更年期で痩せる人、太る人の違いは?対処法を知って心身の不調をケアしよう

女性は閉経が近付くにつれ、体にさまざまな変化が現れます。その一つに体型の変化があり、不思議なことに痩せる人もいれば、太る人もいるのです。その背景には、体質や生活習慣など複雑な原因が存在します。そこで本記事では、更年期に痩せる人と太る人の違いについて解説します。
更年期とは

更年期とは、閉経を挟んだ前後10年間(45歳~55歳頃)の期間のことです。この頃になると卵巣の機能が低下し、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が急激に減少します。それによってホルモンバランスが崩れ、心身ともにさまざまな不調が現れてきます。
更年期に現れる症状
更年期には、精神的な症状や身体的な症状など身体にさまざまな不調が現れます。その中でも、体調不良によって日常生活に支障をきたすような場合を「更年期障害」といいます。更年期障害は閉経前後の期間しばらくの間続くため、上手く乗り越えていかなければなりません。
更年期障害の主な症状
- 身体に起こる症状:めまい、疲労感、動悸、胸が締め付けられる、頭痛、肩こり、ホットフラッシュ(突然の熱感や発汗)、腰痛、関節の痛み、冷え性など
- 心に起こる症状:睡眠障害、意欲が低下する、イライラする、情緒が不安定、不安感など
更年期障害は、身体的・精神的・社会的な要因が複雑に影響することで症状を重くします。規則正しい生活習慣やストレスを減らす生活を日頃から心がけることで、症状の軽減が期待できます。それでも重い症状が続く場合は他の病気の可能性もあるため、医療機関の受診をおすすめします。
更年期に痩せる人の原因

ここでは、更年期に痩せてしまう人の原因を解説します。
自律神経の乱れによる食欲低下
更年期に起こる自律神経の乱れは、食欲に大きな影響を与えます。自律神経は胃腸の働きに強く関与しており、自律神経が乱れることで食欲不振を引き起こす場合があります。
そのうちの一つが、胃酸の過剰分泌です。胃酸が過剰に分泌されることで胃に負担がかかり、胃痛や胃もたれが起こります。すると、食事を摂れなくなり、体重の減少につながるのです。
女性ホルモンの減少
閉経によって減少するエストロゲンには、胃の粘膜を保護する作用があります。エストロゲン分泌量の減少によって、胃粘膜を保護する働きが弱まり、胃が傷つきやすくなる場合があります。食欲不振が起こることで今までのように食事が摂れなくなり、結果、更年期に痩せてしまうのです。
更年期に太る人の原因

更年期に痩せる人がいる一方、太る人も多くいます。ここでは、更年期に太る人の原因について解説します。
基礎代謝が低下する
基礎代謝は、人が生きていくために最低限必要なエネルギー代謝のことです。寝ているときにも消費されるエネルギーであるため、基礎代謝が高いほど太りにくい体質といえます。
更年期になると、加齢とともに筋肉量が減少します。筋肉は体の中で最も基礎代謝によるエネルギーを消費しており、筋肉が減ってしまうと基礎代謝も低下してしまいます。
基礎代謝の低下によって1日に消費されるエネルギーが減ると、余ったエネルギーは脂肪として体に蓄積するため、更年期に太ってしまうのです。
女性ホルモンが減少する
更年期になると、女性ホルモンであるエストロゲンが急激に減少します。エストロゲンには、体重を減らす方向に働くいくつかの作用があります。
まず、脂質の代謝を促す働きによって、体内の余分な脂肪を分解し、肥満を防ぎます。次に、筋肉を維持するためにも働いています。それにより筋肉量の減少を防ぎ、基礎代謝による消費エネルギーを保っているのです。また、食欲を抑える働きもあるため、食べ過ぎを防ぐ効果があります。
このような作用のあるエストロゲンが減少し、その働きがなくなることで、更年期を迎えた女性は太りやすくなるのです。
自律神経の乱れによる過食傾向
自律神経は更年期障害のストレスによって交感神経が優位になり、副交感神経の働きが低下する場合が多くあります。この状態になると、身体は再び自律神経のバランスを整えようとして、副交感神経を優位にしようとする方向に働きます。
副交感神経は消化器系が活動すると働く性質があり、体は食べることで副交感神経を優位にしようとします。そのため食欲が増進し、過食が起こるのです。更年期の自律神経の乱れによる過食は、副交感神経を働かせるための一種の防衛反応となっています。そのような体の働きも、更年期に太る人の原因となっているのです。
痩せる人と太る人の違い

痩せる人も太る人も、更年期による女性ホルモンの減少や自律神経の乱れが関わっている点は同じです。それでも痩せる人と太る人の違いが生じるのは、生活習慣の違いによるところが大きくなってきます。
更年期障害の現れ方や程度にも個人差があるため、自律神経の乱れ一つとっても、過食傾向になる人もいれば食欲不振に陥る人もいます。どちらも更年期に入る前からの生活習慣が影響しているため、急に変えることは難しいかもしれません。しかし、なぜそのような症状が出るのかを理解し、改善を心がけることが大切です。
更年期に太る人の生活習慣

