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お金・お家のこと

老後に賃貸で暮らすのはあり?メリット・デメリットから選び方まで解説

老後に賃貸で暮らすのはあり?メリット・デメリットから選び方まで解説

最近では家を所有することにこだわらず、賃貸住宅に住み続けようと考える方も増えてきています。持ち家と賃貸についてはさまざまな考え方があるので、一概にどちらがよいとは言えません。本記事では、賃貸住宅で老後の生活を送るにあたって意識した方がよいことやメリット・デメリットについて解説します。

監修者 SUPERVISOR
公認会計士/税理士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士 岸田 康雄

平成28年度経済産業省中小企業省「事業継承ガイドライン」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施作研究調査会「事業継承支援専門部会」委員、東京中小企業診断士委員会「事業継承支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。中央青山監査法人にて会計監査及び財務デュー・デリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルネスマネジメント営業部、みずほ証券投資銀行部M&Aアドバイザリーグループ、メリルリンチ日本証券プリンパル・インベストメント部不動産投資グループなどに在籍し、中小企業の事業継承から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業継承とM&A業務を遂行した。現在は、相続税申告と相続・事業継承コンサルタント業務を提供している。

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「老後も賃貸で」という考え方

住宅は必ずしも所有しなければならないものではなくなりつつあります。近年増加している「老後も賃貸で」という考え方の裏側にはどのような事情があるのでしょうか。

家を買いたくない、買えない人が増えている

「一生のうちにマイホームを購入する」という価値観は、平成初期まで続いた不動産価格の上昇や、金融機関による積極的な融資、好景気による賃金上昇などによって、家を買うことのメリットが大きかった時代に生まれました。

住宅ローンという大きな借金を背負っても、将来的な賃金や不動産の資産価値が上昇するとなれば、積極的に購入しようとする人が増えたのも当然でしょう。

しかし、バブル経済崩壊後、日本はいわゆる「失われた30年」と呼ばれる長い景気低迷期に見舞われました。現在も衰退した産業構造が活況を取り戻したとは言いがたく、いまだ先行きも不透明なままです。

賃貸住宅に住み続けようと考える人たちが増えてきたのは、不動産価値の下落を目の当たりにしたことで、住宅の購入にあまり魅力を感じなくなったというのが理由の一つかもしれません。また、勤労世帯の平均給与は横ばいを続けており、経済的に住宅の購入が難しい人が増えているのも一因でしょう。

経済的に余裕がある人でも、10年先、20年先が楽観視できない中では、住宅ローンという大きな負債を背負うことに躊躇するのも不思議ではありません。このように、生涯賃貸派の中には、このような「家を買いたくない人」「家を買えない人」が含まれていると考えられます。

家の資産価値を疑問に思う人が増えている

持ち家の一番のメリットは「ローンを支払い終わったら不動産は自分のものになる」という点でしょう。家に資産としての価値を期待する人は少なくありません。

しかし、近年ではこの考え方にも疑問が呈されています。例えば、日本では木造建築物の法定耐用年数は、居住用が33年、業務用が22年と定められています。これはあくまで会計上の減価償却年数であり、住宅が使えなくなるというわけではありません。

しかし、中古住宅として売りに出す場合も、住宅部分は通常築20~25年程度で無価値と評価されます。このように、35年の住宅ローンを支払い終わる前に建物の価値はなくなってしまうのです。これでは、大きな負債を背負ってまで購入する価値があるかどうか疑問に思う人が出てきても不思議ではありません。

一方で、住宅自体の価値がなくなっても土地の価値がなくなることはありません。持ち家の価値は、住宅ではなく土地にあるといってもよいでしょう。ただし、日本の人口は減少傾向にあり、将来的には全国で「土地あまり」の状況が生じることが予想されます。

そのため、利便性の高い土地や都心の一等地を除けば、資産価値が低くなっていく可能性があります。

いずれにせよ、住宅バブル時代のような「不動産を買えば必ず資産価値が上がる」という不動産神話が崩れ去ったことは事実です。こうした状況下では、持ち家にこだわる人が減少するのも自然なことのように感じます。

家は相続や処分が大変

本来、家や土地は、子孫に受け継がれるものです。しかし、高度経済成長期における大都市への人口集中が進んだことで、日本では核家族世帯が増えました。

今や3世代同居をする家族は少なくなり、子供が独立後、親とは別の土地で暮らすことが増えました。その結果、親世代の持ち家を受け継いでも住まない人が出てきます。

売却や賃貸に出して利益が出る場合もありますが、家の資産価値によっては売ることも貸すこともできない状況もあり得ます。築年数が経っている場合は取り壊すことも考えなければならないでしょう。


