいしゅじょうしつうぶっしょう)」という、全ての生き物に仏になる可能性が備わっており、誰もが成仏できるという思想を説いています。ここでは、特に代表的な日蓮宗について紹介します。
日蓮宗(にちれんしゅう)
日蓮宗は、日蓮正人(にちれんしょうにん)が開いた宗派です。釈尊の教えから、「妙法蓮華経(法華経)」を経典としました。比叡山で学んだ日蓮正人は、天台宗が当時さまざまな経典を同等に扱っていたため、法華経こそが釈尊の教えと考え、独立して日蓮宗を開きました。
日蓮宗では、「釈迦牟尼仏」「法華経」「日蓮聖人」の三つを信仰の中心とし、これらを「三宝尊」として仏壇に安置します。三宝尊はそれぞれ、仏・法・僧の三宝を象徴する存在とされています。「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」を唱えることを大切にし、社会全体が平和であることを願っている宗派です。
仏教の教えや修行方法の宗派による違いを知っておきましょう

日本の仏教はさまざまな宗派があります。それぞれ開祖や教え、修行法なども異なるため、違いを知ることは大切です。仏事などの際に、役立ててみてください。

2006年に葬儀の仕事をスタート。「安定している業界だから」と飛び込んだが、働くうちに、お客さまの大切なセレモニーをサポートする仕事へのやりがいを強く感じるように。以来、年間100件以上の葬儀に携わる。長年の経験を活かし、「東京博善のお葬式」葬祭プランナーに着任。2023年2月代表取締役へ就任。