歯がない人の食事はどうする?おすすめの食材や料理などを紹介

歯がない人の食事の用意は、どうしたらよいのか悩む方も多いでしょう。高齢になると、歯がないことによって食事内容や嗜好が変化する場合や、今までのように満足のいく食事が摂れずに食欲が低下することもあります。しかし、歯がない人でも工夫次第で満足できる食事を摂ることは可能です。本記事では、歯のない人におすすめの食材や料理などを紹介します。
歯がない人も食べやすい食事とは

歯がないことで食べられない食材が増え、食事自体をストレスに感じてしまう人もいます。しかし、歯がなくても食べられる食事を用意すれば、食事に対するストレスを減らせるでしょう。食事に対するストレスが減ると、食べたいという意欲もわいてきます。
では、歯のない人でも食べやすい食事とはどのようなものなのでしょうか。詳しく解説していきます。
飲み込みやすい食事
食事を飲み込む際、通常は舌骨(舌の付け根と喉の入り口との間に位置する骨)が上がることで飲み込まれます。しかし、歯がない人は舌骨がうまく上がらないため、飲み込みにくくなります。このように、歯のない人は飲み込む機能が低下している可能性が高いため、飲み込みやすい食事にしてあげることも重要です。
※舌骨は、入れ歯を入れることで上がるようになります。歯がないことで飲み込みにくい場合、入れ歯の使用も検討してみましょう。
食材をミキサーにかけてペースト状にしたり、ミキサーにかけた食材にとろみをつけたりして粘度を調整した食事は、歯のない人でも飲み込みやすい食事です。これらは、介護が必要な高齢者の食事にも適しているため、食べる人の歯の様子を確認して食事形態を決めるとよいでしょう。
注意点としては、ミキサーにかけた時に水分が多く液体状になってしまうと、誤嚥のリスクが高まります。粘度がゆるいと感じたら、とろみ剤を使って適度な粘度をつけましょう。
軟らかい食事
歯がない人の食事は、軟らかい食事であることが大前提です。通常であれば咀嚼して歯で細かくするような食材も、あらかじめ軟らかく調理して、歯茎で潰せる程度の軟らかさにしておくと食べやすくなります。
また、歯がなくても舌と上あごで押しつぶしてから食べると咀嚼ができるため、一口大に切ってから軟らかくなるまで加熱し、舌と上あごで潰せる程度の軟らかさに仕上げると食べやすくなります。
歯がない人におすすめの食材

歯のない人は、咀嚼が十分に行われないまま飲み込むため、胃や腸の負担が大きくなります。消化不良などで体に悪影響を及ぼすこともあるため、消化器官に負担をかけにくい食材を選ぶことも食事を考える際の大切なポイントです。ここでは、歯のない人におすすめの食材を紹介します。
豆腐
豆腐は軟らかく、あまり噛まなくても飲み込めるため、歯がない人でも食べやすい食材です。特に、絹豆腐はサラッとした舌触りで、粒が残ることもありません。原料である大豆は、良質な植物性たんぱく質で、高齢者が不足しがちなたんぱく質の補給にもなります。
かぼちゃ、にんじん、トマト
野菜は積極的に摂りたい食材ですが、ものによっては固くて食べにくいものや食物繊維が多く飲み込みにくいものもあります。その中でも、かぼちゃ、にんじん、トマトは歯のない人にも比較的食べやすい野菜です。
皮を剥き、茹でたり蒸したり軟らかく調理して食べるようにしましょう。ミキサーにかけてスープにしても、食べやすくなります。
卵
卵も栄養価が高く、おすすめです。ただし、調理方法や選ぶ料理には注意が必要です。温泉卵や茶碗蒸し、軟らかいオムレツや卵焼きなどは歯がない人でも、舌で押し潰しながら食べられます。一方、茹で卵はパサパサして口の中の水分が奪われ、飲み込みにくい料理です。誤嚥のリスクがあるため、茹で卵は避けましょう。
白身魚
白身魚の中でも脂肪が多く軟らかいものがおすすめです。脂肪分が少ない魚はパサつきやすく、喉に詰まったり飲み込みにくかったりする可能性があります。カレイやサーモン、タラなどの白身魚を選びましょう。
また、白身魚を食べる際にはあんかけ料理もおすすめです。とろみのついたあんをかけることで口の中で食材がまとまり、飲み込みやすくなります。歯がない人にも食べやすい料理ですので、試してみてください。
ゼリー、プリン
ゼリーやプリンは喉ごしがよく、噛む必要もないため歯がない人でも食べやすいデザートです。食事の後のデザートとしてだけでなく、食欲がない時や食事量が少ない時のエネルギー補給にも役立つため、活用してみてください。
歯がない人におすすめの料理と作り方