ここでは、更年期に太る人の生活習慣の特徴について解説します。
日常的に歩く機会が少ない
歩くことは有酸素運動につながり、健康維持に役立ちます。特別な運動をしなくても、20分以上歩くことで脂肪が燃焼し始め、ダイエットに効果的です。しかし、日常的に歩く機会が少なく、歩かない生活習慣を送っていると、圧倒的に運動量が少ない状態になってしまいます。
更年期による基礎代謝の低下に加え、消費エネルギーも少ないことで体はどんどん脂肪をため込んでいってしまいます。太る人は、特別な運動をしなくても、日々の生活の中で意識的に歩くことを心がけましょう。
間食・夜食が習慣化している
夜食や間食はカロリーの過剰摂取につながり、太りやすくなります。更年期を迎える年代では、子育てを終えて自由な時間も増えるため、間食や夜食の機会が増える傾向にあります。
たまに間食や夜食を摂ることは大きな問題にはなりませんが、これらが習慣化してしまうと、摂取カロリーの積み重ねが体重増加につながっていきます。特に、就寝前の夜食は脂肪に変わりやすいため、注意が必要です。
寝不足の状態が続いている
睡眠不足が続くと「グレリン」というホルモンの分泌が増加します。グレリンは胃から分泌されるホルモンで、食欲を増進させる作用があります。さらに、食欲を抑制する効果のあるホルモン「レプチン」は、睡眠中に分泌されます。つまり、寝不足の状態では食欲が増加し、食べ過ぎてしまうため太るのです。
更年期を迎えた大人でも、睡眠中には成長ホルモンが分泌されています。寝不足によって成長ホルモンの分泌が減ると、代謝が低下して太りやすくなるのです。
更年期に痩せる人の生活習慣

更年期に痩せる原因には自律神経の乱れや女性ホルモンの減少などがあります。ここでは、更年期に体重が減少し痩せる人の生活習慣の特徴を解説します。
必要以上にカロリー制限をしている
ダイエットや体型維持のために極端にカロリーを抑えた食生活を続けていると、栄養が偏ってしまいます。見た目が痩せていても、栄養が偏っていることで筋肉量や骨密度が低下しているため、フレイル(虚弱)や骨粗鬆症になる場合があります。
また、太ることへの不安や、体型維持のプレッシャーから「食べる=悪いこと」と感じてしまう人もいます。これは摂食障害の入り口であることもあり、心理的ストレスや栄養失調につながる可能性があります。
運動をやりすぎている
健康のためにと過度な運動を日常的に続けていると、筋肉や関節の疲労蓄積、免疫力の低下などに繋がるでしょう。とくに更年期は回復力も落ちているため、無理な運動は逆効果になることもあります。
ストレスに気づいていない
一見穏やかに過ごしているようでも、無自覚なストレスが長期的に自律神経に影響を与え、食欲不振や睡眠障害につながることもあります。ストレスの影響で痩せている場合は、心身のバランスが崩れているサインかもしれません。
適正体重を維持するポイント

更年期には痩せる人と太る人がおり、どちらがよいということはありません。太りすぎは生活習慣病のリスクが高くなり、痩せすぎると免疫力の低下や骨粗鬆症のリスクが高くなるなど、どちらも健康を害する場合があります。更年期を迎えたら、太りすぎず、痩せすぎず、適正体重を維持することが理想的です。
定期的な運動を取り入れる
運動は代謝を上げ、筋肉の減少を防ぐことにつながります。心肺機能の向上にもつながるため、更年期の健康維持にも役立ちます。定期的に運動を続けていると、自然と体重管理もできるため、太りにくくなります。更年期の運動習慣の有無は適正体重を維持するために大きな違いになるといえます。
規則正しい食生活
適正体重を維持するためには、規則正しい食生活を送ることがとても大切です。決まった時間に栄養バランスの整った適量の食事を摂ることで、健康な身体でいることができます。更年期に痩せる人も太る人も、規則正しい食生活を意識しましょう。
自分の体質を理解しておく
適正体重を維持するためには、自分が更年期に痩せる人なのか、太る人なのかを理解しておくことも大切です。これは単に食べる量の問題だけでなく、基礎代謝の違いやホルモンのバランス、筋肉量、消化吸収の効率など、生まれ持った体質が関係している場合があります。
例えば、もともと基礎代謝が高い人は、年齢を重ねても体重が増えにくく、逆に低い人は少しの食事でも体重が増えやすい傾向にあります。また、更年期には女性ホルモンの減少により自律神経が乱れやすくなり、その影響で体質が変化することもあります。
一方で、「たくさん食べているのに痩せてしまう」「少し食べただけで太る」といった現象が見られる場合、それは体質だけでなく、生活習慣の乱れやストレス、睡眠不足、運動不足といった後天的な要因が影響している可能性もあります。
大切なのは、自分の体質と生活習慣の両面を客観的に見直すことです。食事の内容や時間帯、運動習慣、睡眠の質などを振り返り、更年期に起こりやすい不調を予防・改善できるような生活を心がけましょう。
更年期で痩せる人と太る人の違いを知り、自分に合った生活を心がけましょう

この記事のまとめ
- 更年期とは、閉経の前後10年間ほどの期間を指し、その間に更年期障害といわれるさまざまな不調が現れる
- 更年期に痩せる人も太る人、どちらも女性ホルモンの減少や自律神経の乱れなど更年期特有の原因が影響している
- 更年期に痩せる人と太る人の大きな違いは、生活習慣によるところが大きい
- 更年期には痩せすぎても太りすぎても、健康を害する可能性があるため注意が必要
- 日頃から規則正しい生活習慣を意識し、無理なくストレスの少ない生活を心がける
更年期は誰にでもやってきます。しかし、その期間をどのように過ごすかは自分次第です。痩せる人も太る人も、健康に過ごすことを第一に考えながら体重管理していくことが大切です。日々の生活を楽しむことを忘れず、更年期を上手く乗り越えていきましょう。
武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科卒業。
管理栄養士として病院に勤務し、患者様の栄養管理及び栄養指導に従事。
糖尿病患者や腎臓病患者を中心に、病状の進行を防ぐための食事指導を行う。食事と健康、美容に関する記事を中心に管理栄養士ライターとして活動中。