年金は夫婦でいくらもらえる?具体的な受給金額や老後の生活費なども解説
老後、年金が夫婦でいくらもらえるのか気になる方は多いでしょう。年金は、老後の生活の柱となるものです。本記事では、年金の平均的な受給額や夫婦の働き方による年金額の違いについて解説します。受給金額を確認し、老後に向けて不足額を準備する方法を考えておきましょう。
神戸大学法学部卒業。鉄鋼メーカー、特許事務所、法律事務所で勤務した後、2012年に行政書士ゆらこ事務所を設立し独立。メインは離婚業務。離婚を考える人に手続きの仕方やお金のことまで幅広いサポートを提供。法律・マネー系サイトでの執筆・監修業務も幅広く担当。
厚生労働省のモデル年金は夫婦でいくら?
老後にもらえる年金額がいくらかは人によって異なるため、夫婦で貰える年金も人によって異なります。とはいえ、一般的な夫婦の年金がどの程度なのか、その年金で最低限の生活費をまかなえるのか気になる方が多いでしょう。
生命保険文化センターの「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」によると、夫婦2人の老後の最低日常生活費は月額23.2万円、ゆとりある生活を送るために必要な生活費は月額37.9万円となっています。年金でこれらの生活費をまかなう事ができるのでしょうか。
まずは、公的年金制度の基本的な仕組みと、厚生労働省が公表している夫婦のモデル年金がいくらかについて説明します。
公的年金制度の仕組み
日本の年金制度は、3階建て構造です。1階部分が国民全員が強制加入の国民年金、2階部分が会社員等が加入必須の厚生年金、3階部分は任意加入の私的年金となっています。公的年金と呼ばれるのは、1階部分と2階部分です。65歳になると、国民年金から老齢基礎年金が、厚生年金から老齢厚生年金が支給されます。
国民年金保険料は一律であるため、老齢基礎年金は保険料を納付した期間に比例します。一方、厚生年金保険料は収入額によっても変わるため、老齢厚生年金は会社員だったときの給料がいくらかや働いていた期間によって変わります。なお、老齢年金を受給するためには、少なくとも10年間の加入期間が必要です。
2024年度の夫婦のモデル年金額
令和6年度の夫婦のモデル年金は、月23万483円です。モデル年金には夫婦2人分の老齢基礎年金(ひとり分の満額は6万8,000円)と夫ひとり分の老齢厚生年金が含まれます。年金額は毎年改定が行われており、夫婦のモデル年金は令和5年度に比べて2.7%上がっていますが、物価上昇率には追いついていない状況です。
厚生労働省では、その年に新たに年金受給者となる人がもらえる標準的な年金額がいくらかを公表しています。厚生労働省のモデル年金は、平均的な収入(平均標準報酬43.9万円)で40年間勤務した会社員と、厚生年金加入歴のない専業主婦という夫婦を想定したものです。
実際には共働き夫婦も増加し、妻も厚生年金に加入している家庭も多いでしょう。そのため、夫婦の年金がいくらかは、夫婦の働き方や収入によって大きく変わります。
年金の平均的な受給額
会社員の年金受給額の平均は、月14万3,973円(老齢基礎年金・老齢厚生年金の合計)です。一方、自営業者など国民年金受給者の平均受給額は月5万6,428円(老齢基礎年金のみ)となっています。
年金の平均受給額がいくらかは、厚生労働省の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から分かります。
年代別の平均受給額
年金額は毎年改定が行われていることもあり、年齢によっても平均額が変わってきます。次の表は、年齢別に年金の平均受給額がいくらなのかを示したものです。
年齢別平均年金月額 | |||
---|---|---|---|
年齢 | 厚生年金受給者(老齢基礎年金+老齢厚生年金) | 国民年金受給者(老齢基礎年金のみ) | |
60~64歳 | 7万4,688円 | 4万3,094円 | |
65~69歳 | 14万4,322円 | 5万7,829円 | |
70~74歳 | 14万2,779円 | 5万7,084円 | |
75~79歳 | 14万6,092円 | 5万6,205円 | |
80~84歳 | 15万4,860円 | 5万6,139円 | |
85~89歳 | 15万9,957円 | 5万6,044円 | |
90歳以上 | 15万8,753円 | 5万1,974円 |
年金支給開始は65歳からですが、60代前半でも特別支給の老齢厚生年金を受給する人や繰上げ受給をする人がいるため、データとして存在します。ただし、繰上げ受給などで60代前半にもらう年金は通常よりも少ないため、平均額も他の年代より少なくなっています。
男女別の平均受給額
年金がいくらもらえるかは、男女でも差があります。会社員の場合、女性の方が厚生年金に加入して働いた期間が短く、賃金も安い傾向があるためです。男女別の平均受給額がいくらかをみてみましょう。
男女別平均年金月額 | |||
---|---|---|---|
厚生年金受給者(老齢基礎年金+老齢厚生年金) | 国民年金受給者(老齢基礎年金のみ) | ||
男性 | 16万3,875円 | 5万8,798円 | |
女性 | 10万4,878円 | 5万4,426円 |
厚生年金受給者は、男性と女性でかなり差があることが分かります。国民年金受給額は、男女で大きな差はありません。
【パターン別】夫婦の年金額
夫婦が将来もらえる年金額がいくらになるかは、夫婦の働き方によっても変わります。年金の平均受給額のデータをもとに、夫婦の年金額がいくらになるか、パターン別にシミュレーションしてみましょう。
なお、実際の夫婦の年金がいくらになるかは、単なる働き方だけでなく、いろいろな条件で変わってきます。夫婦のパターン別シミュレーションは、一般的な年金額の傾向を知るための参考としてください。
会社員と専業主婦世帯の年金は夫婦でいくら?