このように、今や住宅は相続財産としてありがたい存在だけではなくなってきています。むしろ、メンテナンスや処分に費用がかさみ、残された子供世代の負担となる可能性もあります。それであれば、引き払うだけで済む賃貸住宅のほうがよいと考えるのは、理にかなっているといえます。

老後に賃貸で暮らすメリットとデメリット

「家は一生に一度の大きな買い物」といわれるように、住宅の購入は人生における大きな決断です。一方で、賃貸で暮らし続ける人生にも大きな覚悟が必要です。

「賃貸で生活しておけばよかった」「住宅を購入しておけばよかった」といった後悔をしないよう、自分に合っているのは賃貸か持ち家か慎重に判断しましょう。

ここでは老後に賃貸で暮らすメリット・デメリットを解説します。

メリット

近年、若者を中心にモノに対する価値観が変化してきているといわれています。モノを所有することに価値があった時代は終わり、必要な分だけを借りたり、他者と共有したりすればよいという価値観が広まりつつあります。では、住宅を「所有しないこと」にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

住宅ローンを背負わなくてすむ

近年は低金利が続いており、住宅ローンを組みやすくなっています。また、頭金ゼロのフルローンやそれに近い状態であっても融資が通る場合も多く、貯金がほとんどなくても家が購入できる時代になったといえるでしょう。

しかし、最長で35年の住宅ローンを組むということは、その後の人生のほとんどの期間にわたって返済を続けなければならないということを意味します。長い人生の中では、病気や失職などで返済が難しくなる状況が発生する可能性は否定できません。

実際、住宅ローンの破綻率は2%に達するといわれており、50人に1人が破綻状態に陥っています。60代以降も返済が続いた場合は、生活を圧迫する原因にもなるでしょう。

このように、長期の住宅ローンを組んでまで家を購入する行為は、実は非常にリスクがあるといえます。賃貸住宅に住んでいても家賃を滞納する可能性はゼロではありませんが、賃貸の場合は家賃の安い物件に引っ越すなどして毎月の負担額を調整することができます。

また、住宅ローンを組むことで人生ががんじがらめになると感じる人は、賃貸住宅に住み続けたほうが安心できるかもしれません。

建物のメンテナンス費用や設備の修理費がかからない

木造住宅は100年住むことができるといわれていますが、それは適切なメンテナンスを施した場合です。平均で15年ほどで外壁の塗り替えや屋根の張り替えが必要になるほか、定期的な基礎部分や構造体の検査、シロアリの対策などもしなければなりません。

また、キッチンや風呂場などの各種設備も10年を経過したあたりから故障したり、劣化が目立ったりするようになります。さらに、家族の人数や生活スタイルの変化に応じて、リフォームしなければならない場合もあるでしょう。

このように、持ち家を維持し続けるためには、住宅ローンのほかにメンテナンスや修繕にかかる費用を負担しなければなりません。

賃貸住宅の場合、外装・内装の維持はもちろん、設備系の修理も家のオーナーに義務があります。入居者は修繕積立金などの負担はありますが、故障や修繕のたびに大きな金額を支払う必要はありません。また、部屋や設備の劣化が目立ってきた場合は、新しい物件に引っ越すという選択肢もあります。

ライフスタイルの変化に対応しやすい

最適な住宅環境はライフステージの変化とともに変わります。例えば、一人暮らしや結婚した当初は小さなワンルームで十分でも、子供が生まれればもう一部屋、二部屋と必要になります。

また、子供が小さいうちは広いリビングや庭付きの家が好まれますが、年を取ると広すぎる家や庭は管理が難しくなります。このように、家族の人数やライフスタイルの変化によって、住宅のニーズは変わってきます。

しかし、持ち家の場合は、こうした変化に応じて住宅をかえるのは困難です。賃貸住宅であればその時々に合わせて一番都合のよい立地・物件を選んで引っ越すことが可能です。住まい選びの柔軟性は、賃貸住宅の大きなメリットです。

家の処分を考える必要がない

老後は「人生の終わり」を見据えた生活でもあります。最期を迎えるにあたってさまざまな準備をしておくことを「終活」といいますが、体が元気なうちに身辺整理を済ませておこうと考える人も増えてきました。