ここでは、歯がない人でも食べやすい料理とその作り方を紹介します。栄養バランスも考慮し、さまざまな食べやすい食材を使用していますので参考にしてみてください。
鶏肉とえのきの豆腐ハンバーグ
材料(1人分)
- 鶏ひき肉 60g
- 絹ごし豆腐 20g
- えのきたけ 40g
- サラダ油 小さじ1/2
- (A)パン粉 大さじ2
- (A)にんにく 1g
- (A)コンソメ 小さじ1/6
- (A)塩こしょう 少々
- (B)中濃ソース 小さじ1
- (B)ケチャップ 小さじ1
作り方
- えのきたけをみじん切りにする
- ボウルに鶏ひき肉と豆腐、えのきたけ、(A)を入れ、粘りが出るまで混ぜる
- タネを成形する
- フライパンにサラダ油を熱し、タネを並べて3分ほど焼く
- 焼き色がついたら裏返し、蓋をして5分ほど蒸し焼きにする
- (B)をフライパンに入れて火にかけ、軽くふつふつとしたら火を止める
- 器に盛りつけ、(6)のソースをかけたら完成
鶏ミンチは軟らかく、繊維も細かく粉砕されているため歯がない人でも食べやすいです。豆腐を加えることでふわふわの食感になり、栄養価もアップするためおすすめです。飲み込みに不安のある方は、ソースに片栗粉で少しとろみをつけると、より食べやすくなります。
豆腐のかに玉あんかけ
材料(1人分)
- 絹ごし豆腐 75g
- 卵 2個
- かにかまぼこ 15g
- 油 4g
- ごま油 1g
- 小ねぎ 3g
- 塩こしょう 少々
- (A)片栗粉 小さじ1/3
- (A)鶏ガラスープの素 小さじ1/3
- (A)水 40ml
作り方
- かにかまぼこは手でほぐしておく
- 豆腐はキッチンペーパーで包んで耐熱皿にのせ、電子レンジで2分加熱する
- ボウルに卵、かにかまぼこ、塩こしょうを入れて混ぜる
- フライパンにサラダ油を熱し、(3)を流し入れてヘラで混ぜながら加熱する
- 卵が半熟状態になったら、豆腐の上にかける
- フライパンをさっと洗い、(A)を入れ、かき混ぜながら弱火で熱す
- とろみがついたら火を消し、ごま油を加える
- (5)に(7)をかけたら完成
豆腐にかに玉あんをかけることで、たんぱく質をしっかり摂取できます。栄養バランスもよく、歯がない人でも食べやすいためおすすめです。
かぼちゃのヨーグルトサラダ
材料(1人分)
- かぼちゃ 70g
- プレーンヨーグルト 大さじ1
- マヨネーズ 大さじ1/2
- 塩こしょう 適量
作り方
- かぼちゃは皮を削ぎ落して一口大に切り、耐熱ボウルに入れる
- ふんわりとラップをし、電子レンジで3分間加熱する
- 軟らかくなったら取り出し、熱いうちに潰す
- ヨーグルトとマヨネーズを加えて、しっかりと混ぜ合わせたら完成
軟らかくしたかぼちゃをヨーグルトとマヨネーズで和えた爽やかなデザート感覚で食べられるサラダです。マヨネーズの油分が食材をまとまりやすくしてくれるため、歯がない人でも食べやすいメニューといえます。ビタミンCの豊富なかぼちゃは免疫力アップにも効果的で、寒い季節には特におすすめです。
丸ごとトマトスープ
材料(1人分)
- トマト 120g
- コンソメスープ 200ml
- 塩こしょう 少々
- 粉チーズ 小さじ1/2
作り方
- トマトはヘタをくりぬき、沸騰したお湯に丸ごと入れて、30秒ほど茹で、すぐに冷水にとって皮を剥く
- 鍋にコンソメスープと(1)を入れて火にかけ、煮立ったら弱火にして20分ほど煮る
- 塩こしょうで味を整える
- 器に盛りつけ、仕上げに粉チーズをのせたら完成
トマトは皮を湯剥きすると、歯がない人でも食べやすくなります。皮を剥いたトマトをコンソメスープでしっかり煮込むと、味がよく染みて美味しいです。粉チーズを加えることで、イタリアン風になり、少し違った味わいを楽しめます。
オレンジババロア
材料(1人分)
- 豆乳 60ml
- 砂糖 大さじ1
- ヨーグルト 50g
- オレンジジュース 50ml
- 粉ゼラチン 2g
- 水 大さじ2/3
作り方
- ボウルに水とゼラチンを振り入れて5分ほど置き、ゼラチンをふやかしておく
- 鍋に豆乳、砂糖を入れ、弱火で熱しながら混ぜる
- 砂糖が溶けたらヨーグルト、オレンジジュースを加える
- 煮立つ直前で火を消して(1)のゼラチンを加え、ゼラチンが溶けるまでやさしく混ぜる
- 器に流し入れ、粗熱が取れたら冷蔵庫で2時間ほど冷やし固めたら完成
歯がない人でも、工夫次第でデザートを楽しむこともできます。ババロアは、口当たりもよくすっきりと食べやすいデザートです。ヨーグルトや豆乳でたんぱく質の補給も可能なため、食欲がない時などにもおすすめです。
歯がない人の食事の注意点