先述した通り、厚生年金受給者の男性の平均年金月額は16万3,875円、国民年金受給者の女性の平均年金月額は5万4,426円です。合計すると21万8,301円となり、会社員と専業主婦世帯の年金は、夫婦で22万円程度になると考えられます。
会社員と専業主婦世帯がもらえる年金は、夫婦の年金を合計しても、夫婦2人の老後の最低日常生活費は月額23.2万円のためギリギリまかなえるかどうかという金額です。年金だけでは夫婦の老後資金に不安が残るでしょう。
しかし、会社員の場合には年金に加えて、退職金を老後資金に充てることもできます。退職金の有無や支払われる金額の目安も確認しておき、年金と退職金だけでは不足する老後資金は貯蓄して準備しておくのがおすすめです。その際、貯金だけでなく投資も活用して効率よく資産を増やしましょう。
共働き世帯の年金は夫婦でいくら?
どちらも厚生年金に加入していた共働き夫婦の年金は、合計で26万8,753円となります。内訳は、厚生年金受給者の男性の平均年金月額16万3,875円と、厚生年金受給者の女性の平均年金月額10万4,878円です。
共働き夫婦の場合、年金だけで最低限の生活費はまかなえそうです。しかし、ゆとりある生活を送るために必要な生活費は月額37.9万円のためまだまだ不足します。夫婦で合計した退職金の額も確認し、あといくら老後資金が必要かを考えてみましょう。iDeCoなどの私的年金を活用して積み立てするのがおすすめです。
自営業世帯の年金は夫婦でいくら?
自営業世帯(国民年金受給者)の平均年金月額は男性5万8,798円、女性5万4,426円であるため、夫婦の合計は11万3,224円となります。
夫婦一緒に自営業をしている場合でも、夫が自営業で妻が専業主婦の場合でも、夫婦の年金は国民年金だけです。自営業世帯の場合、夫婦の年金だけでは最低限の生活をするのにも不十分な金額です。また、自営業者は退職金もありません。自営業夫婦は、年金以外の老後資金をいくらか準備しておかないと、将来困る可能性が高いと言えます。
自営業者の場合、国民年金基金やiDeCoを利用すれば、上限月6.8万円までの積み立てが可能です。このような制度を活用し、公的年金に上乗せする年金を用意しておくのがおすすめです。
年金見込額を知る方法
前述したシミュレーションは、年金の平均額をもとにしたものです。家庭によって、実際の年金受給額がいくらになるかを知る方法を解説します。
計算によってシミュレーションする
夫婦の年金額がいくらなのか、自分で計算してみることも可能です。老齢基礎年金、老齢厚生年金それぞれの金額を計算し、合計するともらえる年金額がいくらなのか、概算が分かります。
年金の計算方法
老齢基礎年金がいくらになるかの計算方法は次のとおりです。
老齢基礎年金の計算方法
- 老齢基礎年金=81万6,000円(令和6年度の満額)×納付月数/480ヶ月
なお、国民年金保険料の免除・納付猶予の承認を受けていた期間がある場合には、一部を納付月数に加えられますが、ここでは省略します。
また、老齢厚生年金がいくらになるかは、次の計算式で概算を出すことができます。
老齢厚生年金の計算方法
- 老齢厚生年金=平均標準報酬額(平均月収)×5.481/1000×厚生年金加入月数
老齢厚生年金では、扶養している配偶者等がいる場合、加給年金と呼ばれる扶養手当のようなものが加算されます。配偶者がいる場合の加給年金額(令和6年)は23万4,800円(年額)ですが、年金受給者の生年月日によって特別加算があり、最大で40万8,100円となっています。
「ねんきん定期便」で確認
手っ取り早く年金見込額がいくらかを知りたいなら、「ねんきん定期便」を活用しましょう。ねんきん定期便とは、毎年誕生月に日本年金機構から送られてくる書類で、保険料の納付実績や将来の年金見込額がいくらかを知ることができます。
なお、ねんきん定期便に記載されている年金額は、50歳以上か50歳未満かで次のような違いがあります。
ねんきん定期便の年金見込額
- 50歳未満の人…これまでの加入実績に応じた年金額
- 50歳以上の人…現在の年金制度に60歳まで加入を継続した場合の年金額
50歳未満の人は、ねんきん定期便の金額よりも年金額が増えるのが一般的です。ねんきん定期便の金額を参考にしながら、将来の年金がいくらになるか計算してみましょう。
夫婦でもらえる年金額を知って老後資金の準備を考えよう
この記事のまとめ
- 厚生労働省のモデル年金は夫婦で23万円
- 会社員の年金受給額の平均は月14.4万円
- 自営業者の年金受給額の平均は月5.6万円
- 年金受給額がいくらかはおおよそ自分で計算することも可能
- 年金見込額がいくらかは「ねんきん定期便」で確認できる
夫婦で暮らす老後資金を準備するにあたって、年金額がいくらかを確認しておく必要があります。年金の平均額からも年金額の目安が分かりますが、より具体的な金額が知りたい方はねんきん定期便で調べてみるとよいでしょう。老後資金の不足額がいくらかが分かったら、計画的に貯蓄や資産運用の準備をするのがおすすめです。