最近では、継承者のいない墓を処分する「墓じまい」という言葉をよく聞きますが、同様に「家じまい」をする人も増えています。要介護になったり高齢になったりすると、介護施設や高齢者施設に入る場合も多く、持ち家が不要になるためです。

不要になった家を放置しておくと、空き巣や放火に見舞われたりたり、自分たちが亡くなった後に子供や親族に処分の負担を強いることになります。

しかし、家じまいと一口に言っても、家を売却するにあたっては不動産業者とのやりとりや書類の作成など、さまざまな手間と時間がかかります。解体費用が持ち出しになる場合もあるでしょう。賃貸住宅であれば、こうした家の処分に悩まずに済みます。

デメリット

老後に賃貸住宅に住み続けるデメリットは、「所有していない」ことから生じます。高齢になってから後悔しないように、しっかりとデメリットを認識しておきましょう。

家賃を支払い続けなければならない

賃貸住宅に住み続けるということは、一生家賃を支払っていくということです。働いていたときにはそれほど高額と感じなかった金額でも、年金生活になり収入が減ると大きな負担になります。生涯賃貸住宅で暮らすためには、家賃を滞りなく支払い続けるだけの老後資金が必要です。

家賃の支払いを見越した貯蓄をするのはもちろん、年金以外の定期的な収入があるなど、余裕を持った老後の資金計画を立てていなければなりません。

賃貸に一生住み続けた場合の家賃総額と、持ち家を購入した場合の支払い総額を比較すると、それほど大きな差がないというデータもあります。つまり、賃貸住宅に住み続けることは、必ずしも住居費の節約になるわけではないということです。

新規契約が難しくなる

入居希望者がいても、貸主側が拒否すると家の賃借契約は成立しません。高齢の入居者には孤独死や家賃滞納のリスクがあるため、入居を拒否されるケースが少なくありません。自由に引っ越しができるのは賃貸住宅のメリットですが、高齢になるとそれも難しくなることを認識しておきましょう。特に、70代以降の入居審査は通りにくくなります。

シニア向け賃貸住宅は家賃が高め

「生涯賃貸派」を安心させているのが、シニア向けの賃貸住宅の存在です。最近では賃貸仲介会社にシニア専門の窓口が設置されていることも多く、高齢者でも賃貸住宅に入居しやすい仕組みづくりが進められています。

シニア向けの賃貸住宅では、物件によって緊急駆け付けサービスや安否確認、生活支援サービスなどが利用できるため、自由度の高い生活を送りながら必要なサポートを受けることができます。

ただし、シニア向け賃貸住宅は、有料老人ホームに比べればリーズナブルですが、家賃の負担をできる限り減らしたいと思っている人にとっては少々高めです。老後資金に余裕がなければ難しいかもしれません。

思うようにリフォームできない

高齢になると、ちょっとした段差でつまづいたり、しゃがんだり立ったりする動作がつらくなります。また、風呂場や玄関などで転倒する事故も多くなるため、床の段差をなくす、手すりを設置するなどバリアフリー化を考えなくてはなりません。

一方、賃貸住宅の場合は、退去時に原状回復が必要となるため大々的なリフォームをすることはできません。介護保険制度には、要介護者が希望すれば、賃貸物件においても住宅改修ができる制度がありますが、家のオーナーの承認が必要なほか、思うような改修ができない状況も少なくないようです。

このような場合は、高齢者や障がい者向けのバリアフリー住宅に引っ越す方法がありますが、体が不自由になってきた中での引っ越しはあまり現実的ではないでしょう。

老後に住む賃貸物件の選び方

老後も賃貸住宅に住み続ける場合、どのような家が適しているのでしょうか。ここでは、老後の生活を見据えた賃貸物件の選び方を紹介します。

負担にならない家賃

老後に住む賃貸住宅は、家賃が無理なく支払える金額であることが重要です。一般に、住居にかける費用は年収の3~4割といわれていますが、年金生活では家賃負担はできる限り小さくするとよいでしょう。

高齢になると医療費が増えたり、生活費の節約が思うようにできなかったりする可能性があります。生涯賃貸派として生きる道を選んだとしても、家賃のせいで生活を切り詰める苦労をしては本末転倒です。老後の賃貸物件選びでは、年金収入でも問題なく支払える家賃かどうかをシミュレーションしておくことが大切です。