歯がない人が食事を摂る場合、食材や食べ物の固さなど食事の内容以外にも注意したい点がいくつかあります。ここでは、歯がない人の食事の注意点を解説します。
食べることに集中する
ほかのことに意識が向いていたり、ぼーっとしていて食べることに集中できていなかったりすると、誤嚥のリスクが高まります。食事の際は、食べることに意識を向けることが大切です。テレビを見ながら、本を読みながらなど「ながら食べ」は避け、料理を見て、何を食べているのかを認識しながら食べる環境を整えましょう。
正しい姿勢で食べる
誤嚥を防いで安全に飲み込むためには、正しい姿勢で食べることも大切です。理想的な食事姿勢は、椅子に深く腰掛けた状態で足が床にしっかりついていること。背もたれにもたれず、上半身は軽く前かがみであごを少し引いた姿勢です。
このような姿勢で食事を摂ることが可能であれば、ぜひ意識してみてください。歯がない人は飲み込みに不安がある場合が多いですが、姿勢を意識することで誤嚥のリスクを減らせます。
口腔内を清潔に保つ
高齢者は、唾液分泌量の減少や入れ歯の汚れなどが原因で歯周病のリスクが高くなります。歯周病は歯を失う原因になりますが、歯周病が悪化すると、全身の健康状態にも悪影響を及ぼします。歯がない人でも口内環境の更なる悪化を防ぐため、口腔内を清潔に保つ努力が必要です。
食事のあとには正しい方法で歯磨きを行い、歯垢をためないようにしましょう。また、必要に応じて歯間ブラシや口腔ケア用のウェットティッシュなどを使用し、食べ物が口腔内に残らないように注意しましょう。
歯がなくても食材や調理方法を工夫して、自分に合った食事を楽しみましょう

この記事のまとめ
- 歯がない人の食事は、軟らかく飲み込みやすい食事を意識して用意する
- 歯がない人には、豆腐や軟らかい野菜、卵、脂ののった白身魚、プリンやゼリーなどがおすすめ
- 食材は一口大に切ってから軟らかくなるまで加熱し、歯茎で潰せる軟らかさにする
- 食事の際は正しい姿勢で食べることに集中できる環境を整える
- 口腔ケアの重要性を理解し、常に口腔内を清潔に保つようにする
歯がない人も、食材選びや調理の工夫で食事を楽しむことが可能です。自分に合った食べられる食材を知り、栄養バランスも考慮した健康的で楽しい食生活を送りましょう。