バリアフリー

バリアフリーというと、段差がないことや手すりが設置されていることなどに意識が向きますが、エレベーターの有無や玄関の広さなども重要なチェックポイントです。

高齢になり体が不自由になってくると、引っ越しも大きな負担になります。体調や身体機能に問題が出ていないうちに、将来を見越してバリアフリー化された物件に引っ越すことも考えると良いでしょう。

住みやすい立地

老後の生活は、周辺環境が重要です。家の近所にスーパーやコンビニ、病院のような日常的に利用する施設があると、高齢になってからも不便なく暮らしていけるでしょう。公共交通機関や自治体の支援サービスについても確認しておきましょう。

老後はのんびりとした自然あふれる環境で暮らしたいという人は少なくありませんが、実際の暮らしやすさを考えると大きな駅に近いマンションなどが適している場合が多いようです。

地域にコミュニティがあること

外部との交流がなくなると、心身ともに老化は進みやすくなります。引っ越し先を決める際は、親族や知り合いがいる地域や、高齢者のコミュニティがある地域など、他者との交流ができそうな場所を意識して選びましょう。

例えば、近くに公民館や市民センターがあったり、町内会の活動が盛んに行われていたりする地域はおすすめです。

老後に賃貸に住み続けるための条件

生涯に渡って賃貸に住み続けるためには何が必要でしょうか。ここでは老後も賃貸生活を選んでも問題ないとされる条件について解説します。

家賃が支払えること

賃貸住宅に住むためには、一生家賃を支払わなければなりません。人生100年時代といわれる現代、老後の生活は想定していたよりも長く続く可能性があります。また、夫婦二人世帯の場合、どちらかが亡くなると年金収入が大幅に減少し、困窮する可能性があります。

そういった事態も考慮し、家賃の支払いに充てる資金は十分に確保しておく必要があるでしょう。年金収入や貯蓄だけではなく、金融資産の運用などで定期的に収入が得られるようにしておくとなおよいです。

様子を見に来てくれる人がいること

高齢単身者が賃貸住宅の入居を断られる大きな理由の一つが、孤独死のリスクが高いことです。高齢者が一人のときに命を落とすケースは決して珍しいことではありませんが、問題は死後何日も発見されない場合です。遺体の腐敗などで部屋が損傷したり臭いが付いたりすると、遺族が損害賠償請求される可能性もあります。

こういった状況を避けるためには、日頃から隣近所との交流を絶やさず、自分に何かあったら気にかけてもらえる環境をつくることが大切です。定期的な宅食サービスの契約や民間の安否確認サービスなどの利用も役立ちます。新たに賃貸住宅に入居する際も、こうした対策を万全にしておくことで入居審査をクリアしやすくなるでしょう。

自分の老後プランがしっかりとあること

若い頃はさまざまなメリットを考え「生涯賃貸派」を貫こうと考えていても、年を取るとつい弱気になり、毎月の家賃負担の重さや家を所有していない不安に悩む可能性があります。

しかし、住宅ローンの支払いや家じまいの負担もなく、好きな場所にいつでも引っ越せる賃貸住宅暮らしは決して悪いものではありません。途中で後悔しないよう、老後プランをしっかりと練っておくことが大切です。

賃貸に住み続けるためには、しっかりとした老後準備をしましょう

この記事のまとめ

  • 最近では生涯賃貸住宅に住み続けようとする人が増えている
  • 賃貸住宅のメリットは、①住宅ローンを組む必要がない ②メンテナンス費用がかからない③ライフスタイルの変化に応じて自由に住まいがかえられる ④家の処分が必要ない
  • 賃貸住宅のデメリットは、①家賃の支払いが一生涯続く ②リフォームがしにくい ③新規契約が難しい ④シニア向け賃貸住宅は家賃相場が高い
  • 賃貸住宅の選び方のポイントは、①負担にならない家賃 ②バリアフリーかどうか ③住みやすい立地かどうか ④地域コミュニティの有無

賃貸住宅は、家賃さえ支払っていれば住宅の修繕やメンテナンスをする必要はなく、いつでも引っ越せる気楽さがあります。しかし、こうした気楽さだけを享受できるのは若い頃だけかもしれません。

老後も賃貸住宅に住み続けるためには、覚悟と準備が必要です。賃貸住宅のメリットとデメリットをよく考え、老後の住居について考えをまとめておきましょう。 

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